| 「イエス様を礼拝する」 マタイによる福音書２章１節−１２節 2:1 イエスは、ヘロデ王の時代にユダヤのベツレヘムでお生まれになった。そのとき、占星術の学者たちが東の方からエルサレムに来て、2:2 言った。「ユダヤ人の王としてお生まれになった方は、どこにおられますか。わたしたちは東方でその方の星を見たので、拝みに来たのです。」2:3
これを聞いて、ヘロデ王は不安を抱いた。エルサレムの人々も皆、同様であった。2:4 王は民の祭司長たちや律法学者たちを皆集めて、メシアはどこに生まれることになっているのかと問いただした。 はじめに ３月も半ばを過ぎましたが、本日も、わたしたちは、聖書の教える真の神を心から信頼して、礼拝し、豊かな祝福を受けたいと思います。また、教会の今年の年間標語聖句は、ヨハネによる福音書４章２３節、「まことの礼拝をする者たちが、霊と真理をもって父を礼拝する時が来る。今がその時である。なぜなら、父はこのように礼拝する者を求めておられるからだ。」という御言葉ですが、この御言葉により、わたしたちは、旧約時代より霊的にはるかに豊かな新約時代の礼拝にあずかり、恵みを受け、今働く聖霊の力により、労苦はあっても、希望をもって、みんなでよい教会を建てていきたいと思います。 それで、礼拝においては、マタイによる福音書のお話に入りました。そこで、本日のお話も、前回と同じように、クリスマスのときに、しばしば語られます。東方の博士たちが、贈り物を携えて、遠いところからやって来て、約束の救い主として生まれたイエス様を礼拝するというお話です。そこで、今日のわたしたちも、東から来た博士たちにならい、信仰をもって、イエス様こそ世界の救い主として、心から礼拝し、わたしたちの宝物である心を献げ、豊かな祝福を受けたいと思います。 ２点からお話します。第１点は、東方の博士たちが、約束の救い主として生まれたイエス様訪ねて、はるばるやって来たという点です。第２点は、東方の博士たちは、贈り物をささげて、幼子のイエス様を礼拝したという点です。クリスマスにお話しないこともお話します。 １．東方の博士が、救い主として生まれたイエス様を訪ねて、やって来ました。 早速、第１点に入ります。第１点は、東方の博士たちが、約束の救い主として生まれたイエス様を訪ねて、はるばるやって来たという点です。１節から８節がそうです。第１点は、長くお話をします。 「ヘロデ王の時代に」とありますが、「ヘロデ王」とは、どのような人物だったでしょう。すると、ローマ帝国の許可の下ではありましたが、紀元前３７年から紀元後４年までの、３３年間の長きにわたって、王としてイスラエルを治め、大きな権力を振るいました。そのため、しばしばヘロデ大王とも言われます。 しかし、このヘロデ王は、純粋なユダヤ人ではありませんで、エドム人といわれる民族の人で、旧約聖書に出てくるエサウの子孫でした。そのため、ユダヤ人の先祖伝来の真の神を尊びませんでした。たとえば、エルサレム神殿の聖なる門のそばに、金ぴかの黄金でできた鷲の像をわざわざおいて、エルサレム神殿を宗教的にけがすことを平気で行いました。そのため、ユダヤ人たちは、ヘロデ王を憎んでいました。 そこで、ヘロデ王も権力を振るい、力ずくでユダヤ人たちを支配し、自分に反対したり、自分の王の位を脅かすと思えた人物たちを、次々と遠慮容赦なく処罰したり、殺害しました。たとえば、ヘロデ王以前のイスラエルの王一族であったハスモニア王一族の生き残りを全員殺害しました。また、ヘロデ王には妻が１０人ほどいましたが、最も愛したアリアンネという妻さえも、ヘロデ王の命を狙ったという名目で処刑されました。また、アリアンネの母親も殺害しました。 また、ヘロデ王様は、自分の息子たちが王の位を狙ったという名目で、自分の実の息子たちを何人も処刑しました。また、ヘロデ王のやり方に反対した当時の宗教の指導者のファリサイ派数百人を絞首刑にしました。また、ヘロデ王の部下３百人が、クーデターを計画したという名目で、厳罰に処せられました。また、先ほども触れましたが、ヘロデ王様が、聖なるエルサレム神殿の門のそばに、金ぴかの鷲の飾り物を置いて、エルサレム神殿を宗教的にけがをしたので、ひとりのユダヤ人の若者が勇気を出して、その金ぴかの鷲の飾り物を取り除こうとしたところ、捕らえられ、生きたまま焼き殺されるか、石打ちされて殺されるかしました。また、当時の宗教の指導者のラビ・ババという人が、ヘロデ王に反対したので、ハリネズミの皮をかぶせられて、失明させられました。このヘロデ王のとき、愛と平和をもたらす世界の王のイエス様が、お生まれになるのです。 イエス様は、イスラエル南部のユダヤ地方のベツレヘムでお生まれになるのです。「ユダヤ」というのは、イスラエル南部のユダヤ地方という意味です。そして、エルサレムも、そのユダヤ地方にありましたが、エルサレムから南に８キロのところが、ベツレヘムという村で、救い主のイエス様はそこで生まれました。紀元前４年ぐらいと言われています。 では、約束の救い主メシアが、生まれたことが、どうして、ヘロデ王にわかったのでしょう。すると、東から博士たちがはるばるやって、約束の救い主誕生の場所をヘロデ王に聞いたからです。「占星術の学者たちが東の方からエルサレムに来て」とありますが、「東の方」というのは、今日のイラクやイランにあたるところと考えられています。旧約聖書でアッシリア、バビロン、メデア、ペルシャなどと言われていた地です。その地は、昔から占星術、すなわち、星占いが盛んな地でした。 また、その地は、昔から、ユダヤ人たちが多く住んでいました。実は、そのときから５百数十年前に、バビロンという強い国があり、イスラエルと戦って勝ち、イスラエルの人々、すなわち、ユダヤ人たちを多数、捕虜として連れてきました。すなわち、バビロン捕囚と言われるものでした。そのため、その地には、５百数十年前からユダヤ人たちが多数暮らしていました。そこで、その地の人々は、ユダヤ人たちと接触したり、交流することにより、旧約聖書を知りました。また、旧約聖書で、将来、世界の王である救い主メシアが誕生するということを聞いて、信仰する人々が出てきました。そして、彼らは、天体を観測し、あるときそれまでになかった星が現れ、輝き出したのを見て、世界の王であるメシアの誕生を確信し、世界の王であるメシアを拝み、貢ぎ物をささげるため、千キロ以上も離れているイスラエルのエルサレムを目指し、数カ月かかったと思われますが、旅をして、やって来たのです。そして、イスラエルの中心地であるエルサレムに行けば、メシアがどこでお生まれになったのか、具体的な誕生地を教えてもらえるはずであると考え、エルサレムの王宮にやってきて、ヘロデ王に謁見し、メシアの誕生地を尋ねたのです。 すごい熱心さですね。千キロ以上もあるのに、いくつも砂漠を越え、荒れ野を越えてやってくるのです。今日のわたしたちも、東方からやってきた博士たちの熱心さに学びたいと思います。 では、何人でやって来たのでしょう。人数は、特には書いてありません。わたしたちは、クリスマスの劇をするときに、博士たちが、「黄金、乳香、没薬」の３種類の宝を献げたので、３人の博士たちと推測します。劇はそれでよいのですが、厳密には、数は特に記していないので不明です。 そして、２節に、「わたしたちは東方でその方の星を見た」とありますが、これはどういう意味でしょう。すると、もともとの厳密な言い方は、「わたしたちは東方でその方が昇るのを見た」となります。すなわち、あるときに星が昇った、すなわち、それまでなかった星が急に現れ、輝き始めたことを意味します。では、それまでなかった星が急に現れ、輝き始めた星とは具体的にどういうことでしょう。すると、いろいろな説明の仕方がなされてきました。ある人は、単純に、ある星が急に輝き始めたと考えます。ある人は、木星のことを意味していると考えます。木星は、古代においては、しばしば王の誕生と結び付けて考えられた星で、王の星ともいわれるほどであったと言います。ある人は、木星と土星が接近して光を放ったと考えます。ある人は、ある彗星が輝いたと考えます。ある人は、何かの発行体を表すのではないかと考えます。いろいろな説明の仕方がありますが、事実として、あるときに、ある星が昇った、すなわち、あの星が急に輝き始めたのです。 また、２節に「その方の星」とありますが、「その方の星」とは、メシアの星という意味で、メシアが誕生したときには、星が現れて輝くということを、東方の博士たちが、信じていたことを表しています。そこで、生まれた救い主を心から礼拝し、貢ぎ物を献げ、服従を示して、祝福を受けるため、はるばるやってきたと考えられます。 なお、２節に「ユダヤ人の王としてお生まれになった方」とありますが、「ユダヤ人の王」と言われているからといって、救い主は、ユダヤ人だけを支配することに限定されるという意味ではありませんで、救い主はユダヤ人ですが、全世界を支配する偉大な王であるという意味です。 それで、ここで素晴らしいのは、２節後半の「拝みに来たのです。」というところで、メシアに対して人がとるべきふさわしい姿勢として、まさに星のようにピカピカ光っています。約束の救い主メシアに対して、人がとるべき姿勢は、いくつもありません。ひとつだけです。そして、その姿勢は、メシアを拝む姿勢です。すなわち、メシアの前にひざまずく姿勢、ひれ伏す姿勢、心から礼拝する姿勢です。「拝む」という言葉は、本日の箇所に２節と１１節で２回出ていますが、もともと、その前にひざまずくという意味の言葉で、ひざまずいて礼拝することを意味します。そして、さらに、ひれ伏して礼拝する姿勢を表します。今日のわたしたちも、メシアのイエス様に対して、ひざまずいて礼拝する姿勢、さらに、ひれ伏して心から礼拝する姿勢をもって、救いと祝福と永遠の生命を恵みとして受けたいと思います。 さて、では、メシア誕生を東方の博士たちから聞いて、知ったとき、イスラエルの王のヘロデはどうしたでしょう。すると、生まれたメシアにより、自分の王の位が奪われると自分勝手に思い込み、強い不安を覚え、恐れました。「ヘロデ王は不安を抱いた。」とある通りです。 そして、不安を覚え、恐れたのは、「エルサレムの人々」、すなわち、エルサレムの住民たちも同じでした。しかし、エルサレムの住民たちの不安と恐れは、ヘロデ王の位が奪われるという不安と恐れではなく、ヘロデ王が、王であるメシアの誕生を知って、荒れ狂い、血の雨を降らせることになることを予感し、不安と恐れを覚えたのです。 そのため、エルサレムの住民たちは、待望のメシアの出現を知っても、だれひとり、メシアのイエス様のところに駆けつけて、ひざまずき、ひれ伏し、礼拝する者がいませんでした。エルサレムは、神殿のあるところで、全イスラエルの中心地です。それゆえ、エルサレムの住民たちは、神の民である全イスラエル民族を代表する人々とも言えますが、そのエルサレムの住民たちは、ヘロデ王を恐れて、メシアのイエス様のところに駆けつけて、礼拝することを、だれひとりしませんでした。これは、エルサレム住民たちの弱さでした。 ヘロデ王は、それからどうしたでしょう。すると、最高法院をすぐに召集し、議員である祭司長たちや律法学者たちに、メシアの誕生地を問いただし、その地が、エルサレムから８キロほど南の方のベツレヘムの町であることを、旧約聖書のミカ書の預言から知りました。４節に「民の祭司長たちや律法学者たちを皆集めて」とありますが、この表現で、１世紀の当時のイスラエルの議会の「最高法院」を表します。 最高法院の議員である祭司長たちや律法学者たちは、メシアの誕生地は、イスラエル南部のユダヤ地方のベツレヘムであると答えました。メシアの誕生地は、旧約聖書のミカ書５章１節で予告されていました。マタイによる福音書２章６節の鍵括弧に入っている御言葉が、そうです。旧約聖書のミカ書５章１節を少し変更して引用しています。預言者ミカは、預言者イザヤと同じ時代である紀元前８世紀に活躍した預言者です。 ６節の意味は次のようです。預言者ミカの時代は、ユダ地方と呼ばれていましたが、ユダ地方の町や村の指導者たちが集まって会合するときに、ベツレヘムの村は、ユダ地方で１番小さな村と言えるような状況でしたので、ベツレヘム村出身の指導者は、１番小さな価値しか認められておらず、軽んじられていました。しかし、預言者ミカは、そのベツレヘムから、王であるメシアが、出現して、イスラエルの指導者となるので、ベツレヘムは、１番小さいなどと決して言われないようになる、という意味です。 こうして、預言者ミカは、メシアの誕生地は、イスラエル南部のユダのベツレヘムと予告していたのですが、最高法院の議員である祭司長たちや律法学者たちは、もちろん、すぐに、ヘロデ王に答えることができましたが、自分たちは、メシアの誕生を知っても、拝みに行くことをしませんでした。 考えて見ますと、最高法院の議員である祭司長たちや律法学者たちは、イスラエルの宗教の指導者でした。本来であれば、神の民イスラエルの宗教の指導者として、１番先に、メシアのところに駆けつけて、喜びと感謝をもって、メシアの前にひざまずき、ひれ伏し、心から礼拝すべきです。そして、さらに、自分たちだけでなく、神の民であるイスラエルのすべての人々も、駆けつけて、喜びと感謝をもってひざまずき、ひれ伏し、心から礼拝するように指導しなければなりませんでした。 エルサレムから、ベツレヘムまでは南の方にたったの８キロしかありません。百キロも２百キロも離れているわけではないのです。当時の人々にとって目と鼻の先で、歩いてわずか２時間ほどで行ける距離にした。そういう言い方が許されれば、当時としては、お茶１杯飲んでいる時間に行けた距離です。しかし、祭司長たちや律法学者たちなどの１世紀のイスラエルの宗教の指導者たちは、メシアについて知っても、救いと祝福と永遠の生命の恵みに結びつくことがありませんでした。知識と行動が分離していました。これはメシアに対する適切な姿勢ではないのです。マタイによる福音書は、反面教師として教えています。今日のわたしたちにとってもそうです。わたしたちは、祭司長たちや律法学者たちたちと違って、メシアのイエス様の御前に、ひざまずき、ひれ伏し、心から礼拝し、満ち溢れる祝福を受け、喜びで心、魂、霊魂が限りなく満たされる者になりましょう。 ヘロデ王はどうしたでしょう。すると、いよいよ悪い意味での本領を発揮し始めます。王として生まれたメシアを今のうちに殺害する決意をしました。そこで、今度は、最高法院と相談せず、東方の博士たちだけをひそかにでもう１度呼び寄せ、彼らが、東方で見た星の現れた時期を聞き出しました。それは何のためであるかと言いますと、東方の博士たちが、もう１度エルサレムの王宮に戻ってきて、ヘロデ王に一部始終を報告させ、メシアの具体的な居場所や年齢やそばにいる者たちなどの状況を把握したうえで、メシア殺害を実行するためでした。 ７節に、「星の現れた時期を確かめた。」とありますが、これは、東方の博士たちが、星を見て、エルサレムを目指して出発するときが、いつであったかを確認したという意味です。東方の博士たちは、たぶん数カ月前に出発したのであろうと思われますが、次回お話しますように、少し後の１６節を見ますと、ヘロデ王は、ベツレヘム村の２歳下の男の子を全員虐殺したと言われています。そこで、そのときイエス様は一体、何歳だったのかと思うのですが、２つの理解があります。ある人々は、生まれてから数カ月たっていたと考えます。ある人々は、２歳以下の男の子が殺されたのだから、イエス様も、２歳ぐらいの幼児になっていたのではないかと考えます。もし、イエス様が２歳ぐらいであったならば、東方の博士たちは、２年前に星を見て、エルサレムに来るまでに２年経っていたということになりますが、そんなにかかるものだろうかという疑問も生じます。イエス様がこのとき、何歳だったのかについては、聖書は具体的には記しておりません。 こうして、本来であれば、確かに、ヘロデ王は、純粋なユダヤ人でなくても、神の民イスラエルを代表する王の立場にあるのですから、神の民イスラエルを代表し、神御自身が旧約時代から約束していた救い主メシアをお迎えする準備をしなければなりませんのに、全く逆に、殺害を企てるのです。 アメリカのウェストミンスター神学校のストーンハウス先生は、メシアのイエス様は、生まれたときから、大きな危険に置かれていたと述べていますが、本当にそうです。人類の救いのため、無限のへりくだりをし、神の御子でありながらも、人となってマリアから生まれるイエス様は、生まれたときから、この世の王による殺害の対象にされ、宗教の指導者たちやエルサレム住民たちからは、無視されて、辱めと屈辱と不名誉を受けるのです。人間の罪の深さを感じさせられます。しかし、メシアを遣わした天の父なる神は、人類の罪の贖いをするメシアを十字架の死以外で死なすことはなさらないのです。神の守りの御手が、メシアのイエス様を守ります。 ２．東方の博士たちは、贈り物をささげて、幼子のイエス様を礼拝しました。 第２点に入ります。第２点は、東方の博士たちは、贈り物を献げて、幼子のイエス様を礼拝したという点です。９節から１２節がそうです。東方の博士たちは、ヘロデ王が招集した最高法院の議員である祭司長たちや律法学者たちから、メシアの誕生地が、エルサレムから南の方へ８キロのベツレヘムの村であることを聞き、エルサレムの王宮を出発し、ベツレヘムを目指しました。すると、そのとき、彼らが東方の地で見た星がまた出現し、輝き始め、その星は、博士たちに先だって進み、ベツレヘムのメシアのおられる家まで導き、その家の上で止まりました。東方の博士たちは、自分たちが、東方の地を出発するときに見た星が、また出現し、輝き始めたのを見たとき、喜びが心に満ち溢れました。 ９節に、「東方で見た星が先立って進み、ついに幼子のいる場所の上に止まった。」とありますが、これはどういうことでしょう。すると、東方の博士たちが、東方で見た星が再び現れて、輝き始めたことを意味します。ですから、その星は、最初見たときから、ずっと博士たちをエルサレムまで導いてきたのではありませんでした。確かに、博士たちは、あるとき、それまでになかった星が現れ、輝き始めたのを見まして、メシア誕生のしるしと確信し、エルサレムを目指して出発しましたが、旅をしているときにも、その星が、博士たちに先立ってずっーと博士たちをエルサレムまで導いていたわけではありません。出発した段階で、その星は見えなくなったと考えられています。しかし、エルサレムからベツレヘムを目指して、最後の歩みを始めたとき、再び、その星が現れ、輝き始め、博士たちに先立って進み、イエス様のいる家の上で止まったと言われています。 ただし、その星が再び現れて輝いたのは事実ですが、その星が、博士たちに先立って進み、メシアのイエス様のいる家の上で止まったということについては、２つの解釈があります。ひとつは、文字通りに、奇跡として、その星がずーっと動いて博士たちの先を進んで行って、イエス様のいる家の上で止まったと理解します。もう一つの理解は、もちろん、星が再び現れ、輝き始めたのは事実であるけれども、その星がずっと動いていって博士たちの先を進んでいった、そして、イエス様のいる家の上で止まったというのは、文学的な書き方をしているのであると理解します。すなわち、博士たちは、再び星が現れ輝き始めたのを見て、喜んだ様子を、星が自分たちと共に一緒に動いて行って、メシアのおられる家の上で止まったと、文学的に美しく描いたのであると理解します。わたしたち日本キリスト改革派の創立者の先生方が直接教えられた、ウェストミンスター神学校のメーテェン先生も、ここは文学的な美しい書き方をしているのだと理解しています。どちらをとるにしても、再び星が現れて、輝き始めたのを見て、博士たちが喜んで、ベツレヘムのメシアのおられる家に行ったことは事実です。 さあ、博士たちはどうしたでしょう。家に入り、メシアのイエス様にお会いしました。お会いしたといっても、もちろん、赤ちゃんであり、幼児で、母マリアと共におられましたが、博士たちは、メシアのイエス様の御前に、ひれ伏し、心から礼拝し、服従を示しました。そして、当時の宝物、すなわち、１番高価な値打ちがある黄金、乳香、没薬を贈り物として献げました。「黄金」とは、もちろん、金のことです。固まりか、板状のものか、砂金のようなものかのどれかであったでしょう。「乳香」は、アラビア、インド、西ヒマラヤに産する樹木で、その幹に傷をつけると、乳白色の樹液が出てきますが、これはよい香りがする薫香として珍重されました。また、没薬は、南アラビアのアビシニア地方の樹木で、幹に傷をつけて、出てくる樹液で、よい香りのする香料として用いられました。また、胃の薬としても用いられた高価なものでした。 それで、ここで、わたしたちが注目したいのは、メシアのイエス様がおられた場所です。「家に入ってみると」と書いてあります。「家」と書いてあって、馬小屋とは書いてありません。ですから、このときに、イエス様は、ベツレヘムの宿屋の馬小屋ではなく、ベツレヘムの１軒のある家に移っていたことがわかります。確かに、ルカによる福音書２章７節で言われている通り、イエス様が生まれたのは、宿屋の馬小屋でした。しかし、馬小屋にいたのは長くはなかったようです。どのぐらいの期間かは記されていませんのでわかりませんが、間もなく、１軒の家に移ったかをものと考えられています。そして、1軒の家に移ってから、東方の博士たちが、訪ねてきて、礼拝し、贈り物を献げたと考えられます そんなこと言いますと、わたしたちは、クリスマスの降誕劇として、馬小屋で生まれたときに、東方の博士たちが、やって来て、飼い葉桶に眠っているイエス様に、黄金、乳香、没薬を献げて礼拝するという筋書きでやるけど、それはどうなるのかと思うかもしれませんが、それは、劇ですから、それでよいのです。それで世界中で行っているのです。これからも、劇として、もちろん、それでやってよいのですが、厳密には、東方の博士たちが、訪ねてきて、礼拝し、黄金、乳香、没薬を献げるのは、ベツレヘムの宿屋の馬小屋ではなく、ベツレヘムの１軒の家に移ってからのことであったと理解しておけばそれでよいと思います。 そして、ここで最も大切なことは、「彼らはひれ伏して幼子を拝み」と言われているところです。東方の博士たちは、赤ちゃんのイエス様を、世界のメシアとして、文字通りひれ伏し、心から礼拝して、服従を示しました。そして、宝物、すなわち、この世で１番価値のある高価な物を惜しみなく献げました。素晴らしいですね。そして、この姿勢こそ、いつの時代であれ、人が、世界の王であるメシアのイエス様に対して取るただひとつのふさわしい姿勢なのです。東方の博士たちは、成人して、人々に権威をもって神の言葉を語るイエス様を知りません。彼らは、ご自分を偉大な神の子として表すイエス様の奇跡を見ていません。彼らは、人類の罪を身代わり背負い、十字架上で、父なる神から裁かれて、苦しみ死ぬイエス様の素晴らしい姿を知りません。彼らは、3日目に、無限のいのちの力により墓からよみがえったイエス様にお会いしていません。彼らは、オリーブ山から、栄光を表す雲に包まれて、天にお帰りになったイエス様の姿を見ていません。彼らは、天にお帰りになり、父なる神の右に着座して、教会と世界を支配するイエス様を知りません。彼らは、天から、イエス様が、聖霊を遣わすペンテコステの素晴らしい出来事を知りません。彼らは知っていることは、ほんのわずかなこと、生まれてくださったことだけです。 そして、メシアが生まれてくださったことだけで、千数百キロの道を、砂漠や荒れ野をいくつも越えて、やって来て、ひれ伏し、心から礼拝し、この世で１番価値がある高価な宝を惜しみなく献げましたが、どうして、そんなことができたのでしょう。それは、もちろん、信仰によったからです。旧約時代から約束されていた世界の王として心から信仰し、喜びが心に満ち溢れていたからです。そしてこの姿勢こそ、メシアのイエス様に対して人が持つべき姿勢であることを、マタイによる福音書は、印象深く教えているのです。 考えてみれば、本日の箇所には、メシアのイエス様に対する姿勢が４つ出ています。メシアの誕生を知って、殺害しようとしているヘロデ王の姿勢、メシアの誕生を知りながらも、無視している祭司長たちや律法学者たちの姿勢、メシアの誕生を知りながらも、弱さのゆえとはいえ、ヘロデ王を恐れて、神が大きな恵みにより備えてくださったメシアのところにだれひとり駆けつけることのなかったエルサレム住民たちの姿勢、そして、異邦人でありながらも、メシアの誕生を知り、あらゆる困難を乗り越え、はるばるやって来て、メシアの御前にひれ伏し、心から礼拝し、自分たちの宝物を惜しみなく献げる東方の博士たちの素晴らしい姿勢の４つが出ています。もちろん、マタイは、読者である１世紀のユダヤ人たちが、東方の博士たちの素晴らしい姿勢をお手本として、メシアのイエス様を、受け入れ信じ、その御前にひれ伏し、心から礼拝する姿勢をもつように教えています。神は、メシアに対するふさわしい姿勢を教えるため、異邦人である東方の博士たちを用いたのです。今日のわたしたちも東方の博士たちの姿勢に習いましょう。 それで、東方の博士たちは、メシアのイエス様を礼拝した後どうしたでしょう。ヘロデ王から、エルサレム王宮に戻ってきて、様子を聞かせてほしいと言われておりましたが、それは、メシアのイエス様を殺害するためでしたので、そのことをご存じの天の神は、東方の博士たちの夢の中で、ヘロデ王のところに戻らないように命じたので、彼らは、エルサレムに戻る道ではなく、別の道を通って、東方の地に帰って行きました。 結び 以上のようにして本日のところを見ます。約束の救い主、世界の王であるメシアのイエス様に対して、人が持つべき姿勢はただひとつで、それは、ひれ伏して拝む姿勢、すなわち、心からの礼拝の姿勢です。 今日のわたしたちは、わたしたちの救いのため、メシアのイエス様がしてくださったことすべてを新約聖書を通して知っています。それゆえ、東方の博士たちとは比べものにならないほど、大きな感謝と大きな喜びをもって礼拝することができます。そして、１番よいもの、すなわち、わたしたちの心を献げることができます。 ２１世紀の日本において、わたしたちは、世界の王、愛と平和の王であるメシアのイエス様の御前に、ひれ伏し、心から礼拝する民として、希望をもって、これからも喜んで一緒に歩んでいきましょう。聖霊の豊かな力と恵みにより、メシアのイエス様を礼拝する人々が、今の時代に起こされますよう、お祈りしましょう。 |