| キャンドル・サービス説教 ｢受胎告知｣ はじめに 燭火礼拝（キャンドル・サービス）にあたり、ショート･メッセージをいたします。クリスマスは、救い主イエス・キリストの誕生を感謝する目ですが、キリストの誕生についてはいろいろな観点から学ぶことができます。今晩は、天使ガブリエルが神から遣わされ、マリアに救い主を身ごもることを伝えたこと、すなわち、受胎告知と言われる箇所からお話したいと思います。 倉敷の美術館にエル・グレコの書いた受胎告知の絵がありますが、エル・グレコも、本日の聖書箇所を思い浮かべて、絵を書きました。 そして、本日の聖書の箇所から、受胎告知は、人の計画ではなく、神の御計画によること、おとめマリアは、男性との関係なしに聖霊によって救い主を身ごもること、マリアは従順なとてもよい信仰で応答したことを学んで、それらすべてが、罪人であるわたしたち人類の救いのためであったことを覚え、心から神に感謝したいと思います。 １ 受胎告知は、神のお立てになった救いの計画に基づいて生じた まず、受胎告知は、神のお立てになった救いの御計画に基づいて生じたものであることから見ていきましょう。マリアヘの受胎告知は、いつ、どのような時に、どのようにして生じたのでしょう。すると、伝統的には紀元前４年ごろ、天使ガブリエルが、救い主のさきがけの洗礼者ヨハネの誕生を祭司のザカリアに告げてから、６ヵ月後、今度は、イスラエル北部のガリラヤ地方のナザレ村の１人のおとめ、マリアに突然現われたことによってです。当時、マリアは、ヨセフと婚約していましたが、１０代半ばほどの年令であったと思われます。 「六か月日に」とありますが、何から数えて６ヵ月日かと言いますと、直前に記されている１章５節から２５節の出来事から数えて６ヵ月日です。直前に記されている出来事は、救い主のさきがけの洗礼者ヨハネの誕生が、神から遣わされた天使ガブリエルにより祭司ザカリアに、神殿の中で伝えられるという出来事です。すなわち、神は、いきなり約束の救い主を出現させるのではなく、その前に、救い主のさきがけを出現させ、救い主がまもなく出現するということをイスラエルの人々に知らせ、心の備えをさせるのです。そのうえで救い主が出現するのです。 そして、「天使ガブリエル」というのは、通常は、神のそば近くに仕えている天使です。「ガブリエル」という名前は、ヘブル語で、「神の人」という意味の名前です。万物の創造主なる偉大な神に仕えると天使は無数にいますが、わざわざ、ガブリエルという名前がつけられていたということを見ますと、天使の中でも、大切な立場に置かれていた天使と思われます。 そして、天使ガブリエルは、イスラエル北部のガリラヤ地方のナザレの町に遣わされました。「神から遣わされた。」と記すことによって、この出来事は、神の御計画によって生じていることを読者に教えています。今日は、聖書が完結していますので、天使が神から遣わされて、わたしたちに何かを告げるということはありませんが、聖書が完結していない時代にはありました。 天使ガブリエルは、イスラエル北部のガリラヤ地方のナザレの町に現れました。当時、神殿はイスラエルの南部のユダヤ地方のエルサレムにあり、エルサレムは、イスラエルの宗教の中心地でしたが、イスラエル北部のガリラヤ地方のナザレの町は、人間的に見れば何の取り柄もない田舎の町でした。 その田舎のナザレの町に、天使ガブリエルが、ヨセフという男性と婚約していたおとめマリアに突然現れ、「おめでとう」と言ったのです。「おめでとう」というのは、もともとは「喜べ」という意味です。ですから、神からの喜ぶべきよい知らせを伝えようとしています。また、「恵まれた方」というのも、もともとは「祝福された女よ」という意味で、マリアが神から特別な祝福を受ける女性にされることを表します。 こうして、この挨拶は、マリアが約束の救い主を生むという特別な祝福を与えられることを前提していますが、マリアは、この挨拶を突然聞いたので何のことか意味がわかりませんで、戸惑い、胸騒ぎがし、自分の身に一体何が生じるのだろうと心の中で考えました。 しかし、考えてわかる事柄ではありません。そのとき、マリアは、もちろん、突然天使が現れたことでとても恐れていました。そこで、天使ガブリエルは、マリアは、神から特別な恵みを与えられるので恐れる必要がないことを語ります。では、マリアが神から受ける特別な恵みとは何でしょう。すると、救い主である男の子を身ごもり、生むのです。 そして、その子は、人々に主なる神による救いを与えるために生まれるの、主は救いなりという意味のイエスと名付けるように命じられています。「イエス」という名前は、ヘブル語では、イエホシューアで、旧約聖書のヨシュア記に出てくる人物のヨシュアと同じ名前ですが、ギリシヤ語にすると、イエスになります。意味は、主は救いなりという意味で、イエス様を通して主なる神による救いが人々に与えられることを意味する素晴らしい名前です。 こうして、天使ガブリエルは、マリアが男の子をみごもって生むこと、そして、その名前をイエスと名付けるように伝えました。しかし、マリアから生まれる男の子が、単なる男の子ではないことを教えます。マリアから生まれる男の子は、救い主ですので、この世の偉人など比較にならない圧倒的な偉大さをもちます。 また、マリアから生まれる男の子は、神の子です。「いと高き方の子」とありますが、これは、神の子の別の言い方です。「いと高き方」というのは、天のとても高いところにおられる神を表す旧約的表現です。ですから、「いと高き方の子」とは、神の子を意味します。また、マリアから生まれる男の子は、偉大な神である主から、王としての支配権を与えられます。「父ダビデの王座」というのは、王としての支配権を意味します。昔、先祖のダビデが王座に座ってイスラエルを支配したことから来た言い方です。キリストは、神から支配権を与えられ、神の国の王として神の民を支配することを意味します。 そして、キリストの支配権には終わりがありません。「ヤコブの家」というのは、神の民の別の言い方です。イスラエルの先祖のヤコブからイスラエル１２部族が出ましたので、「ヤコブの家」という言い方で、神の民を表しますが、キリストは、神の民を永遠に治めるお方で、キリストの支配権には終わりがありません。 こうして、天使ガブリエルは、おとめマリアが身ごもって産む男の子は、単なる男の子ではなく、旧約時代から約束された救い主メシアであり、神の子であることを教えました。これは、本当に不思議なことで、人間の常識と理性をはるかに超える高度な真理です。このようなことは、神によって教えられなければわからないことです。わたしたちは、神から教えられた素晴らしいこの真理を柔らかな心で受け入れ、祝福を豊かに受けたいと思います。 ２．マリアはどのような方法で生むのかを尋ねました さて、マリアはどうしたでしょう。すると、自分はこれから身ごもって、神の子にして救い主である男の子を産むということを、天使ガブリエルが自分に伝えていることはわかりました。しかし、マリアはまだ結婚をしていませんで、男性を知らないおとめです。それなのに、どのような方法で、自分は身ごもって、神の子にして救い主である男の子を産むのかを尋ねました。 「どうして、そのようなことがありえましょうか。」とマリアは言っておりますが、これは、神の子にしてメシアである男の子が生まれることなどありえないと、自分から否定をしている言葉ではありません。また、そんなことはあり得ないでしょうと疑っている言葉でもありません｡マリアは、この表現で、自分から救い主の男の子が生まれる方法を尋ねているのです。すなわち、自分は、まだ結婚していないので、男性を知らないおとめです。それなのに、どのような方法で、自分が、神の子にして救い主である男の子をみごもって産むのですかと尋ねているのです。 こうして、マリアは、自分が神の子にして救い主メシアである男の子をみごもって産むということを告げられたとき、少しも疑わず、そのような驚くべきことが、どのような方法で自分に実現するのでしょうか教えてくださいと謙遜に方法を尋ねたのです。これは、マリアの素晴らしい信仰です。 そこで、天使ガブリエルも、マリアの問いにきちんと答え、マリアは、男性と交流することによって、身ごもり産むのではなく、神の霊の力、御霊の力、聖霊の力がマリアに豊かに働くことによって、身ごもり産むので、マリアから生まれる男の子は、罪のない聖なるお方、神の子であることを教えました。 「聖霊があなたに降り、いと高き方の力があなたを包む。」とありますが、この表現で、「聖霊」が、マリアに圧倒的に豊かに働くことを意味しています。「降り」というのは、神の霊の力、御霊の力、聖霊の力がマリアに臨むこと、働くことを意味します。「いと高き方」というのは先ほども出ましたが、神を表す別の言い方です。神は、天の高いところにいます偉大なお方なので、「いと高き方」と言われますが、「包む」という言葉は、もともと、覆う、スッポリ覆うという意味の言葉です。すなわち、「いと高き方の力」、すなわち、神の力といわれる聖霊が、マリアをスッポリ覆ってしまうという表現で、マリアが完全に聖霊の力ある豊かな働きの中に置かれることを意味しています。 ですから、マリアは、男性との交流なしに、神の霊、聖霊、御霊の圧倒的に豊かな働き、力によって、神の子にしてメシアである男の子を身ごもり産むことを意味しています。そして、聖霊の圧倒的に豊かな働きの中でマリアから生まれてくる男の子は、「聖なる者」、すなわち、罪が全くなく本当に聖いお方で、神の子なのです。それゆえに、わたしたち人類の罪を身代わりに背負って、父なる神から十字架上で身代わりに罰を受け、死ぬことにより、救いの道を開くことができるのです。 こうして、天使ガブリエルは、マリアが、神の子にして救い主である男の子を、人間の常識では考えられない方法、すなわち、聖霊の豊かな力と働きによって身ごもり産む、処女降誕の方法を教えました。 さて､では、マリアはどうしたでしょう。すると、マリアはへりくだり、信仰と従順を示し、神の御心が自分に成るように受け入れました。すなわち、マリアは、この重大なことを、だれにも相談することなく、天使が伝えた神の御心通りのことが自分の身に生じるように、その場で即答しました。これは、マリアのへりくだりと純粋な豊かな信仰を表します。 考えてみれば、これは大変なことです。マリアに突然天使が現れ、あなたは神の子にして救い主である男の子を身ごもり生むことになると言ったとのですが、だれが、これを信じるでしょうか。マリアの婚約音のヨセフにとってもこれはとても信じられません。しかし、この後、マリアのおなかは次第に大きくなっていきます。下手すれば、マリアは、ヨセフと婚約中にもかかわらず他の男性と関係したと疑われ、姦淫罪で捕らえられ、死罪を宣告され、石打ちにされる危険な事態に至るでしょう。 そういう危険をはらんでいたにもかかわらず、おとめマリアは、天使の言葉を神の御心として、だれにも相談することなく、その場で、直ちに、受け入れたのです。マリアは、これは大変なことになるから、２、３日ゆっくり考えさせくださいとか、身内の者たちとじっくり相談してから返事をしますというのではなく、自分が神の御業のため、はしためとして用いられることを、その場で直ちに受け入れたのですから、これは、とても純粋で豊かな信仰です。 「わたしは主のはしためです。お言葉どおり、この身に成りますように。」というマリアの言葉は、マリアのへりくだりと従順と信仰を表します。「はしため」というのは、もともと、主人に仕える女の僕を表しますが、マリアは、自分を主である神に仕える女の僕として表明し、天使の言葉通りのことが、神の御心として自分の身に生じることを従順に信仰により受け入れたことを意味しています。こうして、救い主メシアは、信仰深いととめマリアを通して生まれてくることになります。そして、これがクリスマスの本当の意味です。 結び 以上のようにして、わたしたちは、受胎告知の場面を見ますが、実は、わたしたち自身も、この真理を信仰をもって受け入れることが必要です。ああ、２千年前のマリアは信仰をもって受け入れたのかで終わることはできません。２１世紀のわたしたちも、マリアのように信仰をもって、神の子にして救い主メシアは、聖霊の働きにより、おとめマリアから生まれたという素晴らしい真理を、従順に受け入れ、祝福を受ける者にならなければなりません。もし、そんなことあるものかと言って否定したり、疑ったりするのであれば、本日聖書を通して学んだことが無意味になります。マリアが信仰によって受け入れたことを、聖書を通して学んだ人は、マリアと同じように、信仰によって、この素晴らしい真理を従順に受け入れ、マリアと同じように豊かな祝福を受けることが大切なのです。マリアがしたように、わたしたちも信仰と従順で応答して、神から救いと祝福と永遠の生命を受け、クリスマスのこのよき日に、救い主を遣わしてくださった天の神を感謝と喜びをもって賛美したいと思います。 解題 |