第７章
罪、悲惨、死は、その存在は誰によっても否定されることはできない事実であり、それゆえ、すべてに人間において、多かれ少なかれ、償いと赦しに目覚める必要がある。悲惨さの認識と同様に、救いの願望はすべての人間に共通している。多かれ少なかれ、彼らは、赦しは上から来るにちがいないことも意識さえもしている。「すべての人間は、神々を必要とする」（Ραντες
δε θεων χατεουσ’ άνθρωποι）。イスラエルの子らが苦難の日に主のもとに戻って、「立ち上がって、わたしたちを救ってくだい」と言ったように、エレミヤ２：２７、そのため、緊急性が人々と常に祈りに駆り立てる。「逆境は宗教を思い出させる」（Adversae
res admoment religionem）（リフィウス）。「悲惨な人々は、幸福よりも神々を崇拝する」（magis deos miseri
quam beati colunt）(セネカ)。しかし、悲惨が想像されるにつれ、切望されている救いも変化する。その悲惨な状況の中で、人が物理的な悪、災害や事故、病人や死のことだけを考えているとき、救いは苦痛からの救い以上のものではない。倫理的悪と物理的悪、罪と悲惨が互いに同一視されている限り、神と世界の区別は本来の意味を持ち得ない。異教徒たちにおいては、それゆえ、神聖さの感覚はますます失われていく。神は自然と混同され、その後、多くの特別な聖霊や神々に分けられ、それぞれが独自の分野で仕えられ、崇拝されるか、汎神論的に世界と同一視され、存在するすべての魂として考えられた。神御自身によって人間に好意をもってやがて確立された恵みの契約（een
verbond der genade）については、異教徒たちの間で議論されることはなく、異教徒たちと彼らの神との関係は自由な選択によるものではなく、双方にとって必然の問題である。彼らは、罪の性格を理解していなかったので、本来の意味での恵みを知らなかった。逆に、恵みの啓示が彼らに光を当てなかったために、不法の性格が彼らにとって謎のままだったのと同じである。このようにして、それらは希望と願いをもたらしが、しかし、すべての悪からの解放という確固たる確信にまでは至らなかった。「ホメロスは人間の性質を神々に帰したが、わたしは神々の性質を人間に帰すことをより好む」（humana
ad deos transfereba Homerus, divina mallem ad nos）（キケロ）。
しかし、聖書においては、神の恵みは、そのすべての豊かさと栄光においてわたしたちに出会う。特別啓示は、自然を超えて自由で、全能であり、また、独自の性格と意志を持っておられる存在としての神を再びわたしたちに認識させる。人間が彼に対して立つところのその関係は、彼がすべての被造物に対して置かれる関係と本質的に異なっている。したがって、罪は悲惨と区別される。それは物理的な性格を担わず、倫理的な性格を担う。それは、神の戒めの違反であり、彼のまじわりの切断である。それゆえ、まじわりは神の側からのみ可能であり、ある時点で再び接続される。恵みは最初の啓示の瞬間から契約のかたちを取り（de
genade neemt van het eerste oogenblik harer openbaring af den form aan
van een verbond）、契約は自然な過程からではなく、歴史的な行為から生じ、したって豊かな恵みの歴史を生み出す（daarom aan
eene rijk historie van genade het anzijn geeft）。
すでに堕落後すぐに恵みのこの契約は始まりを取った(Reeds terstond na den val neemt dit Verbond der
genade een anvang)。創世記２：１７のヘブライ語の「その日に」という表現があったとき、アダムとエバは罪を犯したその日に死んだのではなく、その後何年も生きていたため、威嚇された処罰は当時完全には実行されなかったことは、文字通リの意味で理解される。もし罪への完全な罰がすぐに実行されていたならば、そのとき最初の人間のカップルにおいて、人類全体を破壊し、地球を荒廃させ、宇宙を混沌または復帰不能に戻すのである。しかし、そのとき、サタンは勝利を決定づけ、神は敗北を喫したであろう。それゆえ、堕落後すぐに罪を抑制し、対抗し、征服する別の別の原理が働き始める(Daarom
treedt er terstond na den val een ander beginsel in werking）。罰がすぐに完全に適用されるのではなく、むしろ、罰は同時に祝福としても仕えさせるのである(die
straf doet tegelijk ook als een zeggen dienst)。神と堕落した人間との最初の出会いにおいて起こったところのことすべては、神の怒りの証拠であり、また同時に恵みの啓示なのである(bewijs
van zijn torn en tevens openbaring van zijne genade)。
アダムとエバが神の戒めに違反するや否や、彼らの目は開かれ、彼らは彼らが裸であることに気づいた、創世記３：７。蛇の約束はそこで果たされたが、しかし、その方法は、彼らが期待していたものとはまったく別の方法であった。彼らの目は開かれたが、しかし、彼らが行った悪を、また彼らが自分たちにもたらした罰を見るためであり、彼らは自分たちの裸を恥じるようになった。恥は、何か悪事や不適切なことをした後にわたしたちを襲う不快な感情であり、本質的には不興の恐怖から成る。今や、アダムとエバにおけるこの恥は、彼らの裸に直接関連し、また、彼らの裸を隠すため、いちじくの葉を縫い合わせることに彼らを追い込んだことは注目に値する。しかし、それは歴史的で倫理的な原因を持つ。恥は、動物にはなく、また、小さな子どもにもないが、でも正しいものと悪いもの、美しいものと醜いもの、善と悪の対立がわたしたちの意識に来るまでは起こらない。彼らの裸についての恥と神への恐れは、両方ともその起源を神の律法の違反に持ち、お互いのまじわりは神とのまじわりと同様に罪により壊れた。最初の人間のカップルにおいて、それは神の戒めの違反の結果として起こった。彼らの目は、自分たちが一瞬前にそうであったもの、そうする義務があったもの、そして今や実際に罪の結果としてそうなっているものに開かれた。彼らは最早お互いの存在に自由を感じなかった。彼らは、最早お互いの目を見つめる勇気がなかった。彼らは、自分たちの裸を意識するようになった。無邪気さは消え、罪の感情が自分たちの恥の感情に初めて現れたのである。アダムとエバにおける自分たちの裸についての恥の感情が倫理的な原因を持っていたという事実は、罪の感情が彼らの場合にさらに別のかたちで現れたことからも明らかである。それは、神の前での恐怖においてである（in
vreeze voor God）。彼らが主の声を聞いたとき、彼らは、主なる神の顔を避けて、園の木の間に隠れたのである、創世記３：８。彼らの違反の結果として、彼らはお互いの存在に不自由を感じたので、彼らは彼らの戒めを与えたお方とに対してはるかに恥ずかしかった。良心が彼らに目覚め、彼らは罪を犯したこと、そして、罰に値するという認識が生まれる。良心は彼らに平安を与えなかった。良心は彼らを神に駆り立てず、むしろ、遠ざけた。良心は、彼らを恐怖させ、彼の前から逃げ、隠れさせた。自分たちが裸である恥と神への恐怖は、両方とも神の律法違反に起源を見い出し、そして、両方とも彼らのお互いのまじわりと神とのまじわりが罪によって破壊された証拠なのである。
しかし、同時に、それらは人間が頑なにならなかったり、頑なになったり、人間は悪魔になったのではなく、むしろ、人間のままの留まったことをも示している。それは天使たちにもそうであり、彼らは堕落すると、同時に地獄に落ち、ユダ６、彼らは直ちに悪において頑なになり、贖われない。しかし、人間は、彼は堕落しても、しかし、再び確立できるように創造された。彼は贖いを受けられる。神は、人間の中にある罪の原理と力の完全な影響を留めている。さらに、神は堕落後も撤退せず、一瞬間たりとも人間を手放さない。違反後、直ちに罪の感情、恥、恐れが人間に目覚めたとき、そのときこのすべてがすでに人間における神の霊の働き（eene
werking van Gods Geest in mensch）、彼の怒りの啓示であるが、しかし、彼の恵みの啓示でもあり、なおも堕落後の人間におけるすべての宗教的、倫理的生活の基礎である啓示であった。しかし、神はなお他の方法においても自己を啓示した。人間が彼の前から隠れたとき、彼は人間を探し、人間を求めた。神は遠くからやって来るが、人間は恐れから隠れようとして、自分自身と神との距離をなおより遠くする。神と人間の間にまじわりはなく、むしろ、除去と分離がある。絆は破れた。しかし、神は人間に来て下さり、探してくださる。彼は最早人間を彼自身の愚かさと恐怖に放ってはおかない。神に対する赦しにおいて救いを求めさせる。しかし、彼は御自身の意志で人間を御自身に呼び戻すのである。そして、そうすることによって、彼は人間を驚かしたり、恐れさせたりしない。彼は、言わば遠くから来る。彼は嵐や雷において人間に来るのではなく、むしろ、רות
חיום、すなわち、夕涼みにおいて、夕方の厳かな木のざわめきにおいて来るのである。これによって彼らは神の声を知り、彼が近づいてくるのを認識した。その近づきは恵みであった。神は、人間に、我に返り、何を神に答えるかを考える時間を与える。
裁きと罰において、創世記３：９－１３からの神の恵みの啓示がさらにはっきり現れる。主は特にアダムを呼ぶ、というのは、この人が頭であり、責任ある人物だからである。神は、一度に裁きをくだすのではなく、調べ、尋問し、人間に答えるあらゆる機会を与える。人間がそれを利用し、すべての罪を否定せず、それでも神の前にへりくだって悔い改めず、言い訳をしようしても、そのとき神は怒らず、その言い訳をある程度許す。そして、それから、神は彼を裁き、彼はアダムへの尋問を始め、今や最初に蛇、次にエバ、その後アダムに罰が宣告される。そして、その罰において、憐れみが裁きに対して栄光をもたらす。罰は、創世記３：１４、１５、まず第一に普通の動物としての蛇に関し、そして、神は蛇を低くさせ、蛇と人間の間に敵意を置く。以前は動物は人間に従属していたが、今現在から両者の間に争いが起り、人間が勝利するが、しかし、動物たちから苦しみを受け、特に蛇から苦しみを受けることになるであろう。しかし、さらに、この罰蛇を通って、それが道具であった悪の力へと伝わる。悪の力と人間は契約を結んだのであり、それによって神との契約は破れた。神は寛大にもこの契約を無効とする。蛇の子孫と女の子孫の間に敵意を置き、女の子孫、すなわち、人間を再び、自分の側に引寄せ、エバからなお人類が生じ、人類が悪との戦いにおいて非常に苦しむが、しかし、最後には勝利するであろう。人類の前の道は今現在から苦しみか栄光へと行く、戦いを通して勝利へ、十字架を通して冠へと、謙卑の状態から高挙の状態へと行くのである。これが、神がここで天の御国の入り口を宣言するところの根本的な法なのである（Dit
is de grondwet,die God hier afkondigt voor den ingang in het koninkrijk
der hemelen）。
女への罰は、創世記３：１６、母としても女としても両方に関係する。彼女は女として多くの苦しみに耐えることになるであろう。まさに妻として彼女は多くの苦しみを受けるであろう。彼女が願っていた最高のことは、すなわち、母となることは、さまざまな苦しみ、夫への思慕と服従、苦しみを伴う出産以外にはないであろう。しかし、彼女は、そうして、そのとき彼女の最高の願いを獲得し、彼女の目標に達するであろう。彼女は、生けるものの母となるであろう。とはいえ、彼女は違反と夫以上の自己高揚によって死に価したが、彼女は子どもを産むことによって祝福されるであろう、テモテ一２：１５。男への罰は、創世記３：１７－１９、彼のせいで地は呪われたこと、額に汗してパンを食べることと労働の生活後、地に帰るであろうことにある。それとの関連で、その後、彼は楽園から追放され、広い世界へ送られる、創世記３：２２－２４。しかし、この罰は祝福でもある。労働には高貴さがある。労働は、人間を道徳的および肉体的な破滅から救い、彼の活力を刺激し、彼の活動を高める。たとえ、人間が楽園から追放されたとしても、地獄に送られていない。彼はこれを骨の折れる重労働を通して世界を従わせ、支配するために世界へ送られた。ここにすべての文化の始めと原理がある（Hierin
ligt de anvang en beginsel van alle cultuur）。人間の支配は、完全には失われておらず、むしろ、労働によって広げられる、詩編８編。堕落した人間においても、それに従って人間が創造された神のかたちはなお認識可能である。そう、たとえ、肉体的な死であっても、罰であると同時に祝福である。神は、罪が不滅にならないように死を設定した。それゆえ、堕落後、直ちに二重の原理が働き始めた。怒りと恵み、義と憐れみである。ここからもわたしたちが認識しているように、世界はすべて説明できる。これは笑い（γελασασα）涙（δακρυοεν）の混じった世界であり、十字架のしるしの中に存在し、堕落の直後にキリストに与えられ、救いと制服のための世界である。
このようにして神が罰を宣告した後で、アダムとエバは謙虚に頭を下げた。彼らはもう何も言うことがなく、手を口に当て、神の言葉を異論なく受け入れる。その言葉は信じられないほどに聞こえるが、その真実は遠い将来に初めて明らかになるが、彼らは、将来においては盲目で、神の言葉の光において見て、それを信じる（gelooven
zij het）。神の約束に頼って、アダムはk彼の妻をエバ、命、命の源、生けるものの母と呼んだ。堕落前に、彼は、彼女の中に、彼に助けを与える女を見た、そして、それゆえ、女と名付けた。しかし、今や、彼はまず最初に彼女に母を見て、彼女をエバと名付けた。彼らは死と滅びに価したが、しかし、神の祝福が女を多産とし、彼女の人間性から生まれる彼女の最も偉大な息子である人の子は、罪の邪悪な力をすべて克服するであろう。アダムは、神の約束に人類の再生、存在、発展、救いが保証されているのを見、そして、真に子どものような信仰で（met
een echt kiderlijk geloof）神の約束をそのようなものとして受け入れる。そして、この信仰は彼にとって義と見なされる（En
dit geloof werd hem gerekend tot rechtvaardigheid）。原則的に、創世記３章は、人類の歴史全体のすべて、失われた者の救いと罪への勝利に至る神のすべての道が含まれている。要するに、ここには全福音、恵みの契約の全体がある（Zakelijk
is hier het gansche Evamgelie,heel het verbond der genade aanwezig）。その後に起こるのは、今、すでに発芽的に植え付けられたものの発展なのである。
３４４：聖書における契約
しかし、創世記３章には契約という言葉は出て来ない。ノア、アブラハム、シナイでのイスラエルにおいて、最初に出て来る。近代の批評学は、イスラエルの宗教は起源的に他の諸民族のそれとは異なってはいないと、ここでも以前から言われていたことを意味する。ヤーウェとイスラエルの関係は、ケモシ（Kamos）とモアブ（Moab）の関係のようであった。ヤーウェと彼の民の間に存在していた契約の理念は、古いイスラエルとはまったく無縁であった。天と地の神としての神が、すべての多くの民の中からイスラエルを選び、御自身の所有とし、そして、御自身と契約を結んだということを、何も知らなかった。すべてこの考えは初めて非常に遅く生じた。アモスにおいてさえも、契約関係はまだ生じていない。ホセアは、人々はイスラエルの不忠実を契約違反にたとえることができることだけを語る、６：７。実は、初めて申命記において契約の書である（Erst
Deutronomium is in waarheid een bondboek）。それは、契約の方法で導入されて、受け入れられる、列王記下２３：３、参照 エレミヤ３４：８以下、エズラ１０：３、ネヘミヤ１０：１。しかし、今や、初めてそれが生じたとき、その契約は後とはまだなおまったく違って認識された。人々は、聖なる民であるために、また彼の律法を守るために、そのとき、特にヤーウェに対するイスラエルの義務の下に理解した。こうして、イスラエルは、その契約を守らなかったので、そのとき、契約は破られ、イスラエルは呪いが課せられた、申命記２７章と２８章。しかし、イスラエルは、その契約をヨシュア（Josia）の宗教改革において、形式的に受け入れたが固執せず、罰せられ、捕囚に送られた。そして、神の契約は神が与えた律法にあり、神は御自分がイスラエルに対して忠実に留まる義務を負っており、もしイスラエルが堕落しても、見捨てたのではないという考えが次第に生じた。神はイスラエルを罰することができたが、しかし、その契約は破棄されてはいない。イスラエルが捕囚から帰還し、彼らが契約のこの理念を固く守り、それを族長たちの歴史の中で、過去に戻したのである。
この考えにおいて真実なのは、契約が後になって、特にエレミヤ以降になるまで、契約の理念は後まで目立たなかったということである。しかし、これには理由があった。というのは、民の背教が決定的形態を取り、捕囚を必要とした後でのみ、神は永久に彼の民を捨てたのかどうかという疑問が実際的な意味を持った。これに対して、主はイスラエルと結んだ契約は、神の民の不忠実は神の忠実を無にしないと答えた。彼の好意によって結ばれた自由な契約は、次第にイスラエルの信仰によって堅固にされ、将来の希望の根拠となった、イザヤ５４：１０。イスラルが大切にしてきたあらゆる希望の中で、彼らは、神が恵みをもって御自分の民と結ばれた契約だけに依拠するように、ますます明らかになった。その契約はイスラエルのすべての人にその存続、メシアの出現、そしてその将来の神の国のあらゆる祝福を約束した。それゆえ、このメシアは、イザヤにおいては、民の契約の名称（naam
van verbond des volks）を得た。イザヤ４２：６、４９：８。というのは、彼はその契約を民のために守り、確立し、そして、新しい契約を立てる、エレミヤ３１：３１－３４、そして彼がもたらす祝福は契約の祝福(bondszegeningen)である、イザヤ５５：３、エレミヤ３３：２０、３１、詩編８９：２９。
しかし、そこからは、この契約は以前の時代においては知られていなかったということは、出て来ない。近代の批評学は、極めて恣意的に進めることによって、この意味を固持することができるだけである。というのは、モーセ五書のより古い部分に属する数多くの証言は、そのような契約を結ぶ。それで、たとえば、創世記１５：１８で、神はアブラハムと契約を結んだが、この言葉は、神がアブラハムの子孫にカナンの地を与えるという誓いの厳粛な名称に過ぎないと、十分な根拠もなく主張した。創世記２８：２１における言葉は、主がわたしの神となるであろうは、疑いもなく、契約関係の考え（de
gedachten aan eene bondverhouding）を目覚めさすが、しかし、それらは単なる添加物と見られる。出エジプト２１章から２３章は、２４：７で、契約の名称(naam
va vondboek)を担うが、それでもって確認された犠牲の血は契約の血（he bloed van het offer）と呼ばれる、２４：８、そして、出エジプト３４：２７においては契約の言葉(de
bondwoorden)が語られているが、しかし、批評家たちによれば、これらの言葉は、すべて申命記以前のものであり、また、後に理解されたものと同じように、モーセの時代のものではなく、契約理念を含まない。この方法で作業を進める批評主義は、それが事前に願っていたところ以外の別の結論を得ない。それは、主張された文書が真実でないことを根拠にして、宗教的表現の歴史を構築し、その後、その歴史を再構築し、それを証言する文書が真実でないことを示すのである。
そして、この恣意的な批判があっても、人々は望んでいるところには来ない。というのは、すべての預言者たちは、ヤーウェとイスラエルの民の間に特別な関係があるというその思いから出ているからである。アモスは、彼の預言をダマスコに対する罰の威嚇で始めている。その罪のゆえに、主は御自分の民のために行動するであろう、１：３－５、そして、彼はイスラエルを容赦しない。それは、まさに彼が地上のすべての部族を知っているからである、３：２。ホセアは、神と彼の民の関係を結婚として表わし、イスラエルによって破られた契約について語る、６：７、８：１。預言者たちは、新しい宗教の創立者たちではなく、契約の同じ根拠において民と共に立ち、悔い改めと回心を呼びかける。そして、イスラエルにその歴史を族長たちとシリアとエジプトの地に遡ることだけではなく、申命記２６：５、ホセア１２：１３、特にシナイの契約締結がイスラエルの宗教のすべての基礎となっていることに遡らせる。そのため、多くの人々が新しい批評学の原則を過剰に受け入れながらも、モーセの人物と作品の歴史的現実を維持する。
イスラエルにおける契約の意義の研究においては、しかしながら、主な疑問はそこで使われているברית（ベリース）という言葉がもともと契約を意味していたのか、それとも法規（inzetting
: statute）を意味していたのかである。デリッチ（Delitzsch）、ディルマン（Dillmann）、シュルツ（Schultz）、エーラー（Oehler）、ヴェルハウゼン（Welhausen）、グテ（Guthe）、ブレデンカンプ（Bredenkamp）、ケーニッヒ（König）、クレーマー（Cremer）のような人々は、最初のことを語り、それから第二の意義として契約条件（verbondsvoorwaarde）の意味を受け入れ、そして、それを法規（inzetting
: statute）の意味、律法(eene wet : law)の意味に移す。何故なら、律法は契約の道において法的有効性を得るからである。ホフマン(Hofmann)、ブル(Buhl)、フリードリッヒ・デリッチ(Friedrich
Delitzsch)、オレリィ(Orelli)、シュトラック(Strack)、ジークフリート(Siegfried)、シュタデ(Stade)、ノバック(Nowack)のような他の人々は、規則(bepaling
: regulation:)、法規(inzetting : statute)が最古の意味であり、これが次第に契約の意味に移行した。律法（de
wet）が相互の関係を支配したのである。聖書のデータは、これらの両方の感情の間に、唯一の確実性をもって語らせることをわたしたちに可能にしないし、またある意味から別の意味への歴史的変遷を示すため、古い起源と新しい起源を区別することなく、あるときにはこれの意味を、他のときにはあれの意味を考慮するのである。
היח（ベリース）という概念は、それゆえ、別のようにも定義される。派生の意味はほとんど役にたたない。ほとんどの人によれば、それは切る、ברה（バーラー）から来ていて、古い方法の習慣を示す。屠殺された動物の反対側の動物の間を通過することは、契約を破った者はこれらの動物と同じ運命が降りかかることを示している、そこから契約を切る（כרת
היח : カーラス ベリース、όρκια τεμνειν、foedus ferire）が由来した、参照 創世記１５：８以下、エレミヤ３４：１９以下。他の人々によれば、それは縛るを意味するアッシリア語の語幹から由来した。それはともかく、創世記２１：２２以下、２６：２６以下、３１：４４以下から、ברית（ベリース）には、３つのことが属していることがはっきり示されている。合意された条項を含む誓いあるいは約束、契約を破った者への神の罰が発せられる呪い、呪いを象徴した宗教儀式である。ברית（ベリース）の締結は、こうして常に宗教的行為である。その言葉は、最初は、人間の間の規定（bepaliing）と合意(verdragen)の世俗の領域において使用された。ずっと前に、神はノアとアブラハムと契約を結び、人々の間にはすでに契約が確立していた。そして、ノア、アブラハム、イスラエルが宗教を契約として理解し（religie
als een verbond）、大切にしているのであれば、それはこうあるにちがいない。それゆえ、その言葉は、まだなお創世記３：１５には出て来ない。罪深く欺瞞的な人間社会が何らかの財物を防衛したり、獲得したりするために、契約を必要とするようになって初めて、契約の意味と価値が認識され、宗教がこの観点から理解されるようになった。しかし、ברית（ベリース）という契約の言葉は、初めて人間の契約について使用されたが、それは常に宗教的な行為（altijd
eene religieuze handling）を示す。ברית（ベリース）における主なものは、それは契約(eene verbond)か法規（eene
inzetting : statute）を示すが、しかし、それは一般的に、神の守りの下に立てられた厳粛な儀式によってそのような約束(belofte)、一致(overkomst)、合意(verdrag)、契約(verbond)、規定(bepaling)、供与(beschikking
: grant)などを知らねばならない。
ברית（ベリース）が２者の契約を意味するのか、それとも一方的供与を意味するのかは、その言葉にもその概念の歴史的展開にも依存せず、むしろ、単純に関与している当事者たち（de
partijen）に依存する。二者のうち一方が従順で発言が少なくなればなるほど、契約は無意識のうちに一方が他方に課した供与（eene beschikking）の性格を帯びる。ברית（ベリース）は、制定、定め（חק）と同義語となる、出エジプト３４：１０、イザヤ５９：２１、エレミヤ３３：２０、３１：３６、３４：１３、そして、契約を結ぶ（כרת
ברית：カーラス ベリース）は、～と（עם：with）と～の間に（בין：between）とだけでなく、～のために（ל：for the benefit
of）と共に構成される、ヨシュア９：６、イザヤ５５：３、６１：８、エレミヤ３２：４０。征服者たちと被征服者たち、または王とその臣民たちと契約（רית ベリース）を結ぶと、臣民がそれによって果たさねばならない義務にすべての重点が置かれる、イザヤ９：１、サムエル上１１章、サムエル下５：３、列王上２０：３４、エゼキエル１７：１３。さらに供与(beschikking)と規定（inzetting）の意味が強くされる。比喩的には目との契約（רית ベリース）がある、ヨブ３１：１、石と動物との契約、ヨブ５：２２、４０：２８、死との契約、イザヤ２８：１５、神と自然との契約、創世記８：２２、エレミヤ３３：２０、２５、あるいは、動物との契約、創世記９：１２、ホセア２：１７－２２、イザヤ１１：６など。しかし、神と人間が契約を結ぶとき、自ずと一方的な性格（het
monopleurisch karakter）が前面に出る。当事者たちは同等ではなく、神が被造物を御自分の定めの下に置く主権者（de Souverein）である。神は、創世記１５：８以下において、アブラハムと契約を結ぶとき、それは協定（pactio）ではなく、誓い(sponsio)である。神は約束を与え、彼は自らをその実現に縛り、そして、犠牲のかけらの間を通過する。他のところで、神は自らに誓う、創世記２２：１６、彼の命にかけて、申命記３２：４０、彼の魂にかけて、アモス６：８、エレミヤ５１：１４、彼の聖定の不変性を人間に示すためである、ヘブライ６：１７。
契約の一方的な性格は、常に歴史において明らかにならねばならない。何故なら、神の契約は、それを結んだ者たちに義務を課すものだからである。すなわち、義務は契約に入る条件ではなく、契約は神の憐れみにおいてのみ結ばれ、依拠するが、しかし、恵みによって契約に受け入れられた者たちが、今後、歩むべき道だからである、創世記１７：１、２、出エジプト１９：５、６、８、２４：３、７、レビ紀２６：１４以下、申命記５：２９、２７：１０以下、２８：１以下、３０：１以下など。しかし、イスラエルが、神の契約をしばしば更新して受け入れる、出エジプト１９：８、２４：３、７、申命記２９：１０－１３、ヨシュア２４：１６、列王下２３：３、歴代誌下１５：１２、２３：１６、２９：１０、３４：３１、ネヘミヤ８章など。イスラエルは、契約の道を歩まず、あらゆる瞬間に契約を冒涜し、破った。こうして、恵みのこの契約は、それゆえ、堕落前のわざの契約と同様に不安定であるかどうかが問われた。そして、背教が増加するに連れ、この問いに、啓示は常により強く、より明白に答えを与えた。この契約は不安定ではなく、人間が不忠実であるが、神は彼の約束を忘れず、契約は彼の憐みにおいてのみ依拠する、レビ記２６：４０－４４、申命記４：３１、３０：１以下、３２：３６以下、志師記２：１、列王下１３：２３、詩編８１：８、１１、８９：１－５、１０５：８－１０、１０６：４５、１１１：５、イザヤ１：３、５：１３、エレミヤ１８：５－１０、エゼキエル３３：１０－１６、ホセア６：１－３、１１：７－９、１４：２－９、ヨエル２：１２－１４。神は契約を破ることができないし、また、破ろうとしない。彼は自発的に、自分の意志で、誓いによって拘束される。彼の御名、彼の栄誉、彼の本質はそれにかかっている、出エジプト３２章、３３章、申命記３２：２６、サムエル上１２：２２、イザヤ４８：８－１１、エレミヤ１４：７、２０、２１、エゼキエル２０：９、１４、２２、４３、４４、ヨエル２：１７－１９など。
恵みの契約のこの堅固さに宗教の栄光があり、それについてわたしたちはクリスチャンたちとして告白する。以前の場所ですでに示されたが、何故、真の宗教は契約の形を取らなければならないのか。宗教が、神と人間の真のまじわりであろうならば、その中において神だけでなく、人間も理性的で道徳的な本質として彼の独立性を維持し、彼の義務とともに権利を受け、神が人間のとろに降り、人間と契約を結ぶことが、この方法においてのみ生じることが可能である。神は、人間に永遠の救いを与えるために、人間の背教と不忠実にもかかわらず、その際に御自身に誓いを課す。人間は、それによって自分の側から戒められ、新しい従順への義務を課される。しかし、それは常にわたしたちが弱さから罪に陥ることがあっても、神の恵みを疑ったり、罪の中に留まったりしないためである。何故なら、わたしたちが神との永遠の恵みの契約を結んでいるからである。わたしたちの美徳と行いにではなく、恵みの契約は神の憐れみに揺るぎなく固くあるからである（Niet
in onze deugden en werken , maar in Gods ontefermingen ligt het verbond der
genade onwakelebaar vast）。
旧約聖書の預言者たちによって契約理念から導き出される不破性は、何故７０人訳における言葉が、συνθηκη（契約：covenant）でなく、διαθηκη（遺言：testament）によって訳されたかのかの理由である。ダイスマン（Daisemann）によれば、この最後の言葉は常に遺言（testament）の意味を持ち、決して契約(verbond)の意味を持たない。旧約聖書と新約聖書に関して、この言葉は十分な根拠が疑われるかもしれない。ヘブライ語において契約に出会うところの一方的で、神的な起源と性質は、何故、７０人訳がσυνθηκη（契約：covenant）以上にδιαθηκη（遺言：testament）を好んだかの十分な理由である。しかし、さらに、７０人訳の時代においては、遺言状の定め（e testamentaire
beschikking）の間には、ギリシャ・シリヤ的な法に従って規定されたものと、ローマ法に従ったものの間には顕著な違いがある。前者によれば、
διαθηκη（遺言：testament）は厳粛な行為であり、これにより権利と商品の取り消し不能な譲渡が行われた。そして、これは少なくとも部分的には即座に発効し、したがって遺言者の死亡（dood
van testamentmaker）とは無関係であった。それに対して、ローマ法によれば、遺言の定めの発効は遺言した者の死を待たねばならなかった。ギリシャ語のδιαθηκη（遺言：testament）は、それゆえ、ヘブライ語の訳として簡単に役に立った。というのは、神は彼の民との契約によって、地のすべての民以上の特権であった祝福と善きものを遺贈した。この意味が新約聖書に入った。それは、旧約聖書に比べると極めて稀に３３回しか生じないが、しかし、ヘブライ９：１５－１７では、間違いなく遺言（testament）の意味を持っているのは一箇所だけである。というのは、著者はローマ法をほのめかしており、それによると、遺言は遺言者の死後までは効力を持たないからである。ガラテヤ３：１７、１８においてはおそらく遺言（testament）の意味であろう。しかしながら、その発効はキリストの死によって関連させられていない。他のすべての場所において、旧約聖書においても同様に、著者たちの心に、定め（beschikking）と契約(verbond)のどちらが著者たちの心に浮かんだかを語ることは難しい。神がキリストにおいて立てた恵みの契約には両方の要素（beide
elementen）がある。それは最後になおわたしたちの公認オランダ語訳聖書（onze Statenvertalling）が、英訳（欽定訳聖書）同様に、イスラエルとの古い契約に関して言っているように、その言葉を契約（verbond）によって表明するのに役立っていることは顕著である、ルカ１：７２、使徒言行録３：２５、７：８、ローマ９：１１：２７、ガラテヤ、３：１５、１７、４：２４、エフェソ２：１２、ヘブライ９：４。また、遺言（testament）によって、新しい契約(het
nieuwe verbond)がキリストの教会との関係で考えられている、マタイ２６：２８、マルコ１４：２４、ルカ２２：２０、コリント一１１：２５、コロサイ３：６、コリント二３：６（１４）、ヘブライ１２：２４、１３：２０、最後の場合には、明白な理由により契約（verbond）という言葉が保持されている、ヘブライ７：２２、８：６以下、黙示録１１：１９。訳におけるこの違いには、契約(verbond)という概念は旧約聖書の時代により適合し、遺言(testament)の概念は新約聖書の時代により適合するという思想に基づいている（Aan
dit veschil in vertalling ligt e gedachte ten grondslag,dat het begrip
van verbond meer past op de bedeeling des Oudes,en dat ven testament meer
op des Nieuwen testament）。肉のイスラエルとの契約が破られた後で、それに代わって、神の選びによるすべての国民から集められ、御子による救いの善きものを遺言の定め(testamentaire
beschikking)として受ける霊的なイスラエルが出現し、神との子どもの関係に立ち、天上的な祝福を嗣業として期待するのである、ルカ２２：２９、ローマ８：１6、ガラテヤ３：１５－１７、ヘブライ９：１５－１７、ヨハネ一３：１、２、ペトロ一１：４。
３４５．キリスト教神学における契約
聖書からこの契約理念それ自身がキリスト教神学に入った。教会教父たちにおいて、特に彼らの注解書にそれはしばしば現れた。しかし、それに対する契約の教理は教義学的意味を得て、キリスト教宗教はイスラエルの宗教との関連で、また同時に違いとの関連で理解されねばならなかった。ここで、すでに使徒たちの時代から対立する２つの方向があった。ユダヤ教は、ほぼすべての教会がパウロの人と教えに反対し、モーセの律法の倫理的遵守、特に割礼の倫理的遵守を要求した、また異邦人の間のキリスト教徒も要求した、使徒言行録１５章、ローマ
１６：１７以下、コリント一７：１８、ガラテヤ５：３、６：１３、フィリピ１：１５以下、３：２以下、コロサイ２：１６、２１、テトス１：１０、１４、２：９、テモテ一１：７以下。ユダヤ人とキリスト教徒の間の断絶がなされた後、エルサレムは破壊された。キリスト教会はペレア（Pella）に逃げ、異邦人キリスト教会がエルサレムに１３５年に設立されたが、この教会のユダヤ主義的党派は、神についての教理においてユダヤ的となり、またキリストの神性を否定した分派（ナザレ人、エビオン派）へとますます変化していった。反対側にはグノーシス主義が立ち、すでに使徒の時代にその起源を持ったが（シモン・マグヌス、ケリントス）、しかし、特に２世紀と３世紀において、東方から西方へと広がり、マルキオンの人格において彼の鋭い攻撃を旧約聖書に向けた。神と物質の永遠的二元論から出発して、彼はこの２つの間の移行にあらゆるアエオン（allerlei
aeonen）が介在することを考え、そして、彼は世界の創造にはより低い神、デミウルゴス（demiurg）かユダヤ人の神を帰属させた。この神は最高で、真の神ではなく、より低い階級の神、律法、義、復讐の神であった。旧約聖書は、新約聖書よりも非常に低い、というのは、旧約聖書の神は嫉妬深く、復讐を求め、エジプト人からの盗み、カナン人たちの殺害などのあらゆる罪を命じる。彼は善きものではない律法を与え、また、欺瞞や噓などのあらゆる罪を犯したアブラハム、イサク、ヤコブ、ダビデなどの人々との契約に入った。それは、キリストでさえも十字架で打つユダヤ人の神である。キリストにおいては、まったく別の神、恵みと愛の神が自己を啓示したのである。それゆえ、律法主義的な的な立場の全体が終わったのである。クリスチャンたちは律法と旧約聖書からまったく自由なのである。これをすぐに正しく認識したのは、パウロだけである。彼は唯一の真の使徒である。
これらの両方の側に対して、キリスト教会と神学は、二重の任務を遂行することが求められる。それらはグノーシスに対しては統一性を、ユダヤ教に対しては２つの聖書の違いを維持しなければならない。この目的のために、古い契約と新しい契約（de
παλαια と καινη διαθκη）に関するパウロの教えを利用した、コリント二３章。ラテン語のtestamentumかinstrumentumという言葉が、最初に経済に適用され、次に聖書、旧約聖書と新約聖書に適用された。両方が起源と内容において一つである。神かロゴス（de
Logos）が両方の作者であり、どちらにも一つの信仰、一つの契約、救いへの一つの道が表現されている。違いは形態においてのみあり、また、そうでなければならない。というのは、神は一つであるが、しかし、人間は違い、そして、それえゆえ、育て方も違う。神は彼の恵みを継続的に常により豊かに、より十分に啓示してきた。旧約聖書の日々においては僕性（knechtschap）があったが、今は、自由性（vrijheid）がある。そのときはイメージ（beeld）、今は真理(waarheid)、そのときは夕暮れ、今は光、そのときは一つの国民への恵み、今はすべての国民への恵み、そのときは恐れ、今は愛、そのときは約束されたメシア、今は到来したメシアなどである。しかし、この違いは、本質的な統一性を損なうものではない。というのは、律法は特別にイスラエルに与えられ、そして、その頑なさのためにのみ与えられた。アモス５：１７、エレミヤ７：２１、エゼキエル２０：１９。さらに、それは典型的にキリストを指し、キリストのためイスラエルエを養い、したがってキリストにおいて、その終わりと目的に達した。
それゆえ、教父たちは繰り返し、律法と福音は区別されるべきであるが、しかし、分離できないと言った。「果実が種子から分離されるのと同じように、果実が種子から分離されるとき、福音は律法から分離されるが、福音は律法から生じる。一方は他方から生じるが、異質ではなく、異なるものであるが、対立するものではない。（Sicut
fructus separatur a semine, cum sit fructus ex semine,sic et Evngelium
separatur a lege, dum provehitur ex lege; aliud ab illa, sed non allenum,
sed non contrarium）（テルトゥリアヌス「マルキオン反駁」Ⅳ．１１）。旧約聖書にはより恐れが属し、新約聖書にはより愛が属すが、しかし、「旧約聖書には新約聖書が隠され、新約聖書においては旧約聖書が明らかにされる」（in
Vetere Testamento Novum latet, et in Novo Vetus patet）（アウグスチヌス「出エジプト記についての疑問」７３頁）。旧約聖書は新約聖書に先立ち、新約聖書を解釈する。旧約聖書は新約聖書を隠し、新約聖書は旧約聖書を明らかにする。違いは本質の事柄ではなく、時系列の事柄である（Vetus Testamentum Novum
praeoccupat et Novum interetatum est Vetus.Vetus Testamentum est occultatio
Novi, et Novum est revelatio Veteris．）。「違いは本質ではなく、時代の変化にある」（Ή διαϕορα ούκ
έστιν κατα την ούσιαν άλλα κατα την χρνων έναλλαγην）（スイケルス 契約（διαθκη）を見よ）。ヒエルルキー、司祭職、犠牲概念、福音の律法的理解、礼拝と芸術において、旧約聖書は教会に対して大きな力を獲得した。教会は、多くの点で旧約神権政治と強いユダヤ的要素を取っていた。しかしその際に、教会は、新しい時代において古い時代よりも高く挙げられた。スコラ神学とローマの神学において、両方の聖書の違いが示され、旧約聖書における約束(pomissa)は地上的（tempolalia）であり、そして、今は天上的(coelestia)である、そのときは戒律(praecepta)は外的規制(exterius
rgulantia)であり、今はより豊か(pleniora)であり、「手だけでなく、心も支配する」（non solum manum sed et
mentem regulantia）、礼典(sacrament)はそのとき比喩的(figuralia)であったが、今は恵み与える (garatiam
conferentia)(ロンバルデゥス「命題集」Ⅲ.区分 ４０、トマス「神学大全」Ⅲ．問６０．第６条．追加３、問６１．第４条．追加２．)。それとの関連において、旧約聖書の信者たちは直ちに天国に行かずに、族長霊域（limbus
patrum）に行き、そこで彼らはキリストによって初めて天国に移される。
宗教改革は、あらゆる種類の方向性が同時に出現するのを見、それらとの関係において、宗教改革はこの点に関してその立場を決めなければならなかった。ユダヤ教的な理念とグノーシス的な理念が中世において広がり、そして、１６世紀においてもその影響力を発揮した。再洗礼派（het
Anabaptisme）は急進的であり、宗教的・倫理的だけでなく、社会的、政治的な改革を望み、そして、聖書に訴えて、利息、一夫多妻制、財産共有制などの廃止を要求した。最初に旧約聖書と新約聖書のあらゆる規則の導入を要求した同じ自然と恵みの矛盾が、徐々に、聖書全体を内面的言葉（het
inwendige woord）の背後に導いた。聖書は死んだ文字（eene doode letter）であった。特に旧約聖書はすべての福音主義的内容を失った。イスラエルは豚の群れのように、一時的なものだけを食べていた。律法は、すべての価値と力をわたしたちの前に失っていた。ソシニウス主義（het
Socinianisme）は、その合理主義的原理によって同様の結果に来ていた。旧約聖書は新約聖書よりも非常に低くなった。それは、一夫多妻を教え、隣人愛を制限し、非常に多くの美徳を無視し、軽微な罪に対して厳しすぎる刑罰を課す。それは奴隷的な恐怖と地上の世の約束を知っているのみである。それは十分な義と赦しを知らない。それゆえ、それは廃止された。そして、キリストは新しい立法者（novus
legislator）として出現した。アルミニウス主義（het Arminianisme）は、そのように大きな声で話さないが、しかし、旧約聖書を一時的な善きものだけを約束する契約として理解する。ルターでさえも、旧約聖書と新約聖書は、しばしば律法と福音として対立させたが、しかし、後にはより慎重になり、旧約聖書にも豊かな福音が約束されていると教えた。なお、この理解はルター派の神学に影響を与えた。ルター派は、旧・新約聖書には、単に一人のメシア、一つの信仰、救いへの一つの道があるが、しかし、一つの聖書があると言うことを拒否する。testamentという言葉は、ルター派においては、それはシナイにおいてイスラエルと結ばれた律法主義的的な契約（wettische
verbond）を示す。そして、この意味において、それは新約聖書とは大きく異なり、新約聖書に反対し、新約聖書によって廃止される。旧約聖書には、わたしたちにも妥当するイスラエルに与えられた多くの約束があるが、しかし、イスラエルとの律法主義的的契約としての旧約聖書は恵みの契約ではない（geen
foedus gratiae）。アダムやアブラハムなどへの福音の約束は、恵みの契約（geen foedus gratiae）の名の下に要約されるかもしれないが、しかし、旧約聖書におけるこの恵みの契約（geen
foedus gratiae）は、そのとき、単に偶然にではなく（dan niet slechts in accidentia）、約束が成就と異なるように、影が本体と異なるように、本質的に(in
sibstantia)新約聖書と異なる。
契約の教理は改革派神学において最も豊かに展開した。契約神学は、ユペイ（Ypey）のように、コッケイス（Coccejus）に由来するのではなく、またヘッペ（Heppe）が表明したように、メランヒトン（Melanchton）において、その父を持つであろうドイツ改革派神学の特殊性に由来するのでもない。というのは、これらの感情が正しくないことは強力に明らかにされ、そして、今、すべての人によって認められているからである。契約の教理は、オレフィアヌス（Olevianus）、カルヴァン(Calvin)、ブリンガー(Bullinger)においてさえも初めて生じたのではなく、再洗礼派（de
Wederdoopers）に対して、旧約聖書と新約聖書の本質的統一性を主張したツヴィングリ(Zwingli)にすでに原理において見い出される。ツヴィングリからブリンガーとカルヴァンへと受け継がれ、そして、さらに、オレフィアヌス、ウルジヌス（Ursinus）、ゾーニス（Sohnis）、エグリン（Eglin）、ボクイナス（Boquinus）、ヒュペリウス（Hyperius）などのドイツ改革派神学に受け入れを見出した。英国の神学においては、ローロック（Rollock）、ホウィー（Howie）、カートライト（Cartwright）、プレストン（Preston）、ト－マス・ブレーク（Thomas
Blake）、パーキンス（Perkins）、アメシウス（Amesius）、ジョン・ボール（Jhon Ball）、ジェームス・アッシャー（James
Ussher）、デ ウエステム（de Westim）、信仰告白第７章(conf.c.7)、フランシス・ロバーツ（Fransis Roberts）、トーマス・ボストン（Thomas
Boston）など、オランダにおいては、スネカネス（Snecanus）、ユニス（Junis）、ゴモラス（Gomorasu）、トレルカテウス父子（Trelcatius
vade ren zoon）、ネルデヌス（Nerdenus）、ラベンスペルガー（Ravenssperger）などによって受け入れを見い出した。こうして、クロッペンブルク（Cloppemburug）とコッケイスよりもずっと前に、契約の教理は改革派神学において生まれたのであった。しかし、次第に後者の人たちが契約の理念を出発点とし、教義学全体の支配原理とし、それによって根本的変化をもたらした。
コッケイスに対する戦いは、誰もが認める契約の教理に直接関わるものではなかったが、エッセニウス（Essenius）とホールンベーク（Hoornbeek
１６５５年－１５６５９年）における安息日について、マレシウス（Maresius １６６２年）における２つの期間における教会の状態について、フォエチウス（Voetius）における旧約聖書における罪の赦し（παρεσις）についてであった。コッケイスに対して戦われたのは、彼の契約概念ではなく、彼の聖書神学と彼の歴史的な方法であった。哲学におけるデカルト（Cartesius）のように、コッケイスは神学においても、スコラ神学と伝統主義に反対して、聖書研究を勧め、そして、彼の教義学のタイトル通り、聖書に根拠づけられた神学の包括的概観（eene
summa theologiae ex Scripturis repetia）を望んだ。それを得るために、彼は彼の契約の教理の概観（Summa
doctrinae de foedere）において、神からではなく、彼の永遠の聖定から出発したが、しかし、彼は彼の立場を歴史と人間との神の契約に取った。彼の教義学は、こうして、救いの歴史（heilshistorie）となり、歴史的形態における聖書神学であり、それにより、聖書は原理と規範（niet
principium en norma）ではなく、対象と内容であった。その契約、つまり、彼は真の宗教について、その最初の始まりから現在に至るまで歴史的にたどった。そして、彼は、特にこの契約の発展と進捗を異なった連続した期間に（in
de verschillnede bedeelingen）おいて指摘した。したがって、改革派が言ったように、啓示の明白性、つまり、洞察力と意識の明晰さにおいて違いがあっただけではない。否、恵みの契約の異なった期間の下（onder
de verschillende bedeelingen van het genadeverbond）で客観的な祝福さえもが違っていたのである。旧約聖書における救いは、客観的に新約聖書においてよりも小さい。旧約聖書には、労働の休止において安息日があるが、イスラエルは、まだ真の永遠的な善きもの（vera
et permanentia bona）を持っておらず、希望の民であり、地上での長い人生に憧れているが、それでも死への恐怖を感じている。イスラエルは、十分な赦し（άφεσις）を持っておらず、見逃し（παρεσις）しか持っていなかった。義認は不完全である、動物犠牲は贖いをもたらすことができなかった。信者たちの慰めは、まだ弱く、彼らの良心はまだ休息していない。心の割礼が約束されたが、新約聖書においては与えられた。律法は天使たちによって管理された。たとえば、旧約聖書においては、すべてのものがあるが、しかし、型と影としてだけある。事柄それ自身のリアリテーは完全ではないにしても、少なくとも大部分が欠けている。主観的でなく、客観的にも、偶然的だけでなく、本質的にも（in
substatia）旧約聖書は、新約聖書とは別である。確かに、コッケイスが、ゆっくりと歴史的に次々と展開するわざの契約の廃止として、彼が恵みの契約を否定的に理解したとき、契約の教理全体を損なったのである。最後には、契約からは何も残らなかった。それは、一時的で、人間的で、常に変化する宗教の形に過ぎなかったのである。
コッケイスは、それをもって、疑いもなく、改革派神学の出発点と線を捨てた。これは、すぐに多くの人々によって感じられた。そして、それゆえ、多かれ少なかれ、反対された。しかし、それは、原理的な反対というよりは、下位のポイントへの攻撃であったコッケイス主義（Coccejanisme）は、契約における強いデカルト主義（het
Cartesianisme）と強く結びついて、常に受け入れられ、また、異なった教義に対する反対にまででなく、旧約聖書の降格にも寄与した。特に無意識的にであったが、。旧約聖書はなおまだ単に歴史的価値を持ち、教義学的に意味を持たないことを促進させた。この変化した教義的見地から、特にスピノザ（Spinoza）とＲ.シモン（R.Simon）以来、旧約聖書の歴史的批判がその時代に自然に生まれた。合理主義と超自然主義は旧約聖書の意義と価値についてほんの少しも持たなかった。カント（Kant）によれば、「ユダヤ教は単なる成分法の典型であり、これに基づいて国家法が制定され、道徳的な追加は本質的に本来のもではない」（was
het Jodendom slechts ein Inbegriff bloss statutaischer Gesetze,auf welchem
waren maar eine Staatsverfassung gegründet war; de moalische Zusätze waren
maar een aanhangsel en er niet wezenlijk aan eigen）。ユダヤ教は、教会であることを望まず、国家のみであり、そして、それゆえ、戒めの外面的認識のみを要求し、内面的な健康がない。キリスト教は、ユダヤ教から生じたのではなく、むしろ、ユダヤ教の十分な廃止である。シュライエルマッハー（Schleielmacher）においては、ユダヤ教はその特殊主義ゆえに呪物崇拝（het
feticisme）に近く、キリスト教とのその関係においては異教との関係と同じである。ヘ－ゲル（Hegel）は、ユダヤ教を「崇高な宗教」（de
Religion der Erhabenheid）として、なお美しさのギリシャの宗教と便宜主義のローマの宗教下に置いた。ファトケ（Vatke）とブルノ・バウアー（Bruno
Bauer）は、両者ともヘーゲルの弟子であるが、旧約聖の哲学的評価を聖書の歴史的批判によって確認することを求めた。前世紀の聖書批判は、世界観を変えなかったが、しかし、変化し世界観は、聖書の偉大な事実について非常に否定的な判断をしばしば求めた。したがって、旧約聖書批判において、グノーシス主義(Gnostieken)、再洗礼派(Anabaptisten)、ソシニウス派(Socinianen)、合理主義者（Rationalisten）によってかつて広められた見解がすべて今日戻ってきた。ヤーウェは、唯一の真の神ではなく、わたしたちの主イエス・キリストの父ではなく、イスラエルの民族神であり、もともとは太陽神であった。イスラエルの民は神によって選ばれたのではなく、古代には、あらゆる種類の多神教に移行したさまざまな部族の野蛮な大群であった。創造、堕落、罪の洪水、族長たち、志師たちなどの物語は、神話と民話であり、他の民族から借りたものである。律法は預言者たちよりもずっと低く、しばしば外面的で、感覚的で、幸福主義的性格を担っている。アブラハム、イサク、ヤコブ、また特にダビデのような旧約聖書の聖徒たちは、その名に値せず、まったく存在しなかったか、子孫によって理想化された。真の預言者たちと偽りの預言者たちの区別は、まったく主観的であった。キリスト教は、少なくともユダヤ教と同じくらい異教によって準備されてきた。
３４６．救いの契約（pactum salutis）
契約の教理は、教義学にとって、またしばしばキリスト教生活の実践にとって最も大きな意味を持つ。ローマとルタ－派以上に、改革派教会と神学はこれを理解した。聖書に基づいて、改革派教会と神学は、常に神と人間の間の契約としての旧・新約聖書の真の宗教を理解したが、これが、無罪の人間と結ばれたか（わざの契約・foedusu
operum）、ノアにおける被造物一般と結ばれたか（自然契約・foedus garatiae）、選びの民と結ばれたか（恵みの契約・foedus
graiae）。しかし、この中でも、改革派教会と神学は立ち止まらなかったが、やがてこれらの契約について、彼らは神の聖定に確実で永遠の基礎を求め、再びこの契約を人類の救いを意味するものとして、神である存在そのものの中で三つの位格の契約として受け入れた。「救いの契約、父の聖定、贖いの契約」（pactum
salutis, raad des vaders, verbond der verlossing）。この最後の契約はまもなく実現し、実際にはすでにオレビアヌス（Olevianus）、ユンニウス（Junius）、ゴモラス（Gomorus）、その他の人々に登場している。さらに、クロッペンブルク（Cloppenburg）とブルマン、（Burman）、ブラウン（Baoun）、ウイッチウス（Witsius）、フィトリンガ（Vitringa）、テレチヌス（Terretinus）、ライデッカー（Leydecker）、マストリヒト（Mastricht）、マルック（Marck）、モール（Moor）、ブラケル（Brakel）において、教義学に確実な場を得た。最後には、またデュルホフ（Deurhof）、ヴェッセリウス（Wesselius）との他の人々によって反対され、教義学から次第に完全に追放された。
改革派における救いの契約（pactum saltis）の教理の発展はスコラ学的狡猾さからまったく自由ではなかった。古典的個所、この教理のために引用されるゼカリヤ６：３は、何も証明せず、王と祭司を御自身において統一するメシアは御自身の民に平和を与え、推進するであろうことを言うだけである（カイル）。ヨブ１７：３，イザヤ３８：２４、詩編１１９：１１２から、彼らは実際に誰よりもメシアを待ち望んでおり、ヘブライ７：２２では、キリストは永遠に生きとおられるので、キリストが永遠の保証人であること確信していると皆が述べている。救いの契約（het
pactum saltis）の永遠性、新しい契約が永遠に続くとうことは、クレル（Crell）とリムボルフ（Limborch）が主張したように、救いの契約（het
pactum saltis）において永遠の保証人となったのは、神ではなく、キリストがわたしたちと共におられることであったと推測された。何故なら、真実なお方としての神には保証人は必要がないからである。しかし、コッケイス（Coccejus）とウイッチウス（Witsius）などが主張しようとしているように、神の前のわたしたちには保証人が必要であるからである。さらに、保証人（fidejusor）と誓約者（promissor）の区別は正しいものから取られ、問題は救いの契約におけるキリストが条件付きで旧約聖書の選民の罪を御自身に引き受けたか、それとも絶対的に引き受けたかを扱っており、前者はコッケイス（Coccejus）、ウィトチウス（Wittichius）、アリング（Alling）、ヴァン ティル（Van
Til）、ダウトライン（d’Outrein）、ペリゾニウス（Perizonius）その他の人々が語り、後者は、ライデッカー（Leydecker）、テレチヌス（Terretinus）、マストリヒト（Mastricht）、フォエチウス（Voetius）その他の人々によって教えられた。最後に、彼らは救いのこの契約が、コッケイス、ブルマン（Burman）、ハイデッガー（Heidegger）、シエレ（Schiere）が主張するように、より遺言的な性格（meer
het karakter droeg veb\n een testament）を担っているか、あるいは、ライデッカー、ベセリウス（Wesselius）と他の人々が主張するように、より契約の性格(van
een verbond)を担っているかを論じた。
救いの契約のこの教理は、欠陥のある形態にもかかわらず聖書的な考えに依拠している。仲保者として、御子が父に従属し、彼の神と呼ぶ、詩編：２２：２、ヨハネ：１７、彼は任務を課された僕である、イザヤ１０：１０、ヨハネ６：３８－４０、１０：１８、１２：４９、１４：３１、１７：４、そして、彼は報いを受ける、詩編２：８、イザヤ：１０、ヨハネ１７：４、１１，１７、２４、エフェソ１：２０以下、フィリピ２：９以下。なお、父と子の間のこの関係は、キリストの地上の滞在の間、最も明白であったが、受肉のときに初めて開始れたのではない。というのは、受肉それ自身は、御子に課されたみわざの遂行においてすでに含まれていたからであるが、しかし、永遠おいて生じ、そして、それゆえ、旧約聖書の時代の間中にもすでに存在していた。聖書がイスラエルの主導権を主の天使（Malak Jhvh）に帰するとき、聖書も明白にこの事実を証言する、出エジプト３：２以下、１３：２１、１４：１９、２３：２０－２３、３２：３４、３３：２、民数記２０：１６、イザヤ：８－９。そして、キリストも旧約聖書の時代にすでに公的に働いているものとして見ている、ヨハネ８：５６、コリント一１０：４、９、ペトロ一１：１１、３：１９。というのは、神と人間の間の仲保者も一人だけであり、ヨハネ：６、使徒言行録４：１２、テモテ一２：５、彼は昨日も今日も同じである、ヘブライ１３：８、彼は永遠から仲保者に選ばれた、イザヤ：１、４３：１０、マタイ１２：１８、ルカ：２６、使徒言行録２：２３、４：２８、ペトロ一１：２０、黙示録１３：８、ロゴス（Logos）としても永遠から存在していた、ヨハネ１：１、８：５８、ローマ８：３、コリント二８：９、ガラテヤ４：４、フィリピ２：６など。このすべての結果として、聖書は贖いのみわざの多面的で栄光的な表現をわたしたちに提供する。救いの契約（het
pactum saltis）は、契約の命、最高の自己意識の生命（een leven der hoogste zelfbewustheid）、最高の自由性の生命(een
leven der hoogste vrijheid)としての神の存在における三つの位格の関係性と生命(de verhouding va het
leven der drie Goddelijk personen)をわたしたちに知らせる。ここに、神の存在内において、契約はその十分なリアリテーを持つ。一方、神と人間の契約は両者の無限の距離ゆえに、常に多かれ少なかれ、主権的な供与、διαθηκη(grant)の性格を持つが、三つの位格の間には言葉の最も十分な意味おいて契約（συνθηκη：a
pact）である。最高の自由性（de hoogste vrijheid）と最も完全な合意(het vollkomenste overeenstemming)が一致する。救いのみわざは、そこにおいてすべてが協力し、そして各位格が特別な任務を果たす三つの位格の企てである。聖定において、また予定のそれにおいても、神の一つの意志が前景を占め、そして、彼らの三位一体の性格がまだ明らかではない。しかし、ここ救いの契約において、神の完全な輝きの中で、贖いのみわざが来るのである。人間の創造において、神は前もって意図的に協議するように、創世記１：２６、そのように、再創造のみわざにおいても、三つの位格の各々が御自身の区別される性格においてより明らかなのである（Zo
treedt bij herschepping jeder der drie personen nog duidelijker in zijne
onderscheiden karakter op）。再創造のみわざは、創造のそれのように、神だけのみわざである。すべてのものが神から、神により、神に向かうのである。だれが彼の相談相手であったろうか。だれがまず彼に与えて、その報いを受けるであろうか。救いの全体のみわざを考え、決定し、実行するのは、それは三位一体の神のみである。
しかしながら、救いのこの契約は、救いへの神の永遠的みわざと彼がその目的のために時間において行うことの間を結びつける。恵みの契約は、時間において啓示され、空中にかかっているのではなく、永遠的で不変の根拠に依拠する。それは三位一体の神の聖定と契約に固くあり、また、それによる失敗することなく続く適用と実行なのである。実際、時間において神によって結ばれた恵みの契約において、人間は積極的で行動的な主導者ではない。むしろ、再創造のみわざを計画した後で、再創造のみわざをもたらす再び三位一体の神なのである。神が最初にアブラハムとノアと またアブラハムとイスラエルと契約を結んだ、そして最後にキリストとだけ契約を結んだということは誤った認識である。恵みの契約は、三つの位格の永遠から救いの契約に準備ができていて、堕落後キリストによって実現されたのである。キリストは、受肉と共に、また受肉の後、初めてみわざを始めたのではなく、また、聖霊はペンテコステにおける彼の注ぎをもって初めて彼の働きを開始したのではない。しかし、創造が三位一体の神のみわざであるように、再創造も最初の瞬間から三つの位格のみわざなのである。堕落後、被造物に広がるすべての恵みは、父からキリストを通し、聖霊において被造物に来るのである。御子は、堕落後、仲保者として、最初の場を占めた第二の、また最後のアダムとして直ちに現れ、後者が受けるべきものと果たせなかったものを回復し、達成する。そして、聖霊は、慰め主（de
Trooster）として、キリストによって獲得された救いを適用するお方(de Toepasser)として直ちに行動する。生じるすべての変化、洞察と認識ににおけるすべての発展と進歩は、それゆえ、被造物の側に生じる。神には、変化とか回転の影もない。父は永遠に父であり、御子は永遠に仲保者であり、聖霊は永遠に慰め主である。それゆえ、旧約聖書も新約聖書と共に本質において（in
wezen en substance）一つと見られるべきである。というのは、神は彼の啓示を継続的に、歴史的に、そして、それを進展的により豊かに、より十分に伝え、それゆえ、人類は啓示の認識と所有と享受において前進するのであるが、神は同じであり、同じに留まる。太陽は次第に地球を照らすが、しかし、地球それ自身は同じに留まり、朝と夕、昼と夜がある。キリストは、歴史の真只中に、地球においてのみ彼のみわざを完成させ、また、聖霊はペンテコステに初めて注がれ、神は旧約聖書の時代においてすでに御子と霊によって獲得され、適用されるべき祝福を十分与えることができた。旧約時代の信者たちはわたしたちとは違う方法で救われたのではない。一つの信仰、一人の仲保者、救いへの一つの方法、一つの恵みの契約がある。
３４７：自然との契約
時間における救いの契約（het pactum saltis）の遂行においては、広い意味と狭い意味の恵みの契約の間に区別がある。救いの啓示に関する普遍的な考えは、時間におけるイスラエルと新約聖書の教会への恵みの契約を直ちに議論するときには、本来の意味に来ない。つまり、聖書は直ちにアダムからアブラハムには来ない。聖書は、全体としての人類を捨ててはいないが、しかし、アブラハムまでの時間へはその展開を大まかに描いている。人類からアブラハムとイスラエルが選ばれたように、人類との絆は切られてはいない。イスラエルは、諸国民の海に、油の一滴のように、浮き上がってはおらず、それらの諸国民とあらゆる絆で結ばれ、そして、最後に諸国民のための期待を固く保持している。時満ちて、ユダヤ人と異邦人が一人の人において購われた。全体としての人類は十字架の周囲に集まる。そして、教会は、人類から選ばれ、人類と最も密接に結びついている。自然と恩恵、創造と再創造は、聖書が置く方法でお互いに関係しているにちがいない。そして、それは注目に値する。堕落後、神の口からアダムとエバに出た恵みの最初の約束はまったく普遍的で、全人類に関する。以前に示されたように、創世記３章におおいて罪について語られたすべての罰は、同時に神の恵みの啓示として認められる。そして、その恵みは何の制限なしに全人類に広がっている。一般恩恵と特別恩恵が一つのチャンネルにおいて流れる。違反後、神が蛇に、女に、男に宣告した罰においては、怒りの言葉よりもなお憐れみの言葉である。それは罰であり、同時に約束である。それは、「恵み深い喜びに満ちた罰である」（zij
is eine genädige fröhliche Strafe）(ルター)。それゆえ、その中に、全体としての人類の継続的な存在、拡大と発展、闘争と勝利の起源と保証がある。宗教と道徳性、礼拝と文化がそこでそれらの初めを持つ。アダムからノアの長い期間において、彼らのすべてが神の一般恩恵と特別恩恵の影響下に展開するのである。神による創造において異なった被造物に置かれた原初の力が破れはしたが、堕落後も長く働くのである。
特にこのことは力において表明され、洪水前の人々の強さと驚くほど長い寿命、創世記５：５以下、そして、洪水後に初めて抑制された自然要素の劇的により強力な働きに現れている、創世記８：２２。聖書のこの歴史は、伝承によって確認されている。金、銀、銅、鉄の時代は、人類の緩やかな衰退を物語る国々のこと、また地質学によれば、この時代には地球全体に温暖の気候が広がった別の時代があったとされていて、季節はまだ定まらず、火と水は現在よりもはるかに大きな役割を果たしていた。新生代から中生代への移行は、多くの重要な変化が生じた、海底の水面上への集中的な上昇による本土の広大な延長、アルプス山脈、ピレーネ山脈、カルパチア山脈、ヒマラヤ山脈、コルディレラ山脈、その他のような山脈の形成、気候の著しい変化、大きな前歴史的な動物や植物の消滅など。このすべてと関連して、アダムからノアまでの期間における人間のより大きな力と長寿はまったくあり得ないことではない。より簡素な生活様式、それほど激しくない労働、より少ない悪性疾患、堕落前の状態の後遺症は、この事実に対する十分な説明を提供する。今日でさえも、例外によって、１２０年から１５０年の生涯が起こる。物理的な必然性は考えられない。人間の生命力を７０年か８０年で枯渇しなければならないのか。宗教も堕落後、生き残り、犠牲における固定した形態を獲得した。創世記４：３、祈りと説教（gebed
en prediking）、創世記４：２６、文化は農業、牧畜、町の建設をもって開始した、創世記４：７。芸術と学問が開発された、創世記４：２０以下。
人類の歴史におけるこの最初の期間は、すぐに最も恐ろしい邪悪さによって特徴づけられた。最善のものの腐敗は最悪なものである（corruptio
optimi pessima）。並外れた力と賜物は罪の奉仕に乱用された。この期間は兄姉殺しをもって導入された。カイン人たちは、自分たちをセム人たちから分離して、地の支配に身を献げ、創世記４：２０以下、彼らの強さを剣に求めた、創世記４：２４。しかし、セト人たちとカイン人たちが入り交じったとき、邪悪は頂点に達し、地には邪悪が多種多様に存在し、彼らの心の思いの想像は常に悪いことばかりを心に思い計った、創世記６：５。それは後には決してなかったような、また、人の子が戻ってくる将来においてのみあるであろう不義に満ちた期間であった、マタイ２４：３７。大洪水において、その後、第二の人類の起源となるノアの家族以外、この全世代が滅びた。洪水後は、洪水前とは本質的に異なった。アダムからノアまで、自然は、植物と動物の世界、人類は、この時代の後とはまったく別の性格を担った。力強くまた豊かに賜物を与えられていたが、世界は、言わば、しばらくの間、自己自身に委ねられていた。しかし、もし神が力強く介入しなければ、世界は自己自身の邪悪さにおいて滅びるであろうことが、すぐに明らかになった。それゆえ、ノアから別の期間が始まる。堕落後すぐに啓示された恵みは悪の抑制において今やより強く生じたのである。神は、彼のすべての被造物と契約を形式的に（formeel）結んだのである。ノアとのこの契約は、創世記８：２１、２２，９：１－１７、神の恵みに起源を持つ。それは恵みの契約（het
foedus gratiae）と最も密接に結びついていて、恵みの契約を担い、準備するが、しかし、それは恵みの契約と同一ではない。それは、むしろ、神によってすべての人間とすべての被造物と結ばれた忍耐の契約（een
foedus longanimitatis）である。それは、地への呪いが制限され、それは自然をチェックし、その破壊力を抑制する。水の恐ろしい暴力は抑制され、季節の規則的な交代が導入される。理不尽な自然の全体が、神の契約に固定される定めに服従する。そして、虹がしるしまた担保として雲に置かれる。
今や、人間が現れる、以前と比べると、はるかに穏やかで、力もより小さく、寿命もはるかに短い。増えることの祝福が明白に語られる、創世記９：１、人間の恐れと死がすべての動物に置かれる、２節、緑の植物と肉が人間に食べ物として与えられる、３節。人間の生命が殺人に対して死の刑罰の命令によって、また含意として、原則において、統治の制度によって守られる、５節、６節。そして、後に、人類は、バベルの塔の建設において、一つの場所に住み続け、そして世界帝国（een
wereldrijk）を開始する計画を立てるとき、神はその計画を挫折させ、国々へ、いろいろな言語へと拡散し、そして、その方法でも、悪の展開と拡大の向きを変える。それゆえ、神の恵みは、以前よりももっとはるかに力強く現れる。それに人類の存在と生命、国民の拡大と発展、次第に存在するようになる国家と社会は負っているのである。宗教と道徳は、最も堕落した国民の間においてもまったくは失われていなかった。また芸術と学問は、それは発展の高いレベルを達成していた。堕落後、罪深い人間においてさえも人生のすべての領域におけるなお善きものであることごとくのもの、市民的な正義の全構造は、神の一般恩恵の実（vruch
van Gods alegemeene genade）である。神は異邦人たちが彼ら自身の道を歩むことを許したが、使徒言行録１４：１６、しかし、神は彼らを去らせたのではないし、また、神は彼らに御自身を証していなかったのではなく、彼らの住むところを定め、彼の御手のみわざを通して御自身を啓示していた、使徒言行録１４：１６－１７、１７：２７、２８、ローマ１：１９、ヤコブ１：１７。ロゴス（het
Logos）は、すべての人を照らすために世に来たのである、ヨハネ１：９。聖霊は、異教徒においても、すべての生命、力、徳の作者である、創世記６：１７、７：１５、詩編３３：６、１０４：３０，１３９：２、ヨブ３２：８、コヘレト３：１９。この恵みによって、また自然契約の期間下にあって、人類はキリストの前に導かれ、また彼の到来に備えられるのである。実際、良い意味で、神による人類の教育を語ることができる。救いのための感受性と救いの必要性が呼び起こされるのである。
３４８．旧約聖書の救いの歴史における契約
本質的に異なった性格は、イスラエルにおける救いの準備であった。恵みの契約（het foedus gratiae）と自然の契約(het foedus
naturae)、イスラエルと地の諸国民の結びつきは、視界から失われてはならない。イスラエルは、諸国民から取られた。イスラエルは他の国民と違ってもいないし、より良くもなかった。頑なさと反抗心においては依然として、彼らを上回っており、恵みによってのみ選ばれた、申命記７：７、９：１３、３２：５以下、エレミヤ５：２３、エゼキエル１６：３以下、アモス９：７、マタイ１１：２１以下。イスラエルの宗教の特殊的なものは、他の宗教に見い出されないろいろな要素にあるのではない。逆に、類似が他のところで見い出されないものはイスラエルには何もない。割礼、犠牲、祈り、祭司制、神殿、祭壇、儀式、祭りの日々、道徳、習慣、政治的、社会的法律などは、他の国民においても生じる、そして、反対に、堕落後にのみ現れた制度、一夫多妻、奴隷制などがイスラエルにも見い出される。神現、預言、奇跡は、異教においてもそれらの類似と戯画（caricatuur）を持つ。これらすべてを明らかにすることが旧約聖書の学問の権利と義務である。
しかし、真近性と関連のために、本質的な違いが見過ごしにされてはならない。違いは、異教徒たちには知られていない恵み、特別な恵み（de gratia
specialis）にある。すべて異教徒の宗教は利己的で律法主義的である。それらは、破られたわざの契約の後遺症と腐敗である。人間は、清め、禁欲、悔い、犠牲、律法遵守、儀式などによって、彼ら自身の救いをもたらそうとする。しかしながら、このことは、イスラエルにおいては違っている。このことは、イスラエルに対して、主（ヤ－ウェ：Jhvh）が最初から天地の創造主（de
Schepper van heme en aarde: Elohim:エロヒーム）でもあったという事実から直ちに明らかである。近代の批評学によっては、旧約聖書の最も古い部分でさえも、明らかにこの信仰を語っている、創世記２：４、出エジプト２０：１１。イスアレルにおける神と世界の関係は、創造主と被造物の関係以外のものとは決して理解されていない。この一つの教義をもって、原則として、すべての異教が禁止される。それは真の純粋の宗教の基礎である。天地の創造主は、さらに、世界を保持し、支配し、また、イスラエルとの特別な契約に自由に恵み深く入る。イスラエルは諸国民から取られる。アブラハムはセツから出て、その系統において神の認識と奉仕が最も長く、最も純粋に保持される。アブラハムとの契約がアダムの時代から準備される。イスラエルの宗教は、人類の起源的な宗教の広い基礎において構築される。しかし、アブラハムとの契約は、再びまったく神からだけ出る新しい、より高度な啓示である。彼はこの契約において主導権を取る。彼はそれを固く立て、アブラハムを選ぶ。イサクの奇跡的な誕生によって、神はイスラエルの創造主および再創造主の両方（beide
Israëls Schepper en Herschepper）であることを示す。イスラエルの宗教において、神を求めるのは人間ではなく、人間を求めるのは神なのである。
父祖たちとのこの契約は続き、たとえ、その後のシナイで７イスラエルとの別の形を取ったとしてもである。それは、シナイ契約の基礎であり、核である、出エジプト２：２４、申命記７：８。約束は後から来た律法によっても無にされない、ガラテヤ３：１７。イスラエルとの契約は、本質的にアブラハム契約以外の何ものでもない。神が最初に御自身を自由に恵み深くアブラハムの盾と報いとして与えたように、彼の如何なる功績から離れて、彼と彼の子孫との神として、また、それを根拠にして、アブラハムを御自身の前の罪のない歩みと召し出したように、イスラエルを選んだのは神であり、イスラエルをエジプトから救い出し、御自身を民に結びつけ、そして、それを根拠にして、聖なる御自身の民とするため、イスラエルを義務づけるのである。シナイ山での契約は本質的に恵みの契約である、またそうであり続ける。「わたしは主、あなたの神、あなたをエジプトの国、奴隷の家から導き出した神である」（出エジプト２０：２）は、律法の冒頭陳実であり、基礎であり、恵みの契約の本質である。主はイスラエルの神である。主は、イスラエルのあらゆる尊厳を離れて、イスラエルの神であり、永遠のそうであり続ける。それは永遠の契約であり、イスラエルの側の罪と不義によってえさえも壊れることはあり得ない、申命記４：３１、３２：２６以下、志師記２：１、詩編８９：１－５、１０５：８、１１１：５、イザヤ５４：１０、ローマ１１：１－２：２、コリント二１：２０。
この契約においてイスラエルに与えられる祝福は、アブラハムに与えられたものと同じであるが、しかし、より詳しく、専門化されている。創世記３：１５は、すでに種子において契約全体と恵みの祝福を含んでいる。神はサタンとの最初の人間によって結ばれた契約を切断し、両者の間に敵意を置き、最初の人間を御自分の側に取り戻し、そして、敵の力に対する勝利を人間に約束する。アブラハムへの一つの大きな約束は、わたしは、あなたの神となり、が滞在しているこのカナンのすべての土地を、あなたとあなたの子孫はわたしの民となるである、創世記１７：８。そして、これが神とイスラエルとの契約の主要な内容でもある。神はイスラエルの神であり、イスラエルは神の彼の民である、出エジプト１９：６、２９：４６など。それゆえ、イスラエルは、カナンの地、結婚の実り、長生き、繁栄、さらに敵への勝利などの一時的な祝福だけでなく、彼らの間に神が住むこと、出エジプト２９：４５、レビ２６：１２、罪の赦し、出エジプト２０：６、３４：７、民数記１４：１８、申命記４：３１、詩編３２編、１０３編など、子であること、出エジプト４：２２、１９：５、６、２０：２、申命記１４：１、イザヤ６３：１６、アモス３：１、２など、聖化、出エジプト１９：６、レビ１１：４４、１９：２などの霊的で永遠的な祝福も、あらゆる祝福を受ける。しかしながら、すべてこれらの祝福は、新約聖書においてのように、旧約聖書においては明白にかつ明瞭に描かれてはいない。そのとき彼らはそれらの霊的性質は把握されていないし、理解されていない。自然的なものが最初であり、それから霊的なものである。すべての霊的で永遠的な祝福は、それゆえ、イスラエルにおいては感覚的な形態において着せられていた。罪の赦しは動物の犠牲に結びついている。イスラエルにおける神の居住はシオンに立てられた神殿において象徴される。イスラエルが子であることは、第一に神政政治的であり、神の民の表現は宗教的な意味だけでなく、国家的な意味をも持つ。聖化はレビ的な儀式的清潔さにおいて倫理的意味において象徴される。永遠の命も、イスラエル人の意識には、地上における長生きの形態において隠されている。赦しと聖化の祝福、再生と永遠の命は、それゆえ、旧約聖書の時代には客観的に存在しなかったと考えることは愚かであろう（Dwaas
ware het te meenen, dat daarom die weldaden van vergeving en heiligmaking,
van wedergeboorte en eeuwig leven ook objectief in den dagen des
Ouden Testament niet bestonden）。それらは、永遠に同じであるキリストによってそのときも与えられる（Zij werden
welt er dege ook toen geschonken door Christus,die eeuwig dezelfde is）。しかし、それらの祝福についての意識と享受は祖若聖書の時代のように、旧約聖書の時代においては長い間豊かではなかった。そして、この形態の意識が時間の経過とともに神の豊かな恵みに徐々に解除されるようにするために、この目的のために、恵みの契約はイスラエルの下ではこのような独自の象徴的な形を取ったのである。イスラエル下の宗教は犠牲、祭壇、神殿、祭司制、儀式などのすべての民族に生じる宗教形態と一致する。霊的で永遠的なものが、自然的で一時的な形態において着せられる。神御自身、エロヒーム（Elohim）、天地の創造主は、ヤーウェ（Jahve）、契約の神として、彼のすべての霊的祝福をもって御自身を人間に伝達するために、また彼の受肉、人類における彼の永久のまた永遠の居住のために準備するため、被造物のレベルまで降り、歴史に入り込み、人間の言語、感情、形を取る。わたしたちは、もし霊的なものが自然的な形態において最初に啓示しなければ、霊的なものに名をつける言葉すら持たないであろう。わたしたちは感覚的な被造物であり、霊的なものを類似的意外には明することができない。もし神が人間にならなければ、そのとき、彼の永遠的なものは、時間的なものにおいてわたしたちの手の届くところにもたらされなければ、もし神が人間にならなければ、そのとき、彼の思いはわたしたちの言語において、聖書において伝えられなかったであろう。神は永遠にわたしたちに知られず、そして、わたしたちは、常に彼について無言であらねばならない。
アブラハムは、神が御自身を彼に結びつけたとき、彼の前を歩く義務を負ったように、イスラエルも民として神の契約によって、新しい従順に戒められた。律法全体は、それは恵みの契約をシナイで奉仕のために取るが、イスラエルを契約の道を歩む民として促すためである。それは、アブラハムへの一つの言葉の説明にすぎない（Zij
is maar eene explicatie van het ëëne woord tot Abraham）。あなたはわたしに従って歩み、全き者となりなさい、そして、それゆえ、アブラハムに語られたこの言葉は、恵みの契約の否定でもなければ、わざの契約の確立でもない。したがって、モーセの律法は、恵みに対立するのではなく、かえってそれに仕え、そしてまたこうしてイスラエルの敬虔な人々によってしばしばそのように理解され称賛されたのである。しかし、恵みの契約から切り離され、それは実際、殺す文字、罪に定める務めとなる。旧約聖書の時代において、恵みの契約が律法をその奉仕に取り入れたのは、律法が罪の意識を起こさせるため、赦しの必要性を増すため、そして、神の啓示のより豊かな啓示の期待さえも再強化するためであった。パウロが特に恵みの契約の旧約聖書の期間を見たのは、その側からであった。そして、彼は、イスラエルは律法の配慮の下に置かれた未成年者として言い、キリストに連れて行かれねばならない、ローマ１０：４、ガラテヤ３：２３以下、４：１４以下、また、それとの関連においては、罪が増し加わり、義認のためには行いの無価値と信仰の必要性が見られるであろう、ローマ４：１５、５：２０、７：７以下、８：３、ガラテヤ３」：１９。それゆえ、律法は、恵みの契約の有従属し、それはわざの契約に変装できないし、また人間が自分自身の行いによって義認を得ることを意図しなかった。他方において、その目的は、時の満ちるにおいて、その奉仕に立ち、同じ恵みの契約のより高度でより善い期間のための基礎を置くことであった。シナイ契約の遵守と律法の要求を満たすことの不可能性は、恵みの契約の別のよち善い期間を必要とした。恵みの永遠的な契約は、イスラレルの下で取られた時間的なかたちの不完全性によって、より高度な啓示へと挑発される。恵みがもっと豊かになるために罪は増す。キリストは堕落後直ちに人間にならなかったし、また恵みはそのすべての豊かさにおいて自己を啓示しなかった。準備と育成が必要であった。「神が罪以前に人類の始めに受肉することはふさわしくなかった。というのは、薬は病人にのみ与えられるからである。また神が罪の後直ちに受肉することもふさわしくなかった。罪によって謙遜にされた人間が救出者を必要としていると、罪を犯した直後に認識することもふさわしくない。しかし、時が満ちたとき、それは永遠からである」（Non
decuit a principio humani geners ante peccatum Deum incarnat, cum non per
peccatum humilliatus recognosceret se liberatore indigereplentitude temportis
quod ab aeterno disposuit）（トマス「神学大全」Ⅲ．問１．第５条）。
新しい契約
それゆえ、キリストは真に時代の転換点であり、十字架は世界の歴史の中心である。最初に、すべてが十字架に導かれる。その後、すべてが十字架から導き出されるのである。時が満ちたとき、キリストは地上で彼のみわざを完成させる。恵みの契約はより高度な期間に入る。イスラエルの信者たちは、実際、シナイ期間は単に一時的であることを知り、それゆえ、新しい契約の日を憧れていた。イエスは、そのような仕方で旧約聖書を読んだ弟子たちとともに、その中に今や十分に明らかになった同じ祝福を持った同じ恵みの契約を見た。旧約聖書と新約聖書は、本質において、一つの契約であり、ルカ１：６８－７９、使徒言行録２：３９、３：２５。それらは一つの福音を持ち、ローマ１：２，ガラテヤ３：８、ヘブライ４：２、テモテ二３：１５、一人の仲保者、すなわち、旧約聖書の時代においても存在していたキリストであり、ヨハネ１：１、１４：８、５８、ローマ８：３，コリント二８：９、ガラテヤ４：４、フィリピ２：６など、仲保者の職務を果たし、ヨハネ８：５６、コリント一１０：４、ペトロ一１：１１，３：１９、ヘブライ１３：８、そして、すべての人のためかつすべての時代における唯一の仲保者、ヨハネ１４：６、使徒言行録４：１２、テモテ一２：５。それは、救いの方法としての一つ信仰を含む、マタイ１３：１７、使徒言行録１０：４３、１５：１１，ローマ４：１１、ガラテヤ３：６、７、ヘブライ１１章、同じ約束と神とのまじわりの祝福、コリント二６：１６、黙示録２１：３、赦し、義認、使徒言行録１０：４３，ローマ４：２２、そして、永遠の命、マタイ２２：３２、ガラテヤ３：１８、ヘブライ９：１５、１１：１０など。旧約聖書と新約聖書における信者たちが歩く道は同じであるが、彼らがそれによって歩く道の光は異なる。統一性とともに相違性がある。同じ恵みの契約としての異なった期間としての旧約聖書と新約聖書は、お互いに約束と実現として関係している、使徒言行録、１３：３２、ローマ１：２、影と本体として、コロサイ２：１７、殺す文字と生かす霊として、コリント二３：６以下、隷属と自由として、ローマ８：１５、ガラテヤ４：１以下、２２以下、コロサイ２：２０、へブライ１２：１８以下、特殊と普遍として、ヨハネ４：２１，使徒言行録１０：３５、１４：１６、ガラテヤ４：４、５、エフェソ２：１４、３：６。
それゆえ、新約聖書における新しいことは、一つの同じ恵みが古い日に啓示された恣意的ではないが、しかし、一時的で感覚的な国家形態の脱皮である。新しい期間は、洗礼ヨハネとイエスの誕生をもって、旧約聖書の約束の実現され始めるとき、すでにある意味において始まる。しかし、古い期間はなおキリストの死までは有効であった。イエス御自身は、イスラエル人であったし、すべての正しいことを実現し、そしてなお御自身をイスラエルの失われた羊に関心を寄せていた。しかし、彼の死において、垂れ幕は二つに裂け、マタイ２７：５１、遺言者自身が死に、ヘブライ９：１５－１７、新約聖書は彼の血において立てられた、マタイ２６：２８、わたしたちを不利に陥れていた証書を破棄し、コロサイ２：１４、隔ての壁を壊したなど、エフェソ２：１４。事実、古い期間は最早留まらず、法的にそれは廃止された。なおより善いことに、何も廃止されず、実は熟し、殻を突き破る。教会は、イスラエルの子宮における胎児のように、自分自身の独立した生命に生まれ、聖霊において、自身の内在的な生命原理を受ける。義の太陽が天においてその頂点に上り、すべての国民の上に輝く。律法と預言者は実現され、そして、彼らの目的であり目標であるキリストにおいて終わりと目的を彼らの到達点に達する。律法はモーセを通して与えられ、恵みとまことはイエス・キリストを通して与えられる、コロサイ２：１７、そのお方においてすべての約束と影であった本体が実現される。彼は真の預言者、祭司、王である、主の僕であり、真の贖いである、ローマ３：２５、真の犠牲である、エフェソ５：２、真の割礼である、コロサイ２：１１、真の過越祭、コリント一５：７、そして、それゆえ、彼の教会はアブラハムの真の子孫であり、真のイスラエルであり、真の神の民である、マタイ１：２１、ルカ１：１７、ローマ９：２５、２６、コリント二６：１６、１７、ガラテヤ３：２９、テトス２：１４、ヘブライ８：８－１０、ペトロ一２：９、黙示録２１：３、真の神の神殿、コリント一３：１６、コリント二６：１６、エフェソ２：２１、テサロニケ二２：４、ヘブライ８：２、５、真のシオンでありエルサレムである、ガラテヤ４：２６、ヘブライ１２：２２、その霊的な献げもの、真の宗教であり、ヨハネ４：２４、ローマ１２：１、フィリピ３：３、４：１８など。旧約聖書のものは新約聖書において何も失われておらず、ことごとくのものが実現され、成熟され、その十分な豊かさに到達し、そして、今や、一時的な殻から、永遠の芯を生み出すのである。イスラエルにおける真の神殿、犠牲、祭司制などがあったが、すべてこれらは今や消失したというのではない。否、むしろ、このすべてについて、イスラエルは影のみを所有していたが、今や、本体自身が現れたのである。わたしたちが見ているものは一時的であるが、しかし、目にみえないものが永遠的なのである。
３４９．自然の契約との関係
この恵みの契約（het foedus gratiae）は、異なった期間を通して新約聖書において今や十分に実現され、その啓示の最初の瞬間から、また今もなお常にすべての側から、神が被造物恩恵(de
gratia specialis)は、本質的に一般恩恵(de gratia communis)から区別されるが、それと最も密接に結びついている。結局、ノアとの契約は、区別の目的のために、自然契約（foedus
naturae）と呼ばれ、それは神の性質から流れ出るのではなく、また自然のものと一緒に与えられるのでもない。それも恵み。依拠し、神の忍耐から出て（uit
Godslankmoedigheid）、そして、すべての自然の祝福と神の一般的な善意から(uit Gods algemeene goedhaid)の祝福を与える。それは広い意味で恵みの契約である。さらに、御子から離れてではなく、特にロゴスと御霊によって、自然におけるすべての力と賜物を生まれ変わっていない人類に働かせるのは父である、ヨハネ１：４、５、９、１０、コロサイ１：１７、詩編１０４：３０、１３９：７。そして、すべての被造物と人間に住み、働くこのロゴスとこの御霊は同じであり、キリストおとびキリストの御霊として恵みの契約（het
foedus gratiae）に関連するすべての祝福の獲得者（verwerver）であり、適用者（topasser）である。このようにして、父、子、御霊は、自然契約において恵みの契約を準備し、言わば恵みの契約から自然契約にしばしば戻るのである。
それゆえ、恵みの契約の本質的なものは、父の特別な恵みから出て、その内容として恵み、ふさわしくない剥奪された祝福以外のものを持たないという事実にある。その程度において、それは堕落前に結ばれ、堕落によって破られたわざの契約と異なる。わざの契約は、確かに、神が導入する義務はなかった。それは、神のへりくだりの善意であり、そしてこうして一般的な意味おいて恵みもあり、それがこの契約を神が人間に与えることを促したのである。それゆえ、彼がそれを立て、そのすべての部分を決定した。それは、彼の規定であり、制度であった。しかし、わざの契約において、神は、従順の要求をもって人間に来て、彼は、もたらされる従順の道において、また従順の道の後に、天の祝福、永遠の命、神を見るとの祝福を約束した。わざの契約は、こうして、人間の自由意志を考慮し、それは部分的に人間に依拠し、それゆえ、揺れて不安定あった。それゆえ、事実、それは破られた、神によってではなく、人間によって。神は、律法を守る者は永遠の命を受けるいうルール守る。彼はそれを律法の中で言い、彼はそれを各人の良心おいて証し、彼はこの言葉をキリストおいて成就する。しかし、人間は、わざの契約を破った。今や、彼らは最早、それを守って命を獲得はできない。律法の行いによっては誰も義とされされて、できない。わざの契約と区別されて、また対照されて、神は、それゆえ、別のより善い契約を立てた。律法主義的でなく、福音的な契約（geen
wettisch,maar Evagelisch Verbond）である。しかし、神は、これを単に人間ある者と結んだではなく、神御自身の独り子、愛する子である人間イエス・キリストと結ばれたのである。そして、神の性質と属性を持つ彼において、この契約は揺るぎない基礎を持つ。それは最早破られることがあり得ない。それは、永遠の契約である。それは、人間の如何なる行いにも依拠せず、神の良しとすることだけに（allen
in het welbehagen Gods）、仲保者のみわざに、永遠に留まる聖霊に依拠する。それは、如何なる人間の条件に依存しない。それは、功績に基づく祝福を与えない。それは、人間の側の如何なる律法順守を期待しない。それは恵みから、恵みにより、恵みに至る（Het
uit en door en tot genade）。神御自身が唯一で永遠的であり、忠実で真実な存在であり、そのお方にそれは依拠し、そのお方がそれを樹立し、維持し、遂行し、そして完成する。恵みの契約はすぐれて神のみわざであり、彼のみわざのみであり、彼のみわざ全体である。
しかし、これは、恵みの契約の十分な内容をまだ十分明らかにしていない。恵みの契約は、わざの契約との違いにおいてだけでなく、関係性も明らかにされねばならない。わざの契約が破られた後、神は先行した契約とはまったく関係していない、また違った性格を持つ契約を直ちに考案しなかった。そんなことはあり得ない。というのは、神は不変であり、わざの契約において人間に課した要求は気まぐれや恣意的でなかった。神のかたち、律法、宗教はそれらの本質において一つの恵みだけであり得るし、恵み、性質、信仰は律法を無にすることはできないし、またしてはならない。そして、それはそうではない。恵みの契約は、コッケイスが教えたように、わざの契約の継続的な廃止であるが、しかし、その実現と回復は、恩恵は自然を修復し、完成する」（Gratia reparata
et perficit naturam）。神は、永遠の命は従順の道においてのみ得られ得るし、また、人が律法に違反するとき、用件は増加する、すなわち、その違反は罰によって償われなければならない。それゆえ、結局、神は人間に二重の要求を課す、なされた悪に対する刑罰の支払いとしての要求と神の律法への完全な従順である。償いと従順である（satifactio
en obendintia）。アイテンボガルト（Uytenbogaert）への手紙において、アルミニウス（Arminius）は、堕落前、人間は、実際、従順を義務づけられたが、堕落後は、罰を払うことだけを義務づけられた。何故なら、契約は今や破られ、人間の側は義務を免れたからである。しかし、わざの契約において、神の律法への従順は特別な形態に入れられ、特別な目的へと、すなわと、永遠の命の獲得へと向けられたが、それは、そのようなものとして、人間の性質に基礎づけられ、それゆえ、そこから決して解放され得ない義務になったのである。そうでなければ、彼らは、一つの違反によって、永遠に神のすべての戒めを守ることから自分自身を解放することができ、したがってすべての罪と罰から逃れることができる。聖書は、それゆえ、神の裁きを罪人たちへ宣告するだけでなく、申命記２７：２６、ガラテヤ３：１０、ローマ６：２３、ヘブライ１０：２７、堕落後も、永遠の命への道として、人類に、完全な従順の要求を維持している、レビ記１８：５、マタイ１９：７、ルカ１０：２８。
わざの契約と恵みの契約の間の違いは、それゆえ、後者において神は一つの要求ではなく二重の要求をし、またこの二重の要求をもってアダムにある人類に近づくのではなく、キリストにある人類に来るという事実にある。わざの契約と恵みの契約は、アダムはキリストによって交換され、置き換えられたことに主に異なる。ガラテヤ３：１６－１８において、パウロはアブラハムとの契約は後から来た律法によって無効にされず、実際に、キリストに関係し、そしてすべての約束を実現し、遺産を贈った。キリストに本来的に依拠することを述べている。彼は、さらにローマ５：１２－２１とコリント一１５：２２、４５－４９に戻りさえもしている。アダムから人間の罪と死が流れ出、キリストから義と命が流れ出る。キリストは、最初のアダムが損ない、残したものを回復する第二アダムであり、最後のアダムである。彼は、恵みの契約の仲保者、新しい人類の頭である。改革派神学は、その契約の教理において、聖書のこの考えを他のどの神学よりも正しく正当に評価した。この関連におけるその展開の経過は、簡潔にこれである。恵みの契約の教理は、最初、旧約聖書と新約聖書の本質的統一性を維持する目的のために生じた。それに応じて、堕落前の神と人間の間の関係が契約、特にわざの契約としてとして表明された。わざの契約と恵みの契約の間の類似と相違についての考察は、それゆえ、恵みの契約はそれがキリストと結ばれたかぎりにおいては、本質的にわざの契約であったという洞察に導かれた。しだって、恵みの契約においては、永遠の昔からキリストとの間で結ばれた契約（救いの契約：pactum
saltis、平和の契約:raad des vredes）と、その平和の契約の時間における執行として選民あるいは信者たちと結ばれた契約の間で、再び区別がなされなければならない。最後の点、平和の契約と恵みの契約の同一視は、英国において（in
England）、ローロック（Rolock）、プレストン（Preston）、ブレーク（Blake）、ウェステム（Westim）、大教理問答において、初めて展開され、その後、コムリー(Comrie)、ブラエ(Brahe)、その他の人たちによってイギリス人(de
Englischen)から引き継いだ。しかしながら、多くの改革派神学者たちは、この同一視に反対し、両者の違いを主張した。
実際、救いの契約（pactum saltis）と恵みの契約（foedus gratiae）の間には違いがある。前者においては、キリストは保証人（borg）であり、頭(hoofd)である。後者においては、彼は仲保者(middelaar)である。最初のものはキリストに制限され、彼から、彼が選民に代わって罰を担い、律法を満たすことを要求する。第二のものは、キリストに広げられ、またキリストを通し、彼らから信仰と悔い改めを要求し、キリストは彼らに代わって行わなかったし、また代わって行うことはできない。最初のものは、救いの獲得を実行し、永遠的であり、歴史を知らない。第二のものは、救いの適用を扱い、時間において始まり、異なった期間を持つ。しかし、この区別において、一貫性と統一性が見過ごされてはならない。聖書においては、単に二つの契約、人間のための天国への二つの道のみがあるだけである、わざの契約と恵みの契約である。わざの契約は、堕落していない人間のための天国への道であり、恵みの契約は堕落した人間のための天国への一である。わざの契約は、アダムにおいて人類と結ばれた。恵みの契約は、キリストにおいて人間と結ばれた。彼が、そして、彼だけが人類の身代わりであり、代表的頭である。それゆえ、恵みの契約は、アダム、ノア、アブラハム、イスラエル、そして他と結ばれたと、聖書において言われるとき、このことは、あたかも彼らが契約における本来的な当事者たちと頭を意味しているとは理解されてはならない。否、当時と現在、旧約聖書と新約聖書において、キリストが、恵みの契約における頭、鍵の当事者であり、またそうであり、彼の奉仕によって、恵みの契約は族長たちとイスラエルに来たのである。永遠から存在され、御自身を保証人とした彼が、堕落後、直ちに、預言者、祭司、王として、第二のアダムとして、頭として、堕落し人類の代表として行為したのである。アダム、ノア、アブラハム、ダビデなどの契約において、キリストは仲保者であり、彼は契約の執行の責任を取る保証人であり、それを御霊により人間の心に実現するのであり、それを罪人たちに仕えるのであり、その祝福を与えるのであり、彼御自身の者たちを契約に取り込むのである。最初から最後まで、契約全体が彼に委ねられている。彼においてのみ契約は堅固である。父が御国を彼のために定めたように、彼は御国を彼に与えられた者たちのために定める。彼は、彼が獲得した祝福を嗣業として配る。契約は、遺言として確かである。それは遺言の契約（een
foedus testamentarium）であり、契約的遺言(een testamentum foedrale)である。それは、比較的恣意的なものであり、救いの契約か平和の契約の二重性または統一性が提唱されるかどうかににかかわらず、原理には影響を与えない。もし、救いの契約において、キリストが一秒間たりとも彼自身の者たちとも離れて考えることがききないならば、また、恵みの契約が一秒たりとも彼の外にあると見なされることができないならば。両方の場合において、それは神秘的キリスト（de
Christus mysticus）である。第二のアダムとしてのキリストは、彼は行為する当事者である。アダム、アブラハム、ダビデなどは、型（typen）であり、原型（de
antitype）はキリストである。コリント一１５：４５以下で明らかなように、アダムが堕落前でさえもの型であるなるならば、恵みの契約は、最初にノアとアブラハムによって備えられたのではなく、またアダムとの恵みの契約によって初めて備えられたのでもなく、すでにわざの契約においてまたそれによって（in
en door het werkverbond）備えられたのである。神は、すべてのことを知っておられ、そして、わざの契約の違反をも御自身の聖定に含んでおられて、アダムの創造とわざの契約の設置において、すでにキリストと彼の恵みの契約を考慮したのである。
３５０：契約と選び
こうして、契約の教理は、驚くべき方法で、救いのみわざ全体におおいて、神の主権性を維持する。それは、キリストがアダムを超越する程度においてわざの契約を超越する。神の三重の存在が創造においてよりも再創造においてよりはっきり明らかになる。贖いのみわざを意図し、意志したのは父である。それを保証し、実際、獲得するのは御子である。それを執行し、適用するのは御霊である。そして、救いのみわざのその全体において、最初から最後まで、人間殻生じるものは何もない。それは完全にしてすべて神のみわざである。それは純粋な恵みであり、受けるに値しない救いである。しかし、むしろ、契約のこの教理は救いのみわざにおいて、そのように純粋で完全に神の主権性を維持するが、しかしながら、それは同時に人間の理性的で道徳的な性質が美しい方法で自分自身になることを許すことに注目することは、より重要である。わざの契約においては、この点はすでに詳しく説明された。しかし、恵みの契約においては、それはより印象的に来る。この点において、選び（de
verkiezing）とは最も大きな相違がある。選びが特殊であり、恵みの契約が普遍的であるということ、また前者は自由意志を否定し、後者はそれを教え、あるいは、前提し、また後者は前者が教えるところに戻るということは、この二つはそれほど違いはない。しかし、その二つは、選びにおいては人間は絶対的に受け身であるが、でも恵みの契約においては彼らも積極的に役割を果たすことにおいて、異なる。選びは、選民はすべて間違いなく救いを受けるとはっきりこう言う。恵みの契約は、これらの選民が彼らの目的地に達するであろう道を描く。恵みの契約は、それによって選びの流れが永遠に向かって流れる水路である。この契約におおいて、キリストは実際に彼の者たちの頭また代表として行為するが、しかし、彼は彼らを消し去ったり、否定したりしない。彼は彼らのために保証するが、しかし、彼ら自身も、彼の御霊に教えられ、できるようにされて、意識的、自発的にこの契約に同意するという方法においてそうするのである。恵みの契約は、キリストと結ばれたが、それにもかかわらず彼を通して彼自身の者たちに達し、彼らの命と魂を完全に受け入れて組み込むのである。救いの契約は、恵みの契約に拡大する（Het
pactum saltis breidt zich uit tot foedus gratiae）。恵みの契約の頭は、同時にその仲保者なのである。それゆえ、その交付と同時に、それは信仰と悔い改めの要求とともに来るのである、マルコ１：１５。最初の時代に、改革派神学者たちは、契約の条件（voorwaarden）を自由に語った。しかし、恵みの契約の性質がより深く洞察され、そして、カトリックの人たち、ルター派の人たち、レモンスタラントたちに対して防御されなければならなかったとき、多くの人たちはこれに反対し、この用語を避けたのである。
すなわち、本来的に、恵みの契約においては、福音においては、それは恵みの契約の宣教であり、要求や条件ではない。というのは、神は彼が要求するものを与えるからである。キリストは、再生、信仰、回心も含むすべてを橋遂げたが、しかし、それらをわたしたちの代わりに(in
plaats onza)生み出したわけではなく、わたしたちのために(voor ons)獲得してくださったのであり、そして、聖霊が彼らに適用するのである。しかしながら、キリストによる彼の奉仕において、恵みの契約はこれらの要求的で条件的な形式を取る。その目的は人間を彼らの理性的で道徳的な存在として認識させるため、堕落した人間であるが、なお神のかたちに造られたものとして彼らを扱うために、永遠の救いと永遠の滅びに関するこの最高の領域において、人間を責任があり、言い訳できないものとして保持するために、最後的には、彼らを意識的に自由に契約に入れて、罪との彼らの契約を破るためにである。恵みの契約は、それゆえ、一方的なものであり、それは神から出る。彼がそれを計画し、決定した。彼がそれを維持し、達成する。それは三位一体の神のみわざであり、三つの位格相互内において完全に完成される。しかし、それは、意識的に自発的に受け入れられ、神の力において人間によって守られて、両側的になるように定められている。これは、契約において明らかにまた美しく現れる神の意志であり、恵みのみわざが人間の意識に明白に反映し、人間の意志が強力なエネルギーへと昇華していく。恵みの契約は、人間を死なせず、人間を棒や石片として扱わない。むしろ、人間を彼のすべての能力と力とともに、霊魂と体において、時間と永遠に対して、全体的に受け入れる。それは人間を完全に包含し、彼の力を否定せず、むしろ、彼から無力を奪う。彼の意志を死なせず、むしろ、罪から自由にし、彼の意識を死なせず、むしろ、暗闇から解放する。それは全人を支配し、恵みによって新しくし、彼の霊魂と霊と体のすべてをもって彼を自由にし、自立させて、神を愛し、彼に献身させる。神の栄誉と栄光は、いかなる犠牲を払っても得られるものではなく、人間の利益のために、そして」すべての人間を再創造することによって得られるものである。人間の明瞭な意識の中で、彼の回復された自由はその勝利を祝うのである。
同時に、恵みの契約において、選びと違って、明らかにされる。なお別の考えがある。選びにおいては、特に神に知られた人々として現れる。彼らはキリストにおいて選ばれ、そして彼らは彼らの頭のキリストとともに有機体を構成する。しかし、これは、撰びにおいては明らかには現れないし、強く前面にも現れない。これは恵みの契約においては、まったく異なる。ここには、キリストはアダムの代替者（de
plaatsvervanger）として人類の第二の頭として現れる。ここに、キリストはアダム下の人類と結びついて、彼の教会とともに立つ。選びは、特に個人に注目する、それ自身によって、選民の各人が個人主義的に、飛躍の方法によって人類から取り出され、再生させられ、そして天に移される可能性を開くのである。しかし、恵みの契約は、選びはまったく別の方法で実現することを語る。それは、アダムがキリストに置き換えられたこと、最初のアダムにおいて堕落した人類が第二のアダムにおいて回復されたこと、数人の別々の個人が救われるのではなく、キリスト下の選民において人類のおよび世界の有機体自身が救われること、選民の人たちだけでなく、言わばキリストにおいて彼らが構成する有機体の構造が救われると、深く美しく言えるのである。それゆえ、恵みの契約は、個人から個人へと飛躍するのではなく、有機的に、歴史的に永続する。それは歴史を通り、異なって期間を持つ。それは、創造者かつ保持者（Schepper
en Onderhouder）である父によって、時代や時期に適応する。それは、単独の個人と結ばれるのではなく、常に彼の子孫たちとも結ばれる。それは世代から世代への契約である。それは、信者たちだけを抽象的に含むのではなく、歴史的に存在し、生きるものとして、具体的に含み、それゆえ、その人のものであるすべてを含む。それはその人を含む。その人だけでなく、その人を父や母として、親や子として、その人のものすべてとともに、その人の家族、お金、財産、影響力、力とともに、その人の職務や仕事とともに、その人の知性や心とともに、学問や芸術とともに、その人の社会や国家における生活とともに含むのである。恵みの契約は、キリストを頭とする新しい人類の組織化であり、創造の秩序と結びつき、また、そこに後退し、質的にかつ集中的にすべての被造物を取り入れるのである。
それゆえ、恵みの契約は一時的であることを自ら語る。この地上的で執行と期間において、内面的に不信仰で、霊的な祝福にあずかっていないそのような人々も自己に受け入れる。改革派神学者たちは、内面的契約と外面的契約の間に、契約と契約期間の間に、絶対的契約と条件的契約との間の区別にも目を向けた。数人は、さらに、彼らは二つの契約を受け入れ、一つは選ばれた真の信者たちとの契約、他は教会の誠実ではなく、外面的なメンバーであり、それによって後者のメンバーシップと主の晩餐へのアクセスを正当化しようとすることまでに行った。しかし、他の人たちは、これに反対した。恵みの契約は一つであり、その外面と内面は、この地上では決して一致しないが、相互に分離できないし、また分離されてはならず、相互に並び置かれる。確に、ぶどうの悪い枝があり、麦の中にもみ殻があり、大きな家には金の器が土の器とともにある、マタイ３：１２、１３：２９、ヨハネ１５：２ テモテ一２：２０。しかし、わたしたちには、二つを分ける権利や力はない。借り入れの日に、神御自身がこれを行う。愛の判断にしたがって、彼らが契約の道を歩む限り、彼らは同盟者として見みなされ、扱われる。彼らは契約の者ではないが、契約の中にありいつかそれに応じて裁かれるであろう。彼らは、この地上においては、あらゆる方法で選民に結びついている。そして選ばれた者たち自身も、アダム的な人類の成員であるゆえ、契約の道において、彼らの頭としてのキリストの下に一つに有機体として集められることができるだけなのである。
解説
「第８章 契約の祝福について 第４８節：救拯論」の全訳が終わったので、気がついたこと１６点を記す。まず第１点は、表題についてである。バーフィンク自身の表題は、「第８章 契約の祝福について 第４８節：救拯論」である、この第４８節以降は、キリストが獲得した救いを聖霊がわたしたちに適用して、わたしたちの救いとなる過程が詳しく豊かに述べられている。すなわち、聖霊のみわざとしての救拯論が詳しく述べられている。聖霊論については、カール・バルトが、今度、教義学を書くときには、聖霊論を中心に書きたいと言ったように、世界の神学界において聖霊論に関心が高まっているが、バーフィンクのこの聖霊論は近代の改革派神学における最高の聖霊論と言えるであろう。キリストが獲得してくださった救いが、聖霊の適用のみわざによってわたしたちのものとなる過程がとてもよくわかり心が喜びで溢れる。
第２点は、すべての民族は宗教において救いを求めることである。バーフィンクは、世界のすべての民族が宗教を持ち、宗教を通して救いを求めることを語る。その目的のために、それぞれの宗教がそれぞれの仕方で救いを約束するが、しかし、キリスト教以外のどの宗教も人間自身が何かの道徳的、宗教的善い行いをすることによって救いが与えられるという仕方であるので、救いは神の恵みの賜物ではなく、人間自身の自作自演によることを結論づける。何故そのようになるかと言えば、人間はしばしば自分を善人と考えるように、人間の罪についての理解が無いか、弱いからである。これでは、神の恵みによる救いの教えは成立しない。キリスト教だけが人間の罪を正しく知り、そして、救いは罪からの救いであり、罪からの救いは神の恵みであることを教える。
第３点は、聖書は、罪人である人間の救いは、人間自身によっては得られず、神の側の恵みの賜物として人間に与えられることを明白に語ることである。歴史的に見ていくと、エデンの園でアダムとエバが罪を犯したとき、創世記３：１５にあるように、彼らを誘惑した蛇との間に敵意を置いて、救いの原福音、母なる福音を与えたのは神御自身であった。アブラハムの子孫のイスラエル民族を御自身の民としたのも神であった。そして、民が正しく歩むために、出エジプト２０章にあるように、モーセの時代に律法を与えた。律法を守らない不信仰な人々も出てきたが、律法を守ることを無上の喜びとする人々も続いた。しかし、律法を守ることによって自分たちが義とされ救われることはできず、自分たちが義とされ、救われるのは神への信仰、神への信頼によってであることを知っていた。民は次第に不忠実となり、背教した。そのとき、預言者たちが出て、エゼキエル３６：２６にあるように、それでも神は民を捨てず、御名のために赦し、聖霊を注ぎ、肉の心を与え、心に律法を書きつけ、神の定めに歩ませることを預言した。そして、背教ゆえに、民はバビロン捕囚された。捕囚後、帰還した民は、エズラ、ネヘミヤにより、律法への従順を誓わせられた。その後、異邦人たちの下で苦しんむ民に間に、メシアの期待が高まったが、それはメシアによる罪の贖いと新しい契約を待ち望むものではなく、地上的メシア、政治的メシア、ダビデの再来的メシアの期待であった。
そして、民はダビデの再来的メシアを神が与えてくれるように、神の律法を厳格に守ることによって準備したので、律法主義が進み、イスラエルの子らはすべてにおいて律法を守ることが人間の功績とされ、また、ファリサイ派に見られるように、またマタイ１９：２０の金持ちの青年に見られるように、人間は全律法をすべて守り切ることができると考え、律法による自分の義を誇るようになった。それゆえ、人々には罪からの救いの喜び、慰め、平安がなく、生涯を通じて死の恐怖に捕らわれた。そんなときイエスが出現し、神の国、神の支配、神による救いが到来したことを語った。神の国はユダヤ人が想定したように政治的ではなく、霊的であり、ユダヤ人だけでなく、異邦人のためでもあり、将来的であるとともに現在的であり、神の国に入るのは、すなわち、救われるのは律法による義ではなく、マタイ５：２０にあるように、もっと勝った信仰による義であり、それは神の恵みの賜物であった。イエスは十字架の苦しみと死により代理贖罪をし、救いの道と開いた。また、死から復活し、死の力を打ち砕いた。
さらにイエスの十字架の死、復活、昇天の後、使徒たちの宣教において、これらはより詳細に検討され、イエスが語った神の国は、彼の謙卑の状態において、彼の苦しみと死によって獲得され、聖霊によって適用されることが明らかにされる。すなわち、天にお帰りになった高挙された主イエスは、今度は聖霊の適用のみわざによって、人々に救いを与える働きをされる。主イエスが語った神の国、救いは聖霊の適用のみわざによって人々の所有になるのである。コリント一１５：４５にあるように、主イエスは生かす霊として働くのである。
第４点は、聖霊が注がれたことについてである。キリストは昇天後、最初の活動として、使徒言行録２章にあるように、ペンテコステにおいて父と共に天から聖霊を注いだ。これは旧約時代の預言者ヨエルの預言の実現であった。聖霊は旧約時代から知られていたし、また洗礼ヨハネの母エリサベトと父ザカリアも聖霊に満たされて神を賛美していた。イエスの母マリアも「聖霊があなたに降り、いと高きお方の力があなたを包む」と語られていた。なお、使徒言行録１９：２で、エフェソの洗礼ヨハネの弟子たちが、「いいえ、聖霊があるかどうか、聞いたこともありません」と言っているが、それは聖霊の存在が彼らに知られていなかったという意味ではなく、聖霊の並外れた働きであるペンテコステの素晴らしい出来事について何も聞いていないと言いたかっただけであると、バーフィンクは理解している。また、洗礼ヨハネのキリスト証言において、ヨハネは「その方は、聖霊と火であなたたちに洗礼をお授けになる」の意味は聖霊の清め焼き尽くす火で洗礼を授けるという意味で、聖霊の清める働きと理解している。
使徒言行録１：８にあるように、聖霊を受けた教会は地の果てに至るまでまた再臨まで主イエス・キリストを証言する。聖霊はその注ぎ後、教会を永続的な住まいとしたのであり、聖霊が教会から離れることは決してない。また、バーフィンクは、ペンテコステにおいて聖霊が注がれたのは誰かに関しては様々な見解があるが「その数は１２０人ほど」と理解し、聖霊が今や「教会のすべてのメンバーに降り、今から彼らすべてに宿り、働く」と言っていて、１２使徒だけでなくもっと広かったと語る。また、初代教会には、聖霊の非日常的な働きとしての奇跡が伴った。それらは反対派を刺激し、憎しみと迫害に駆り立てたが、福音が神から出ていることを証しするのに必要であったことを、バーフィンクは語る。
さらに教会はキリストの体と言われ、頭のキリストと一つに結びついており、教会を建てるために聖霊の多種多様な賜物がいろいろな程度において与えられるが、最高の賜物は、コリント一13章にあるように愛である。愛がなければ無に等しい。また、ヨハネ３：５のニコデモに対して主イエスが言われたように、聖霊は罪人の心を再生し信仰を起こす。さらにローマ８章で言われているように、罪人を聖化する、御霊は聖化の御霊であり、信者の命と生活を新たにする。そして、またローマ８：１４－１７にあるように、聖霊は信者たちが神の子らであることを確信させるのである。
第５点は、聖霊による救いの適用のみわざが、歴史においてどのように扱われてきたかをバーフィンクが述べていることである。ユスチノス（１００年頃－１６５年）、アイレナイオス（１３０年頃－２２０年）、オリゲネス（１８５年頃－２２４年頃）などの弁証家たちにおいて、また、テルトゥリアヌス（１６０年？－２２０年）、キュプリアヌス（３世紀初頭－２５８年）、アンブロシウス（３４０年？－３９７年）、アウグスチヌス（３５４年－４３０年）のラテン教父たちにおいては、救いの適用の教理はほとんど発展しなかった。
ペラギウス（３５４年－４２０年/４４０年）においては、救いそのものの恵みであることが完全に否定された。すなわち、アダムの違反による全人間の堕落が否定され、各人は自由意志を持ち、自分の善行により救われるという自力救済を主張した。このペラギウスの考え方は、４１８年のカルタゴ会議で定罪されて誤りとされ拒否された。
ところが、その後、セミペラギウス主義が現れた。セミペラギウス主義は、人類はアダムの罪によって霊的に死んでいないが、しかし、病いになった。でも自由意志は失われておらず、弱くなったが、神の恵みと協力して霊的善を行って救いを得ることができると主張し、こうして神人協力説となった。そして、５２９年のカルタゴ会議で定罪され、誤りとされ、拒否されたが、しかし、ローマ・カトリック教会に入ってきて、ローマ・カトリック教会における救いの中心的な教理となった。彼らは「善を望むのはわたしたちであり、神はそれを成し遂げる」と言った。
アウグスチヌスは、ペラギウスに反対し、アダムの罪による人間の堕落、それゆえ、霊的善に対する人間の無能力、人間の意志は自由意志ではなく、罪の奴隷意志であること、それゆえ、救いの功績を徹底的に排除し、救いは無償の恩恵であり、永遠からの神の予定によることを主張した。バーフィンクは、アウグスチヌスの著作から多くの引用をしているが、３つだけ記す。選びの実、予定それ自身の効力、恩恵は、神の憐みによって与えられるのであって、功績によるのではない。それゆえ、それ自身が無償である。「もしそれらが無償でなければ、恩恵ではないであろう」。聖霊は、彼が望むままに吹く。「それは功績に従わず、むしろ、功績を生み出す」。恩恵はすべての功績に先行し、それは先行的、準備的、先行的、効果的恩恵であり、また「それは望まないものを望ませる」。こうして、アウグスチヌスは、救いのみわざは最初から最後まで客観的にも主観的にも神のみわざで恵み、恩恵であることを語った。
第６点は、ルターとルター派の救いの秩序についてである。ルターは自分の回心と救いの経験を通して、ローマ１：１７の「神の義」が、カトリックが言っていたような神の属性の義ではなく、神への信仰によって得られる信仰義認の意味での義であることを理解した。そして、マインツの大司教のテッテェルが免罪符を売り出したとき、闘いが始まった。免罪符購入により、自分への罰を免れるだけでなく、煉獄にいる血縁者や友人の期間を短くできるとの説教に、９５個条で抗議することによって宗教改革は開始した。ルターは、悔い改めには２つの部分があり、それは悔い改め、すなわち、律法によって起こされる罪についての認識と律法によって生み出された罪の悔い改め（狭い意味）、そしてキリストの福音における神の恵みへの信仰であると言った。つまり神は最初に律法の説教によって罪人の硬い心を砕く、それから福音の慰めに導くのである。こうして罪人が神の恵みを知ったとき、全生涯にわたる広い意味での真実な悔い改めの生涯が生まれる。そこで、ルターにおいては、律法による罪についての認識と律法によって生み出される罪の悔い改め（狭い意味）、福音における神の恵みへの信仰、悔い改めの実である善き行いが救いの秩序の３つの部分となった。また、ルターは、救いは神の絶対的予定から出発すること決して変えなかったが、しかし、予定論の乱用を防ぐため、福音を信じた人はすべて救われるという救いの一般的提供を強調するようになったことをバーフィンクは語る。ルターが予定による救いを確信していたことについては、わたしは彼の分厚い「奴隷意志論」を、大会の５０周年宣言「予定についての信仰の宣言」作成との関係で、一夏かけて読んだことによって知った。
なお救いの恩恵性については、ルター派の中でも違いがあった。すなわち、メランクトンは神人協力主義に傾いた。１５４３年板の彼の「神学総論」において、彼は人間の自由意志は「自分自身を恵みに適用する能力にある」と述べ、自由意志を認め、最早、無償で無条件の選びによる救いの告白の勇気がなかったことを、バーフィンクは語る。わたしはメランクトンの「神学総論」を翻訳本でもっていたが、ついぞ読むときを得なかった。いすれにしても、ルター派は、キリストのまじわりに信仰によって義認されて生きることで満足し、改革派のように、神の恵みを家族、学校、社会、国家、文化、芸術、学問などに力強く広げていく方向をもたなかった。そこで、バーフィンクは「ルター派の信者は、恵みの働きを永遠の選びと契約から生じることを理解することに失敗するように、彼はそれを自然、世界、人類と関係させることにも失敗する。彼は彼の信仰において祝福されているが、しかし、これを家族、学校、社会、国家に有効にしない。キリストのまじわりに生きることで彼に十分なのであり、彼は王としてのキリストの下で戦う促しを感じないのである」とも述べている。
ルターの著作については、わたしは、「キリスト者の自由」、「９５個条」、「聖書への序言」、「奴隷意志論」、「大教理問答」「小教理問答」、「農民戦争」を読んだ。
第７点は、改革派における救いの秩序についてである。改革派の救いの秩序はルター派とまったく異なる。ルター派の救いの秩序においては、悔い改め（狭い意味）、信仰、善き行いの３つの要素が特色である。すなわち、律法によって生み出される罪の悔い改め、キリストの福音における神の恵みへの信仰、悔い改めの実としての善き行いである。
しかし、バーフィンクは、ルター派と異なるカルヴァンの救いの教理について５つの特色を挙げる。第１は、救いは、キリストにおける選民として永遠から与えられ、恵みの契約に包含されている。第２に、再生、信仰、回心はキリストを頭とする恵みの契約に含まれている。第３に、カルヴァンは、ルター派と違って、悔い改めから信仰へではなく、信仰から悔い改めを語り、悔い改めの内容として自己を殺すことと新しく生きることの２つ部分を語った。第４に、悔い改めの内容として自己を殺すことと新しく生きることから、罪を心から憎み、離れることとともに、神を喜び、神の御心を積極的に行うことによって、倫理・道徳的生活の場が開くことを挙げている。ここにカルヴァンは新しい生活を正当に積極的に扱うことができ、ルター派とは異なったことを、バーフィンクは語る。換言すれば、ルター派においては、律法は罪の悔い改めを起こすという律法の第２効用で止まったが、改革派は律法が恵みによって救われた信者の感謝の生活の規範として、律法の第３効用に積極的に生かされるのである。
また、バーフィンクは、改革派の救いの秩序は、選民は福音を聞いてキリストを信仰して救われるが、信仰は他のことと切り離されてそれだけで独立しているのではなく、前提と含みがあり、選民は永遠の神の聖定においてキリストにあって選ばれ、すでにキリストと結ばれて神秘的結合をしており、また、恵みの契約において頭であるキリストと結びついている、それゆえ、選民は時間において、聖霊によって再生させられ、信仰を起こされてキリストを信じ、義認されて救われることを語る。なおカルヴァンにおいては、選びは信仰の後において扱われているが、しかし、キリストにおける永遠からの選びが前提されていると、バーフィンクは言う。
第８点は、メソジズムの出現とその世界的影響である。メソジズムは、英語で規則、規律の意味であり、メソジストとは、規則正しい生活を送る人、規律主義者、几帳面な人という意味で、周囲からつけられたあだ名であった。メソジズムは、英国のウエスレイ（１７０３年―１７９１年)とホイットフィールド(１７１４年―１７７１年)によって推進された。メソジズムは、眠っている教会を目覚めさせ、新しい生命で生かすことであった。その目的のために義、罪、裁き、滅びの説教によって、彼らの霊的に悲惨な状態について突然連れ行き、直ちにキリストに導かれ、自分たちの救いを確信させられる。そして、最後的に神の国の活動に仕え、伝道と慈善活動に献身し、新しい罪のない人生を送るよう強く奨励されるというものであった。バーフィンクは、「このメソジズムがプロテスタント教会に与えた影響は幾ら誇張しても誇張し尽されない。メソジズムは多くの大きな繁栄した教会や社会だけではなく、メソジズムはすべての教会へ侵入し、新しい時代の信仰生活の全体にもそのスタンプが押されている。英国とアメリカは言わば第二の宗教改革を経験し、それによってメソジズムがそのように特徴的に１６世紀の宗教改革と自身を区別するキリスト教の積極的で攻撃的な見解をメソジズムに負うのである」とメソジズムの世界的影響を語る。そして、メソジズムは、実際、名前だけのクリスチャンの間の伝道、日曜学校教育、聖書とトラクトの配布、路傍伝道、堕落した人々、無視された人々、囚人の間での働き、聾唖者たち、盲人たち、精神病者たちの世話などを積極的に行った。わたしは、メソジズム、またメソジストについては教会史で学んで知っていたが、また日本にもメソジスト教会があるのは知っていたが、バーフィンクが言うように世界の教会に大きな影響を与えたことまでは知らなかったので、正直驚いた。
第９点は、カント（１７２４年－１８０４年）が罪と悪についどのように考えたかである。すると、バーフィンクは次のように述べている。カントは人間が本質的に邪悪であり、悪への傾きがあり、根源的に悪であることを認めた。また、同時に、そのため人間には救いが必要であることも語り、人間に新しい創造、一種の誕生が必要と一貫して述べた。しかし、だからと言って、そこでカントはキリスト教による救いを求めたりはしない。ここでカントは、人間の自由意志について戻る。すなわち、人間の内にある道徳法則は、「汝、道徳的善を行うべし」と、定言的命法によって人間が道徳的善を行うことを無条件に求めてくるが、それはわたしたち人間が善を行う能力が残っていることを意味する。それゆえ、人間は自由意志によって道徳的善を行い、自分自身を再生でき、贖うこと、救うことができる。そして、その再生、再誕生は、突然起こり、それは一種の精神的革命、新しい創造、心の根本的変化、一瞬にして古いアダムを捨て去ること、新しい人を着ることと考えた。カントは、そのように考えた。しかし、だからと言って、キリスト教をすべて排除したかと言うと、そうではなく、人間は自分の意志の能力ですべてを行うが、しかし、上からの神の恵みを得て、神の恵みと協力して行うようにも勧めている。
わたしは、カントの「実践理性批判」、「判断力批判」、「永遠平和のために」、「美と崇高の感情に関する考察」、「人間の始原に関する考察」を若いときに読んだ。特に、「実践理性批判」において、宗教が実践理性の要請（Postulat）、すなわち、道徳の要請であるというところは、神学生のときドイツ語原書で読んだことを思い出す。すなわち、宗教は、人が自由意志で道徳的善を行えば、死後、来世で神の祝福と報いを受けられると約束するものとして機能し、役に立つことを意味している。道徳の補完としての宗教である。カントは「実践理性批判」の終わりの部分で、自分がつらつら考えてみて美しいと思うものが２つある。１つは夜空に輝く天の星であり、もう１つは我が内なる道徳法則であると言っているのを思い起こす。
ここで哲学について幾つかのことを述べておきたいと思う。わたしは、慶應の学生の文学部であった。そして文学部は2年生のとき１５の専攻に分かれる。すなわち、１年生に入学したとき、１年間、自分は何を先行するかをよく考えて、２年生のときに分かれるという制度であった。とてもよい制度と思う。それでわたしは、実は哲学を専攻したいという気持ちがあった。というのは、わたしは根本的なことを考えるのが好きであった。人間は何故存在するのか。人間の究極の幸せは何か。世界は何故存在するのかなどを考えるのが好きであった。しかし、哲学を専攻しても、その後ついていけるかどうかそのときは自信がなかったので、結局社会学を専攻し、卒業論文は、キリスト教と日本の社会との関係について書いた。すなわち、宗教社会学に関心を持った。ちなみに、ゼミは、宗教社会学者の宮家準（みやけひとし）教授のゼミの第一期生として入った。宮家教授は数冊の著作を書いたり、N.H.Kのテレビに出たりしたが、ゼミでの原典購読のテキストはハーバード大学のクラックホーン教授の「人間の鏡」（Mirro
for Man）というアメリカの原住民族のナバホー族の宗教と生活を扱ったテキストであった。今思うと学部の学生にとってはかなり高度なテキストであったと思う。なお、宮家教授はその後ハーバード大学で宗教の研究をした。ちなみに、個人的なことであるが、宮家教授はわたしの結婚式にも出席し、祝辞を述べてくださった。
ところで、わたしは哲学マニアとして哲学書を結構読んだ。プラトンの「ソクラテスの弁明」、「アリストテレスの「形而上学」、デカルトの「方法序説」、ヘーゲルの「精神現象学」、ヒュームの「人間悟性論」、フォイエルバッハ「キリスト教の本質」、キルケゴールの「不安の概念」、「死に至る病」、「哲学的断片」、ハイデッガーの「存在と時」、M.ブーバー「我と汝」、サルトルの「実存主義とは何か」、西田幾多郎の「善の研究」、波多野精一の「時と永遠」などを読んだ。
また、特にアリストテレスの「形而上学」には思い出がある。神学校の１年のとき、神港教会の長老であり、関西学院大学の教授で山中良知先生が神学校で哲学を教えてくれましたが、わたしはその講義が毎回とても楽しみであった。あるとき、山中先生がアリストテレスの「形而上学」の冒頭に「人間は本来知ることを欲する」と書いてあると話されたことを覚えていて、後のあるときわたしも「形而上学」を買って読んだ。確かに、冒頭にそう書いてあった。そして、その言葉は、最も聖書的な改革派神学を知れるとこまで徹底的に知りたいというわたしの気持ちを後押しする言葉となった。
また、デカルトについても思い出がある。オランダのベルクーワの「近代の不安と基督教信仰」（田中剛二訳：活水社）をあるとき読んだ。すると、ベルクーワは、近代の不安は、デカルトが「我思うゆえに我あり」と言って、それまでの神への信仰、神の啓示への信仰、神の言葉への信仰、聖書への信仰で自分の存在を基礎づけることを止めて、自分の自律理性の上に自己の存在を基礎付けることから始まったというのを読んで、なるほどと思った。罪によって壊れている理性の上に、人間の存在を基礎付けるなど到底できないことである。創造主なる神に、また神の言葉に人間存在が基礎付けられるときのみ、人間は確かさ、安定を得るのである。なお、フランスの実存主義哲学者のサルトルが１９６６年に来日し、慶應で講演をしたとき、わたしも聞いた。３年生であった。サルトルはキルケゴールのように神を信じる実存主義者でなく、無神論実存主義者で、キリスト教を排除した自由な実存を主張した。講演の内容は覚えていないが、かなり長い時間の講演であったと思う。がっちりとした体つきの人であった。ボーヴォワール女史と一緒だった。
第１０点は、宗教心理学の出現である。バーフィンクは、彼の時代のアメリカの宗教心理学者のG.スタンレイ・ホール（１８８４年－１９２４年）の１３００頁の大著「 思春期：その心理学と生理学、人類学、社会学、性犯罪、宗教、教育との関係」から引用しながら、彼の学説を紹介し、また宗教心理学の限界を語る。ちなみに、スタンレイは、近代の心理学の発展に大きく貢献した人物である。スタンレイは、アメリカのウイリアムズ大学を卒業し、その後ユニオン神学校に学んだ。その後、ハーバード大学の心理学者のウィリアム・ジェームの下でアメリカで最初の心理学の博士号（学位）を取得した。さらにドイツのに留学し、心理学者ウィリヘルム・ヴントに直接教えを受けた。帰国後、ジョンズ・ホプキンズ大学教授を経て、クラーク大学の初代総長に就任、１９２０年まで在職した。また１８９２年にはアメリカ心理学会を組織して初代会長に就任した。彼は、教育心理学、自動心理学、青年心理学、宗教心理学などの新しい研究領域を開拓し、また応用心理学の振興に力を尽くした。また、スタンレイは、クラーク大学の創立２０周年記念式典にドイツのジークムント・フロイトらの精神分析運動の主導者たちを招き、講演の機会を与えた。当時、ヨーロッパのアカデミズムからほとんど無視されていた精神分析が、アメリカにおいて社会的認知を得るきっかけとなった出来事である。このように、スタンレイ・ホールは、近代における心理学の発展に大きく貢献した人物である。なお牧師として１０週間働いたこともある。
では、スタンレイの宗教心理学の研究とはどのようなものであったか。すると、人間の生涯において宗教はどのように発達していくのかが語られている。幼児期・子供期、思春期、成人期における人の宗教経験が分析されている。幼児期においては、幼児・子供は聞いたことをすべて受け入れる。宗教は子供にとっては主に親、教会、聖書の権威によって課せられた規則や教理をそのまま受け入れる。青年期になると、人は思春期を迎え、体も精神も大きく発達する。精神、理性、意識的人格が目覚める。そして、女子は男子よりも早く１３歳と１６歳において、男子は１６歳か１８歳に、宗教的回心を経験する例が多い。成人期になると、人は社会の一員として自覚が出てきて、宗教的にも安定するという具合に、人の一生における宗教経験を分析した。スタンレイは、上記の著作以外にも「若者：その教育、連盟、衛生」、「 教育上の問題」を出版している。
バーフィンクは、スタンレイの研究を引用しながら語るが、宗教心理学の限界も指摘する。すなわち、宗教心理学の研究対象の人数が限定されているので、どれだけ普遍的妥当性があるか疑問である、スタンレイの語ることは宗教一般であって、特にキリスト教に限ったことではないこと、宗教心理学では思春期の回心はあくまでも人間の心理現象に過ぎないものと考察されるので、聖霊の働きという神の側の働きの考察がないことなどを挙げている。
わたしは、スタンレイの人の一生における宗教経験の分析をバーフィンクの紹介であるが、正直、とても興味をもって読んだ。特に、人の思春期とはどのようなものかということがよくわかった気がする。スタンレイは、思春期は「第二の誕生」述べて詳しく分析したがなるほどと思える。なお、この流れで、ハーバードのウィリアム・ジェームスの名前が出てきたが、わたしは若いとき、慶應で社会学を専攻し、特に宗教と社会の関係に大きな関心があったので、岩波文庫で出ていたウィリアム・ジェームスの「宗教経験の諸相」を読もうと思っていたが、ついぞ読めなかったことを思い出す。
第１１点は、キリストによる救いの獲得と聖霊による救いの獲得は密接不可分で分離できないが、しかし、区別して考察されるべきことについてである。キリストによる救いについて、２つの根本的誤りがある。それは律法主義の誤りと無律法主義の誤りである。前者の律法主義は、人間は律法が要求する行いを自力で完全に行うことによって救いを得ることができると考える。それゆえ、キリストによる贖いを必要としないか、あるいは、キリストの贖い必要性を縮小する。パラギウス主義やセミペラギウス主義、がそうであるが、敬虔主義、メソジストも、自分たちの信仰と従順に救いを依存させる程度において、律法主義であることを、バーフィンクは語る。
他方、後者の反律法主義は、キリストは人間の救いのためにすべてを成し遂げたので、人間にはなすべきことが何ひとつ残っていないと考える。そのため、十字架の死の後、昇天して、聖霊を地上に注いで、キリストの救いを人々に適用する聖霊の人格とみわざを無視するか、軽視する。バーフィンクは、グノーシス主義、スピノザ、ヘーゲルをこのグループに挙げている。すなわち、神は永遠から人間と和解している、すなわち、救われている。人間は、神から遠く離れていると感じ、神は人間を怒っており、贖いを要求していると思ってしまうが、それは正しくない理念である。そこで、贖い、すなわち、救いは、神が怒っていること、罰する義を求めているという妄想を捨てて、自分たちは神の子らであることを認めるという啓蒙にある。一般民衆はキリストの犠牲を信仰するだけで満足できるが、霊的な人々と哲学者は信仰によらず哲学的概念で理解すると言う。こうして、反律法主義も、キリストが獲得した救いを聖霊なる神が人々に適用するという経綸をまったく理解していないことを語る。
第１２点は、救いの秩序は三位一体論的に理解されるときだけ正しく理解されることについてである。救いの秩序とは「罪人がキリストによって獲得された恵みの恩恵を得る方法、順序、または道」のことである。すなわち、キリストは、遜卑の状態において十字架の苦しみと死によって救いを獲得したら、もうそれでなすべきことが終わったのではない。彼は復活し、昇天し、父の右に座し、今度は高挙の状態においてそこで聖霊を地上に遣わし、聖霊を通して救いを人々に適用し、救いを実際に現実に人々の所有とするみわざを行うのである。キリストは生かす御霊になったのである。それまで聖霊はキリストの御霊と呼ばれていなかったが、ペンテコステ以後、キリストの御霊と呼ばれて、キリストが獲得した救いのみわざを、聖霊が行うのである。すなわち、父に特に創造のみわざが帰され、子に特に贖い、救いが帰され、聖霊に特に救いの適用のみわざ帰されるのである。神は三位一体のただひとりの神であるが、しかし、父・子・聖霊の区別される位格があり、またそれぞれの位格に特に帰さられるみわざがある。こうして、この三位一体的方法で理解されるときだけ、救いの秩序が正しく理解されることをバーフィンクは語る。バーフィンクは言う。「三位一体論的告白の基礎においてのみ、キリスト教的、改革派的意味におおける救いの秩序に対する場所がある」と。
第１３点は、恩恵、恵みについてである。すなわち、救いは神の恩恵、神の恵みと言うが、では神の恩恵、神の恵みとはどのようなものか。すると、バーフィンクは、恩恵の多様な意味について語る。第１の意味は、神が被造物、特に人間に示す値しない愛顧を意味する。第２の意味は、神が被造物に与えたあらゆる種類の身体的および精神的な恩恵を意味する。第３の意味は、人間が魂と身体に与えられた優雅さや魅力を意味することを、バーフィンクは語るが、この救いの秩序の流れにおいては、第２の意味の恩恵について語られることを明示して、議論に入る。すなわち、福音の説教においてすべての人に提供されているが、実際には選ばれた人々にだけ与えられる救いの恵みについて議論を進める。
そして、バーフィンクは、救いの恵みについては、ローマ・カトリックと改革派の間には理解が根本的に異なることを明らかにする。すなわち、カトリックは、生まれつきのままの自然的人間は、救いをもたらすための善き行いをすることができない。そこで、洗礼を受けることで、超自然的付加的恩恵を受ける。そうすると、恩恵が道徳的にも、物理的にも働いて、救いに至る善行ができ、自然的人間は超自然的存在のレベルまで高められ、持ち上げられ、神の性質にあずかり、神を見、永遠の命を得ることができると考える。一言で言えば、神格化される恵みである。こうして、カトリックにおける恵みの特色は、自然の領域から超自然の領域に持ち上げ、高める恵みで、自然と超自然の対立で理解される恵みである。
それに対して、宗教改革は、恵みを自然と超自然の対立との関係ではなく、聖書に基づいて、人間を超自然に入れるものではなく、人間を罪から解放するものとして正しく理解した。恵みは自然に対立するのではなく、罪に対立するものと正しく捉えた。自然と超自然の物理的対立は罪と恩恵の倫理的対立に道を譲ったのである。そして、さらに恩恵の力は、罪人に神のかたちを回復させる力として働くが、同時に被造物全体を罪の力から贖い、再創造することにまで広く及ぶほど豊かな力であることをバーフィンクは述べる。
第１４点は、救いは、召命（狭い意味での再生、信仰、悔い改め）、義認、聖化、栄光化などいろいろな言葉で表されるが、しかし、それらの救いの秩序は本来キリストにおけるひとつの救いをいろいろな観点からの考察であることについてである。バーフィンクは、救いの秩序について６つのことを挙げている。1つ目は、救いの秩序は、すべて恵みの契約の祝福を扱う。２つ目は、救いの秩序は、恵みの契約の仲保者キリストが獲得した救いを、聖霊が罪人に適用するみわざを扱う。救いの獲得と適用は密接不可分であるが、しかし、分けて考察される。３つ目は、救いの獲得と適用を区別する方法だけが、聖霊の人格とみわざを正当に扱える。たとえば、バーフィンクと同時代のドイツのプロテスタント神学者のユリウス・カフタン（１８４８年－１９２６年）のように、義認と再生はキリストの十字架との死と復活において得られるというふうにキリストに結びつけて考えると、キリストの復活、昇天後、ペンテコステにおいて注がれて救いを罪人に適用する聖霊の人格とみわざが完全に脱落してしまう。４つ目は、聖霊は、救いの恵みをある秩序、救いの秩序において与える。たとえば、聖霊は、罪人が福音の説教を聞くとき、罪人の心に働いて心を再生させ、信仰を起こさせ、義認に結びつけて罪の赦しを得させ、さらに、聖化し、堅忍させて、終末に復活させて栄光化する。これらを逆転させて、再生の前に栄光化は来ないし、信仰の前に堅忍は来ない。聖霊は、救いが始まり完成していく過程とステップを取る。５つ目は、救いの祝福は幾つかのグループに分けて考えることができる。罪－わざの契約の違反－苦しみ－神はわたしたちを神とすべての被造物に対して正しい関係に回復した（罪の赦し、義認、良心を清めること、神の子らへの受け入れ、神との平和、キリスト教的自由など）－わたしたちを預言者として油を注ぐ。腐敗－神のかたちの喪失－律法の成就－わたしたちを神のかたちに新しくすること（広い意味における再生、更新、回復、聖化）－わたしたちを祭司として油を注ぐ。悲惨－腐敗の支配への服従－死に対する勝利－わたしたちを天上的嗣業において保持し、いつかすべての苦しみと死からわたしたちを贖い、永遠の救いにあずからせてくださること－わたしたちを王として油を注ぐ。６つ目は、今度は、救いの秩序は４つのグループに区別される。召命（狭い意味で再生、信仰、悔い改め）、義認、聖化、栄光化である。栄光化は終末論で扱われるが、召命、義認、聖化は救いの秩序の救拯論で扱われ、コリント一１：３０の御言葉「神によってあなたがたはキリスト・イエスに結ばれ、このキリストは、わたしたちにとって神の知恵となり、義と聖と贖いとなられたのです」に対応している。また、ローマ８：３０の御言葉「神はあらかじめ定められた者たちを召し出し、召し出した者たちに栄光をお与えになったのです」において、召命、義認、栄光化に対応している。
第１５点は、バーフィンクの釈義的なことに関してである。バーフィンクは、４３７の「再生：聖書の教え」において、ヨハネ３章のキリストとニコデモの対話において、５節の「だれでも水と霊にとによって生まれなければ、神の国に入ることはできない」を釈義し、解釈し、説明して、「５節の水において、イエスは、そのとき、洗礼を思っていたのではなく、彼はそれをもって上からの誕生の性質を描き、それは新しくすることと清めの性格を担う誕生である（それについて水がイメージである、参照
エゼキエル３６：２５； 参照 霊と火の結びつき、マタイ３：１１）、そして、新しい霊的な命の存在を与えたのである」と述べている。すなわち、キリストが「水と霊にとによって生まれなければ」というのは、通常、水は洗礼を、霊は聖霊を表していると釈義し、解釈され、説明されるが、そして、わたし自身もそのように「水と霊」を「洗礼と聖霊」と理解してきて、この解釈が当然の解釈であり当たり前と思っていたが、バーフィンクは異なって、水は「新しくすることと清めを意味し、「霊」は聖霊を意味すると理解している。わたしは、「水」をそのように理解する釈義、解釈、説明を初めて知った。そして、バーフィンクは、その根拠としてエゼキエル３６：２５の「わたしが清い水をお前たちの上に振りかけると、お前たちは清められる」を挙げている。そして、参照として、マタイ３：１１の「その方は、聖霊と火であなたたちに洗礼をお授けになる」を挙げている。すなわち、マタイ３：１１では、「聖霊と火」の結びつきで、「新しくされることと清められること」が意味されているように、「水と霊」の結びつきも「新しくされることと清められること」が意味されていると、バーフィンクは考える。どちらが正しいかを決めるのは難しいので、「水」については２つの解釈があることを知っておけばよいと思う。
第１６点は、改革派神学の歴史における救いの秩序、救拯論がどのように扱われてきたかである。すると、カルヴァンの「キリスト教綱要」（Institute
Christianae Religionis:１５５９年 最終版）においては、「第３篇：われわれはどのようにキリストの恵みを受けるか、そこからどのような実りがわれわれに生じるか、それにともなう効果は何か」において、聖霊の隠れた働き、信仰、悔い改め、キリスト教生活、信仰義認、そして、永遠の選びが扱われる。特色は、キリストが獲得された救いが聖霊の適用のみわざが、聖霊の隠れたみわざとして、救いの獲得と区別されていること、また永遠からの選びが救いの秩序、救拯論の最後で扱われていることである。すなわち、キリストによる救いの獲得と聖霊の適用のみわざが何故起こるのかと言えば、永遠において選ばれていたからと振り返る仕方で語られている。
ウェストミンスター信仰告白（Westminster Confession:１６４７年）では、第３章：神の永遠の聖定について（第３節から第７節で、永遠からの選び）、第１０章：有効召命について、第１１章：義認について、第１３章：子とすることにおいて、第１３章：聖化について、第１４章：救拯的信仰につて、第１６章：よきわざについて、第１７章：聖徒の堅忍について、第１６章：恵みと救いの確信について、である。特色は、救いの秩序、救拯論がカルヴァンよりも細かく扱われていること、聖定における選びが、救いの秩序、救拯論の先に置かれていて、聖定における選びが歴史と時間において、救いの秩序が実現していく仕方で語られている。
バーフィンクの「改革派教義学」（Gerformeerde Dogmateik:１８９５年－１９０１年：全４巻）においては、第２巻：第４章：神についての第３２章：神の聖定において永遠からの選びが、第３巻：契約の祝福についての第４８節：救いの秩序で救拯論が扱われる。特色は、ウェストミンスター信仰告白と同じで、聖定における選びが歴史と時間において、救いの秩序が実現していく仕方で語られていること、またタイトルが、契約の祝福についてというタイトルで語られていて、救いの秩序の祝福は、信仰義認によって罪の赦しを得るだけでなく、聖化、堅忍、栄光化などの祝福も包含するものであること、すなわち、恵みの契約のすべて、全部を包含する豊かなものであることを思わせる仕方で扱われている。
ベルコフの組織神学（Systematic Theology：１９３２年 初版：１９３８年：改定版）においては、第１部：神についての教理：神のみわざ：Ⅱ．予定、第４部：贖いのみわざの適用についての教理、Ⅱ．聖霊の働き一般、Ⅲ．一般恩恵、Ⅳ．神秘的結合、Ⅴ．召命一般と外的召命、Ⅵ．再生と有効召命、Ⅶ．回心、Ⅷ．信仰、Ⅸ．義認、Ⅹ．聖化、Ⅺ．聖徒の堅忍、第６部：終わりの事柄についての教理：Ⅴ．最終的状態、B．義人の最終的状態、である。特色は、一目してわかるように、非常に細かく区別されて救いの秩序が扱われている。特に、時間における救いの秩序の一番先に聖霊の働きによって罪人がキリストに結びつけられることが述べられ、それゆえにキリストが獲得した救いが聖霊の適用のみわざによって罪人の所有になっていくことが分かる仕方である。
G.C.ベルクーワの「教義学的研究」シリーズにおいては、ベルクーワは、一つ一つの教理を別個に扱う仕方で書いた。救いの秩序、救拯論に関係し、含まれる著作は、「信仰と義認」（１９４９年）、「信仰と聖化」（１９４９年）、「信仰と堅忍」（１９４９年）、「神の選び」（１９５５年）である。特色は、義認、聖化、堅忍はそれ自身で独立して客観的に存在するのではなく、常にいつでも信仰と結びつき、信仰によって受け入れられるものであること、また、義認、聖化、堅忍などの救いの秩序は、キリストによる広い意味での一つの救いをそれぞれの観点から見たものであることを強調した。
J.A.ハインスのアフリカーンスで書かれた「教義学」（Dogmateik：１９７８年）
においては、第３章：生ける神 ６．神の聖定、第１１章：聖霊の人格とみわざ ２．聖霊のみわざ ２．Ⅰ．宇宙論的みわざ ２．２．救拯論的みわざ ２．２．１．一般的賜物 ２．２．２．１．召命 ２．２．２．再生 ２．２．２．３．信仰 ２．２．２．４．義認 ２．２，２．５．回心 ２．２．２．７．堅忍、という流れで救いの秩序が扱われている。特色は、救いの秩序は聖霊の人格とみわざであることを明示していることである。
G.I.スパイクマンの英語で書かれた最も新しい改革派の立場の教義学である「宗教改革的神学－教義学を行うための新しい範例－」（Reformational
Theology－A New Paradigm for Doing Dogmatics: １９９１年）においては、第４部 キリストにおける神の道 第３章
Ⅲ．７．２．信仰の段階、Ⅲ．７．３．共同体における人として生きること、Ⅲ．７．４．巡礼、Ⅲ．７．４．１．再生、Ⅲ．７．４．２．義認：神との関係、Ⅲ．７．４．３．聖化：信仰を保つこと、Ⅲ．７．４．４．聖徒の堅忍、Ⅲ．７．５．「絶えず祈りなさい」、Ⅲ．７．６．キリストにある選び、という流れで救いの秩序が扱われている。特色は、信仰は救いの秩序の最初に来るだけでなく、信者の生涯の全体を通して行使され続けるものとして扱われている。そのため、信仰の次に、共同体（教会）における人として生きること、また天国を目指す旅人すなわち巡礼としての信仰の生涯が扱われる。また、永遠からの選びは、救いの秩序が終わった後で、それらが時間において生じたのは永遠からの選びがあったからでると思い返す仕方でカルヴァンと同じ仕方で論じられている。
Ｍ．スミスの英語で書かれた最も新しい改革派の立場の「組織神学」（Systematic Theology: １９９４年）においては、第１２章：予定、第２９章：救いの秩序、第３０章：召命と再生、第３１章：回心、悔い改め、第３２章：義認、第３３章：子とすること、第３４章：聖化、第３５章：キリストとの結合、第３６章：聖徒の堅忍、第３７章：信仰と救いの確信である。特色は、スミスはアメリカ長老教会に属する神学者であるが、アメリカ長老教会は、ウェストミンスター信仰告白に立つ旧南長老教会の伝統を引き継いでいるので、ウェストミンスター信仰告白の救いの秩序に沿っている。特にウェストミンスター信仰告白系の救いの秩序は、子とすることを一項目として立てることに特色があるが、オランダ系の救いの秩序には子とすることは一項目として立てられず、義認に含まれて論じられる。
最後に、J.ファン ヘンドレンとW.H.フェレーマ共著のオランダ語で書かれた「簡潔な改革派教義学」（Beknopte Gerformeerde
Dogmateik：１９９２年）においては、Ⅴ．神の聖定 １５．神の救いの計画、１６．選び、Ⅻ．救いの教理 ３８．救いの秩序という用語 ３９．召命と再生、４０．信仰と回心、４１．義認、４２．聖化、４３．堅忍である。特色は、バーフィンクと同じで、永遠からの選びが歴史と時間において救いの秩序において実現して仕方で扱われている。
以上のように、救いの秩序、救拯論は、改革派神学において多様に会論じられるが、大きな言い方をすれば、カルヴァン型とウェストミンスター信仰告白型に分かれる。前者は、救いの諸要素を論じた後で永遠からの選びを語り、後者は永遠からの選びを先に語ってその実現を救いの諸要素において論じる。どちらが良いかではなく、両方があるということを知っておけばよいと思う。なお改革派の救いの諸要素、救拯論についてのわたしの著作を参考に 挙げておく。
１．「ウェストミンスター信仰告白の解説」
第３章：神の永遠の聖定について
第１０章：有効召命について
第１１章：義認について
第１３章：子とすることにおいて」
第１３章：聖化について
第１４章：救拯的信仰につて
第１６章：よきわざについて
第１７章：聖徒の堅忍について
第１６章：恵みと救いの確信について
２．H.バーフィンク「改革派教義学：第３巻：聖霊のみわざとしての救拯論－オラン
ダ語原書による全訳と解説－」
３．G.C.ベルクーワ「教義学研究」
「信仰と義認－その紹介と解説－」
「信仰と聖化－その紹介と解説－」
「信仰と堅忍－その紹介と解説－」
「神の選び－その紹介と解説－」
４．G.I.スパイクマン「宗教改革的神学－教義学をするための新しい範例－その紹介と解説－」（全２巻）
第４部 キリストにおける神の道
第３章 Ⅲ．７．２．信仰の段階
Ⅲ．７．３．共同体における人として生きること
Ⅲ．７．４．巡礼
Ⅲ．７．４．１．再生
Ⅲ．７．４．２．義認：神との関係
Ⅲ．７．４．３．聖化：信仰を保つこと
Ⅲ．７．４．４．聖徒の堅忍
Ⅲ．７．５．「絶えず祈りなさい」
Ⅲ．７．６．キリストにある選び
５．M.スミス「組織神学－その紹介と解説－」（全４巻）
第１２章：予定
第２９章：救いの秩序
第３０章：召命と再生
第３１章：回心 悔い改め
第３２章：義認
第３３章：子とすること第３４章：聖化
第３５章：キリストとの結合
第３６章：第聖徒の堅忍
第３７章：信仰と救いの確信