| ３７４：宗教、文化、贖い すべての民族において、わたしたちは、罪と悲惨の感覚に出会い、すべてが贖いの必要と希望を持っている（Bij alle Volken treffen
wij een besef van zonde en ellende aan, en allen hebben ook eene behofte
aan en eene hope op verlossing）。楽観主義は、最初の事実を無効にし、人間存在と自分自身、また世界とを完全に和解させるには無力である。しかしながら、悲観主義は、第二の事実を元に戻すことに、また人間の心から将来に対する希望を根絶することには決して成功しない。さらに、わたしたちには、来るべき贖いの期待は、多くの宗教において、来るべき人物、また特に王の出現の上に建てられていることが、以前に判明した。贖いの理念は、今、常にほとんど和解とペアになっていることが、なお追加され得る。贖いは、最初で第一の場所で、宗教的な概念であり、それゆえ、すべての宗教に生じる。実際、人間には生存競争で自分を維持し、暴力的な力から身を守るために自由に使える多くの手段持っている。彼らはひとりではなく、共同体において生きる。彼は他の人々と結びつくことができ、結びつきにおいて力を求める。彼は、考えるために頭を持ち、働くために手を持ち、そして、労働と闘争によって、世界において彼の場所を得、確立し、拡大することができる。しかしながら、彼はすべての救いの手段を十分に持っていないことは注目に値する。人間がどれほど文化的に成し遂げようとも、彼は満足することも、渇望していた救いと達成することもできなかった。というのは、すべての文化は必要を満たすが、それは必要を造り出し、生じさせることもするからである。一方において、文化は彼に、彼がもうここまでで成し遂げたという誇らしい意識を造るが、他方において、彼がなお旅をしなければならない長い道についてのますます明白な感覚を与える。人間が世界を彼の足の下に従わせる程度において、彼の限られた力と小さな手段では何もできない程度において、彼が天上的力にますます依存的に感じるのである。彼が問題を解決するに比例して、彼は、世界と人生の謎の数と複雑さが増してくることに気づくのである。彼が、進歩と文明について夢見るとき、同時に彼の視線の前に、既存のものの無常と虚しさが開くのである。文化は、その偉大な測り知れない恩恵を持つが、しかし、文化はその独特の反対と危険も持つのである。「文明の恩恵がわたしたちに流れ込むほど、わたしたちの生活は空虚になるのである」（Hoe
overvloediger de weldaden der beschaving ons toestroomen,des leeger word
ons leven）(ヘイマンス「心理学の将来」フロニンヘン １９０９年 ９頁)。 それゆえ、常に文化と並んで宗教が存在する。あるいは、むしろ、宗教は文化に先行し、文化はどこでも宗教の影響下に誕生し、発展した。病気が文化によって引き起こされるとき、文化は、確実に、文化による以外によってしか癒やされない。しかし、病気が人間の心にもともと備わっているのであれば、それは常に同じであり、文化はそれを引き出すだけである。そのすべての豊かさと力をもって、文化は、神が永遠を置いた人間の心がそのように偉大で、人間の心は世界全体によっては満足され得ないことを示すだけである。人間は、文化が造り出すことができるのとは、別のよりよい贖いを求める。彼は、永続する幸せを、永続する永遠の善を求める。彼は、時間だけでなく永遠に彼を身体だけでなく霊も救う贖いを渇望する。そして、これを、世界にある他の何ものもできず、宗教だけができる。学問や芸術、文明や文化にはできず、神だけがそれを彼に与えることができる。その理由のゆえに、贖いは宗教的概念であり、それはすべての宗教において見い出され、また、ほとんどいつも和解の理念とペアになっている。というのは、人間が求め、必要とする贖いは、それによって彼が、全世界を超えて神とのまじわりに上げられるそのようなものなのである。 それから人間が購われることを望み、そして、その助けをもって彼が贖いを得ることを望む程度において、神は異なって考えられ、彼は、もちろん、別の道を進む。彼が物理的悪（病気、災害など）を最高の悪と取り、また神を自然の力と同一視するとき、粗暴で未開の民族においてだけでなく、文化の中心に、最も文明化された立場の人々においても、そのとき彼は神的秘術（theurgie）と魔術の実践に頼る。神がすべてと同一視されると、そして、それゆえ、悪が特に有限性と特殊性に求められると、そのとき、宗教における神秘的な方向が生じ、人間は有限性から恍惚状態（瞑想、観想：meditatie、 contemplatie）によって解放し、神とのまじわりをもたらす。そして、神が世界から離れた考えられると、自然と道徳的秩序は独立して理解され、そのとき、人間は彼の贖いを自然を模倣するか、あるいは、戒めを守る方法において求める。多神論（その異なった形態において、またアニミズム、降霊術、多邪神教、多神教においてなど（in
zijne verschillende vormen,animism,spiritisme,polydaemonisme,pluralism
enz.）、汎神論、理神論は、それぞれのやり方で、贖いの理念にそれら自身の特殊な変容を与える。 しかしながら、一つの現象が宗教にある。贖いと結びついて、特にわたしたちの注目に値し、それは犠牲である。人々が混乱しない方法で自分の人格、奉仕、財産の何かを神に献げるとき、献げることは、人々が神に物質的な献げものを献げ、それによって神の好意を確保するため、その神への奉仕の中でそれを破壊する宗教的行為を犠牲と理解するべきである。それに用いられる名称はほとんどすべては、犠牲として神に献げされる自発的な献げもの、または献げる者によっておこる破壊、אשה、עלה、מנחה、זבח、δωρον、ίερειον、προσφορα、θυια、τελετη、oblatio、sacrificium
を示すが、しかし、犠牲の起源や性質にほとんど光を与えないのである。 犠牲 したがって、これについて幾ばくかの説明を与えるため、あらゆる仮説が立てられた。早い時代には、人々は、特に犠牲における破壊的な要素を強調し、また人々は、それゆえ、すべての犠牲に和解の性格（あるいは、贖罪論:de
expiatory theorie）を帰し、あるいは、人々は、犠牲は、神に献げる人間の尊崇と服従、自己否定と献身のしるし（象徴説：de symbolische
theorie）であると言った。この両方の理論は、暗黙のうちに、人間は、初めから、神についての幾ばくかの認識を持っていたという考えから出、そして、彼の罪意識によっても、犠牲を献げることができる感謝の感情によっても促される。しかし、進化論は、最初の人間にそのような認識を備えることを許さず、それゆえ、まったく別の仮説を立てる。ある人々は、自分よりも上の地位にある人々、指導者、王子、さらには神を何らかの献げものによって宥め、彼らの助けを確保するため（do-ut-des、「わたしは、あなたが与えるために、与える」：贈り物理論：gift
of geschenktheorie）と、犠牲を人間の傾向から説明する。さらに、多くの人々は、それゆえ、なお人間は最初に神々をまったく自分自身のように考え、そして、それゆえ、犠牲において、特に食べ物を献げた（食物理論：spitstheorie）ことを考える。他の人々は、神秘的あるいは礼典的理論（de
mystische of sacramenteele theorie）好み、犠牲の本質は、献げものに置かれるのではなくて、その神々と人々が同じテーブルに座って、同じ食べ物と飲み物にあずかるところの神々とのまじわりの実践にあると考えた。この最後の理論は、そのときさらに詳細に発展し、それによって人々はそれを多くの民族において生じる、原始的な信仰と結びつけ、肉（肝臓、脂肪など）を食べることと動物（や他の人）の共食い（de
kannibalisme）は、他の存在の身体的な、知的な、あるいは、道徳的な固有性を自分のものにする手段であることが意味される。今や、さらに多くの部族において、トーテム崇拝（totemisme）が支配し、すなわち、聖なるもの、神の性質にあずかっているものとしての動物たちの崇拝を、人々は次第に動物（あるいは人の）の肉を食べることと血を飲むことは、動物に宿っている力で自分を強くするための、また同時に、神々に犠牲の最善の部分を献げ、食事に参加して、神々の敵対的な気質を和らげ、神々の好意を分かち合うためになるための手段であるとの考えに来た。「他の人間の肉を食べることで彼らの力を得ることができると信じる人は、犠牲を献げることで悪霊や神を宥めたり、犠牲の楽しみを分かち合って彼らから行為を得ようとする。血の犠牲はもともと常に両方の側面を組み合わせたものであった。動物犠牲の献げもの、あるいは、神への食物として人間を犠牲にし、犠牲を献げる側がその肉を楽しむこともある」（Der
Mensch, der mit dem Fleisch eines anderen oder eines Tieres dessen Kräfte
zu gewinnen glaubt,will nun in Opfer den Dämon oder Gott dadurch versöhnen
oder für seine Wünsche gewinnen, dass er ihn am Genuss teilnehmen lässt. Darum
vereinigt das blutige Opfer ursprünglich stes beide Seiten:die Darbringung
des Opfertieres oder des geopferten Menschen als Speise für den Gott
und den Gott und den Gennus des Opferfleischs von seiten des Opfernden）。この方法において、宥めの供え物の理念が生じた後で、それは今度は犠牲の性格を振り返った。それが、徐々に血まみれの犠牲が優先されるようになり、血がますます意味を持つようになり、血がますます意味を持つようになった犠牲においては、多くの特別な場合において、動物の犠牲が人間の犠牲に置き換えられたのである。 犠牲の起源、本質、目的については、見解のあらゆる違いが蔓延している。ある人は、血の犠牲を、他の人は無血の犠牲を最古と考える。ある人たちによれば、犠牲は起源的には完全に焼かれ、他の人々にしたがえば、部分だけが焼かれた。これらの人々の判断によれば、犠牲は犠牲的食事から起源し、他の人々によれば、まさに逆に、犠牲的食事が犠牲から起源した。幾人かは、身代わりの性格を犠牲に不可欠と考える。犠牲に本来備わっている身代わり的な性格を生来のものと考えるが、しかし、他の人々は、それは後に追加されたと信じる。この状況では、ラグランジェ（Lagrange）は確かな選択をすることを控え、またテーレ（Tiele）は、人々は、研究において、犠牲の特定のカテゴリーから出発してはならないことをコメントしていることが理解される。というのは、常にどこででもあらゆる犠牲が相互に存在したからである。このコメントは疑いもなく正しい。人間は、さまざまなものを献げる（穀物、果実、動物、人間など）が、その際に、さまざまな動機（尊崇、感謝、罪の感情、恐れなど）によって導かれ、またしばしばさまざまな目的に達しようする（神の怒怒りを鎮めること、悪に対する防御、ある愛顧の獲得など）。宗教においてと同様に、犠牲についても、それをすべて包含して、それを一つの原則からすべてを説明する理論を見い出すことは、最も難しい。しかし、これが、どの場合にも顕著でも一般的で、すべての人間がすべての時代と場所において、犠牲を献げることに駆り立てる深くて強力な促しである。その促しは、和解されるか、あるいは、和解されないかにしろ、何かの仕方において、人間を目に見えない神的な力に関係させ、また人間は彼の犠牲によって神への何かの影響を与えることができるという根絶できない感覚から生じるのである。犠牲は、礼拝において前景に出て、インドのアーリア人の宗教（Vedische
godsdienst）が、世界のへそのように、それについて語っている。 聖書は、それゆえ、犠牲は人類の最古の時代からすでに存在していたことを語る。堕落前に、聖書はそれについて語っていない。とはいえ、その理念に不条理なものは何もない。そのとき、犠牲は広い意味において、祈りと同様に、礼拝の要素でもあった。しかしながら、広い意味における犠牲は、アウグスチヌスの叙述にしたがって、それは、「わたしたちを神との聖なるまじわりに結びつけるすべての働きである」（omne
opus,quod agitur,ut sanctu societate inhaereamus Deo）（「神の国」１０．６．）。そのようなものとして、それは完全な状態における（in
den status integritatis）人間にも適合する。彼は、真の知識、義、聖において、神のかたちに創造された。彼は、預言者であり、祭司であり、王であり、またそのような者として、神の御名を讃美し、彼自身を彼が持っていたすべてと共に神に献げ、またすべてを治め、神の意志に従って管理しなければならなかった。彼は安息日に、神への礼拝のため、特別な日を受け、そして、それについての礼拝のある形式を必要とした。そこには何も奇妙なものはなかった。祈りを除いて、犠牲もそれに属していた。実際、人間は、神に何も与えることはできない。というのは、地は主のものであり、その豊かさで満ちている。しかし、神は、地を人間に与え、そして、彼を地の主人として立てた。それゆえ、人間は、神に、彼の尊崇と依存のしるしとして、象徴的な意味で何かを献げる。もし犠牲が、本質において異なることがあり得ない人類の宗教に起源的に属するならば、そのとき、それは堕落前と後において、神が意図的に犠牲的礼拝を設定したということなしに、カインの堕落とアベルの犠牲の後すぐに犠牲が語られることが容易に説明できる。 プロテスタントたちとローマの人たちは、犠牲は神の積極的な戒めに依拠するか、あるいは、人間の内面的な宗教的衝動に依拠するかについて、以前は論争していた。しかし、もし犠牲がすでに堕落前に存在するならば、これは解決される。実際、罪が犠牲において、大きな変化をもたらしたのであれば、宥めの犠牲は機械的に存在した犠牲に追加されただけでなく、特に犠牲自身の性格が変わったという意味においても、導入された。堕落した人間は、神を恐れ、自分自身を彼の前から隠した。彼が神のいつくしみを受けている感覚よりも、神の怒りの印象下により生きる。尊崇と感謝だけでなく、祈りをさせるのと同様に、特に恐れと怒りが彼に犠牲を献げさせる。贖いの理念は、それゆえ、和解の理念と結びつける。そして、両方が相互に密接に結びつき、通常の犠牲と宥めの犠牲との間に鋭い区別を何らもたらさない。すべての犠牲に、確実な贖罪的な力が付与される。本来的に、宥めの犠牲は、それゆえ、罪の感情と悲惨の感覚が増す程度において、ますます崇拝の中心となったのである。そして、実際、犠牲は、それからしばしば犠牲の食事を伴った。その際には人間は、言わば、神に招かれた客であり、神と共にテーブルに座り、非常に喜ぶのである。しかし、犠牲の食事は常に先行する犠牲の上に基づく。宥めの犠牲においては、更なる発展において、常により動物の犠牲が用いられるようになった。動物は、人間が自分の所有から与えることができる最も高価なものであった。というのは、血は命の座であったからである。恐れに駆られ、神の好意と平和を得るために、彼は人間の命を献げることさえにも来たのである。この陰惨な誤りは、献げられたものの肉を食べることと血を飲むことは、それにあずかった人に身体的かつ精神的力を与えるという心理学的な思いからもなお強化された。そして、これは再び一方においては、犠牲を擬人的に考えられた神々のための食事としての理念に至り、他方においては、人肉を食べること（de
anthropophagie）に至るのである。それは人間の動物的性質に起源を持つのではなく、退化した宗教に起源を持つのである。 最後に、すべての宗教に次第に祭司たちの立場が生じる。他の人々のため、神とのまじわりを効果あらしめ、維持する聖なる人物たちが、すべての民族に生じる。魔術師たち、占い師たちは、どこにも見い出される。特に、王たち、預言者たち、祭司たちが宗教における仲保者たちとして行為する。祭司（priester）という言葉は、長老（presbyter、oudeste）から来ており、それゆえ、起源的には、まったくヒエラルキー的な意味をまったく持たない。他の言葉、כהן、ίερευς、sacerdosは、祭司たちをそのような人物として示す。神の前に立ち、彼の奉仕において行為し、そして、特に犠牲の礼拝に関してはそうである。今や、そのような祭司制は、ほとんどすべての宗教に生じるが、起源は知られていない。聖書によれば、最古の時代に、祭司たちの特別な立場はまだない。アベル、カイン、ノア、族長たちは、まだ自分たちが犠牲を献げた、創世記４：３、４、８：２０、１２：７など。最初に、民族の間において、罪の感覚がより強くなり、また神との分離の意識が増すとき、どこででも仲保者制の理念が生じた。自分自身が神のかたちを失い、最早、預言者、祭司、王として行為できない人間は、この職務をまとい、人間に対して神の事柄を、神に対して人間の事柄を訴えることができる特別な人物たちの必要を感じたのである。そのようにすべての祭司制と犠牲は、直接的にはイスラエルにおいて、間接的には諸民族においても、一つの完全な犠牲が時の満ちるに及んでキリスト、神と人類の間の仲保者を、ゴルゴタにおいて指し示すのである。 ３７５．
罪によって犠牲に導入された変化が次第に明らかになった。最初に、犠牲（het offer）は、単純に、「献げ物」(gave)、מנחהと呼ばれた、創世記４：３、そして、犠牲は献げる者たち自身によって献げられた。しかし、すでに昔から異なった献げ物、契約の犠牲（bondsoffers）があった、創世記１５：９、焼き尽くす献げ物（brandofferes）、２２：１３、献酒（plengoffers）、２８：１1、和解の献げ物（vredeoffers）、３１：５４。献げ物は土の実り（veldvruchten）であり、４：３、羊、４：４、家畜と鳥、８：２０、１８：９であったが、しかし、人間の犠牲は禁止された、２２：１２。犠牲礼拝と祭司制は、他の民族においてはすでに発展していたとき、イスラエルにとっても同様に整頓されていた。預言者的および王的職務と同じように、祭司的職務も律法によって、ヤーウェの選びに依拠した、民数記１６：１７、ヘブライ５：４。祭司たちに命じられた任務は二重であった、彼らは、イスラエルの民に主の権利と律法を、部分的にはウリムとトンミムによって、教えねばならなかった、出エジプト２８：３０、申命記１７：９、３３：８－１０、エレミヤ１８：８、エゼキエル７：２６、４４：２３、２４、ハガイ２：１２、マラキ２：７。さらに、民の献げ物をもってヤーウェに近づかねばならなかった、レビ２１：８、民数記１６：５など、またそれからヤーウェのために民を祝福しなければならなかった、レビ記９：２３、民数記６：２３。イスラエルが献げなければならない献げ物は、いろいろであった。過越の犠牲、出エジプト１２章は、それ自身の場所を占め、同時に和解の献げ物と焼き尽くす献げ物、犠牲と礼典（sacrificum en sacramentum）である。契約の犠牲、出エジプト２４：３－１１は、アブラハムにおいてのように、契約の確立に仕える、創世記１５：９、エレミヤ３４：１８以下、それは、それゆえ、牛の焼き尽くす献げ物にあり、契約の仲保者のモーセによって、罪の覆いと清めのため、そして、その後、感謝の献げ物をもって締めくくられた。焼き尽くす献げ物と感謝の献げ物、レビ記１章、３章は、神との契約に依拠するまじわりを維持するために仕えた。罪と咎の献げ物、レビ４章－６章は、神とのまじわりが、罪の弱さに妨げられること、そして、屠られた動物の血の注ぎにより、罪に対する覆いと神とのまじわりの回復を前提している。したがって贖いが生じる、手を置くことによって、献げる者は彼の罪を動物に移行する。実際、これはしばしば否定されるが、しかし、それは誤りである。手を置くことは、聖書においては、常にある移行を含む、祝福、創世記４８：１３、マタイ１９：１３、呪い、レビ記２４：１４、職務、民数記２７：１８、申命記３４：９、聖霊、使徒言行録８：１７など、そして、血の犠牲においてのように、焼き尽くす献げ物と感謝の献げ物においても同様である、レビ記１：４、３：２、承認されて告白された罪に対しても、レビ記４：４、１５、１６：２１、歴代誌下２９：２３。犠牲それ自体がאשם（罪の献げ物）あるいはחטאת（咎の献げ物）と呼ばれる。それによって、犠牲の動物は、今や死がふさわしい。しかし、犠牲は献げる者のための罰を与えるためだけではなくて、彼の罪のために贖いをするためにも仕えるので、動物の死はいつも屠られたものと呼ばれる。それは、死のための死ではなくて、むしろ、それによって贖いを効果あらしめる血を得るためである。神は、まさに祭壇の動物の血に贖いをもたらし、このことは、血のゆえに、屠った後および屠ることにより、再び罪から解放された霊魂の担い手であり、命の担い手なのである、レビ記１７：１１。この血が祭壇に、あるいは、神の臨在において憐みの御座に来るとき、そのとき、それによって、献げる者は、あるいは、彼の罪は神の聖なる面前で覆われるのである、あるいは、むしろ、それは神御自身なのであり、申命記２１：８、エレミヤ１８：２３、ミカ７：１９、彼の代理としての祭司である、レビ記５：１３、１０：１７、１５：１５、犠牲によって、身代金、כפר、λυτρον,losprijsとして考えられて、献げ物の人物たちを彼らの罪から解放し、あるいは、罪自体を神の面前で覆うのである、עלあるいはבעדの前置詞をもってכפר。
しかしながら、それは、罪の献げ物は絶対的にすべての罪を購うのではなく、わずかの特定の故意ではない罪を購うということを言及するに値する。故意に犯された罪に対する刑罰は死である、民数記１５：３０。過失による罪も非常に広範囲に捉えられるが、レビ記５章、６章、しかし、贖いの犠牲によってもたらされる贖いは非常に制限される。そのことについては、神によってイスラエルと立てられた恵みの契約が、贖いの犠牲に基づくのではなく、それに先行して、その根拠を、「わたしは主、あなたの神である」との神の約束にのみ持つ。罪および咎のための献げ物は、契約の違反を伴うことのなく、それらによって妨げられる神とのまじわりを回復する不注意違反を購うことだけに仕える。これは、それらは、レビ的な清くないことについてのみの場合のために定められ、主観的な罪は語られていないことを示している、レビ記５：２、１２：６、７、１５：１４。それゆえ、それらに対して律法が犠牲による贖いを指示していない余りにも多くの罪が、死をもって罰せられる故意に犯されたわずかの罪だけでなく、さらにあらゆる霊的および肉的罪も、思いと言葉の罪、高慢と利己主義の罪も残ったのである。これらのすべての罪に対して、何の献げ物も規定されていない。
それは、罪と咎の献げ物だけでなく、焼き尽くす献げ物を感謝の献げ物も、贖いの性格を担っているということは真実である、レビ記１：３、４、９：７、そして、贖いの偉大な日に、民のすべての罪が購われる、レビ１６：１６、２３：２６－３２、民数記２９：７－１１。しかし、その際に、上に述べられた罪について言及がなく、また本来的に罪と咎の献げ物だけがある場合に規定が設けられたことは、依然として注目に値する。特別な機会に、民が重い罪を犯し、契約違反の罪を犯したとき、そのとき、通常的ではない方法で贖いが得られる。モーセの執り成しによって、出エジプト３２：３０－３５、民数記１４章、詩編１０６：２３、あるいは、通常ではない犠牲によって、民数記１６：４５－５０、サムエル記下２４：２５、歴代誌下２９：８－１１。それをイスラエルの敬虔な人たちも知っていた。彼らは、贖いのための犠牲は、非常にわずかの場合においてのみ開かれることを知っていた。そして、それゆえ、彼らは、しばしば犠牲の背後に行き、神の憐れみに訴えた。それが、旧約聖書の犠牲礼拝がイスラエルに教えようとしたことでもあった。規定された少しの犠牲は、生活全体をカバーできなかった。それらは真の贖いをもたらしはしない。それらは、罪の感覚を自覚させるためにのみ仕え、別のよりよい犠牲を指し示すタイプ（typen）であった。旧約聖書の犠牲礼拝は不完全であった。祭司たち自身が罪人であった。雄牛と雄山羊の血は罪を取り除くことができなかった。犠牲は終わりなく繰り返された。すべてのことが、旧約聖書の儀式的期間は、単に過ぎ去る、象徴的で、タイプ的な意味を示していた。そして、それゆえ、預言にしたがって、破られることがなく、すべての人によって守られる別の契約が来る、エレミヤ３１：３１、神の霊で注がれ、喜びの訪れをイスラエルと異邦人にもたらす別の預言者が来る、申命記１８：１５、イザヤ１１：２、マラキ４：５。アロンの仕方ではなく、メルキデクの秩序で立てられ、そして、それゆえ、祭司的で王的な尊厳を御自身において結びつけ、両方を永遠に担う別の祭司として来るのであろう、詩編１１０篇、エレミヤ３０：２１、ゼカリヤ６：１３。そして、ダビデの家から出て、イスラエルの支配者になるであろう別の王として来るのである、ミカ５：１、２。そして、そのように別のよりよい犠牲が来るであろう。動物の犠牲は、真実の犠牲ではない、詩編４０：７、５０：８、５１：１８、アモス４：４、５：２１、ホセア６：６、８：１１、イザヤ１：１１、エレミヤ６：１９、７：２１など。神への真実な犠牲は、彼への従順である、サムエル上１５：２２、憐れみであり、ホセア６：６、砕けれた心であり、詩編５１：１９、神の声を聞くことである、エレミヤ７：２３。そして、犠牲は、イスラエルに代わって、主の僕によってもたらされるであろうその働きをし、民の契約となり、異邦人の光となって、イザヤ４２：６、４９：６、また彼の民の罪のために彼自身を罪の献げ物とするであろう、イザヤ５３：１０。
旧約聖書において、受難の僕の約束と油注がれた王の約束が部分的になお平行に走る。両方の約束が神の契約の堅固さに根差す。神は、イスラエルの不忠実さと背教にもかかわらず、彼の契約を忘れない。彼は、それを彼の名のゆえに忘れることはあり得ない。それは、よろめくことを知らない永遠の契約である。そして、それゆえ、イスラエルは、その罪ゆえに如何に悲惨に堕落しても、再びダビデの家からの王を得る。王は、身分の低い生まれである、イザヤ１１：１－２、ミカ５：１、２、エゼキエル１７：２２、彼は王であるだけでなく、祭司でもある、エレミヤ３０：２１、ゼカリヤ３：１、６：１３、詩編１１０篇、彼は民のために正義をもたらす、エレミヤ２３：６、犠牲を不要なものとする、イザヤ６０：２１、エレミヤ２４：７、３１：３５、エゼキエル３６：２５、２７、すべての人を祭司とする、イザヤ６１：６。それに並んで、イスラエルのためのこの正義は、受難の道においてのみ獲得されるであろうという別の約束が走る。犠牲礼拝は、贖いの犠牲の必要性を象徴した。多くの例証において、モーセ、ダビデ、ヨブ、預言者たちにおいて、またバール（Baäl）の前に跪くことのない忠実な小さな群れにおいて、歴史は、最も善き人々が最も苦しむこと、神の事柄を擁護し、その限りにおいて正義を主張する人々が苦難を通して栄光に至らねばならないことを示した。捕囚においてまたその後、宗教的共同体として、イスラエルは主の僕になった。困窮と悲惨さにおいて、またどの側からも圧迫されたが、しかし、イスラエルの聖者によって購われるであろう、イザヤ４１：８以下。しかしながら、イスラエルも主の僕ではなかった。イスラエル自身が贖いを必要とした、イザヤ４１：１４、４２：１９以下。預言者が、過去においてあるいは現在において、集合的か個人的な人物、そのように驚くべきヤーウェによって備えられ、そのようによろめくことなく忠実に留まり、異邦人たちに真理を宣教において、最も重い苦しみと最も恥ずべき死を経験する預言者あるいは殉教者をどこに見い出すことができるのか。近代の釈義は無駄に働く。イスラエル下におけるわずかの敬虔な人々、預言者たち、エレミヤ、エホヤキン、あるいは、他の受難者において、それは主の僕のイザヤの描写に対するモデルを見い出すことを試み、そして、これ自体の証拠を提供する。それが主の僕の歌（de
Ebed-Jhvh-lijderen）を異なった著者たちに帰すか、あるいは、主の僕の姿をオリエントの理念において説明するかである。しかし、主の僕は、異邦人たちのためにまさに喜びの訪れを受け、イスラエル自身もそのすべての敬虔な人々と預言者たちと共に、イザヤ５３章において、主の僕に反対して、彼を彼の受難にゆえに軽蔑したことを認め、まさに彼は特に彼らの罪のために傷つけられ、彼らの不義よって打ち砕かれたことを告白する。それは、主の僕は、常に祭司でもあり、彼の民のために義をもたらすであろうメシア以外の何者ではあり得ないことが直接言われていない。しかしながら、ユダヤ教神学がイエスの出現前に、預言における二つの線がすでに一致し、そして、こうして、受難のメシアを期待したかどうかは、それは疑わしい。あるサークルにおいて、確かに、実際、このことは、民の信仰の内容は、受難のメシアの期待ではなかった場合であった。イエスの弟子たちは、自分自身がそれを完全に受け入れていなかったことを示す、マタイ１６：２２、ルカ１８：３４、２４：２１、ヨハネ１２：３４。 ３７６．キリストの義性
新約聖書によれば、律法と預言のこれらのすべての証言は、キリストにおいて頂点に達する。全旧約聖書は、原理的に、キリストにおいて実現する。彼において、神のすべての肯定とアーメン1（Gods
ja en amen）がある、ローマ１５：８、コリント二１：２０。彼が真のメシアであり、ダビデの家から出る王である、マタイ２：２、２１：５、２７：１１、ルカ１：３２など。貧しい人々に福音を宣べ伝える預言者であり、ルカ４：１７以下、ヘブライ人への手紙によれば、彼の人格、彼の職務、彼の任命、彼の犠牲、彼の旧約聖書の祭司制をはるかに超える聖所において、祭司であり、主の僕である、僕（δουλος）として、フィリピ２：７、８、仕えるために来て、マルコ１０：４５、律法に服従し、ガラテヤ４：４、すべての正しいことを満たし、マタイ３：１５、十字架の死に至るまで従順であった、ローマ５：１９、フィリピ２：８、ヘブライ５：８。そのような者として、イエスは、今、彼によって霊的な意味で建てられたものと栄光の内に啓示されるであろうものとの間に、旧約聖書の預言に一致する出来事である彼の最初の到来と第二の到来の間に、謙卑の状態における彼のみわざとと高挙の状態における彼のみわざの間に区別をした。そのキリストは、苦しみを通して彼の栄光に入る、ルカ２４：２６。彼が、今、謙卑の状態において行うそのみわざは、新約聖書において多面的に描写されている。それは、父によって委ねられたみわざ（έργον）であり、ヨハネ４：３４、５：３６、１７：４、それは一般に神の意志を達成することにあり、マタイ２６：４２、ヨハネ４：３４、５：３０、６：３８、またさらに神についての説明が含まれている、ヨハネ１：１、彼の御名の啓示と栄光化であり、１７：４、６、２６、神の言葉の伝達などである、１７：８、１４など。キリストは、預言者であり、言葉と行いに力がある、ルカ２４：１９。彼は新しい律法付与者ではなく（geen
novus legislator）、律法を解釈する、マタイ５章－７章、２２：４０、ルカ９：２３、１０：２８、ヨハネ１３：３４、ヨハネ一２：７、８、そして、福音を宣べ伝え、マタイ１２：１６－２１、ルカ４：１７－２１、また彼は御自身を律法の実現者と福音の内容の両方において説教する。彼は彼自身の人格において律法であり、福音である。彼は、彼が語るところによってだけの預言者ではなく、すべての最初に彼がそれであるところの預言者である。彼はロゴスである、ヨハネ１：１、恵みと真理に満ち、ヨハネ１：１８、限りなく御霊に満たされ、ヨハネ３：３４、父の啓示であり、ヨハネ１４：９、コロサイ２：９。彼の説教の源泉は、彼自身であり、霊感ではなく、受肉である。神は、神がモーセに顔と顔を合わせて語ったようには、彼に語らなかったが、しかし、神は彼にいて、彼を通して語った、ヘブライ１：３。彼は、他に並ぶ預言者ではなくて、最高の唯一の預言者である。彼の受肉前の旧約聖書における、また現在、復活と昇天後の新約聖書における神のすべての認識は彼から出る、ペトロ一１：１１、３：１９、マタイ１１：２７。その後、イエスが行う神の意志は、彼が行った奇跡も含んだ。一つのみわざは、多くのみわざ（έργα）において現れる、ヨハネ５：３６、それは彼の父のみわざである、５：２０、９：３、１０：３２、３７、１４：１０。それらは、父が彼を愛し、彼にいることを示す、５：２０、１０：３８、１４：１０、それらは父が彼を遣わしたことを証言する、５：３６、１０：２５、それらは彼の神的栄光を啓示する、２：１１、１１：４、４０。実際、彼は奇跡を行うだけでなく、彼自身が彼の絶対的人格において奇跡である。受肉して聖霊によって身ごもられ、復活し、栄光化した神の御子として、彼自身が偉大な奇跡であり、すべての奇跡の中心であり、すべてのものの再創造の作者であり、死者の中からの最初の者であり、ことごとくのものにおいて至高である、コロサイ１：１８。
さらに、特に神の意志を含む。父の独り子は彼の者たちのため彼の命を捨てる、ヨハネ１０：１８。新約聖書は、彼の死において、旧約聖書の犠牲礼拝犠牲と実現を見ている。彼は本当の契約の犠牲であり、出エジプト２４：３－１１、そうしてキリストの血は新しい契約の血であり、マタイ２６：２８、マルコ１４：２４、ヘブライ９：１３以下。キリストは、犠牲（θυσια：זבח）であり、わたしたちの罪のための犠牲、エフェソ５：２、ヘブライ９：２６、１０：１２、供え物（προσοφορα、δωρον、קרבן、מנחה）であり、エフェソ５：２、ヘブライ１０：１０、１４、１８、身代金（λμτρν、αντιλμτρον、נאלה、פדוים、כפר）であり、それゆえ、解放の代価、誰かの自由を牢獄から買うための身代金、そして、そこから他の人々の罪と覆い、また彼らを死から救う贖いの手段、犠牲を示す。彼は代価（eene
τιμη）、コリント一６：２０、７：２３、ペトロ一１：１８、１９、身の代金が支払われる代価（eene prijs）である。わたしたちの罪のための献げものである、コリント二５：２１、ヨハネ一２：４、４：１０。わたしたちのために屠られる過越の小羊である、ヨハネ１９：３６、コリント一５：７、世の罪を取り除き、そしてそのために屠られる神の小羊である、ヨハネ１：２９、３６、使徒言行録８：３２、ペトロ一１：１９、黙示録５：６など。宥めの供え物（ιλαστηριον）ローマ３：２５、すなわち、御座（כפרת）ではなくて、ギリシャ語ではこれに相当する言葉が見つからなかったので、この言葉は、７０人訳においててもそのように訳されているが、むしろ、宥めの手段に仕えるもの、宥めの供え物（θυμα）、あるいは、わたしたちから律法の呪いを取り除く呪い（καταρα）である、ガラテヤ３：１３。十字架に高く上げられる荒れ野における蛇である、ヨハネ３：１４、８：２８、１２：３３、また多くの実を結ぶため、地で死ぬ麦の種である、ヨハネ１２：２４。キリストのこの犠牲がわたしたちとわたしたちの罪に立つ関係は、同じように非常にいろいろな方法で表現されている。彼は彼の命を与える、あるいは、命を捨てる、マルコ１０：４５、ヨハネ１０：１５、御自身を献げる、ヨハネ１７：１９、罪と呪いとされる、コリント二５：２１、ガラテヤ３：１３、死に渡される、ローマ４：２５、身を献げる、ガラテヤ２：２０、苦しまれた、ペトロ一３：１８、十字架につけられて死んだ、ヨハネ１１：５０、５１、ローマ５：６、コリント一５：１５、テサロニケ一５：１０、また実際に多くの人の身代金（λυτρον
άντι πολλων）として、マタイ２０：２８、マルコ１０：４５、ローマ５：６、８、コリント二５：１５、２１、ガラテヤ３：１３、エフェソ５：２、ヘブライ２：９、わたしたちのため、彼の民のため、参照、フィレモン１３、あなたのため（ύπερ
σου、in gratiam tuam、あなたがそれをする必要がないため）、あるいは、事物の所有格と共にύπερ、ヨハネ６：５１、コリント一１５：３、ヘブライ１０：１２、罪のため罪を除くため、世の命のため、キリストの死によって世が命を得るため、あるいは、事物の所有格と共にπερι、マタイ２６：２８、ヨハネ一２：２、ローマ８：３、ヘブライ１０：６、１８、ペトロ一３：１８、ヨハネ一２：２、４：１０、罪のためにあるいは罪のゆえに、事物の目的格と共にδια、ローマ４：２５、罪のゆえに、罪のために。
キリストがこれらの彼の犠牲によって得たものは、挙げるには余りにも多い。御自身のために、彼はそれによって全高挙、復活を、エフェソ１：２０、昇天を、ペトロ一３：２２、神の右の着座を、エフェソ１：２０、ヘブライ１２：２、教会の頭として挙げられること、エフェソ１：２０、すべての何まさる名を、フィリピ２：９－１１、仲保者としての栄光を、ヨハネ１７：５、ヘブライ２：９、天と地の一切の権を、マタイ２８：１８、エフェソ１：２２、コリント一１５：２４以下、最後の審判を、ヨハネ５：２２、２７を得たのである。そして、さらに、彼は、彼の者たちのため、人類のため、世のため、終わりのない祝福の連続を得たのである。彼は、彼の人格において御自身がすべての祝福の総体であり、世の光である、ヨハネ８：１２、まことのパンであり、６：３５、まことのぶどうの木であり、１５：１，道であり、真理であり、復活であり、命である、１１：２５、１４：６、わたしたちの知恵（σοφια）、義（δικαιοσυνη）、聖（άγιασμος）、贖い（άπρλυτρωσις）である、コリント一１：３０、わたしたちの平和（）であり、エフェソ２：１４、多くの人が従う最初に生まれた者かつ初穂であり、ローマ８：２９、コリント一１５：２３、第二のかつ最後のアダムである、コリント一１５：４５、教会の頭、エフェソ１：２２、神の建物のかなめ石、エフェソ２：２０、それゆえ、彼の人格とのまじわりによる以上の彼の祝福にあずかることはない。しかし、彼から、すべての祝福が流れ出る、救い（σωτηρια）の全体、マタイ１：２１、ルカ２：１１、ヨハネ３：１７、１２：４７、また、さらに特殊に罪の赦し、マタイ２６：２８、エフェソ１：７、わたしたちの罪の取り除き（αίρειν）、ヨハネ１：２９、ヨハネ一３：５、清めあるいは悪い良心の解放、ヘブライ１０：２２，義認、ローマ４：２５、義、コリント一１：３０、子であること（υιοθεσια）、ガラテヤ３：２６、４：５、エフェソ１：５、神に大胆に近づくこと、エフェソ２：１８、３：１２、キリストの犠牲に基づいて神が渠の怒りを脇に置くこと、ローマ３：２５、ヨハネ一２：２、４：１０、ヘブライ２：１７、これによって神に取って代わられた、世界に対する新たな、和解して、もはや敵対的でなく好意的な平和な態度（καταλλαγη）、ローマ５：１０以下、コリント二５：１８－２０、また人間と神との平和な関係、ローマ５：１、さらに、聖霊の付与、ヨハネ１５：２６、使徒言行録２章、ガラテヤ４：６、再生と神からの子性、ヨハネ１：１２、１３、ローマ６：３以下、聖化、コリント一１：３０、キリストの死にあずかること、ローマ６：３以下、罪に死ぬこと、ローマ６：６、ガラテヤ２：２０、世に対しては十字架につけられること、ガラテヤ６：１４、聖化、エフェソ５：２０、ヨハネ一１：７、９、洗うこと、コリント一６：１１、黙示録１：５、７：１４、キリストの血を振りかけられることによって罪を清めること、ヘブライ９：２２、１２：２４、ペトロ一１：２、御霊における歩みと命の新しさ、ローマ６：４、キリストの復活と昇天にあずかること、ローマ６：５、エフェソ２：６、フィリピ３：２０、キリストに従うこと、マタイ１０：３８、ペトロ一２：２以下、さらに、律法の呪いから解放すること、ローマ６：１４、７：１－６、ガラテヤ３：１３、コロサイ２：１４、古い契約の実現と新しい契約の開始、マルコ１４：２４、ヘブライ7：２２、９：１５、１２：２４、サタンの力からの贖い、ルカ１１：２２、ヨハネ１４：３０、コロサイ２：１５、ヨハネ一４：４、５：４、世に勝つこと、ヨハネ１６：３３、ヨハネ一４：４、５：４、死と死の恐怖からの解放、ローマ５：１２以下、コリント一Ⅰ５：５５以下、ヘブライ２：１５、審判からの回避、ヘブライ１０：２７、２８、最後に終わりの日の復活、ヨハネ１１：２５、コリント一１５：２１、昇天、エフェソ２：６、栄光化、ヨハネ１７：２４、天上的嗣業、ヨハネ１４：２、３、ペトロ一１：４、ここですでに信仰と共に始まっている永遠の命、ヨハネ３：１５、３６、そしてある日、栄光のうちに完全に啓示される、マルコ１０：３０、ローマ６：２２、新天新地、ペトロ二３：１３、黙示録２１：１、５、そして、万物の更新、使徒言行録３：２１、コリント一１５：２４－２８。そしてある日、栄光のうちに完全に啓示される、使徒言行録３：２１、コリント一１５：２４。 ３７７：キリストのみわざについての教理
キリストのみわざについての教理の歴史は、三位一体とキリストの人格についての教義の歴史とは、別の性格を示す。それをめぐって、鋭くて明確な形式化に至る特別な論争がなかった。聖書は、そのみわざをそのように多面的に描いていた。また、神学の歴史において、キリストのみわざについて、真理の核を含むあらゆる見解が生じた。使徒的教父たちは、聖書の言語使用に従って、キリストは、わたしたちへの愛から苦しみ、そして御自身を犠牲にしたと言うだけであった。しかしながら、すぐに人々は、キリストのみわざについてもう少し考慮しようとした。そして、それから、すぐに異なった見解が並んで生じた。最初からキリストは、預言者として見られただけでなくて、王と祭司としても見られた。ときどき、これら三つの職務を明白に並べて名を挙げられたエウセビウス（Eusebius）は、キリストについて、「世界中で唯一の大祭司、すべての被造物の中で王、預言者の中で父の唯一の主預言者」（μονον άρχιερεα των όλων και μονον àπαστης της κτισεως βασιλεια και
προφητν άρχιποφητην του πατρος）と語り、そして、同様の発言がラクタンチウス（Lactantius）、ニユッサのグレゴリオス（Gregorius
Nyss）、アウグスチヌス（Augustinus）と他の人たちにおいても生じる。それは、ときどき、何かの見解が一面的に前面に出ることを否定しない。キリストは、人間に完全な真理を啓示するため、また彼らに徳の手本を与えるため、地上に出現したロゴスであることに強調がある。さもなければ、罪は咎よりも力として感じられ、それに応じて、キリストのみわざは、和解よりも贖いとして理解される。神が人間となったのは、人間を感覚性、死すべきこと、悪霊たちの支配から贖い、人間を神のように、永遠の命と不死性にあずからせるためである。別のよく知られた見解は、ナジアンスのグレゴリオス（Gregorius
Naz.）の反対にもかかわらず、多くの人によって称賛される見解は、キリストは、彼の死において、身代金(losgeld)、欺瞞（lospijs）、罠(valstrijk)として、御自身をサタンに引き渡し、ヨブ４０：１９、策略によってサタンを打ち負かし、人間をサタンの支配から解放した。最後に、最初からすでにキリストは、彼の苦しみと死において、わたしたちのため、またわたしたちに代わって、贖い、赦し、聖化、救いの全体を得るため御自身を神に献げたその理念があった。非常に美しくわたしたちは、この思想をすでにデオグネテスの手紙において（in
den brief aan Diognetus）見い出す。殉教者ユスチヌス（Justinus Martyr）によれば、キリストは人間になっただけででなく、わたしたちの苦しみにあずかり、癒やしを与えるためだけでなく、世に生じた不従順を止めるため、サタンと死の力に勝利するために人間になったが、しかし、死は、悔い改めようとするすべての罪人のための犠牲、すべて人のために屠られた過越、罪人の赦しの原因でもある。エイレナイオス（Irenaeus）は、キリストは、彼の受肉によってわたしたちとのまじわりにあり、わたしたちの状態のすべてに入り、彼の苦しみと死によってわたしたちを贖い、わたしたちがそのお方に罪を犯した神の好意の中に回復し、わたしたちのために父と和解させ、わたしたちの不従順を彼の従順によって善くし、そしてわたしたちに信仰において罪の赦しを与えたと非常に明白に言う。わたしたちに義と命を得させるわたしたちの罪のための犠牲としてのキリストの苦しみの同様の理解は、オリゲネス（Origenes）、アタナシウス（Athanasius）、キュリルス（Cyrillus）、ニッサのグレゴリオス（Gregorius Nyss.）、ダマスネス（Damascenus）にも生じる。西方においても、この見解は継承され、発展させられた。テルトゥリアヌス（Tertullianus）は、宗教においては、神の律法に人間が服従し、違反のために神への悔い改め（de ponenitentia）によって従わねばならない正しい関係があると言った。三位一体におけるように、テルトゥリアヌスは、悔い改めの教理においても、異なった用語を取り入れた、気分を害した神を満足させる（deo
offenso satisfacere）、神の怒りを宥める（deum iratum placare）、和解する（reconciliare）、神の愛顧を勝ち取る（deum
promereri）など。実際彼自身によってだけでなく、キュプリアヌス（Cyprianus）、ヒラリウス（Hilarius）、アムブロシウス（Ambrosius）、その他の人々によってもすでにキリストと彼の犠牲に適用された。アウグスチヌスは、ここにすべてが降りてくるキリストの犠牲について異なった実を引いた、一方においては、わたしたちを咎、傷、死、悪魔から解放したこと、他方において、わたしたちに安心、命、救いを与えたことである。倫理的、神秘主義的、身代金理論に並んで、彼について司法的あるいは満足理論も生じた。キリストは仲保者、和解者、贖い主、救い主、癒し主、牧者などである。彼は、祭司であり、同時に犠牲である。咎がなく、彼は自らわたしたちの罰を負い、それでもってわたしたちの負債を払い、わたしたちの罰を終わりにするために、彼は罪のための真の唯一の犠牲である。「彼はわたしたちの罪を彼の罪とした、それは彼が彼の義をわたしたちの義とするためであった」（Delicta
nostra sua delicata fecit, ut justitiam suam nostram justitiam faceret）（アウグスチヌス「マニ教徒フォルトゥナトゥス駁論」１４．４．）。彼の呪いはわたしたちの祝福である（Zijne maledicto
is onze benedictio）。キリストは、あなたからの肉を御自身に取り、そして彼御自身から救いをあなたに与えた、あなたから死を御自身に取り、彼御自身からあなたの命を与えた、彼はあなたから嘲りを取り、彼御自身からあなたに誉れを与えた」（Christus
de te sibi habeat carnem, de se tibi saltum,de te sibi mortum, de se tibi
vitam,se re sibi contumelias, de se tibi honores）（アウグスチヌス「詩編６３編についての物語」）。
わたしたちが、キリストの苦しみについて教会教父たちに出会うその見解は、スコラ主義に戻る。しかし、アンセルムス（Anselmus）の著作「神は何故人となったか」（Cur
Deus homo）は、他のすべて以上に贖罪的理解に優位性を置いている。アンセルムスの新しいところは、彼がキリストの死をわたしたちの罪のための犠牲として見ていることにあるのではない。以前、人々がよく言ったのは、受肉と贖罪は絶対的に必要でなくて、適切（conveniens）であったが、アンセルムスは、根拠にしたがって、反対のことを主張する。彼は、罪は常に罰においても贖罪においても結果を持たねばならず、もし神が人類を赦し、保持しようとするならば、神人（een
Godmensch）が贖罪を神にもたらし、神の栄誉が神に回復すること以外にないことに見い出した。しかしながら、キリストは、神人であったので、彼のまったく自発的な死は非常に価値があり、彼は罰から解放するだけでなく、特になお功績を持ち、そして、彼は、それを御自身のためには必要としなかったので、その功績を人類のために放棄し、人類に代わって神に栄誉を回復した。アンセルムスのこの見解を誰も変えなかった。キリストの受肉と満足の絶対的必要性は一般的に否定されなかった。ドゥンス・スコトース（Duns Scotus）は、まったく他の側に立ち、咎と無限性とキリストの功績無限性を否定し、キリストの犠牲はそれ自身において十分であることを否定し、キリストによって満足させられたものは、それは神によって十分と見なされたと教え、そして、受肉と贖罪（voldoening）を純粋な恣意性に(tot
zuivere willkeur)、「神による絶対的支配にある」（to the dominium absolutum in God）とたどった。トマス（Thomas）も、それを絶対的に必要とは考えず、適切（conveniencs）と呼んだ。さらに、変わった人物、アベラルド（Abaerald）は、キリストの受肉と苦しみは、神の義の啓示ではなくて、彼の恵みと愛の啓示であると一方的に強調した。キリストは、彼の生涯の最初から最後まで、わたしたちに言葉と模範によって教え、そしてそれによって愛をわたしたちのうちに働かせ、罪から解放し、わたしたちを神の子らとし、そして、ここにキリストの人格とみわざの赦しと和解の力が置かれる。
アンセルムスにおける種々の要素は、後に、すべての人によって拒否された。これには、彼が贖罪に与えた侮辱としての罪の見解と栄誉の回復としての満足のまったくの私法的性挌が含まれる。彼は、彼の命を犠牲にして、彼の死に一方的な強調を置く。彼は二分法を、罰と贖罪の間に、彼が贖罪と功績の間に取った機械的結びつき、キリストの功績と何故それが人類を助けるのかという理由の間に構築する。しかし、アンセルムスの教理をその本質的な構成要素において、後の神学に永続する意義を獲得したこと、それは変わらない。贖いは、アンセルムスによって、最初に罪の結果、死、またサタンの力からでなく、何よりも罪自体と咎のすべての事柄からの解放として最初にまた明白に考えられた。キリストの贖いは、主に神と人間の和解にある。しかしながら、これはスコラ学とローマの神学においては、プロテスタントにおいてよりもはるかにその本領を発揮していない。トマスは、アンセルムスと共に、贖いを主にはキリストの死に限定せず、それをすべての苦しみとキリストの従順全体に広げ、また説明する。彼はアンセルムよりも良く、キリストの功績の彼の者への移行は、キリストは頭であり、教会は彼の体であることからから引き出すが、しかし、アクイナスは、キリストの苦しみにおいて統一性を見い出さず、功績（meritum）、贖罪（satisfactio）、犠牲（sacrifcium）、贖い(redemptio)を連続的に見て、そして、それから、彼の実として罪(a
peccato)、悪魔の力(a potestate diboli)、罪の罰（a poena peccati）からの解放（liberatio）、和解(reconciliatio)、パラダイスへの入園(aditus
paradisi)として挙げる。和解は、ここではまだ前面に立たず、美徳と謙遜の模範としてのキリストがわたしたちに彼に倣うように呼びかけ、彼の愛と恵みによってわたしたちを動かし、信仰においてわたしたちを罪から解放することによって初めて十分に現れる。和解の客観的な側面と主観的な側面は、赦しと更新と同様に、十分には分離されていない。多くのローマの神学者たちは、後にこれらの線に従うが、しかし、他の人々は、贖い（redemptio）、あるいは贖罪(satisfactio)（と功績:meritum）の概念の下で、あるいは、それを三つの職務の枠組み(het
schema der drie ambten)においても扱う。
宗教改革は、もともとキリストのみわざについての教理は、ローマ以外には持たなかったし、ソシニウス派の反対に対して、キリストの贖罪を全力で防御した。とはいえ、宗教改革は、自分の原則にしたがって、その教理を新しい視野の下に、また別の文脈で述べた。宗教改革は、初めに、罪を咎（schuld）として知り得たので、キリストのみわざにおいて、和解が前面に来たのである。罪は神が怒るという性質のようなものである。この怒りを鎮めるために、神の義を満足させるために、そのために最初に神人（Godmensch）による満足が来る。このことは、神は御自身をわたしたちに代わって契約の保証とすることをもたらし、十分な咎と罪の罰を御自身に取り、そして、神の律法の要求全体に服従するのである。キリストのみわざは、それゆえ、彼の謙遜に多くあるのではなく、また彼の死にのみあるのではなく、彼の積極的服従と消極的服従の全体にもあるのである。そして、彼は、このみわざを、預言者としてわたしたちに教え、わたしたちに模範を与え、わたしたちを愛に勧めるだけでなく、祭司と王としても、彼の三重の職務において遂行するのである。カルヴァンは、ジュネーブ信仰問答においてすでにこの三重の職務について語り、その後、キリストのみわざをこれらの三つの職務の下において、「綱要」の１５３９年版において扱ったのであり、また、次第に、多くの改革派、ルター派、ローマの神学者たちによって従われた。それゆえ、和解の客観的側面と主観的側面が明らかに区別される。キリストはことごとくのことを成し遂げた。すべての祝福は彼の人格に客観的に含まれている。キリストは、自らの犠牲によって神の義を満足させたので、彼は神と人間の関係を、またそれによって、罪、死、サタン、世界との人類の他のすべての関係を変えた。それゆえ、最初の祝福は、罪の赦しであり、その結果、それにより腐敗、死、サタンからの解放である。キリストは、神と人間の唯一の仲保者、十全な救い主、最高の預言者、唯一の祭司、真の王である。
３７７：キリストのみわざについての教理
キリストのみわざについての教理の歴史は、三位一体とキリストの人格についての教義の歴史とは、別の性格を示す。それをめぐって、鋭くて明確な形式化に至る特別な論争がなかった。聖書は、そのみわざをそのように多面的に描いていた。また、神学の歴史において、キリストのみわざについて、真理の核を含むあらゆる見解が生じた。使徒的教父たちは、聖書の言語使用に従って、キリストは、わたしたちへの愛から苦しみ、そして御自身を犠牲にしたと言うだけであった。しかしながら、すぐに人々は、キリストのみわざについてもう少し考慮しようとした。そして、それから、すぐに異なった見解が並んで生じた。最初からキリストは、預言者として見られただけでなくて、王と祭司としても見られた。ときどき、これら三つの職務を明白に並べて名を挙げられたエウセビウス（Eusebius）は、キリストについて、「世界中で唯一の大祭司、すべての被造物の中で王、預言者の中で父の唯一の主預言者」（μονον άρχιερεα των όλων και μονον àπαστης της κτισεως βασιλεια και
προφητν άρχιποφητην του πατρος）と語り、そして、同様の発言がラクタンチウス（Lactantius）、ニユッサのグレゴリオス（Gregorius
Nyss）、アウグスチヌス（Augustinus）と他の人たちにおいても生じる。それは、ときどき、何かの見解が一面的に前面に出ることを否定しない。キリストは、人間に完全な真理を啓示するため、また彼らに徳の手本を与えるため、地上に出現したロゴスであることに強調がある。さもなければ、罪は咎よりも力として感じられ、それに応じて、キリストのみわざは、和解よりも贖いとして理解される。神が人間となったのは、人間を感覚性、死すべきこと、悪霊たちの支配から贖い、人間を神のように、永遠の命と不死性にあずからせるためである。別のよく知られた見解は、ナジアンスのグレゴリオス（Gregorius
Naz.）の反対にもかかわらず、多くの人によって称賛される見解は、キリストは、彼の死において、身代金(losgeld)、欺瞞（lospijs）、罠(valstrijk)として、御自身をサタンに引き渡し、ヨブ４０：１９、策略によってサタンを打ち負かし、人間をサタンの支配から解放した。最後に、最初からすでにキリストは、彼の苦しみと死において、わたしたちのため、またわたしたちに代わって、贖い、赦し、聖化、救いの全体を得るため御自身を神に献げたその理念があった。非常に美しくわたしたちは、この思想をすでにデオグネテスの手紙において（in
den brief aan Diognetus）見い出す。殉教者ユスチヌス（Justinus Martyr）によれば、キリストは人間になっただけででなく、わたしたちの苦しみにあずかり、癒やしを与えるためだけでなく、世に生じた不従順を止めるため、サタンと死の力に勝利するために人間になったが、しかし、死は、悔い改めようとするすべての罪人のための犠牲、すべて人のために屠られた過越、罪人の赦しの原因でもある。エイレナイオス（Irenaeus）は、キリストは、彼の受肉によってわたしたちとのまじわりにあり、わたしたちの状態のすべてに入り、彼の苦しみと死によってわたしたちを贖い、わたしたちがそのお方に罪を犯した神の好意の中に回復し、わたしたちのために父と和解させ、わたしたちの不従順を彼の従順によって善くし、そしてわたしたちに信仰において罪の赦しを与えたと非常に明白に言う。わたしたちに義と命を得させるわたしたちの罪のための犠牲としてのキリストの苦しみの同様の理解は、オリゲネス（Origenes）、アタナシウス（Athanasius）、キュリルス（Cyrillus）、ニッサのグレゴリオス（Gregorius Nyss.）、ダマスネス（Damascenus）にも生じる。西方においても、この見解は継承され、発展させられた。テルトゥリアヌス（Tertullianus）は、宗教においては、神の律法に人間が服従し、違反のために神への悔い改め（de ponenitentia）によって従わねばならない正しい関係があると言った。三位一体におけるように、テルトゥリアヌスは、悔い改めの教理においても、異なった用語を取り入れた、気分を害した神を満足させる（deo
offenso satisfacere）、神の怒りを宥める（deum iratum placare）、和解する（reconciliare）、神の愛顧を勝ち取る（deum
promereri）など。実際彼自身によってだけでなく、キュプリアヌス（Cyprianus）、ヒラリウス（Hilarius）、アムブロシウス（Ambrosius）、その他の人々によってもすでにキリストと彼の犠牲に適用された。アウグスチヌスは、ここにすべてが降りてくるキリストの犠牲について異なった実を引いた、一方においては、わたしたちを咎、傷、死、悪魔から解放したこと、他方において、わたしたちに安心、命、救いを与えたことである。倫理的、神秘主義的、身代金理論に並んで、彼について司法的あるいは満足理論も生じた。キリストは仲保者、和解者、贖い主、救い主、癒し主、牧者などである。彼は、祭司であり、同時に犠牲である。咎がなく、彼は自らわたしたちの罰を負い、それでもってわたしたちの負債を払い、わたしたちの罰を終わりにするために、彼は罪のための真の唯一の犠牲である。「彼はわたしたちの罪を彼の罪とした、それは彼が彼の義をわたしたちの義とするためであった」（Delicta
nostra sua delicata fecit, ut justitiam suam nostram justitiam faceret）（アウグスチヌス「マニ教徒フォルトゥナトゥス駁論」１４．４．）。彼の呪いはわたしたちの祝福である（Zijne maledicto
is onze benedictio）。キリストは、あなたからの肉を御自身に取り、そして彼御自身から救いをあなたに与えた、あなたから死を御自身に取り、彼御自身からあなたの命を与えた、彼はあなたから嘲りを取り、彼御自身からあなたに誉れを与えた」（Christus
de te sibi habeat carnem, de se tibi saltum,de te sibi mortum, de se tibi
vitam,se re sibi contumelias, de se tibi honores）（アウグスチヌス「詩編６３編についての物語」）。
わたしたちが、キリストの苦しみについて教会教父たちに出会うその見解は、スコラ主義に戻る。しかし、アンセルムス（Anselmus）の著作「神は何故人となったか」（Cur
Deus homo）は、他のすべて以上に贖罪的理解に優位性を置いている。アンセルムスの新しいところは、彼がキリストの死をわたしたちの罪のための犠牲として見ていることにあるのではない。以前、人々がよく言ったのは、受肉と贖罪は絶対的に必要でなくて、適切（conveniens）であったが、アンセルムスは、根拠にしたがって、反対のことを主張する。彼は、罪は常に罰においても贖罪においても結果を持たねばならず、もし神が人類を赦し、保持しようとするならば、神人（een
Godmensch）が贖罪を神にもたらし、神の栄誉が神に回復すること以外にないことに見い出した。しかしながら、キリストは、神人であったので、彼のまったく自発的な死は非常に価値があり、彼は罰から解放するだけでなく、特になお功績を持ち、そして、彼は、それを御自身のためには必要としなかったので、その功績を人類のために放棄し、人類に代わって神に栄誉を回復した。アンセルムスのこの見解を誰も変えなかった。キリストの受肉と満足の絶対的必要性は一般的に否定されなかった。ドゥンス・スコトース（Duns Scotus）は、まったく他の側に立ち、咎と無限性とキリストの功績無限性を否定し、キリストの犠牲はそれ自身において十分であることを否定し、キリストによって満足させられたものは、それは神によって十分と見なされたと教え、そして、受肉と贖罪（voldoening）を純粋な恣意性に(tot
zuivere willkeur)、「神による絶対的支配にある」（to the dominium absolutum in God）とたどった。トマス（Thomas）も、それを絶対的に必要とは考えず、適切（conveniencs）と呼んだ。さらに、変わった人物、アベラルド（Abaerald）は、キリストの受肉と苦しみは、神の義の啓示ではなくて、彼の恵みと愛の啓示であると一方的に強調した。キリストは、彼の生涯の最初から最後まで、わたしたちに言葉と模範によって教え、そしてそれによって愛をわたしたちのうちに働かせ、罪から解放し、わたしたちを神の子らとし、そして、ここにキリストの人格とみわざの赦しと和解の力が置かれる。
アンセルムスにおける種々の要素は、後に、すべての人によって拒否された。これには、彼が贖罪に与えた侮辱としての罪の見解と栄誉の回復としての満足のまったくの私法的性挌が含まれる。彼は、彼の命を犠牲にして、彼の死に一方的な強調を置く。彼は二分法を、罰と贖罪の間に、彼が贖罪と功績の間に取った機械的結びつき、キリストの功績と何故それが人類を助けるのかという理由の間に構築する。しかし、アンセルムスの教理をその本質的な構成要素において、後の神学に永続する意義を獲得したこと、それは変わらない。贖いは、アンセルムスによって、最初に罪の結果、死、またサタンの力からでなく、何よりも罪自体と咎のすべての事柄からの解放として最初にまた明白に考えられた。キリストの贖いは、主に神と人間の和解にある。しかしながら、これはスコラ学とローマの神学においては、プロテスタントにおいてよりもはるかにその本領を発揮していない。トマスは、アンセルムスと共に、贖いを主にはキリストの死に限定せず、それをすべての苦しみとキリストの従順全体に広げ、また説明する。彼はアンセルムよりも良く、キリストの功績の彼の者への移行は、キリストは頭であり、教会は彼の体であることからから引き出すが、しかし、アクイナスは、キリストの苦しみにおいて統一性を見い出さず、功績（meritum）、贖罪（satisfactio）、犠牲（sacrifcium）、贖い(redemptio)を連続的に見て、そして、それから、彼の実として罪(a
peccato)、悪魔の力(a potestate diboli)、罪の罰（a poena peccati）からの解放（liberatio）、和解(reconciliatio)、パラダイスへの入園(aditus
paradisi)として挙げる。和解は、ここではまだ前面に立たず、美徳と謙遜の模範としてのキリストがわたしたちに彼に倣うように呼びかけ、彼の愛と恵みによってわたしたちを動かし、信仰においてわたしたちを罪から解放することによって初めて十分に現れる。和解の客観的な側面と主観的な側面は、赦しと更新と同様に、十分には分離されていない。多くのローマの神学者たちは、後にこれらの線に従うが、しかし、他の人々は、贖い（redemptio）、あるいは贖罪(satisfactio)（と功績:meritum）の概念の下で、あるいは、それを三つの職務の枠組み(het
schema der drie ambten)においても扱う。
宗教改革は、もともとキリストのみわざについての教理は、ローマ以外には持たなかったし、ソシニウス派の反対に対して、キリストの贖罪を全力で防御した。とはいえ、宗教改革は、自分の原則にしたがって、その教理を新しい視野の下に、また別の文脈で述べた。宗教改革は、初めに、罪を咎（schuld）として知り得たので、キリストのみわざにおいて、和解が前面に来たのである。罪は神が怒るという性質のようなものである。この怒りを鎮めるために、神の義を満足させるために、そのために最初に神人（Godmensch）による満足が来る。このことは、神は御自身をわたしたちに代わって契約の保証とすることをもたらし、十分な咎と罪の罰を御自身に取り、そして、神の律法の要求全体に服従するのである。キリストのみわざは、それゆえ、彼の謙遜に多くあるのではなく、また彼の死にのみあるのではなく、彼の積極的服従と消極的服従の全体にもあるのである。そして、彼は、このみわざを、預言者としてわたしたちに教え、わたしたちに模範を与え、わたしたちを愛に勧めるだけでなく、祭司と王としても、彼の三重の職務において遂行するのである。カルヴァンは、ジュネーブ信仰問答においてすでにこの三重の職務について語り、その後、キリストのみわざをこれらの三つの職務の下において、「綱要」の１５３９年版において扱ったのであり、また、次第に、多くの改革派、ルター派、ローマの神学者たちによって従われた。それゆえ、和解の客観的側面と主観的側面が明らかに区別される。キリストはことごとくのことを成し遂げた。すべての祝福は彼の人格に客観的に含まれている。キリストは、自らの犠牲によって神の義を満足させたので、彼は神と人間の関係を、またそれによって、罪、死、サタン、世界との人類の他のすべての関係を変えた。それゆえ、最初の祝福は、罪の赦しであり、その結果、それにより腐敗、死、サタンからの解放である。キリストは、神と人間の唯一の仲保者、十全な救い主、最高の預言者、唯一の祭司、真の王である。 ３７８
しかしながら、キリストのみわざは、彼の人格と同様に、まったく異なって理解された。エビオン派の人々（de Ebionieten）は、キリストは罪との闘いに対して、彼の教えと模範によって人間に力を与えた単なる預言者であると言った。グノーシス派の人々（de
Gnostieken）にとっては、キリストは、啓蒙と知識によって、人間を物質の束縛から解放し、彼らを霊的な人々（πνευματικοι）にするために、明らかに人間の姿において地上に現れた神的知恵の流失（een
aeon Godelijke wijsheid）であった。この思弁的な合理主義に反対して、モンタニズムの人々(de Montanisten)は、キリストの人格においてだけでなく、聖霊による継続的な啓示においても、キリスト教の超自然的で、超越的な性格を主張した。それは現在なお信者たちにやって来て、キリスト教宗教を幼少期から成人期に進ませる。中世の二元論的、汎神論的、黙示的、リベルテン的（libertinische
secten）分派においては、キリストに対して、彼は、彼の時代において人々に彼らの真の性質と運命を啓示した以上には、他の意味は何も残らず、それによって、今、彼ら自身が御霊の時代のキリストと同じになることができる。聖書がキリストについて教えることは一人一人のクリスチャンにおいて実現される。キリストの本来的な死と復活は、一人一人のクリスチャンの再生において起る。これらのすべての考えは、宗教改革後、ルターとカルヴァンの教理に対する強い反対に至った。わたしたちのためのキリストではなくて、わたしたちの内にいるキリストが、御言葉ではなく、御霊が宗教の本質であった。オジアンダー（Osiander）は、キリストは永遠的で、神的な本質的義を彼の人間的性質においてもたらし、また、この義を信仰において彼の者たちに注入し、そしてこうして彼らを義とすると教えた。カールシュタット（Carlstadt）、フランク（Franck）、シュベンクフェルト（Schewenckfeldt）、ヴァイゲル（Weigel）、その他の人々は、キリストの注入された義への信頼に危険な誤りを語った。わたしたちの救いは、キリストの外ではなくて、わたしたちのために、彼がわたしたちの内にまたわたしたちを通して、神とのこの神秘なまじわりにおいて行うことにある。キリストによる贖いの神秘的見解は、後に多くの人々において受け入れを見い出した。ベーメ（Böhme）は、神の怒りと死を現実的で物理的な力と見た。それをキリストは、彼の死によって打ち勝ち、そして、その場所に彼は、今や、新しい神的生命を人類に注入する。クウェーカー教徒たち(Kwakers)においては、贖いは、実際、その原因をキリストに持つが、しかし、キリスト御自身は、人類における恵みと光の総体以外の何かではない。実際の本当の贖いは、わたしたちの内に起こるものである。アントワネット・ブーリニョン（Antoinette
Bourignon）とポワレ（Poiret）は、身代わりの苦しみは不可能で、不適切と呼んだ。キリストは、わたしたちのために神の義を満足させるために地上に来たのではなく、わたしたちに神の赦しの愛を説教し、そして、彼の教えと模範によってわたしたちを罪から清めるためであった。同様に、J.C.デッペル（J.C.Dippel）は、キリストの苦しみと死を、わたしたちの内なる古き人を殺し、新しい人をよみがえらせる彼の霊的な仲保者性の模範と見た。贖いはわたしたちの内に起きる。客観的な和解は必要がない。というのは、神には怒りがないからである。ツィンツェンドルフ（Zinzendorf）によれば、キリストは、万物の創造者かつ保持者であり、旧約聖書のヤーウェである。その中に神の愛が啓示され、彼はそのように小さく、そのように貧しく、そのように低くなり、そして、非常に苦しんだ。彼の苦しみは、罰ではなくて、実際、自発的で愛のある殉教として神を満足させるものである。彼の血と彼の死は、人類の命の源泉である。キリストの脇腹の殉教者の傷は、人類の母質（de
matrix）、キリストからすべてのものに彼自身を注ぐ御霊の起源である。スエデンボルグ（Swedenborg）は、十字架の苦しみが贖いであるという信仰は、三位一体の教理とともに、教会を破壊した根本的な誤りと主張した。十字架の苦しみは、贖いではなく、イエスにとって最後の試練であり、彼は堅固に留まっていたので、彼の栄光化の手段であった。そのとき、彼における人間的なものは、彼の父の神的なものと結合し、そのとき、神は真に人間となり、彼は地獄の感覚的力に近づき、勝利した。贖いは、人間の姿をした神による継続的な地獄の征服と天国の秩序づけである。
しかし、神秘主義の側からだけでなく、合理主義の側からも、キリストのみわざについての教会的教理についての闘いが生じた。このカテゴリーにおいて、キリストは、彼の人間性によってだけ、わたしたちの仲保者であり、また、わたしたちの義であるというスタンカルス（Stancarus）の教え、また、カルグ（Karg）(パルシモニウス：Parsimonius)と、最初に１６０４年の手紙において表明したヨハンネス・ピスカトール（Joh.Piscator）の積極的従順の否定（de
ontkenning der obediential activa）が数えられる。カルグは、１５７０年に彼の見解を撤回したが、しかし、ピスカトールは、彼の支持をマルテニウス（Martinius）、クロキウス（Crocius）、ピエリウス（Pierius）、パレウス（Pareus）、ヴェンデリヌス（Wedelinus）、H.アルテング（H.Arting）、その他の人々に見い出し、後に、カメロ（Camero）、プラカエウス（Placaeus）、カペルス（Capellus）などによって、改革派神学に有害な影響を与えた。しかし、代理贖罪（de
satisfaction vicaria）の最も深刻で最も効果的な闘いは、ソシニウス主義者たち（Socinianen）から来た。実際、彼らは、キリストをまだ預言者、祭司、王と呼んだが、しかし、彼らは、事実上、祭司的職務を王的職務の付録にした。キリストが地上におられたとき、彼は単なる預言者であり、その明白な歩みが始まる前に、神によって天に挙げられた（天に挙げられた：Raptus
in coelum、ヨハネ３：１３、３１、６：３６、６２、８：２８、１０：２８）。そこで神御自身によって真理が知らされ、また、こうして、新しい戒めをもって律法を完成し、これらの戒めを守る者たちに永遠の命と御霊の聖化する力を約束することができた。この彼の教えをキリストは彼の罪のない生涯によって、彼の奇跡によって、特に彼の死と復活によって確立した。彼の死は、彼に従う人々を彼らの敬虔と聖なる歩みにおいて、終わりまで堅忍させるために、また、神の愛をわたしたちに明らかに確立するために、必要であり、また、彼の復活は、わたしたちに彼の模範に見せるためであり、神に従順な彼らがすべての死から解放され、またキリスト御自身に、彼に従う人々に永遠の命を与えるためであった。キリストの死は、ここで、それゆえ、教会の教理以上のまったく別の意義を持った。それは、キリストのみわざにおいて独自の構成要素を持たず、一方において彼の教えを確立するために、また他方において彼を、天において初めて王と主にする復活に至らせるに仕える。そして、これは実際昇天によって初めてそのようになった。復活は、まだ謙卑の状態に属している。というのは、その後も、彼はまだ死すべき体を持っていたからである。しかし、昇天に際して、彼は栄光化された体を得て、彼は王、主、神に高挙された。そのような者として、彼は、彼の模範に従う彼らをあらゆる苦難において支え、また彼らに最後に不死性を報いるために、神から力を受けた。彼が、これをできるの（Dat
Hij dit doen kan）は、彼の王的職務であり、彼がこれを望むの(dat Hij dit doen wil)は、彼の大祭司職務である。それゆえ、彼は地上においてはまだ祭司ではなく、彼の死は実際の犠牲ではなく、むしろ、それへの導入と準備であった。真の犠牲を、彼は、旧約聖書の大祭司が至聖所において最後に贖いをもたらすように、今や天において献げるのである。そして、その犠牲は、彼が和解をもたらすことにある、すなわち、わたしたちを罪の束縛と罰から解放するのである。
この観点から、ソシニウス主義者たち（de Socinianen）は、三位一体とキリストの神性の教理と同様に、贖罪の教理（de leer der
voldoening）に強く反対しなければならなかった。すべての最初に、彼らは、彼らの判断にしたがって、聖書と矛盾する。その擁護者たちは、彼らの見解のための確かな個所をひとつももたらすことができない。聖書は、神が罪を恵みによって赦すことを明らかに言うし、また赦しは贖いを含む。キリストはわたしたちのために苦しんだなどという表現は、代理贖罪の意味を持たず、キリストは神を満足させるためではなく、わたしたちを罪から解放するためであることだけを言う。贖い（verlossing）、和解（verzoening)などという言葉は、罪の束縛と罰からの解放されるために、キリストが、わたしたちにその方法を示すだけであり、神が犠牲によって和解されることでは絶対的にない。というのは、神は、わたしたちに恵み深く、そして、これをキリストによってわたしたちに知らせるからである。
さらに、贖罪は必要ではない。神における義と憐れみは、相互に矛盾せず、それらは神に本来的な属性でもなく、それらは彼の意志それ自身の効果（zijn
effectus ipsius voluntatis）であり、彼の意志に依存する。神が罪を罰するか、あるいは、赦すかは、彼の性質によってはまったく決められず、彼の意志によって決められる。神は、人間と同じように、また人間以上に、贖罪なしに罪を赦すことができる。そう、彼の義は贖罪よっては無効にされる。何故なら、それは無罪の者を罰し、有罪の者を無罪とし、また彼の憐れみは、それが購った後のみに初めて現れるのであれば、その価値を失う。それゆえ、神は、常に、悔い改める者に赦しを約束し、また、わたしたちがその中で彼に従うことを望んだのである。そえゆえ、贖罪も不可能である。消極的従順（obdientia
passiva）は、不可能である。何故なら、実際、金銭的負債と違って、人格的で道徳的な罪は他の者に移行できないからである。無罪の者を他の者の罪のために罰することは、不当であり、残酷である。また、これが可能だとしても、そのとき、せいぜい一人の人のための罪の罰、すなわち、永遠の死を受けることができるが、多くの人のためでなく、あるいは、すべての人間のためではない。積極的従順（de
obediential activa）に関することは、これはなおさら不可能である。というのは、神の律法を守ることはそれぞれが個人的に義務であり、これは決して他の者に引き継ぐことはできない。特に、消極的従順（obdientia
passiva）と積極的従順（de obediential activa）は、相互に矛盾し、一方を果たす者はもう一方から自由になる。キリストは、それゆえ、それらを果たしたのではなく、彼は永遠の死を苦しんだのではなく、三日目に死から復活した。どんなに重くとも、彼の苦しみは有限である。彼の神的性質は、それを価値において無限とすることはできない。何故なら、彼の神的性質は苦しむことができず、死ぬこともできなかったからであり、あるいは、それは各瞬間をその苦しみにおいて無限にし、またそれによってすべての他の苦しみを表面的なものにするであろうからである。さらに、わたしたちに何の祝福をもたらすのか。人間は罪を犯し、また神（御子）はどのようにして神御自身（den
Vater）を満足させることができるのか。最後に、贖罪の教理は有害でもある。何故なら、それは、贖罪を要求する神を超えて、憐れみをもったキリストを高く挙げ、わたしたちを神よりもキリストにより大きに感謝を義務づけ、不注意と不敬虔のドアを開く。すべての罪がいつも購われる。何故なら、そうすれば、わたしたちは好きなだけ罪を犯すことができるからである。そして、キリストの死は、わたしたちが、罪から解放され、そして新しい敬虔な生活を歩めることをまさに意味したのである。
贖罪の教理へのファスタス・ソシニウス（Fastaus Socinius）の批判は、そのように鋭く、完全であったので、後の反対者たちは彼の議論を繰り返す以外には別のことができなかった。レモンストラント派の人々（de
Remonstranten）は、キリストの贖罪を実際になお維持しようとしたが、しかし、事実、それに対して提起されたすべての反対を引き継いだ。彼らは、ローマの人々とルター派の人々とともに、キリストはすべての人のために贖罪を果たしたことを教えただけでなく、キリストは神が罪に課したすべての罰を受けたことも、彼が永遠の死を受けたことも、彼の積極的従順（de
obediential activa）が代理的であったことも否定した。彼の苦しみと死さえも罪のための十分な贖罪でなく、負債のための支払いでもなく(gene
solution debitorum)、それは、結局、神の側の赦しとわたしたちの側の信仰を表面的なものにするであるが、しかし、犠牲であり、死において維持される神へのキリストの完全な献身であり、それによって彼によりすべての罪に対して十分として神に考えられた。その犠牲の根拠において、神は、信じる各人が救われるために、今や、福音によって、すべての人に罪の赦しを提供するが、しかし、キリストは彼の者たちのために実際の救いを獲得せず、単に救われる可能性を獲得した。各人が実際に救われるか否かは、各人にかかっている。フーゴー
デ グローティウス（Hugo de Groot）は、贖罪の教理の正当化の試みをした。彼は、その目的のために、それを神の意志からではなく、彼の刑罰的な正義からでもなく、法と正義を維持し、一般的善（met
het bonum commune）を考慮して、彼の統治的正義から（uit de justitia Dei rectoria）、すなわち、秩序と法の世界における神に対する必然性から導き出した。しかしながら、法的秩序を神の外に立つ世界秩序として把握することによって、彼は神の義をそれに従属するもの、下位のものとし、彼はキリストの贖罪を不当な苦しみに、他の者たちの抑止のための懲罰例に、統治的知恵の尺度に変えた。そして、彼は キリストがこのことに対して、どうして神であらねばならなかったかを、また、どうして神は無罪の者を苦しめることもできたのか、また彼の苦しみを他の者たちのための贖罪として認めることができたのかを説明しなかった。
３７９．
新しい神学において、キリストの職務とみわざを、もたらされた多くの反対に対して、変化したり、新しい形態において維持する試みは欠けなかった。一般的に、新しい神学は、その際に、それにおいてキリストがわたしたちに代わって神の義の要求を満足させる贖罪の司法的教理を、キリストの人格的で宗教的・倫理的活動の教理によって、キリストが常に愛である神においてではなく、わたしたちにおいて、わたしたちの精神やわたしたちの心やわたしたちの意志において、道徳的変化をもたらしたものに置き換える努力によって導かれたのである。しかしながら、シェリング（Schelling）とヘーゲル（Hegel）は、歴史的現象としてのキリスト教になお単に過渡的な価値を帰した。神は一人の特定の人物において人間となったのではなく、それゆえ、他の人々の罪ために苦しみ、死んだことは考えられない。しかし象徴的に理解され、贖いのキリスト教の教えは深い意味を含む。キリストの人格とみわざは、理念の歴史的具現（de
historische inkleeding van de idee）であり、神の子としての世界は、彼から出発し、彼に戻り、必然的に苦しみ、また、こうして栄光に入る。時間と有限性に服する世界と人間は苦しみつつあり、死につつある神なのである。神の和解は、世界の過程において必然的で、客観的な瞬間である。神は自身を自身に和解させ、疎外から自身に戻る。そのように進み、フォン フォルトマン（Von
Hartmann）は、神がわたしを救うのではなく、わたしが神を救うことができると言った。神はわたしによって救われることができるのみである。実際の存在は、神の受肉である。世界の過程は神の受難の歴史であり、同時に肉において十字架につけられた者の救いの道である（Das
reale Dasein ist die Incarnation der Gottheit, der Weltprozess die Passionsgeschichte
des fleische Fekrereuzigten）（「道徳的意識」１８８６年 ６８８頁）。A.デリーズ（A.Drews）によれば、救いの仲保者は可能性すらない。というのは、すべての救いはわたしたちの内にある神による自身の救いであり、神が人間の本質であり、神自身が人間の中で自己意識と精神的自由を達成するからである。
リベラルな神学は、ヘーゲルとカントによるその哲学的な前提において支配される限りにおいて、歴史的イエスに対する場所を、なお実際、教義学におおいて維持することを試みるが、イエスにおいて、律法主義的宗教からの解放者と自由なキリスト教宗教の創始者を見ること以上には行かないし、彼において、神の子の原型的な実現を、あるいは、神と人間の一体性を見る、あるいは、第一義的に、彼を神の父の愛の宣教者として、また彼の弟子たちの模範として崇める。フォン フォルトマンとデリーズのような人たちにおいては、このリベラルな神学は、それゆえ、応答するのが正統派と同じくらい難しい。この後者は、彼らの見解にしたがって、強い立場にある。何故ならば、キリスト教における贖いの原則を、神的にかつ永遠的に受け入れ、そしてそれゆえ、イエスを神とし、人間と人類の全体の更新を聖霊に帰す。それに対して、リベラル神学の弱さは、追跡不能な歴史的イエスに戻ることを望み、形而上学的な贖いの原則に対する目を持たず、また、イエスについてのその空想的な人格性によって、単に、歴史的で心理学的な意義を認め、かつ認めることができるだけにある。彼らの側から、こうして、言及された哲学者たちが、人々が一体化できないものを、最早一体化を試みないことを主張する。したがって、上記の哲学者たちは、人々が相容れないものをもはや和解させようとしないようにと主張し、人間イエスと多分決して存在しなかった永遠的なキリストの理念の間に、神的な贖いの原則といわゆる歴史的事実の間に根源的な区別をする。イエスではなく、すべての人間の内に内住し、彼らを苦しみと死によって救いに至らせる内在的なキリストが救うのである。神の命としての世界の命、神の受難の歴史としての人類の苦しみの展開、各々の個々の被造物において苦しみ、闘い、死ぬところの神の過程としての世界過程、人間の宗教的意識において、有限の限界を克服するために、また世界のすべての苦しみに対する将来の勝利を予測するために、それがキリスト教の贖いの真理なのである（Das
Leben der Welt als GottesLeben; die leidvolle Entwicklung der menschheit
als göttliche Passionsgeschichte; der Weltprpzess als Prozess eines Gottes,
der in jedem einzelnen Geschöpfe leidet,kämpt und stribt, um im religiösen
Bewustsein des Menschen die Schranken der Endlichkeit Zu ünberwinden und
seinen derinstigen Triumph über das gesamete Weltleid vorweg zu nehmen:
das ist die Wahrhait der Christlichen Erlöungslehre)(デリーズ「キリストの神話」１８８頁)。
贖いについての近代の見解
それにもかかわらず、デリーズの著作の出版前後に、キリストの人格とみわざに宗教における永続的な場所を確保する試みは欠けなかった。ドイツにおいては、特に最初にシュライエルマッハー（Scheleiermacher）、その後、リッチュル(Ritschl)によって試みられた。前者は、贖いを人間とキリストの神秘的結合の方法においてもたらそうと試みる。すなわち、キリストは、常時、神とのまじわりにあずかり、またそれによって聖く、祝福される。そのような者として彼はわたしたちに来て、そして彼はわたしたちのまじわりに入った。彼は、わたしたちの苦しみを分かち合い、わたしたちと祭司として苦しみ、彼の聖性と祝福を最も深い悲しみにおいてまで、十字架の死においてまで維持した。しかし、このようにして最初にわたしたちとのまじわりに入った後、彼は言葉と模範によってだけでなく、そこから発せられる神秘的な効果によって、彼の全人格はわたしたちを彼とのまじわりに導き、彼の贖いの活動によって彼の神聖さと、彼の和解の活動によって彼の祝福にあずからせる。しかし、彼は、それゆえ、わたしたちのまじわりに最初に入った後、彼は、その後、彼の言葉と模範によってではなく、彼の全人格から出て来る神秘的な効力によって、わたしたちを彼のまじわりに入れ、そして、わたしたちを彼の贖いの働きにより彼の聖性においてあずからせる。したがって、再生と聖化からなる贖いは、ローマと同様にシュライエルマッハーにおいても、和解、つまり罪の赦しに先立ち、両方ともわたしたちの外側ではなく、キリストにおいてわたしたちの内側で起こる。この神秘的理論は、調停神学（de
Vermittelingstheologie）における和解の教理の根本的理念となり、その外側に、とりわけホフマン（Hofmann）に強い影響を与えた。しかし、シュライエルマッハーは、教会的神学の用語を採用し、そして、三つの職務の教理も引き継いだが、彼が聖書と教会の教理の多くの点から逸脱したことが、すぐに明らかになり、罪と罪の感覚を十分正当に扱わず、また、贖いを美学的な側から（van
de aethtische sijde）一方的に世界と調和するものと見たのである。
それゆえ、リッチュルは、別の道を取った。神学的、哲学的思弁的を嫌悪して、彼は教会のキリストからイエスの人格に戻り、また、キリストと教会の神秘的結合に対して、彼の人格とみわざの倫理的見解に置き換えた。リッチュルによれば、和解は、審判者としての神と彼の復讐的な義あるいは怒りと、報いと罰の法的秩序と関係させることではない。というのは、それは神と人間の関係についての司法的、ファリサイ的理解であり、宗教には属さないからである。神は本質的に愛であり、また、彼の義は、彼は変わらず人間を救い、そして、彼らにおいて神の国を実現することを望むことにある。しかし、今は、人間は罪ゆえに神から離れているので、彼らは罪の意識下に重くのしかかられていて、彼らは罰の状態にいると感じている。彼らは、神を恐れ、敢えて近づかないし、彼らは神とのまじわりに生きていない。それゆえ、キリストが、わたしたちに神の愛を啓示するために、到来した。三つの職務の教理は、リッチュルにおいては抵抗を引き起こした。職務という言葉は、司法的な共同体にのみ属する。愛の道徳的共同体においては、召命を語るのがよりよい。三つの職務はキリストにおいて区別したままにしておくことはできず、互いに混ざり合ってしまう。もし人々がそれを維持しようとするならば、教会を、神の国を地上に建てるために、そして、その目的のために彼は預言者として神を啓示したのであり、また、自身を彼の者たちのために祭司として自身を献げるために、王的職務が前面に来て、キリストは王に任命される。すなわち、キリストは、神とまったく特別な関係に立ち、人類を神の領域に、彼の生涯の召命に統合するために、彼は神の目的を行う。彼の全生涯、苦しみと死は、この観点下から理解されねばならない。彼は、保証人や仲保者としてではなく、わたしたちの身代わりとして、道徳的召命として果した。エスは生涯における道徳的な任務に没頭した。それに彼は自身をまったく献げた。彼は、死に至るまで忠実であった。こうして、生き、彼は神の意志を実現し、人類に対する神の目的を、神の愛を実現し、恵みを真実に啓示した。また同時に、彼の任務を死に至るまで、彼の者たちの祝福のため、自身を神に献げ、献身した。この彼の道徳的な従順により、まるで怒りから好意的になったかのように、キリストは神において何の影響も与えていないし、信者たちがサタンと死の力からの贖いをもたらさなかった。逆に、キリストが得たのは、キリストのように、神とのまじわりにおいて神の意志を行うことを望むすべての人たちが、罪の感覚、不信仰、不信頼、神が彼らを怒って罰するという間違った考えを脇に置き、彼らの罪にもかかわらず、神の愛と真実を信じ、罪の赦し（義認）を誇り、その後、彼ら自身も神が彼らと立ってくださる新しい関係に積極的に入るので、神へのすべての敵対性を脇に置くことができるのである。
リッチュル学派は、キリストのみわざについてのこの宗教的、倫理的な評価以上には進めなかった。たとえば、カフタン（Kaftan）は、リッチュルよりも正統派の用語により近くなるが、しかし、根本的理念において完全にリッチュルと一致する。キリストのみわざは、神的みわざであり、すなわち、彼の神性によるあるいは神との彼の結合により、また、それは同時に最初から最後まで、人間イエスの自分の積極的なみわざである。救いは、こうして、同時に神の賜物であり、キリストの従順の実である。キリストは、わたしたちに対する罪の罰を担うことにより、神の義を満足させ、また、わたしたちのために彼の赦しを得たことにあるのではないが、しかし、それは終わりまで維持された神への忠実さと従順の性格を担う。聖なる愛は、この罪の世界におい別の方法では示されることができないし、また、キリストは、聖なる愛を、死に至るまでの従順以外の別の方法で啓示することも、実現することをもできない。結局、もし神がキリストにおいて彼の聖なる愛の意志を啓示するならば、そのとき、ユダヤ人たちに、彼らによって代表される人類にわたしたち全員の中に、心に住むあらゆる憎しみと敵意を呼び起こす。この意味において、それは真実である。わたしたちは、彼を十字架につける、わたしたちの罪が彼の死の原因である。しかし、カフタンは、今、その問いに来るとき、如何にして、わたしたちの罪によって原因となったキリストの死が、わたしたちの義認と再生のための手段となるのか、また、そのようなものとして必要であるか、そのとき、彼は、事実、キリストの死と復活についての神の聖なる愛の認識が展開し、教会は悔い改めと信仰を起こされ、義認と再生の祝福が享受される。キリストの死は、こうして、一語で言えば、罰として必要ではなく、教育学的手段（opvoedingsmiddel）なのであること以外のことを答えられない。しかしながら、如何にして、彼はそのために仕えることができるのか、また仕えねばならないのかが、完全に闇に留まる。教会の起源の、悔い改めと信仰の、義認と再生の事実への訴えは十分ではない、というのは、これは最初からキリストの死についての、カフタンがそれについて与えている以外のまったく別の評価に基礎づけられているからである。カフタンよりもなお強く、後に、ハルナック（Harnack）において、キリストの死は教会の救いに対して、歴史的、心理学的意義以上には、何のより高い意義をもっていないということが出て来た。イエスが宣教した福音は、結局、彼自身の人格について何も含まれておらず、神の父としての愛と人間の霊魂の無限の価値を内容とするだろうけであった。実際、彼は、他の人々を父に、福音の人格的な実現と力に導く案内者であり、彼自身が福音の構成要素ではない。 ３８０．
他の国においても、贖いの教理の神秘的、倫理的な再構成への同様の試みがなされた。オランダにおいては、フロニンヘンの神学者たち（de Groningen
Godgeleerden）は、満足説を血の神学として、神の性質と一貫性がないとして反対した。彼らは、人間によって負わされたイエスの死においてーイエス自身によって受けられたが、神によって望まれたのではなく、むしろ神によって許容されたがー神の愛の啓示、イエスの完全性と人間の罪の証明であることを見た。彼は、人々に自らの邪悪さを恐れさせたことにおいて、救いの手段であり、また、こうして、彼らを悔い改めと人生の向上に導いた。シャントピー デラサウサユ（Chantepie de
la Saussaye）は、贖いの教理について、ときどき、正統派の意味においてなお語ったが、しかし、すぐに、シュライエルマッハーと調停学派の影響の下で、彼は、贖いの教理は司法的、スコラ的形態を剥奪されねばならず、また倫理的に更新されなければならないことを確信した。キリストは、わたしたちの代わりに罪の罰を受け、それによって神の義を満足させた仲保者として見ることはできない。逆に、彼は、彼の人格において、神と人間を結合するゆえに仲保者である。その結合に対して、彼は死に至るまで忠実であり続けた。最後まで維持された神と人間のまじわりの中で、それはあまりにも弱々しく表現されているが、完全に栄光を与えられている神の正義を満足させておらず、そのため彼は、彼の共同体に入るすべての人のために復活と命を獲得したのである。わたしたちが赦しと平和、復活と命を享受できるのは、キリストによるというよりも、キリストにあってである。シャントピーデラサウサユの考えでは、身代わりとは、リッチュルの言葉で言えば、排他的ではなく包含的である。
近代神学は贖いの教理にはもともとほとんど感心がなかった。その起源において、近代神学は、もともと宗教な運動よりも学問的な運動であった。新しい自然科学と歴史的聖書批評学の影響の下に始まった。罪と贖いに関しては、近代神学は、非常に真面目であることが特徴的である。というのは、近代神学は、人間の道徳的傾向を高く評価し、そして、イエスを預言者として、模範として、道徳的理想として十分とした。罪は、堕落によって始まったのではなく、両親から子供たちに伝わったのではなく、次第に克服されるであろう必然的な欠陥であり、発展における瞬間、人間が本来の性質に沿って、あるべき、また将来そうなるであろうまだ存在していないもの（een
nog-niet-zijn）である。それゆえ、贖いに対して何の必要も感じられない。神自身が、人間の教育において罪を望んだ、そして、それゆえ、罪を父自身として皆に赦し、真剣さと忍耐力を持って道徳的理想を目指して努力する。そして、それは、事実、すべての人間に当てはまる。一人は同じ道の少し先にあるもう一人であった。しかしながら、この道徳主義において、宗教は正当に扱われないし、また、すぐにこの表面的な道徳主義は、楽観主義は悲しいことに失望した。罪の力は、自分自身の心と人類に、人々が最初に描いた以上にずっと大きいものとして現れた。文化とともに、邪悪と悲惨が増し加わった。人々は、道徳的な説教を好まないように見え、また、教会に背を向けるか、聖書の福音を宣べ伝えるために集まった。そうして、近代人のサークルから、冷たい律法の説教に満足できず、正統な用語、教会組織、告白と教義学を切望し、罪の罪と力を前にして贖いと贖罪の必要性を感じ始めた不満の群れが現れたのである。しかし、近代の立場には、必要に対して満足を見出すことができない。というのは、もしイエスの人格が人間以上のものでないならば、そのときそれが完全に聖なる人間であるならば、そのとき彼は宗教的生活に対して、そのとき程度において違いがあっても、すべての預言者たち、使徒たち、敬虔な人たちにふさわしい別のより高度な意義を決して持つことができない。人々が、彼をなおキリスト、神の子、教会の頭などとして崇めるならば、そのとき、人々は、フォン ハルトマン（Von
Hartmann）、デリーズ（Drews）、カルトホフ（Kalthoff）、フォン シュネーヘン（Von Schnehen）、ナウマン（Nauwmann）、その他の人々によって正しく定罪される感傷的なイエス礼拝（dien
sentimenteelen Iesuscults）を罪とするのである。その目的のために、若い近代人たちの間には、ヘーゲルとボランド（Bolland）に導かれた多くの人々がいて、知られないイエス像から決して年を取らないキリストの理念に戻るが、それは、ほとんどすべての宗教において別の名称の下に生じ、それにキリスト教もその起源を負うていて、永遠的な理念に表現を与え、神自身が世界と人類において苦しみと死によって、次第に罪と悲惨から解放し、こうして彼の栄光へと入れるのである。
しかし、ドイツやオランダ以上に、贖いの教理は、英語を話す世界において好きな主題である。それに関する新たな研究が日の目を見ない年は一年もない。１９世紀初頭までは、三位一体の三人格の間で永遠に結ばれた契約という古いプロテスタントの見解は、一般に依然として影響力を持ち続けた。しかし、次第に、満足説のこの教理はより新しい見解に譲らねばならなかった。アミラルドス（Amyraldus）の仮説的万人救済主義（het
hypothetisch universalisme）は、それによれば、キリストは、すべての人のために、彼らの側の信仰と悔い改めを条件として死んだというものであるが、イングランドとスコットランドにおいて多くの長老主義者たちにおいて見い出し始め、そして、グロチウス（Grotius）の理論への道を切り開いた。その理論によれば、赦しは本来キリストの贖いに依拠するのではなく、キリストの模範的な苦しみがその適用の可能性を造り出したのであり、また、ウエスレニアン・アルミニアンたち（de
Wesleyaansche Arminianen）によってだけでなく、多くの改革派神学者たちによっても、聖書的、正統的と受け入れられた。デール博士（Dr.Dale）さえも、ちなみに彼は道徳理論に強く反対していたが、キリストは、本来、彼の苦しみと死によって神の義を満足させたのではない。何故なら、神自身がキリストにおいて身代金を支払ったのであり、それは、それゆえ、神に払われることはあり得ないと言った。しかし、彼は抽象的な永遠的義と神の意志との間に区別をし、永遠的義は、それはグロチウスの統治的義と大きな類似性を示すが、キリストの苦しみを律法違反に対して必要としたと主張することを試みた。しかし、他の人々は、この道をさらに前進し、そして、重心を次第にキリストの客観的みわざから人間において起こる信仰と悔い改めによる主観的みわざに変えた。ホラス・ブシュネル（Horace
Buschnell）は、キリストの苦しみを、すべての愛を担うまったく身代わり的性格から説明することを試み、そして、さらに、キリストが彼の生涯と死においてわたしたちに啓示した愛、人間を変え、更新する効力について書いた。マック・レオド・キャンベル博士（Dr.Mc.
Leod Campbell）も同様に、キリストの苦しみを神の義からでなく、彼の愛から導いた。キリストは、神の愛を確保せず、彼自身が神の愛の賜物、証拠、啓示であった。それゆえ、彼は神へのわたしたちの代表者である。しかし、彼は、わたしたちへの神の代表者でもある。何故なら、彼は、わたしたちのまじわりに入り、神の前の罪責として、またわたしたちのすべての悲惨の源泉として、罪の最も深い悲しみを経験した。彼の苦しみは、神によって彼に置かれた罰ではなく、彼が苦しんだのである。何故なら、彼は罪を神の目で見たし、父との完全な一致において、罪を定罪し、また、彼の生涯と死において、人間の罪が神の父の心に意味するものを示したのである。一方において、彼は、父との結合ゆえに、罪を定罪し、神の裁きにアーメンを発し、他方、彼は苦しみの受け入れにおいて、人類との結合ゆえに、神の顔の前にわたしたちの罪を告白し、また、そうすることにおいて、もちろん罪悪感という主観的な要素も欠けていたが、神に完全な身代わりの悔い改めを献げたのである。この「身代り的な悔い改め」（deze
vicarious repentance）によって、キリストは、わたしたちに対する贖いを獲得したが、それは性質において法的なものではなく、道徳的、霊的であり、わたしたちに司法的に転嫁されるのではなく、神秘的、倫理的に伝達される。
この見解に、後にモバーリィ（Moberly）によって提示される贖いの教理は密接に関係している。彼は、最初、罰、悔い改め、赦しの概念を研究し、そして、その際に、それら三つは完全で、それらの理念と目的に対応し、罪人自身が罰として受け入れるときにのみ、悔い改めによって、人は自分の罪深い過去と決別し、その赦しによって罪の赦しが可能かつ現実的なものになり、言い換えれば、新しい人が古い人から立ち上がるときであることを明らかにした。しかし、その目的のためには、生まれつきの人間は自分自身からは不可能である。それゆえ、彼の「悔い改めの聖さ」（penitential
holiness）により、彼の「至高の悔い改めの犠牲」（sacrifice of supreme penitence）によって、罪の罰を完全に受け入れるため、それを贖いに変えるために、罪の完全な告白をし、罪を完全に破壊するため、赦しを得るため、神だけが完全な告白の道において与えることができるため、そのとき、キリストが地上に現れた。神と一つであるので、彼はそのように罪を定罪し、自身に罪を取ることができるが、しかし、人類と一つであるので、彼は罪を購うこともでき、また彼の御霊により、教会と礼典の手段により、贖いの獲得した祝福、悔い改めと赦しを教会に伝達する。贖いは、重心がなおより強く客観的側面から主観的側面に、トーマス・エルスキン（thomas
Erskin）、モウリス（Maurice）、キングスレイ（Kingsley）、F.W.ロバートソン（F.W.Robertson）、その他の人々によって、移行された。しかしながら、彼らは、キリストの生涯と死を、彼は真実で聖なる人間、わたしたちの悲しみに共感し、わたしたちのすべての病いを御自身に取り、わたしたちのために罪となり、御自身を罪人と同一視したとの観点から見た。このすべてにおいて、彼は神の聖なる意志に御自身を献げたが、しかし、彼は、人々が神を愛し、神に自分自身を献げるように仕向けなければならないような愛の実証を行った。同じ方法で、しかし、キャンベル（R.J.Campbell）にとっては、イエスの生と死の価値は、それほど親密で深いものではなく、聖なる神的人間であるイエスが最後まで召命に忠実であり続け、御父に完全に身を委ねたという事実にある。贖いの本質は、「すべての存在の根本的統一性の主張、個人と人類と人類と神との統一性にある」（in
the assertion of the fundamental unity of all existence, the unity of the
individual with the race and the race with God）。すべての犠牲と自己否定のべての行為と献身は、この理念を表わしている。しかし、イエスの生涯と死は、人類の何世紀にもわたる贖いの過程の頂点であり冠であり、その中において利己性が克服され、人類が神に向かって高められる。この贖いは、今、わたしたちにおいても繰り返されねばならない。イエスにあった同じ精神が、全人類の精神でもある。キリストの性質は、それは聖なる、神的人間の理想であるが、各人の潜在的にあり、そして、イエスの模範と彼の御霊の影響下に、わたしたちのすべてにおいて起こされ、愛と自己献身の生涯に起こされるのである。
同様に、フランスとスイスにおいて、身代わりの満足の教理（de leer van de satisfaction vicaria）は、キリストのみわざについての神秘的、倫理的、あるいは、道徳的見解に次第に道を譲った。たとえば、メネゴ（Ménégoz）によれば、キリストの死は、彼のメシア的召命への忠実の必然的結果であり、同時に、罪の深刻さと人類の連帯性の啓示であった。しかし、神に求められた死によって、また罪の贖いが必要とされたということは、原初的な福音の何の構成要素ではなく、それは罪の恵み深い赦しを伝えるものであったが、しかし、初めて後にパウロによって追加された。とはいえ、キリストの死は、人類のための祝福の源泉であり、また、わたしたちがわたしたちを彼と一体化し、信仰によって彼と一つの有機体となるとき、わたしたちがそれにあずかるのである。すべてのこれらのより新しい再構築にもかかわらず、イエスの身代わりの苦しみと死の告白は、教会において生きていて、それは神学においてもなお多様で、多かれ少なかれ決定的な擁護を見い出すのである。
３８１．仲保者イエス
イエスはキリストであるとの信仰は、最初からキリスト教の告白の心であり核であった（Het geloof, dat Jesus Christus
is, maakte van den beginne af het hart en de kern der Christelijke belijdenis
uit）。彼がキリストであるとの主張をもって、イエス御自身が行動した。この信仰により、クリスチャンたちは異邦人たちに対してと同様にユダヤ人たちに対しても、特別な分派として対立した。しかし、キリストの名に倣って、アンティオキアの信者たちが最初にクリスチャン（Christenen）と呼ばれた。イエスとキリストの名は、それゆえ、使徒的文書においてすぐに密接に結びつけられ、お互いを説明し、キリストの人格を彼のみわざからと同様に、彼の人格からみわざが理解される。その名は、ギリシャ語においては、Ιησους、ラテン語においては、Iesus,Jhesus,Hiesusによって表示されたが、イスラエル人たちの下では、普通の名であり、旧約聖書において、少なくとも４つの形態で生じる、ときどき、その名は、יהושוע、申命記３：２１、士師記２：１、あるいは、יהושועとして、出エジプト１７：９、民数記１３：１６、ヨシュア記１：１、士師記２：６、サムエル上６：１４、１８、列王下２３：８、ハガイ１：１、ザカリヤ３：１で書かれ、また、ときどき、彼は、הושעというより短い形態で生じる、民数記１３：８、列王下１５：３０、ホセア１：１、ネヘミヤ１０：２４、あるいは、ישועの形態で生じる、エズラ２：２、ネヘミヤ７：７、１１，３９など。
それは長い形態のJehosuaが、Jesuaという短くされたかが、またどうしてホセア書におけるヨード（י）が完全に抜け落ち得たかをまだ十分明確化されていない。そして、その名からの由来が学問的にまだ確立していない。過去に、人々は、通常、Jehosuaというその名に、ישעという動詞の３人称の未完了のヒッヒール形（יהושיעという形態に並んで、詩編１１６：６）を見た。その結果、その意味は、彼は、すなわち、主は助ける（helpen）、あるいは、救う（redden）であろうと見た。しかしながら、最近では、多くの人々は、その名をיהוとשועから成るものと見て、その結果、そのときその名は主は助け（hulp）、あるいは、救い（heil）(参照：ほぼ同じ組み合わせが、逆の順序で出てくる、ישעיו、イザヤ１：１)。如何に昔から、その名は、ישע助ける（helpen）、救う（redden）という動詞と関係していたことか。モーセは、意図的にホセアに、ヌン（Nun）の子をヨシュアの名に与え、民数記１３：８、１６、また、マタイ１：２１において、ヨセフが、天使の明白な命令によって、彼の息子にイエスの名をつけた。何故ならば、彼は彼の民を彼らの罪から救うためである。その名は、なお後にも他の人々によっても担われているが、使徒言行録７：４５、ヘブライ４：８、コロサイ４：１１、しかし、イエスにはまったく独自の意味に属している。ジュスイット派（de
Jezuïten）は、後になおこの名に倣って自己を呼ぶが、しかし、彼らはそうすることにおいて、誰もその権利を持たないタイトルを取った。何故なら、キリストだけが救い主だからである。さらに、彼らは、彼らの組織と行動によって、彼ら自身の名に多くの大きな名誉棄損を与えてきた。信者たちは皆、それゆえ、キリストの名に倣って自分たちを呼ぶのである。何故なら、これは個人的で歴史的ななではなく、職務的な名であり、また、このキリストとのまじわりにおいて、彼自身が預言者、祭司、王として油注がれるのである。
この歴史的、職務的名称を除いて、キリストには聖書において、なお多くの名が与えられている。彼は、神の子、独り子、御自身の者、神の愛する御子、言葉、神のかたち、神の栄光の輝き、神の存在そのものの正確な刻印（uitgedrukt
beeld zijner zelfstandigheid）、神の創造の初め、真実な神そして永遠の命、すべてに勝ってほめたたえられるべき神（あるいは、より正確には、すべものにまさって永遠にほめたたえられるべき神）、インマヌエルと呼ばれる。さらに、彼は、人の子、ヨセフとダビデの子、ナザレ人、ガリラヤ人、聖く義しい人、第二のアダム、天からの主、すべての被造物の最初に生まれた者、死者の中から最初に生まれた者、最後に、彼の職務にしたがって、教師、祭司、偉大な祭司、大祭司、主の僕、神の小羊、王、ユダヤ人の王、イスラエルの王、王の王、主、栄光の主、教会の頭と花嫁、魂の牧者と監督者、信仰の導き手と完成者、救いの導き手、道、真理と命、命のパン、命の君、復活と命、羊たちの羊飼い、羊の囲いの門、世の光、輝く明けの明星、ユダの士族の獅子、アーメン、忠実で真実な証人、アルファでオメガ、最初で最後の者、初めであり終わりであるお方、生ける者と死ねる者の審判者、そのお方により、そのお方において、そのお方のため、そのお方のために万物は造られたところの万物の世継ぎである。すべてこれらの名は、キリストに属するすでに十分に不変でまったく独自の場を証明するのである。
μεσιτηςの名称は、７０人訳のヨブ記９：３３に、ヨブが神と彼の間に立つことを望む救う者（redder）あるいは助け手（helper）(調停者あるいは仲裁者:scheidsman
en scheidsrecter) として出てくる。新約聖書においては、その名称は、モーセにだけ、ガラテヤ３：１９、２０で表示され、また、キリストに、テモテ一２：５、ヘブライ８：６、９：１５、１２：２４で表示される。他方、μεσιτευεινという動詞は、ヘブライ６：１７で一度用いられる。その言葉は、両者を相互のまじわりにもたらす、あるいは、相互に和解させるために、申命記５：５、一般に二つの当事者の間に入る人物を示し、また、それゆえ、イエスの人格の場と彼のみわざの性格を示すのに、非常に適している。その仲保者性の理念は、わたしたちがすでに見たように、すべての宗教に属するが、しかし、占い師たちと魔術師たちに、祭司たちと王たちにおいては実現しない。モーセでさえもこの名称を、一時的に、範例的な意味において、不十分な方法で担ったに過ぎない。というのは、彼は、実際、神の家に忠実であったが、単に僕として、神により民に語られるであろう証言をするためであったからである、ヘブライ３：５。彼は律法を受けたが、しかし、直接神から受けたのではなく、み使いたちの手段を通してであった、ガラテヤ３：１９。彼は、仲保者として立ったが、しかし、民と共に神に対してであり、また、律法をイスラエルのためだけではなく、彼自身のためでもあった、ヨハネ１：１７。しかしながら、キリストは、御子として神の家のためである、ヘブライ３：６、何故なら、彼は、彼を通して神御自身がわたしたちに語り、神が万物の世継ぎと指定し、彼によって世界をも創造した御子であるからである、ヘブライ１：１、２。彼は神とわたしたちの間で背後に立つ第三者ではなく、彼は神御御自身の御子であり、神の栄光の輝きであり、神の存在そのものの正確な刻印であり、神の本質と神的性質の属性への参与者であり、同時に人の子であり、人類の頭であり、教会の頭である。彼は、二つの当事者の間に立つのではなく、彼は彼自身の人格において両方の当事者なのである（Hij
staat niet tusschen twee partijen in, maar Hij is beide partijen in eigen
persoon）。
宗教改革の世紀に、キリストのこの仲保者性について、重要ではない違いが生じた。オジアンダー（Osiander）に対して、彼はキリストにおける神の存在論的義(de
wezensgerechtigheid Gods in Christus)を義認の材料（de materia der rechtvaardigmaking）と主張したが、ケーニスベルクの教授のスタンカルス（Stancarus,
hoogleeraar te Königsberg）は、キリストは彼の人間性によってのみ仲保者であり、また、それゆえ、彼の人間的に獲得された義を根拠にしてのみ、わたしたちも義とされ得るとの命題を弁証した。この命題のため、彼はアウグスチヌス、ロンバルドゥス、トマス、その他の人々に訴えることができた。彼らすべてが、キリストが人間である限り、キリストだけが仲保者であると。というのは、彼が神である限りにおいては仲保者ではなく、父と同等であるからである」（in
quantum homo ; nam in quantum Deus non mediator sed aequalis Patri est）と言ったからである。そして、これらの神学者たちは、スタンカルスによって、改革者たちよりも高く評価された。「一人のペテトトロス・ロンバルデゥスは、百人のルター、二百人のメランヒトン、三百人のブリンガー、四百人のピーター・メーター、五百人のカルヴァン以上であり、彼らが乳鉢で一緒に粉砕されたとしても、真の神学は一オンスも生み出さないであろう」（plus
valet unus Petrus Lombardus,quam centum Lutheri,ducenti Melanctones,trecenti
Bullinggeri,quardringenti Petri Martyres et quingenti Calvini; qui omnes
si mortario contunderentur, non exprimeretur una uncia verae theologiae）。ルター派の人たちと改革派の人たちは、それに反対して、キリストは、両方の性質によって仲保者であり、また彼は、そのようなものとして永遠から任命され、また彼は仲保者としての職務にすでに旧約聖書の日において果たしていたことを最も強く主張した。
ローマは、それに対して、キリストは、彼の人間の性質においてのみ仲保者であることを主張したが、しかし、彼らはキリストは仲保者であるために、神と人間の両方であらねばならないことを、また、両方の性質が仲保者の前提と本質(het
suppositum en de substantia mediatoris)を構成することを認めた。また、彼らは、それゆえ、キリストは、彼の自己犠牲、苦しみ、死のような仲保者のみわざを彼の人間の性質において果たしたこと、また、この性質が、それゆえ、それによる唯一の原理であること、仲保者のみわざの形式的原理（het
principium quo,het princium formale）であることを言うことだけがなおできたのである。しかし、仲保者の人格とみわざのこの分離は、維持できない。仲保者のみわざは、それは両方の性質を持った一人格によって実行されるからである。それは、ペタフィウス（Petavius）がルター派の人々と改革派の人々に帰するように、彼らが仲保者のみわざを、人間から切り離して、キリストそのものの神的な性質によるもの（per
esse et ab humana divulsa）であると言うことではない。そのようなものとしての彼の神的性質によってでなくて、父と聖霊と一つでありまた同様に、御子は仲保者であるが、しかし、実際、経綸的な神的性質(naar
de Goddelijke natuur van Christus κατ οίκονομιαν）によって、彼はその自発的な恵みの経綸に身を委ねた限りにおいて、それはそれに従う（quantenus secundum eam
voluntaria illa dispensatione gratiae se submiserit）のである。聖書は、それゆえ、彼の神的性質によるキリストをしばしば謙卑の主体と呼ぶ、ヨハネ１：１４、コリント二８：９、フィリピ２：６。教会教父たちも彼ら自身を同じ精神において表す。アウグスチヌス、ロンバルデゥス、トマスは、彼の神的性質によってでなくて、そのようなものとして、キリストは仲保者であったし、またあることができたこと以外のことを意味していない。終わりに、ローマの神学者たち自身が、スタンカヌスに反対して、この見解を再び弁証しなければならなかった。
キリストの三つの職務
このあとなお別の違いがある。もしキリストが、すなわち、ベラルミヌス（Bellarminus）とペタフィウスの意味において、彼の人間性によってだけ仲保者であるならば、そのとき、彼は彼の受肉以前は、仲保者ではなく、彼の受胎の瞬間において、これを始めるのみであり、また、旧約聖書は、それゆえ、事実、仲保者を奪われるのである。しかし、御子は時の満ちるに及んで初めて受肉したが、彼は仲保者として永遠から選ばれ、任命されていたということは正しい。ダビデ、ソロモンなども永遠から王に選ばれ、そしてこの意味で油注がれたと言うことによって、これに反対できない。というのは、その際に、この大きな違いがあるからである。ダビデ、ソロモン、また彼らの妊娠以前にすべて選ばれた者たちは、単に神の思いと聖定に存在していただけであるが、御子は最初に神とともにあり、また神御自身であったからである。仲保者への彼の選びは、神から離れて起ったのではなく、救いの契約（een
pactum saltis）の性格を担っている。贖いのみわざは、父、子、聖霊との共同のみわざ（eene gemeenschappelijk werk）であり、また、堕落後直ちに三人格によって遂行され始めた。父は永遠から父の子らの父であり、また聖霊は永遠から信者たちの慰め主であるのと同じ意味において、御子は永遠から仲保者に任命され、堕落後直ちに仲保者として行動したのである。すでに旧約聖書の下で、彼は預言者、祭司、王として活動した。堕落した世界は、贖罪と贖いのため直ちに仲保者としての御子に引き渡された。そして、時が満ちたとき、彼は、すでに仲保者であったが、受肉において啓示された、ヨハネ一１：２、３：５、８。ここからキリストの王の職務は前面に出ることが説明されるべきである。そのようなものとして、彼は旧約聖書において、特に示され、予告された。また、この称号をもって、彼は彼の民の間で活動した。しかし、キリストの王権は地上の支配者たちのそれとは非常に異なっていた。それは、神権政治的な、ダビデ的な王権においてのみ彼の型（zijn
type）を持ち、それは本質的に他の王たちのそれとは異なっていた。それは神の名における王権であり、神の意志に服従し、すべてのことを神の栄光に先導し、それは暴力と武器の王権ではなく、まったく別のより良い方法で支配し、治める。それは御言葉と御霊によって、恵みと真実によって、正義と義しさによって支配する。王は、それゆえ、同時に預言者、祭司である。彼の力は、真理と義に仕えることにある。
しかしながら、キリストの王権は、まったく独自の性格を担うゆえに、多くの人々が、彼の王的職務について語ることに、あるいは、比喩的な意味でキリストとともに王の称号を使用することに反対する。事実、多くの人々が、キリストの場合、職務ではなく、個人的な召命について語ることをよりよく思う。というのは、職務は司法界に属し、キリストの王権は愛の領域であり、正義の領域ではない。職務は、政府を前提とする職業、職業、地位であり、その政府による任命に基づいており、給与ではなく、個人的にその政府に仕える人が含まれる事実によって異なる。しかしながら、まさにそれゆえに、職務という言葉が、キリストに関して使用されるべきなのである。というのは、彼が自分自身で仲保者の尊厳を取ったのではなくて、神が渠を選び、召し、任命したからである、詩編２：７、８９：１９－２１、１１０：１－４、１３２：１７、イザヤ４２：１、ヘブライ５：４－６。キリストという名称は、召命の名称ではなく、職務の名称、タイトル、イエスが要求した尊厳である。何故なら、彼は神御自身によって選ばれたからである。旧約聖書の下では、特に王たちが油注がれる、志師記９：８、１５、サムエル上９：１６、１０：１、１６：１３、サムエル下２：４、５：３、１９：１０、列王記上１：３４、３９、列王記下９：１、１１：１２、２３：３０、たぶん聖なる油で、列王上１：３９、詩編８９：２１、油注がれた者は神政政治的王であった、詩編２０：７、２８：８、８４：１０、８９：３９など。油注ぎは、神的聖別、神の御霊で備えられたことの象徴であった、サムエル上１０：１、９、１０。そして、この注ぎは、外面的で、象徴的な意味ではなく、霊的で、本質的な意味で、キリストが受けたのである、イザヤ１１：２、４２：１、６１：１、詩編２：６、４５：８、８９：２１、ルカ４：１８、ヨハネ３：３４、使徒言行録４：２７、１０：３８、ヘブライ１：９、聖霊による受胎において、ルカ１：３５、ヨハネによる洗礼によって、マタイ３：１６、マルコ１：１０、ルカ３：２２，ヨハネ１：３２。彼の王権は彼の油注ぎのように現実であり、旧約聖書の下では単に影であった。神政政治的で、ダビデ的な王権は、単に弱い型（er slechts de zwakte type）であり、キリストの王権においてその真の実現を受けた。キリストは、ダビデとソロモンよりも、より偉大で、非常に真実な意味で王である。というのは、神政政治の理念に関して、王は神の御心に従う人間であらねばならず、また、彼の兄弟たちを超えた専制君主のように自己を持ち上げることは許されなかった、申命記１７：１４－２０。この王の律法にイスラエルの王たちが自分自身を一致させないならば、また、預言が、彼の民を真実と正義によって治め、敵に勝利するであろうその者身が主の油注がれた者であり神の僕である別のよりよい王を待望した。そのような王として、キリストは行動した。彼は神の国を立て、それは現在、まだなお霊的に、道徳的に存在するが、しかし、いつか外面的に、物理的に神の都において明らかにされることが定められており、そこからすべての不信仰者たちが追放され、神がすべてにおいてすべてとなるであろう。そして、彼は、そのような王として、真の本当の意味における王であり、それゆえ、彼の王権は預言者的また祭司的職務を含むのである。
３８２．
しかしながら、キリストの三重の職務は、多くの人々において反対を見い出した。何故なら、一つの務は、他の職務と分離されるべきではないからである。実際、キリストのどの一つの活動も独占的に一つの職務に限定されない。彼の言葉は、律法と福音の宣教であり、そして、こうして、預言者の職務を指し示すが、しかし、彼は権威を持った者として語り、そして、すべてが彼の命令に従う、マルコ１：２２、４：４１、ルカ４：３２など。彼は御自身を王と呼び、真理について証するために世に来た、ヨハネ１８：３７。彼の奇跡は、彼の教えのしるしであり、ヨハネ２：１１、１０：３７など、また彼の祭司的憐れみの啓示でもある、マタイ８：１７、また彼の王的力の啓示でもある、マタイ９：６、８、２１：２３。彼の執り成しは、大祭司的であるだけでなく、彼の預言者的で王的な職務を構成する、ヨハネ１７：２、９、１０、２４。彼の死は告白であり、模範である、テモテ一６：２、ペトロ一２：２１、黙示録１：５、しかし犠牲でもある、エフェソ５：２、彼の力を示す、ヨハネ１０：１８。教義学は、それゆえ、各職務が特にイエスの生涯とみわざから何を提供できるかについても困惑してきた。預言者的職務の下において、通常、教え、予告、奇跡が扱われ、祭司的職務に下に、犠牲、執り成し、祝福が扱われる。しかし、謙卑の状態においては、王の職に残されたものは、東方の賢者の賛辞、エルサレムへの入場、使徒の任命、秘跡の制定以外に何も残されていなかった。その一部は同様に他の職務によるものであり得る孤立化した事実もある。高挙の状態における違いの説明はなお難しい。というのは、イエスの預言者的活動は、実際、御言葉と御霊による彼の教会の教えにおいて続いていくが、しかし、王としても彼は、これらの両方によって彼の教会を治め、保護する。また、彼の大祭司の執り成しは、嘆願ではなくて、王的意志である、ヨハネ１７：２４。それは、それゆえ、特定の活動をイエスの生涯から分離する原子論的な見方であり、そして、そのうち預言者につながるものだけがあり、他のものは祭司や王の職につながる。キリストは、昨日も、今日も、永遠に同じである。彼は、預言者的、祭司的、王的職務を行ったのではなく、彼が彼の全人格において預言者、祭司、王なのである。そして、彼であり、語り、行うすべてが、三重の尊厳を現わす。実際、わたしたちにとって、一つの活動に、彼の預言者的以上のものがあり得、また、他の一つにおいて、彼の祭司職、あるいは彼の王的職務が行動する。また実際、彼の預言者職は、旧約聖書の日において、彼の地上での歩み以上により多く、彼の祭司職は彼の苦しみと死においてより多く、彼の王職は高挙の状態においてより多く前面に出る。しかし、彼は、現実に、すべて三つの職務を同時に担い、受肉後と同様に以前も、謙卑と高挙の状態の両方においても、すべて同時に行うのである。 しかしながら、キリストの三つの職務について語ることは、恣意的なことではなく、反対なしに称賛される東洋のイメージではない。またそれは１つの職務を他の２つの職務のいずれかに縮小することもできない。分離は不可能であるが、区別はそこで最も確かである。仲保者であるために、完全な救い主であるために、彼は父によって三つのすべての職務に任命され、御霊により、三つのすべての職務に備えられた。結局、人間の理念は、これらの三つの尊厳と活動をすでに自身に含んでいる。彼は知るために頭を持ち、与えるために心を持ち、治め、導くために手を持つ。また、それに応じて、彼は最初から、神によって、認識と理解、義と聖、支配と栄光（祝福）を備えられた。人間を腐敗させた罪は、彼のすべての能力に影響を与え、そして、無知、愚かさ、誤り、偽り、盲目性、闇だけでなく、不義、罪責、道徳的堕落、そしてさらになお悲惨、死、滅びであった。それゆえ、キリストは、わたしたちのために、子、神のかたちと同様に、わたしたちのために仲保者、救い主として三つの職務を担わねばならない。彼は、神の真理を知らせ、啓示するために、預言者であらねばならない、御自身を神に献げ、わたしたちに代わって御自身を犠牲にするために、祭司であらねばならない、神の意志によってわたしたちを治め、保護するために、王でなければならない。教えること、和解すること、導くこと、教育すること、獲得すること、救いを適用すること、知恵、義と贖い、真理、愛と力、すべて三つの職務は、わたしたちの完全な救いのために必要である。彼は、神のわたしたちの関係において預言者である。わたしたちと神との関係において祭司である。頭として人類との関係において王である。合理主義は、彼の預言者職のみを、神秘主義は彼の祭司職のみを、千年王国論は王的職務の実を知る。しかし、聖書は、彼を常に同時に三つすべてを与え、そして、彼をわたしたちの最高の預言者として、わたしたちの唯一の祭司として、わたしたちの永遠の王として描く。彼は王であるが、しかし、彼は剣ではなくて、彼の御言葉と御霊によって治める。彼は預言者であるが、彼の言葉は力であり、事が起こる。彼は祭司であるが、しかし、彼は死ぬことにより生き、苦しむことにより勝利し、また彼の愛によって全能である。彼は、常にすべてを併せる。どちらか一方がなければ他方は決してない。王として、語ることと行うことにおいて力があり、また彼の王的支配において恵みと真理が満ちている。
３８３．神の義あるいは愛？
このキリストは、彼の人格の全体において、また彼のみわざの全体において、神の愛の啓示である（Deze Christu is in gehhel zin persoon en inzijn gansche werk eene opnbaring
van Gods liefde）。グノーシス主義者たちは、また特にマルキオン（Marcion）は、旧約聖書において自己を啓示をした怒り、復讐、義の神と、新約聖書においてキリスト御自身が知らせた愛と恵みの神の間に鋭い対照を造り出した。しかし、そのような対照は、聖書に知られていない。旧約聖書のヤーウェ・エロヒーム（Jhvh Elohim）は、実際、義であり、聖であり、彼の栄誉に熱心であり、罪に対して怒るが、しかし、彼は恵み深く、憐れみ深く、進んで赦し、慈しみに満ちている、出エジプト２０：５、６、３４：６、７、申命記４：３１、詩編８６：１5など。新約聖書において、神、わたしたちの主イエス・キリストの父は、すべての恵みと憐みの神である、ルカ６：３６、コリント二１：３、ペトロ一５：１０。父とキリストの間に対立はない。キリストが愛に満ち、憐れみ深く、進んで赦すように、父もそうである。キリストが語るのは父の言葉であり、彼が行うみわざは父のみわざである。父御自身が、救い主、σωτηρである、ルカ１：４７、テモテ一１：１、テトス３：４、５、キリストにおいて世を御自分を和解させたお方であり、その罪を数えない、コリント二５：１８、１９。キリストは、それゆえ、父を彼のみわざによって最初に愛と恵みに動かしたのではなく、父の愛が先行し、キリストにおいて、神の愛の賜物である啓示となったのである、ヨハネ３：１６、ローマ５：８、８：３２、ヨハネ一４：９、１０。
実際、パウロは、ローマ３：２５、２６において、神は、神の義を示すため（είς ένδειξιν της
δικαιοσυνς αύτού）、キリスト・イエスを、すべての人の目の前で公然とその血への信仰によって贖われるようにされた。ここで、神の属性としての義（de
gerechtigheid als deugd Gods）は間違いなく神の考えであり、それはユダヤ人や異邦人が以前に犯した罪を神の忍耐の下で償うことなく過ぎ去らせたため、啓示されるようには見えず(niet
tot openbaring scheen tekomen)、したがって啓示されることもなかったように思われた(en daarom scheen niet
te bestaan)。時が満ちた現時点において、神がイエスの信仰を持つ者を自ら明らかに義と認められるよう、その血による贖罪としてキリストを提示することが必要であった。しかし、ここにも、神の義は彼の恵みと愛と矛盾しないものと考えられている。結局、神の義は、罪人たちを彼らの違反に対して罰することにおいて示されることにはなく、それはキリストにおいて彼の血によって立てられ、そのため、神御自身が今や罪の赦しにおいて、義であることが証明され、同時に信者を義と認められるようになった。神の義は、すなわち、聖書においては初めに神は義しく裁き、有罪の人を無罪とみなし、無罪の人を有罪と見なさず、そして、さらに、彼は貧しい者たち、悲惨な者たち、個人的に有罪である者たちを助け、救い、そして彼らの権利において認めることにある。この最後の意味において、義は、そのとき、憐れみ、忠実、真理と近いが、しかし、それは誰かが持つ権利と、その人が置かれている状態との間に存在する異常性（de
anomalie）に特に注意を払っていることと区別される。ここで、パウロにおいても、神の義は彼の慈しみ、憐れみ、忠実あるいは真理と同一ではなく、増してやそれらに反対することははるかに少ない。結局、それは、キリストが贖いに与えた神の属性であり、その結果、神は恵みから、また義を保持しながら、罪を赦すことができる。したがって、福音の賛美歌１２４：５が描いているように、神の義と愛との間の対立に疑問の余地はない。わたしたちの罪の状態においては、対立が生じるように思えるが、しかし、神においては、すべての属性は一つであり、完全に調和するのである。
それゆえ、一方においては、あたかもキリストだけが神の刑罰の義の啓示であることは拒否さればならない。啓示の神、わたしたちの主イエス・キリストの父は異教の神ではなく、あらゆる種類の犠牲を払って人々の妬みや憎しみを避けなければならない。犠牲は聖書において、旧約聖書においても、まったく別の性格を担い、それは恵みの契約を前提する。また、父と子の間にはグノーシス派の対立が存在し、御子を復讐の神としての父よりもはるかに恵みの神として高め、旧約聖書と新約聖書、創造と被造物、自然と恵みを引き裂くことになるであろう。しかしその一方で、キリストは神の愛だけを示すものとして理解することはできず、少なくともわたしたちが時々想像するような愛ではなく、神の愛は聖書の中に完全に現れている。その場合に、キリストの苦しみと死だけでなくて、聖書が疑いもなくわたしたちの罪のための罰であることを表明していることがまったく説明されずに留まるが、しかし、神は御自身を義と示すために、またイエスを信仰する者たちを義とするために、神はその目的のためにキリストを贖いに立てたというパウロの言葉に、そのとき直接に矛盾する。結局、これがローマ３：２１－２６の核である。今や、福音において、律法なしに（zonder de wet）、律法に依存しないで、神は彼の義を啓示したのである。律法によれば、神は彼の義を、すべての人を定罪することにおいて以外には啓示し得ない。というのは、彼らはすべて有罪であり、怒りの対象であるからである。律法の行いによっては誰も義とされ得ない、３：１９、２０、２３。しかし、福音の奇跡は、神は義を律法なし（zonder de wet）で啓示することにあり、また、そうして、神御自身が義であり、また（それにもかかわらずではなくて：niet:desniettegenstaande）、むしろ、義のゆえに（maar :krahatens die gerechtigheid）イエスを信仰する者を義とし、そして彼ら自身は、律法によって裁かれれば不信心なのである（４：５）。そして、それが、今や、神が、キリストを、信仰によって、彼の血において、贖いの手段として公に立てたこの方法で可能とされたのである。これと関係して、神の義と言えば、それゆえ、それによって神が律法によって（naar de wet）、罪人を定罪し、罰する神の属性を考えてはならない（教義学においては、神の復讐的義（de justitia vindicativa）も通常彼の義として数えられるが）が、しかし、それどころか、神のその属性は（aan die eigenscpa Gods）、それによって神が福音において(in het Evangelie)イエスを信仰する者たちを無罪放免し、義とするのである。神は福音において、律法なしに、義しく赦すここに、神の義は最も輝くのである（Hierin komt Gods gerechtigheid het schitterendst ui, dat Hij in het Evangelie zonder wet, rechtvaardiglijk vergeeft）。それは、恵みに対立せず、むしろ、ある意味で含むのである。それは、キリストの義性の贖いにおいて、不信心な者を、信仰において恵みによって義とする道を開いたのである。そして、恵みは、それによってわたしたちが義とされるために、正義と義の道において実現したのである。「愛は、嵐の雲の向こうにある太陽のように、最後の代理人として怒りの背後に隠されている」（Hinter dem Zorne ist als letztes Agens die Liebe geborgen, wie hinter gewitterwolken die Sonne）（デリッチ）。
３８４．
これは当然、神に対する義のこの方法は必要か、あるいは、彼の恵みを啓示するために、そのとき、彼は贖いなしでも赦すことができるのかというよく議論されている神学的問題につながる。スコートゥス（Scotus）は、神の絶対的な支配（het
absolutum dominium Dei）から出発し、そして、受肉と贖いは神の恣意的な決定にのみよると考えた。アタナシウス(Athanasius)、アウグスチヌス(Augustinus)、トマス(Thomas)、カルヴァン(Calvijn)、ムスクルス(Musculus)、ザンキウス(Zanchius)、テゥイッスス(Twissus)、その他の人々は、それらを絶対的に必要とは判断せず、むしろ、神の知恵にしたがって、非常にふさわしく、適切と考えた。エイレナイオス（Irenaeus）、バシリウス（Basilius）、アンブロシウス(Ambrosius)、アンセルムス(Aselmus) ベザ(Beza)、ピカトール(Piscator)、フォエチウス(Voetius)、テレチヌス(Trretinus)、オーエン（Owen）、デ モール（de Moor）、その他の人々は、それらを絶対的に必要と主張する傾向にあった。多くの人々が、神における恣意性を王位につけるよりも、あるいは、彼の全能を絶対的な必要性によって制限するよりも、中間の道を歩むことを好むことは、理解できる。しかし、もし、この関連で、この概念が適切に理解されるならば、必要性を語ることには、反対がない。神の意志は、神のすべての属性と存在全体の形式的な恣意性ではなく、また、それらすべての属性とその存在全体に拘束され、したがって自由ではない選択でもない。神の意志は、しばしば、わたしたちに対して、事柄の最後の根拠であり、また、わたしたちは、なぜ神がそのように行動し、そうでなければそうでなかったのかはわからないが、わたしたちは、これに身を委ねなければならない。しかし、神において、その意志は、彼がそのように行動し、またそうでなく行動することに対して、それらの賢明で聖なる理由を持つ。というのは、彼は、彼のすべての属性、彼の愛、知恵、正義などに従わない限り、決して行動しない。そして、すべての属性との神の意志のこの一致は、強制的ではなく、この意志に対する制限でもなく、まさに真実で最高の自由である。そうして、彼の聖であり、賢明であり、全能であり、愛である性質自身として、意志することと行動することが、神にとって最高の自由と最高の必要性を求めるのである。それは、受肉と贖いにも同じである。それらは、必要と呼ばれてよいであろう（zij mogen noodzakelijk heeten）、強制ではなく、外側から神に課され、そしてそこから彼は逃げることができないが、しかし、実際、行為と行動として、彼のすべての属性にしたがって、また、これらを最も輝かしく啓示にもたらすのである。
というのは、最初に、聖書は、神は彼自身の意志のためにすべてを行うことを教える、箴言１６：４、ローマ１１：３６。最後の根拠と最後の目的は、受肉と贖いも含めて、被造物には、罪人の救いにはあり得ず、神御自身にある。彼自身の意志のため、彼は彼の御子をわたしたちの罪の贖いのため、世に遣わしたが、それはこうして彼の属性が啓示されるためであった。そして、実際、神の完全性が、受肉と贖い程明らかにされる事実はない。ただ一つの属性が、それらによって最も明らかにされることはなく、それらすべて、彼の知恵、恵み、愛、憐れみ、寛容、義、聖、力などが共に最も明らかにされる。通常、神の愛と義のみが語られるが、しかし、他の属性も忘れられてはならない。キリストは、人格、言葉、みわざにおいて、最高で、最も完全で、最も包含的な神の啓示、彼の僕、彼のかたち、彼の御子である。彼は、わたしたちに父を知らせた。もし神が最も栄光的に自己啓示を望んだならば、そのとき、そのために、創造と再創造が、受肉と贖いが必要であった。創造において、すでに彼の属性が啓示されたが、しかし、再創造においては、なおはるかに豊かで、より高度に啓示された。彼は自己栄光化のため、全能おいて罪をも手段として如何に用いるかを知っておられるのである（de
zoned weet Hij almachtig te gebruiken als middle, om zichself te veheerlijken）。
第２に、聖書の教えは、神は、絶対的に義にして、聖であり、神的憎悪をもって罪を憎む、創世記１８：２５、出エジプト２０：５、２３：７、詩編５：６、７、ナホム１：２、ローマ１：１８、３２。神と罪の間には、絶対的な対立があり、そこに必然的に表明される。彼は彼のすべての属性をもって罪に対応する。彼は罪を望まない。彼は罪に楽しみも喜びを持たない。彼は罪を憎み、罪に対して怒る。罪は、神によって憎まれ、罰せられることなしに、存在することができない。神は、御自身を否定することができない。彼は罪の権利を認めることはできない。彼は、サタンに自分と同等の権利を与えることはできない。彼はまさに絶対的に聖なるので、彼は罪を犯すことがあり得ない。実際、誰もが同意する。すべての人が神は贖いなしに罪を赦すことができると言う。そして、最高の愛として赦さねばならないし、誰もが、神は罪を赦す（vergeeft）ことを認める、すなわち、彼はその罪に罰を課す権利と力を持っているが、彼は恵みによって罪を罰しないことを。チャバンネス氏（Mr.Chavannes）でさえも、近代の神学者たちの集まりにおいて、「赦す愛」（vergevende
liefde）という表現は形容詞の矛盾であり、何の意味もないという彼の命題にはほとんど同意しない。
第３に、神は、とても確かに人類の父であるが、しかし、この名は、神が彼の被造物と立つ関係の全体を表すものではない。彼は、創造者、保持者、支配者、主権者、律法授与者、審判者などでもあり、また、もし人々が一つのこの名において、他の名を見落として、神の十分な啓示を見るならば、それは一面的で、誤りに導く。こうして、神は、罪に関して、借金を赦し、軽蔑を忘れ、そして赦することができる債権者でもないし、被害者でもない。彼は、御自身が与えるお方であり、保護するお方であり、律法の復讐者であり、人格において義であり、またそのようなものとして彼は、贖いなしでは罪を赦すことができない、ヘブライ９：２２。その資質において、彼は律法の義を無にできない。というのは、それは、ここでは、人々が放棄することができる個人的な、あるいは、私的な権利について語っているのではなく、神御自身の完全性と栄誉についてである。しかし、人々は、地上の政府がしばしば行使する恩赦の権利に頼ることで、これに対抗することもできる。したがって、この恩赦の権利は、地上の政府が誤りを犯しやすく、多くの場合、重すぎる、あるいは、不当な刑罰を課したため、全員に与えられるのみであった。神においては、そのようなことは起こり得ない。彼が義そのものである。恵みによって、義を回復したり、恵みによって義を無にしたりする必要がなく、両方をキリストの十字架において啓示するのである。
第４に、そのようなものとして道徳律法は、恣意的で積極的な律法ではなく、神御自身の性質に基礎づけられている。それは、非人格的ででもなく、神から独立してもなく、それ自身の力に依拠し、その結果、キリストは神を満足させたのではなく、律法の要求を満足させたのであるが、しかし、道徳律法は神の存在の表現である。神は、律法を維持することにより、御自身を維持し、その逆ではない。それは、それゆえ、破られず、不可侵である。それは、聖書全体を通してこの性格を担う。わたしたち自身の良心もそれを証しする。いわゆる道徳的世界秩序の全体が、責任のその現象、義務感、罪責、悔い改め、死、反省、罰などをもって、道徳律法のこの不可侵性の上に立てられている。キリストは、それゆえ、律法を廃止するために来たのではなく、成就するために来たのである、マタイ５：１７、１８、ローマ１０：４。彼は、その尊厳と栄光性を維持した。そして、それゆえ、信仰は律法を無効にするのではなく、維持するのである、ローマ３：３１。
第５に、罪は聖書においていろいろな性格を担う。罪は無理解、愚かさ、有罪、汚れ、不潔、恥などである。罪は金銭的な借金にたとえられる。また、別の観点から、神を侮辱することである。しかし、それに対して、罪は聖書において、犯罪、正義に対する違反、神の威厳の侵害であり、それらはわたしたちを彼の裁きの下にもたらし、ローマ３：１９、また、死に値する、ローマ１：３２。この性質において、罪は罰を要求し、そして、贖いなしには赦しはなく、罪の力と支配だけでなく、罪と汚れを完全に克服するために。罪は義の方法においてのみ完全に克服される。
第６に、これに追加されが、その罪はあまりにも大きいので、神はそれが罰されないまま放置される前に、愛する御子イエス・キリストを十字架で苦くて不名誉な死によって罰したのである。もし、義が他の方法で真に得られるならば、キリストは無駄に死んだであろう、ガラテヤ２：２１、３：２１、ヘブライ２：１０。すべてを要約すると、受肉と贖いは、神が再び神として彼の被造物によって認められ、崇められるためにために生じた。罪は神と彼のすべての完全性についての誤認であり、被造物崇拝に転じるのである。しかし、キリストにおいて、神は御自身を再び啓示し、主権性を回復した。彼のすべての完全性を正当化し、名を栄光化し、神性を維持したのである。救いのみわざおいても神は、何よりもまず御自身のために、御自身の栄光をもたらしたのである。
３８５．
しかしながら、ソシニウス主義者たち（Socinian）と彼らの霊的な親族は、贖いのこの必要性に激しく反対した。彼らの論拠は、義と恵み、贖いと赦し、そしてさらに律法と福音、旧約聖書と新約聖書、創造と再創造などは相互に対立し、相互に排除し合うというすべてここに降りて来る。キリスト教宗教は、すなわち、彼らによれば、絶対的に霊的で道徳的な宗教は、すべての自然的で感覚的な要素から解放されている。神は、審判者としては考えられず、父として考えられる。罰する義、聖、罪に対する怒りは神における完全性ではなく、愛だけが彼の存在を描く。旧約聖書の宗教は、なお律法の立場に立ち、神との人間の関係を法的関係と見た。ファリサイ主義（Farizeïsme）は、これを頭に浮かび上がらせたが、パウロはなおこのパリサイ主義の言葉を使い、律法順守、義、報いというファリサイ主義の組み合わせを考えの中に保ち続けた。
しかし、パウロは、律法の成就不可能性を人間の罪深さから導き出さず、命を与えることに仕えず、罪を増し加える律法自身の性質から導き出す。それゆえ、キリスト教宗教を純粋に贖いの宗教、恵み、赦し、信仰として理解した。そして実際にそれはそうである。それは、宗教的・倫理的だけであり、そして最早、宇宙的な、司法的な、形而上学的な構成要素を持たない。それは救いの教理だけである。そして、他の要素、神についての、人間についての、罪についての、世界についての教理などは、この観点からキリスト論的に、救拯論的に見られ、改訂されねばならない。国家は律法の領域であるが、しかし、宗教と律法は相互に対立する。
しかしながら、対立の全体は偽りであり、また、キリスト教神学においては、常に、マルキオン主義的として（als Marcionitisch）拒否される。最初に義と恵み（愛）が神において対立するであろうということは、は正しくない。全聖書は、神について、義、聖、怒り、憎悪の属性は罪に対立するだけでなく、恵み自体が神における義を前提し、またそれなくして維持できないことも知っている。結局、恵みは、それによって神が何らかの理由でその権利を放棄する神における完全性なのである。もし彼がそのように義にして聖なるお方でなければ、罰する権利を持たないし、彼においては恵みが語られない。同様に、神における最高の愛は、すなわち、キリストにおいて啓示される赦す愛は、もし罪が神の義なる裁きによって罰に値しなければ、最早、愛ではない。第２は、法と宗教（道徳）は絶対的な対立を形成しない。宗教と道徳は、神がわたしたちに持っているそれ自体が権利である。彼は、人間がすべてに勝りて、神をわたしたち自身の隣人として愛することを、律法において要求する。それをもって、宗教と道徳は劣化されず、外的化もされず、逆に、それらの真の意義において維持される。神は、人間が心のすべてをもって、精神のすべてをもって、力のすべてをもって、神を愛することを望む。神は、神の愛の奉仕のため、全人を要求する。
宗教と道徳は、被造物への神の要求に、基づいていないならば、存在することができない。道徳的な秩序は、この意味において、法的秩序によって担われている。宗教的、倫理的意識以上にとてもより深く人間にはなお法的感情がある。あらゆる宗教とあらゆる道徳を持った人々の間でも一度振り落とされても、まだ生き返ることがよくある。そして、実際、完全人間は神と隣人を自発的にまた、彼の聖なる性質に応じて愛することは本当であるが、しかし、これは事実を何も変えない。まさに愛からのその奉仕は神の律法と調和し、そして、律法の中に指示されている。道徳律法は、実際、徹底的に、神の要求と権利であり、たとえそうであったとしても、それは全人を要求し、また、精神と真実における奉仕を望む。というのは、宗教と道徳は、神の権利に根差すように、逆に、神の権利は抽象的で、形式的な恣意的意志ではなくて、まさに神の性質に根拠づけられている。司法的秩序それ自体が倫理的性格を持ち、道徳的秩序に確認と支持を見い出すのである。第３に、それゆえ、道徳的世界は最初に罪によって法的世界になっただけであるという叙述は正しくない。仮に、道徳的世界が、実際、罪によって、人間にとって法的世界になったとしても、神と隣人への愛が、今や、人間の外側と人間の前の戒めとして来るならば、その戒めに人間は応じることができないし、違反し、人間はその罰に値する。しかし、あたかも道徳的世界が神の権利と律法に基礎づけられていないかのように、道徳的世界は罪によって来たのでない。ルター派神学は、実際、このことをそのように教えて来たが、しかし、改革派は、別に、またより良く判断した。罪とは別に、律法は、実際、道徳的な世界全体に対して、徹底的に神の存在に基礎づけられた規範である。この秩序は律法なしでは、考えられもしない。すべての宗教と道徳は律法を前提する。律法がないところには、違反もない。道徳的な世界を律法から切り離す人は誰でも、道徳的な世界を客観的にも主観的にも気まぐれとし、その足元の基礎を掘り返すのである。第４に、正義と恵みをそのように二元論的に対立させる人は、すべての点において、聖書に反する。道徳律法に従って神の似姿に創造された人間の生命としての完全な状態（de
status integritatis）を長く維持することはできない。彼らは罪は有罪ではなく、罰を受けるに値しないと主張している。罪人の意識の中以外では、罪は有罪ではなく、罰を受けるに値しない。律法は永遠的ではなく、時間的だけであり、一時的であり、教育的な意義を持つ。旧約聖書は、律法の宗教として、最早、わたしたちに関わらない。神の義とキリストにおける贖についての教理は、新約聖書の神学においては、ユダヤ的で、ファリサイ的なカプセルである。罪の赦しは、主観的に視野に入って来て、それは有罪ではなく、罰に値しない。聖化は道徳的であり、自動的に自己啓発である。教会は、宗教的、倫理的まじわりであり、権利と律法と関係がない。この二元論の推進者たちは、キリスト教の宗教に対するより純粋な見方を獲得したように見えて、その核心を奪い取っているのである。
終わりに、第５に、もし恵み、愛、赦しがまったく受けるに値しないもので、すべてが権利の自発的な廃棄を前提しているのであれば、そのとき、ソシニウス（Socinius）と共に、とても確かに、神は贖罪を要求せずにその権利を放棄できないのかどうかという疑問が残る。神は怒ること遅く、忍耐強くて憐れみ深け、そして、聖書においては、真剣な悔い改めがあれば、しばしば満足を語ることなしに赦す、申命記３０：１－３、エレミヤ３：１３、１４、１８：８、マタイ１８：２４以下、ルカ１５：１１以下。この問いにおいて、もしその悔い改めが真剣であれば、この質問に関しては、もはや法律上の違いはなく、事実上の違いだけが存在する。神は満足を要求する権利を持つ。それは恵みと赦しを前提する。違いは、神が満足を要求したかどうかだけである。苦しみと死は真に満足の性格を担うことが明らかになるであろう。この現実に比べれば、神が満足する権利を放棄できなかった可能性の問題は、非常に重要ではない。しかし、どの場合においても、一方が他方を排除するかのように、赦しを満足と対立させることは許されない。というのは、それらは聖書において結びついているだけでなく、レビ記４：３１、ローマ３：２４－２６、ヘブライ９：２２、相互の関係に置かれ、満足はまさに赦しの道を開くのである。金銭的負債においては、満足は赦しを帳消にする。なぜなら、支払う人についてはまったく問題がなく、決定するのは金額だけであるである。しかし、道徳的な負債についてはまったく別である。これらは個人的なものであり、罪を犯した者自身に罰が与えられねばならない。ここで代理人が認められる場合、そのような代理人を認め、罪を犯した者よりも自分のメリットを主張することは常に慈悲の行為である。キリストは神に満足を与えるが、しかし、神はわたしたちに赦しを与える。赦しはキリストを目指してではなく、わたしたちの恵みを目指して行われる。キリストの贖罪は神に対する道を開く。御自分の権利を侵害することなく罪を赦し、不敬虔な者たちを義と認める。もし罪がそのような性質であれば、権利と義、律法と真理は、罪がたとえ罰せられなかったとしても、少しの害も受けないし、そのとき、赦しの恵みも大きくはない。しかし、罪がそのように大きく、神が彼らを罰せられないままにする前に、神は御自身の御子イエス・キリストに対する痛ましい不名誉な十字架の死によって彼を罰したのである。そのとき、神の恵みの豊かさ、神の赦しの愛の力が明るみに出されるのである。そのとき、人間も自分の罪を訴える良心に対して、休息と慰めを見い出し、また、何の恐れなしに、自分の罪の赦しに喜ぶのである。というのは、完全な満足が、絶対的な、取り消し不能な、永遠的な赦しを保証するからである。 ３８６．わたしたちのためのキリストの従順
キリストの者たちのためになされたキリストのみわざは、一般的に、神の意志への彼の絶対的で、完全な従順にある、マタイ３：１５、２０：２８、２６：４２、ヨハネ４：３４、５：３０、６：３８、ローマ５：１９、ガラテヤ４：４、フィリピ２：７、ヘブライ５：８、１０：５－１０など。神学におけるこの豊かな理念は、しばしば正当に扱われなかった。キリストの苦しみは、その中に表された従順の行為からしばしば切り離され、そして、そのように敬虔な熟考の対象とされた。キリスト教会において、次々に殉教者、修道士、物乞い、司祭がイエスの真の弟子とみなされた。あらゆる形態における禁欲と自虐が、特にキリスト教の徳とみなされた。キリストへの従順は、彼の生涯からの行動や状況のコピーや模倣、特に彼の苦しみにあり、キリストは偉大な苦しみ手、高貴な殉教者であり、彼の苦しみは瞑想と模倣（contemplatie
en imitatie）の対象であった。アンセルムス（Anselmus）においては、キリストの贖罪は、そこで彼は神の律法に従順であり、彼の苦しみと死においてのみあり、彼によって彼の生涯に義務以上のみわざ（opus
supererogationis）として追加され、そして、父への自発的な贈り物として献げられた。ローマの神学は、キリストの積極的従順を全会一致で曖昧なく語らない。トリエント会議（Trente）は、キリストの最も聖なる受難（de
sanctissima passia van Christus）について言及するが、しかし、神学者たちは、それを完全に拒否し、あるいは、それを、キリストがわたしたちに代わって律法を成就しなかったことを理解する。
プロテスタントたちの間においては、キリストの苦しみの理解は、彼の積極的従順を正当に扱うことに失敗する神秘主義者たち、再洗礼派の人たち、ヘルンフート派の人たち(Hernhutters)などのように、客観的なこととして（als
Etwas Sachliches）生じる。パルシモニウス（Parsimonius）とピスカトール（Piscator）でさえもそれを否定した。何故なら、キリストはすでに御自分のためにこの従順をする義務があり、したがってこの従順は、彼にとって個人的に必要な要求であり、わたしたちの利益のため（nostoro
bono）であるにもかかわらず、わたしたちの代わりに（nostoro loco）達成されたキリストの贖罪という点では一貫していなかった。さらに、聖書は一貫してわたしたちの救い全体を結びつけているため、たとえ罪の赦しと永遠の命の両方を持っているとしても、依然として律法を守る義務がある。ルター派の人たちは、これをネストリウス主義（Nestorianisme）と見なし、キリストという人格は両方の性質において律法の主であり、それゆえ、人間自身として彼の人格のために律法に従ったのではないと言った。
しかしながら、改革派の人たちは、そのように語ることはできなかった。何故なら、キリストは、真の人間として、何よりも神を愛し、隣人を自分自身のように愛すように、実際、確かに義務づけられていたからである。しかし、彼らは、ピスカトール（Piscator）の感情に対して正しく拒否した。というのは、第１に、聖書は、キリストの生涯とみわざの全体を一つの全体(als έέn geheel)と見、そして、彼が自己自身のためにする生涯の従順（eene obediential vitae）と彼がわたしたちのためにする死の従順（eene
obedentia mortis）の間に決して区別をしなかったからである、ヨハネ４：３４、１７：４、１９：３０。彼の仕えることは、多くの人の贖いのため彼の命を与えることで完成された、マタイ２０：２８。キリストの十字架をただ強調するパウロでさえも、彼の死に彼の従順の全体を見ておらず、彼の従順の完成を見た。彼は律法の下に生まれた、ガラテヤ４：４、罪深い肉と同じ姿で、ローマ８：３、御自分の満足を求めず、ούκ
έαυτω ήρεσεν、ローマ１５：３、受肉において彼は己を虚しくし、僕の姿を取り、へりくだって、死に至るまで従順であり、μεχρι θανατου、フィリピ２：７、８、コリント二８：９、そして、そうして、それは、多くの人に命を与える義を与える一つの仕えること（één δικαιωμα）かつ一つの従順（ééne ύπακοη）なのである、ローマ５：１８、１９。それは、それゆえ、キリストの満足させるみわざを彼の苦しみに制限すること、あるいは、ヤコブ・アルテング（Jac.Alting）のように、死に制限すること、十字架の暗闇の３時間の間の苦しみに制限することは、聖書にまったく矛盾する。ザカリヤ３：９、ヨハネ１９：３、ローマ６：１０、ヘブライ７：１２、ペトト一３：１８の個所に訴えることは、そこにわたしたちはキリストが十字架上において一度だけ苦しみ、「成し遂げられた！」を叫んだことを読むが、それはここでは何も証明しない。何故なら、その苦しみと死は、キリストの先行する生涯の全体が包含され、まとめられ、完成されるからである。むしろ、彼の受胎から死までのキリストの人格とみわざの全体が性質において代理的なのである。仲保者のすべてのみわざは、
二つの性質を前提としているため、人間の性質を取ること自体、それ自体はまだこの性格を持っていない。しかし彼の聖なる受胎と誕生、そして彼のすべての聖なる働きはキリストの一つの働きに（in
het ééne werk van Christus）含まれているのである。
第２に、人間としてのキリストは、御自身のために律法に服従することは、確かに真実である。しかし、彼の受肉と彼が人間であることは彼自身のためではなく、わたしたちのために生じた。キリストは、決して私人（eene
persona privata）ではなく、他の個人たちと並ぶまた同じレベルにある個人（een individu）と見られてはならない。彼は最初から公人（eene
persona publica）、第二のアダム、保証人（sponsor）、選民の頭（caputo electorum）である。アダムは自分自身で罪を犯し、そのことによってすべての人に罪責と死を課したように、キリストもすべて彼の者たちのために彼の義と従順によって赦しと命を獲得した。さらになお、キリストは、確かに、人間として、生活の規範として律法に服従した。信者たちでさえも、この意味で律法から決して免れない。しかし、キリストは、御自身を律法とのまったく別の関係においても置いた、すなわち、わざの契約としての律法としてである。アダムは、律法に服従するように義務づけられていただけでなく、律法はわざの契約において彼になお別の形態を提示したのである、すなわち、彼がまだ所有していない永遠の命の道としてである。しかしながら、キリストは、神的性質との結合ゆえに、永遠的で祝福された命を持っていた。彼はそれを自発的に放棄した（Daarvan
deed Hij vrijwillig afstand）。彼は、彼御自身と彼の者たちのため、永遠の命の道としてのわざの契約の律法に御自身を服従させた(Hij
heft zich aan den wet van het werkbond onderhworpen als weg tot het eeuwige
leven voor zich en zijnen)。その従順は、こうして、まったく自発的であった。彼の死だけでなく、アンセルムス（Anselmus）が言ったように、彼の生涯も自己否定であり、彼の者たちの代わりに頭としての彼によってもたらされた自己犠牲でもあったのである。
第３に、信者たちがいまもなお律法を守る義務があるということは、何の証明にもならない。もしこのことが何かを証明するならば、イエスの生涯と苦しみのすべての満足的価値は消えるであろう。というのは、信者たちは、罪の結果としてのあらゆる苦しみをなおまだ持っているからであり、彼らはサタンによって試みられ、世によって誘惑され、彼らは毎回罪を犯し、なお死ななければならないなど。そして、キリストは彼らを何からも、罪からもその結果からも解放しなかった。ヤコブ・アルチングはそのように推論し、それゆえ、キリストは、十字架の３時間の闇の間続いた地獄のような恐れによって、彼の者たちを、苦しみや肉体的な死などからではなく、永遠の死からのみ解放したと言った。しかし、贖いについてのこの見解は疑いもなく誤りである。贖いは完全であり、霊魂と体においてすべての罪とその結果からからの全人の贖いである。そして、これがキリストの生涯と死においてまたキリストの生涯と死によって達成されたのである。しかしながら、彼の御国は、彼によって、上において、いつの日かに建てられるであろう不可見的に、霊的にと可見的に、区別されるであろう。かつて彼自身が苦しむために来たように、彼は生ける者と死ねる者を裁くために、すぐに再び来るであろうのと同じように、贖いは、最初に霊的に、その後、肉体的に、キリストによって適用され、次第に仕上げられ、適用されるのである。今や、この期間において、信者たちは、霊的に、罪のあらゆる罪責と力とその結果から、世から、サタンから、死から解放される。彼らは罪の赦しと永遠の命を持つ。律法、サタン、死は、彼らからこれらを奪うことはできない。そして、いつか、彼らはすべての罪から、また罪の支配から外面的にも、肉体的にも開放され得るであろう。全体的な再創造が、それは新しい天と地において完成するように、キリストのみわざの実である。アルテングとともにキリストのみわざの実を永遠的な死からの贖いのみと見ることが一面的的であるように、リッチュル（Ritschl）とともに、此岸における（in
het Diesseits）罪と世に対するキリストの霊的で、倫理的な支配のみの実に制限することも一面的である。キリストの人格全体は、彼の積極的な従順と消極的な従順の両方において、神が人間への、人類への、世界への恵みから送る、贖い全体の完全な保証なのである。
３８７．
ピスカトールと多くの他の人たちは、前世紀において、キリストの仲保者のみわざの積極的従順を排除したが、近代神学においては、消極的従順は非常にしばしば誤解され、あるいは、まったく否定され、反対された。ソシニウス主義と（Socinianisme）と合理主義（Rationalisme）が贖罪説（de
satisfactieleer）を鋭い批判の下に屈服させた後で、近代の多くの神学者たちは、それを神秘的な、あるいは、倫理的な意味に溶かし込み、それにより本当の性格が奪われた。その理念は、そのとき、主に、キリストの苦しみと死は、神の義を満足させるために、必要がなかったし、神によってわたしたちの罪のための犠牲として要求もされていなかったが、しかし、それらは神の意志への従順における彼の生涯の結果であり、それは証明であった。彼が彼の宗教的、倫理的召しにおいて、神への信頼に忠実に留まり、そしてそのまじわりは死に至るまで堅固であり、それは、罪深い世界の真っただ中での彼の聖なる生涯の歴史的に必然的な結果であった。しかし、主要な理念を詳しく説明する際に、強調が変わる。
教会教父たちにおいて、わたしたちは、しばしば、人間が神の子らとなるために、神は人間になられたという発言に出会う。ヘーゲル(Hegel)の哲学の影響下に、この理念は、それゆえ、贖いの行為を受肉に置き、そして、和解を苦しみと死によってその完成と見る多くの最近の神学者たちに戻って来ている。キリストはわたしたちを、彼が行うことによってではなく、彼が存在することによって救ってくださる。贖いについてのシュライエルマッハー（Schleiermacher）の教理は、キリストがあずかっていた特に完全で、妨げられない神意識を強調し、また、彼が最初から最後まで導かれた聖なる生涯を強調した。聖なるお方として、彼はわたしたちのまじわりに入り、人間の罪責と処罰への責任の深い共感（een
diep Mitgefühl mit menschlicher Schuld und Stafwürdigkeid）を得、そして、彼の死を彼の召しへの熱心の結果として(als
het gevolg van den Eifel für seinen Beruf)受け入れた。ホフマン（Hofmann）も、キリストの人格において起る神の人間の一致から出発し今や、さらにその和解を、キリストが死に至るまで自身を神に献げ、新しい彼から生まれた人類の頭となったことに置くのである。
他の人々は、自分たちの立場をよりキリストのみわざに取り、そして、そこから彼の人格の見解と評価に来ることを試みた。彼が地上で成し遂げたそのみわざは、それゆえ、天の御国の建設としてしばしば描写され、そして、このみわざを彼はすべての反対にもかかわらず成し遂げた。彼の死を犠牲として資格づけることは、彼の召しに忠実であった。しかし、その死は真の死ではなく、神の義の要求でもなく、罪に対する罰でもなくて、彼、聖なるお方と罪深い人類の間の対立の意図しなかった結果であり、彼の召しにおける積極的な忠誠心の出来事」（das
Accidens seiner positive Treue in Beruf）であった。あるいは、キリストのみわざは、彼が彼の死において道徳律法の厳しさと罪の恐ろしさを明らかにしたことにあると言われた。そして、それによって人類にその中においてのみ罪の赦しを受け、享受することができる「悔い改めの状態」（état
de repentance）を実現させることにある。というのは、悔い改め以外に罪の贖いはなく、それは結局「わたしたちにおける罪の破滅」（déstruction
du péché in ons is）である。他の人々は、キリストの人格をより人類との連帯性の側から近づいた。神の子は、彼は人の子でもある。受肉によって、彼は人類の頭と代表になり、彼は人類の苦しみと死のまじわりに入り、彼はその悲しみと病いを自身に取り、そして、彼は彼の生涯と死において、何が愛か、また、愛は何ができるかを示した。人類とのキリストのこの連帯性は、ある者たちによって、それからさらにこの方向でさらに仕上げられさえもした。キリストは、罪の結果としてのこの苦しみ自身に取り、そして、その中で罪に対する神の義の裁きへの彼のアーメンを発し、その中においてさえも人類のために罪の完全な告白をし、罪に対する完全な悔い改めを示し、そしてその中で贖いの道を示したのである。
キリストの死の次元
キリストの死についてのすべてこの異なった評価は、事実の説明のための人間的思考によって構築された諸理論（theorieën）の名でラベルをしばしば貼られた。人々は、それゆえ、聖書はキリストの苦しみと死についての明白で、権威を持つ決定的な教理を含んでいないと表明した。もしそうならば、世紀にわたって論じられてこなかったであろうし、また、いろいろな理論が教会と神学において相互に生き続けてこなかったであろう。しかし、新約聖書は、わたしたちに、贖いの教理について、自然がわたしたちに学問を与えるようには、より多くを与えない。それは、事実を与えるが、理論、すべてのキリスト教教理をではないが、しかし、キリスト教全体の終結した教理あるいは教理（no
finisched doctrine or doctrines of the whole Christinanity）を与えはしない。そして、それは幸いでもある。というのは、それによって、理解と説明において違いがあるが、その中においてすべてが一致するキリスト教が可能だからである。二人の神学者はおそらく如何に（hoe）キリストはわたしたちの救いであるか、またその救いは真に何である(wat)かについて一致しないが、彼らは両者が、キリストはわたしたちの救いであると告白する。特に、今日、多くの人が以前に提示されたキリストの苦しみと死についての諸理論よっては非常に不満を感じるが、しかし、彼らはキリストおける救いの事実を信じ続けている。それは、重力の事実を実際に認識している二人の人間のようなものであり、それについて推論し始めると、二人はお互いに大きく異なるのである。
確かにこの表現には大きな一面性がある。キリストの死の力は、多かれ少なかれ、わたしたちがそれに与えることができる明白な解釈に依存していない。それは、真理についての教理について非常に少しの知識を所有してるのすぎない彼らによって享受される。それは、実際、キリストの死についての教理ではなくて、わたしたちの罪を贖い、そして、わたしたちの良心に平安を与える死それ自体である。しかし、この死の意義と価についての値幾ばくかの知識は、キリストのこの死をわたしたちの救いと結びつけるためには、彼を他の人々から、殉教者たちと異教徒たちからも区別することが常に必要である。疑いもなく、その本質と価値への正しい洞察力が、霊的生活の発展につながる。したがって、キリストの死の事実は受け入れているが理論的には異なる信者と、重力は受け入れているが見解が異なる人々とを比較することは、すでに欠陥がある。実際、デ ボセ（du
Bose）自身は、それが部分的にのみ妥当することを認める。何故なら、キリストにおいて救われるということは、つまり、重力の法則の下で生きることが理論上の知識であるように、キリストにおける救いが何であるか、またどのようにあるのかについての何らかの知識から独立しているわけではないからである。しかながら、新約聖書を自然と比較することは、あたかも両者が事実だけで何の理論も与えないかのように、なおさら正しくない。というのは、自然については、これは正しいかもしれないが、新約聖書には絶対的に当てはまらない。聖書は、今や、さらに、解釈と評価を各人の任意に任せるためにわたしたちにキリストの死についての裸の事実を物語ってはいるのではなく、聖書はその事実をすべての角度から言葉の光に置くのである。啓示において他のどこでもと同様に、言葉と事実はここにおいての相互に密接に対になっている。キリストは祭司であるが、しかし、預言者でもある。彼は、彼自身の人格とみわざを説明した。彼御自身が彼の教育において、また後には彼の使徒たちの口によって、彼の苦しみと死を説明し、解釈し、そして、キリスト教神学はその言葉に結びついている。それゆえ、神学によって事実と現象の説明のために仮説の方法において組み立てられた道徳的な、統治的な、神秘主義的な、私法および公的法に指向された多くの理論があり、また、解決のための異なった試みとして、すべてが存在の同等の権利を持つ。しかし、問題は、すべてこれらの理念にあるものは聖書と一致するかであり、また、これら自身がキリストの死の意義と力について教えていることと一致するかである。その死は哲学的な思弁の対象ではないし、少なくとも聖書から独立しておらず、また聖書の外にもなく、これが自らを聖書の研究に導かれるとき、それは聖書においてだけ理解され得るのである。
最初に、この研究が教えるのは、実際、聖書はキリストの苦しみと死を毎回別の観点から見、そして、毎回、新しい局面を明るくすることにある。人格と同様に、キリストのみわざも豊かであり、それは一つの言葉だけによっては描かれず、また一つの形式ではまとめられ得ない。それゆえ、新約聖書のいろいろな書において、キリストの死の別の意義が強調され、そして、わたしたちに仲保者のみわざの豊かさと多面性についての深い印象と明白な意味を与えるために、それらは皆でそれに貢献する。共観福音書においては、神の国の宣教者と創始者としてのキリストが出現し、御国は父の愛の祝福、罪の赦し、義と永遠の命を包含する。イエスは、すべての祝福を彼の者たちに与えるために、御自身にメシアとして力を帰す。病人たちをいやすために力を持っていたように、彼は罪人たちを赦すために権限を持つ。両方によって彼は御自身を彼の民の完全な救い主として証明する。しかし、それゆえ、彼の名の信仰以外に、神の国に入ることも、祝福にあずかることもない。多くの人の贖いとして命を与えるのは、それは彼御自身であり、また、すべての祝福をもった新しい契約を開始し、確立するために、死において彼の体を裂き、血を流す（マタイ２０：２８、２６：２８）。使徒たちの行為において、キリストの死は、不正な人々の手によってキリストにもたらされた特に恐ろしい犯罪として提示されるが、しかし、神の聖定において永遠から含まれていた、使徒言行録２：２３、４：２８、５：３０。それゆえ、神は彼をよみがえらせ、彼の名において、イスラエルに、悔い改めと罪の赦しを与えるために、彼を主、キリスト、支配者、救い主として引き上げたのである、使徒言行録２：３６、４：１２、５：３１。
パウロにとって、キリストの十字架の死は本来大きなつまづきであったが、しかし、彼の御子をパウロに啓示することは、神のよしとするとき、十字架は彼にとってメシアであることの冠と救いの唯一の手段となった。というのは、わたしたちが、今や、彼にあって知恵、義、聖、赦し、救い、永遠の命ととなるために、十字架にキリストが罪とされ、わたしたちのための呪いとされたからである、ローマ３：２４、コリント一１：３０、コリント二５：２１、ガラテヤ３：１３。ヘブライ人への手紙は、キリストを特に完全で、永遠の祭司として描いている。御自身を苦しみによって聖めた（完成した）だけでなく、２：１０、５：９、彼の一つの完全な犠牲によって、彼の民の罪を取り除いたのである、７：２７、９：２６、１０：１２、そして、今もなお天において継続的に大祭司として働き、清め、聖化、彼の者たちの完成を継続して、完成させる、７：３、２５、８：１、９：１４、１０：１２以下。ペトロは、わたしたちに、キリストの苦しみを傷もしみもない小羊の苦しみとして示す。そして、その苦しみにおいて彼はわたしたちの罪を担い、不毛なさ迷いからすくいだしただけでなく、彼は、わたしたちが彼の足跡に従うわたしたちに模範を残したのである、ペトロ一１：１８以下、２：２１以下。そして、ヨハネは、彼を小羊と獅子として、命と光、パンと命の水、死んで実を結ぶ麦の粒、群れのために彼の命を与える良き羊飼い、世に命を与える救い主、アルファにしてオメガ、初めにして終わり、最初の者であり終わりの者であるなどとして、わたしたちに知らせるのである。
それゆえ、実際、新約聖書において、キリストの人格とみわざにおいても相互に排除しないいろいろな評価を見い出すが、わたしたちの知識を補完し、豊かにする。古い契約においても、種々の犠牲があり、約束されたメシアを毎回他の名称下に提示されたように、この多面性が新約聖書による描写に持ち越され、そして大幅に増加する。キリストの死は、過越しの犠牲、契約の犠牲、犠牲と賛美の犠牲（een
slacht- en een lofoffer）、身代金と模範、苦しみと行為（een lijden en doen）、義認と聖化のための手段(een
middle tot rechtvaardigind en heiligmaking(recht)、贖いと聖化（verzoening en heiliging）、贖罪と栄光化(verlossing
en verheeriking)、わたしたちの救い全体の原因である。そして、同様に、神学においても、いろいろな「諸理論」（theorieën）が並んで生じ、また、説教においても、今そして今、キリストのみわざの別の別の面が脚光を浴びている。上述された神秘主義的で、倫理的な理解は、それゆえ、そのようなものとして正しくない。逆に、それらはすべて聖書において含まれているデータに依拠している。キリストは、実際、彼の受肉によって、彼の人格において神と人間の統一性にもたらされており、また、そのようなものとしてわたしたちに対する神の代表者であり、同様に神に対するわたしたちの代表者である。預言者としてわたしたちに神を説明し、また祭司として御自身をわたしたちのために献げるインマヌエル（Immanuel）である。彼は、御子、言葉、父と同じ本質と属性にあずかっている神のかたちであり、また同時に人の子、真の人間、人類の頭、すべてにおいてわたしたと同じ第二のアダムがたしたちの罪と死のまじわりに入り、わたしたちの悲しみと病い担った。召しを完遂するため、天の御国を建てるため、彼の血において契約を確立するため、彼は地上に来た。そして、それを行うため、彼は父の意志に従い、死に至るまで従順あり、そして、苦しみと死を乗り越える中で執行された正義の裁きに対してアーメンを宣言した。彼は忠実な証人となった、黙示録１：５、ピラトの下で良き告白をした、テモテ一６：１３、わたしたちが告白する大祭司なった、ヘブライ３：１。それゆえ、彼の苦しみは、わたしたちの罪の贖いだけでなく、わたしたちの贖いの身代金ともなったが、しかし、彼の死において教会は彼とともに十字架にけられ、彼の復活において、教会自身も墓から起きた。キリストは、一人ではなく、その性質を彼が取った人類とのまじわりに常に立った。アダムおいてすべてが死んだように、彼らは、キリストの模範に従うために、キリストにおいて生かされ、召される。キリストの死について上に述べられた概念おいて一面的に前面に出て来るすべてこれらの要素は、聖書においてい出され得る。重要なのは、それらすべてを無視することではなく、それらすべてを結びつけ、聖書の中でそれらの根底にある統一性をたどることである。それらはすべてキリストの苦しみと死を彼の人格に深く関係づけるため、称賛に値する死によってすべて霊感されてさえもいる。というのは、これらは、実際、彼の人格とみわざから分離され得る「客観的な何か」（Etwas
Sachliches）ではなく、それ自身のカテゴリー置かれる。キリストの苦しみと死は、運命ではなく、彼の行為である。彼は、命を再び得たように、彼の命を捨てる力があった、フィリピ２：９。 ３８８．
なお、キリストの死についての神秘主義的、倫理的な理念は、それ自身おいて正しくないが、それらは単に不完全で、不十分である。もしそれらが聖書におけるキリストの死と継続的に結びつれられている他の思想と結びついておらず、これらの諸理論よって組織的に除かれ、反対されているならば、それらは長い目で見れば維持できない。結局、それらは相互に大きな違いを示し、それらはすべてが共通に持つ。それらは客観的な満足を主観的な和解に変換し、キリストの苦しみの代理的—贖罪的見解(de
subustitutief-expiatorische opvatting)を連帯的—修復的見解(de solidarische-reparatorische
opvatting)に置き換えようとする。キリストはわたしたちの罪の罪責を引き継いだのではなく、わたしたちに代わって罰を担ったのでもない。彼の死は、神の義によって要求されたものではなく、今や、キリストのゆえに、恵みからわたしたちに与えられた本当の意味でのその祝福を獲得したのでもない。しかし、彼の苦しみと死において、彼は、聖なるお方は罪深い世の真ん中に生きた生涯の必然的、歴史的結果として、彼は終わりまで神に忠実であり、そして彼の言葉、模範、御霊によって、一般的に人格から出る影響によって、神の愛に惹かれて、悔い改め、信仰、回心に来て、この方法で彼らの罪の赦しと新しい命を得て、人々が罪から抑止される世界における新しい宗教的、道徳的状況を造ったのである。キリストは実際にではなく、潜在的に祝福を獲得したのである。彼はリアリテーを造ったではなく、わたしたちの贖いの可能性を造ったである。彼から出る霊的で、道徳的な力によって、彼はわたしたちを回心へ、こうして救いへと導くが、しかし、彼はわたしたちの唯一で、完全で、十分な救い主ではない。この提示は、今や、聖書がリストの死に常に結びつけている豊かで深い思想と一致しないのである。
すでにすぐ人々は神秘主義的、倫理的な諸理論の立場において、人々はイエスにおいて召し（een beroep）を好んで語り、職務(ambt)を避けたことは顕著である。両者の間には、大きな違いがあった。もしイエスが召しを追求するならば、あるいは、彼の出現と活動において内面的な召しに聞き従ったならば、そのとき、その際に、確かに神の摂理の導きは決して消えることはないが、しかし、彼に神のまったく独自の啓示を語ることは語ることはできない。彼においては、宗教的で、倫理的な意味でわたしたちを高く超えており、またわたしたちすべてより先に行っているが、彼は原則的にわたしたちすべてを超えておらず、わたしたちと並んでいる。彼はわたしたちの指導者（onze
aanvoeder）であり、リーダー(leidsman)であるが、しかし、わたしたちは、彼の模範に従ってわたしたちを適合させ、彼の足跡に従う義務と力を持っている。一方で、もしキリストが預言者、祭司、王として油注がれたならば、そのとき、彼は神によって任命されたのであり、神からなすべき働きを受けたのであり、わたしたちを教えるため、神の前でわたしたちを代表し、神の意志によってわたしたちを治めるため、わたしたちの上に権威を持つのである。職務（het
ambt）はキリストにおいて比喩ではない。というのは、彼が自分自身を祭司にしたのではなく、神によって召され、任命されたのである、ヘブライ５：４、５。そして、彼が預言者、祭司、王であることは、外見でなく、あるいは、名前だけでなく、本当であり、実際であった。旧約聖書に出現したモーセ、アロン、ダビデ、そして多くの預言者たち、祭司たち、王たちは、キリストがそうであり、そうであったし、そして永遠に本当の意味でそうであり続ける影であり、模範であったのである、ヘブライ３：６、５：５、１０：１２など。
より重要なことは、上に述べられた立場においては、キリストの苦しみと死がまったく説明されていないことである。フローニンゲンの神学者たち（de
Groninger godgeleerden）は、オランダにおいて自分たちを非常に強く表現した、彼らが言ったとき～れは人間によって行われ、イエスによって苦しみ、神によって許された問題であり、それゆえそれは行われなければならず、これはマタイ１６：２１、マルコ８：３１、ルカ９：２２で語られており、その意味は道徳的な意味として理解されるべきであった。しかし実際には、これが新しい神学者の考えを要約すると次のとおりである。キリストが苦しみ、死ぬ心理的、歴史的必然性はあるかもしれないが、形而上学的な必然性が入り込む余地は残されていない。彼らは、キリストの死は神の義によって要求されたことだけをそのように強く反対した。しかし、キリストの苦しみと死はより高次の意味において偶然となるそのような見解は、聖書によって定罪される。このことは明らかに説明している～キリストの苦しみは前もって決められ、世紀にわたって予告され、そして、神の義の啓示に必要であったのである、ルカ２４：２６、ローマ３：２５、２６、ペトロ一１：１１。
メシア意識
これに対して、多くの人々が、イエスは最初は喜び、そして、大きな期待をもって彼の民の下に現れ、そして彼の死の必然性を、ペトロが彼をフィリポ・カイサリアの地において、キリストと告白したその日以来最初に見たことを示そうとした、マタイ１６：２０以下。しかし、ケーラー（Kähler）は、正しくこれを神話（eene
sage:a myth）と呼んだ。メシア意識を、ヨハネによる洗礼で明らかなように、イエスはその出現から持っていた。人の子（menschenzoon）という名称は、彼が明白な意識をもって、また特殊な意図をもって与えたものである。イザヤ預言の自己自身への適用であり、ルカ４：２１、彼が、彼の弟子たちの花嫁として取り去られる、マルコ２：２０、ヨナへの御自身の比較、マタイ１２：４０、荒れ野の蛇、ヨハネ３：１４、ユダヤ人たちによって期待されたのとは全く別の意味における天の国についての説教、また意識、その御国における市民であることは信仰と悔い改め、自己否定、十字架を担うことを要求し、そして、世は憎しみ、敵意、迫害を挑発するであろう、マタイ５：１０以下、１０：１６以下、１２：２５。これはすべて最初からイエスに対する苦しみと死は彼の生涯の目的であろうことを示す。特にイザヤ５３章の預言は、彼の心に常にあった、ルカ４：２１、１８：３１、２２：３７、２４：２６、４６、そして、彼の別れにについて教えた。フィリポ・カイサリアの日は、この変化をのみもたらした。今や使徒たちは次第に彼のメシアであることへの固い確信に来たが、イエスはキリストであるが、しかし、再び３日目に復活するために、それゆえ、罪人たちの手に渡されることを彼らに明らかに告げた、マタイ１６：２１以下。そして、彼は明らかに付け加える、これは起らねばならない（dit
moest geschieden）、彼が死ぬことが道徳的に義務であるからでなく、あるいは、彼の召しに忠実であり得るだけでなく、というのは、引き渡され、殺され、復活さえもさせられるべき道徳的な義務はなく、それは神の聖定において決定され、聖書において予告されていたからである、マタイ１６：２１、２６：５４、ルカ２２：２２、２４：２６、４４，４６、ヨハネ３：１４、７：３０、８：２０、１０：１８、１１：９、１２：２３、１３：１、１７：１、２０：９、ペトロ一１：２０。この「ねばならない」はこの聖定において根拠付けられている（Het
meoten is in dien raad gegrond）。彼の苦しみと死、彼の復活と栄光化のために時が定められている。最初から、それは、それゆえ、聖書に従ってキリストが死に、葬られ、復活することは、使徒たちの説教において確立している、コリント一１５：３。彼らはキリストの死における彼を破壊し、絶滅させようとしたユダヤ人たちの側の大きな犯罪を語った。しかし、神は彼らの努力を挫折させ、彼を死から復活させ、彼を主とキリストとして、支配者と救い主として任命した、使徒言行録２：２２－３６、３：１３－１５、５：３０、３１。そして、それだけでなく、死さえもメシアのみわざの構成要素であり、前もって神の聖定によって決定されていた、使徒言行録２：２３、３：１８、４：２８。この死んで復活したキリストは、それゆえ、天の下において救いに至る唯一の名である、使徒言行録４：１２。マタイ２６：３９、４２とヘブライ５：７の両方のテキストは、イエスの死のこの必要性に矛盾しない。後者によれば、あたかも彼が死を必要と認識していなかったかのように、キリストは死からの救いを祈ったのではない。というのは、彼の祈りは、彼の死にもかかわらず、神が聞いたことを明らかに述べているからである。彼は、それゆえ、死から救われるためではなく、死から復活させられ、栄光を受けるために、祈ったのである。
この手紙の別の個所において、それゆえ、わたしたちは、キリストは彼の苦しみと死において、神の意志を遂行し、この意志によってわたしたちを聖化するために、まさに来たことを読む、ヘブライ１０：５－１０。これは、再び、マタイ２６：３９－４２の言葉に光を投げかける。というのは、５：７において、ヘブライ人への手紙は、そのように排他的にではなく、そのとき、特にゲトセマネにおけるイエスの祈りを考えている。ここで、今や、キリストは、彼の意志に従って祈るのではなく、人間の性質に組み込まれた傾向に従って、自らの破滅を避けるため、彼は結局父の意志に従うのである。人間として、彼は死を死として恐れ(Als
mensch ziet Hij tegen dood als dood op)、彼の飲む杯が過ぎ去るように祈ったが、しかし、彼は聖定と父の意志に御自身を委ねた。彼は、彼らが誘惑に陥らないように、この同じ時に彼の弟子たちに目覚めて祈るように戒めたように、というのは、心は望んでも、肉が弱いからである、マタイ２６：４０、したがって、死の苦しみを味わいながら、神が彼の死において神の御心を行うよう強めてくださるように、また神の御心が彼に対してなされるだけでなく、完全な明け渡しをもって彼を通してなされるようにと、彼が祈るのである。「彼は彼の職務の積極的な奉仕において死ぬのであり、また、死の重荷としてではなく、死そのものの中で祭司として死ぬために彼は祈った。
彼の祭司としての行為は死の間も中断されず、実際、死において勝利を収め、犠牲であると同時に献げる者であり、死の条項そのものにおける従順な公的な代理人であった」（Hij
bad,to die in the active service of His office, and not as the down-borne
victim of death, to die as a Priest in death itself; His priestly action
uninterrupted in death, yea, triumphing in death, an offerer as well as
a sufferer, an obedient official agent in the article of death itself）(H.マーチン「贖い」９３頁)。そして、ここで彼はまさに聞かれたのである。彼は御子であったが、しかしながら、彼は苦しんだ事柄から父の意志の遂行に必要であった従順を学んだのである。従うべき父の意向と意志は、キリストの性質に不可欠であったが、しかし、今や、試みのとき、彼はこれらを従順の行為に移さねばならない。それから彼はその従順を学び、それによって完全な者にされ、ヘブライ５：８－９、彼は御自身をわたしたちのために献げたのである、ヨハネ１７：１９。
さらに、その苦しみと死は、聖書において、そのような特別な場所を占め、それは彼の召しへの忠実の偶然の出来事として理解され得ない。それについての記述は、それに比例して、福音書の最も大きな部分が献げられている。そして、それは殉教としてではなく、神の審判として、父の意志として、祭司の犠牲として描かれている。彼は彼の信仰のため死ぬのではなく、彼は神の子、メシアであると主張したので、司法的に定罪された。彼は、死を喜んだのではなく、乱され、悲しみ、驚き、死を恐れ、激しい葛藤の中で汗が血の滴のようになった、マタイ２６：３７、３８、マルコ１４：３３、ルカ２２：４４、ヨハネ１２：２７。それは死に平静に直面する賢者の態度ではないし、苦しみを喜びとする苦しむ者のそれでもなく、喜んで死刑台に登ったり、火刑で詩篇を歌ったりする殉教者のそれでもない。キリストの苦しみと死は、例外的な性格を担う。「もしソクラテスの生涯と死が賢者のそれであるならば、イエスの生涯と死は神のそれである」（si
la vie et la mort de Socrates sont d’un sage, la vie et la mort de Jésus sont d’un Deiu(ルソー)。これは、特にイエスが十字架で神から見捨てられたことについてあえぎながら言った恐ろしい訴えから来る、マタイ２７：４６。ある者たちは、この十字架の言葉を絶望の言葉と理解し、彼の訴えが失われ、神が彼を捨てたと（ヴォルフェント、「断片」）、あるいは、純粋に主観的に理解され、死の極限における最も深い苦痛によって瞬間的に打ちのめされた彼の純粋な人間的感情について(van
zijn zuiver menschlijk gevoel der momemtanen psychischen Ueberwältiggung
vom hochsten Schmerze in der Todesnot)(マイヤー)、あるいは、たとえそれが、我が子の手にかかって心が折れながらも、その偉大な愛ゆえにその恥を自らに負い、神の裁きにひれ伏す母親の叫びに比べれば、はるかに遠いものではある（モバリー）。しかし、すべてこれらの解釈は、その言葉を正当に扱っていないし、また、聖書におけるイエスの言葉の連続的な描写に矛盾する。イエスの叫びに主観的な遺棄についての発言はなく、客観的な遺棄についての発言がある。彼は一人を感じていたのではなく、彼は神によって捨てられたのである。彼の感情は幻想ではなく、偽りの見解に依拠しているのではなく、現実に応答している。他方において、このことは、あたかも父がキリストに個人的に怒っているかのように、そのように理解されない。カルヴァンはそれをそのように正しく言う。「しかし、わたしたちは、神が彼に向って邪悪であったり、怒ったりしていることを暗示しない。如何にして、神が『神の心が安らぐ』彼の愛する子に向かって怒ることができるだろうか。もし彼御自身が神を憎んでいたならば、如何にして、キリストは彼の執り成しによって他の人々に向かう父を宥めることができるだろうか。これがわたしたちが言うことである。彼は神聖な厳しさの重さを担った。何故なら、彼は神の御手によって打たれ、苦しめられ、そして、怒りと復讐する神のすべてのしるしを経験したのである」（neque
tamen innuimus, Deum fuisse unquam illi vel adversarium vel iratum. Quomod
enim diliecto Filio, in quo animus eijus acquievit, irasceretur? aut quomodo
Christus Patrum aliijs sua intercessione picaret, quem insensum haberet
ipse sibi? Sed hoc nos dicimus, divinae severitatis gravitatem eum
sustinusse, quoniam manu Dei percrussus et affictus, ominia irati et punientis
signa expertus est）(カルヴァン「キリスト教綱要」Ⅱ．１６．１１)。
イエスは、十字架でも愛される御子、父の御心に適う御子であった、マタイ３：１７、１７：５。苦しみと死において、キリストは父の意志への最高で、完全な従順を証明した、フィリピ２：８、ヘブライ５：８―１０、１２：２、そして、イエス御自身が言った。彼の弟子たちすべてが彼を一人にする時が来るであろうが、しかし、そのとき、彼は一人ではない。というのは、父が彼とともにいるからである、ヨハネ１２：３２。しかし、キリストは、聖書の教えに従ってわたしたちの罪を木の上で彼の体において負った、ペトロ一２：２４。彼は、そこでわたしたちのために、罪となり、呪いとなり、コリント二５：２１、ガラテヤ３：１３、そして、その本当の本質と性格において、御自身に罪の報酬としての死を取った。わたしたちは、死をそのように味わうことはできないし、また、キリストへの信仰によって、すべての苦みが除かれる。その死において、神は彼の者たちの近くにおり、その結果、彼は彼らのために永遠の命の通路（een
doorgang tot het eeuwige leven）となる。しかし、それは如何にキリストが経験したかではなかった。彼は、罪深い人にはできないように、彼の聖なる性質をもって生きたのではない。彼は自発的にその杯を手に持って最後の滴りまで飲んだ。彼は愛の力によって命そのものを捨て、十分な意識と固い意志を持ち、死の陰の谷に入った。彼はそこにいて神に見捨てられたと感じた。何故なら、彼がすべての人のために彼の苦みにおいて死を味わうためであった、ヘブライ２：９。
キリストのこの死は、彼の復活とともに、使徒たちの説教においてすぐに前景に出た。イエス御自身は、繰り返し、彼の苦しみと死を天の国のよきものと、あるいは、恵みの契約の祝福と関係づけた、マタイ１６：２１、２０：２２、２８、２６：２８、ヨハネ１０：１１、１２：２４、１３：１など。弟子たちは、これを最初は理解しなかった、マタイ１６：２２、ルカ１８：３４、しかし、復活後、それを理解するようになった。そして、そのときから、十字架につけられ、栄光を受けたキリストが福音の内容であった。そこに、彼らがキリストの死の価値を明らかにするその方法で豊かな多様性があるであろうが、しかし、その多様性において、印象的な統一性がある。すでに、原初の教会は、キリストは、聖書に従ってわたしたちの罪のために死んだという告白を展開した。「わたしたちが知っている最も確かなことは、第一コリント１５章
３節によれば、最初の教会はイエスの死を罪と結びつけていたということである」（zum Sichersten, was wir wissen,
gehört, dass nach 1 Kor.１５：３ schon de Urgeminde den Toden Jesu in Beziehung
zur Sünde gesetzt hat）（ホルツマン「新約聖書神学教本」Ⅰ．３６６頁、G.B.ストレヴェンス「新約聖書の神学」T&T
Clark １９０６年 ４７１頁）。そして、すべての使徒たちがキリストの死を何らかの形でわたしたちの罪と関係づけ、また、それにこの客観的で、神に対して有効である意義を帰しており、また、それによって恵みの契約の祝福、罪の赦しと永遠の命がわたしたちのために獲得される。どの手紙を調べても、人々はどこででもこの同じ思想に出会う。キリストは、わたしたちが彼において神の義となるために、わたしたちのために罪とされ、わたしたちのために呪いとされたた、コリント二５：２１、ガラテヤ３：１３。彼はわたしたちの罪のための宥めであり、彼はわたしたちを神に対して彼の血で買い取り、すべての罪を聖める、ヨハネ一１：７、２：２、黙示録５：５、７：１４。彼は、民の罪のため一度だけ御自身を献げ、それによって永遠の贖いをもたらした、ヘブライ１：３、２：１７、７：２７、２７、９：１２、１０：１２。彼はわたしたちの罪を十字架で担い、わたしたちを彼の血で赦した、ペトロ一１：１８、２：２４。ヤコブでもこの思想が繰り返されるが、しかし、信仰は、ヤコブにおいて、栄光にあずかり、審判者として再臨するであろうイエス・キリストが対象である、２：１、５：９。そして、ユダにおいては、キリストは、彼の再臨において、彼の者たちに憐れみを永遠の命へと示すであろう主である、４、２１。したがって、使徒たちはキリストの生涯よりもキリストの死を強調する。十字架は彼らの福音の中心である（het
kruis staat in het middelpunt van hun Evangelie）、コリント一２：２、ガラテヤ６：１４。キリストの苦しみと死は、彼の人格から分離されてはならないが、しかし、それは神によってそのようなものとして明白に意志され、御子によって神に犠牲として献げされた。それはキリストの生涯において形成する。偶然的な構成要素ではなく、状況によって必然的とされ、しかし、本質的で、不可欠な構成要素であった。それによって、主に彼の従順の完成として、罪の宥め、義、永遠の救いが確保されたのである。
救いの益のこの獲得に対して、キリストの死によって、神はわたしたちに恵みの祝福をキリストのゆえにではなく、キリストを通してのみ（niet propter,
maar allen per Christum）与えるという異議がもたらされた。ルーテル派の人々は、改革派の人々が予定の教理ゆえにキリストの贖罪を否定しなければならず、キリストを救いの手段(causa
instrumentalis)としてしか見られなかったということを非難することに喜びさえ感じた。ルター派の人々は、改革派の人々自身が、キリストは選びの基礎と原因(fundamentum
et causa)でないと認めていたと言った。選ばれた人々は、キリストが彼らの仲保者に任命される前からすでに神の愛の対象であり、選ばれた者は、したがって、キリストのゆえにではなく、キリストにおいて、キリストに至るため(niet
om, maar in en tot Christus)にである。しかし、この非難は根拠がない。キリストは、非常に確かに父の啓示であり、愛の証明である。論理的に、救いへのわたしたちの選びは、仲保者の彼の選びに先行し、罪人を愛し、彼らに赦しと永遠の命を与えるために、神は最初にキリストによってではなく、永遠から御自身によって動かされたのである。しかし、ここにまさに父の愛がある。彼は、彼が彼らのために意図したその救いを、時間において、彼の御自身の御子によって獲得させ、それを彼らに与え、また、彼自身の義に従って与えるのである。神の恵みは、それゆえ、キリストの満足と功績を無効にしてはならないが、しかし、功績に対するまさに最後的根拠である。「なぜなら、彼は自分自身の喜びのために、わたしたちのために救いを得る仲保者を任命したからである」（quia
mero beneplacito medetatorem statuit, qui nobis salutum acquireret）（カルヴァン「キリスト教綱要」Ⅱ．１７．１．）。「そうです、なぜなら、彼はまず愛し、それから私たちをご自分と和解させてくださるからです」（Imo
quia prius diligit,postea nos sibi reconcilliat.Jam nos diligenti reconcilliati
sumus）そして、この両方が、神の愛とキリストの贖いが、それゆえ、手に手を取って共に行かねばならず、また、行くことができたのである。何故なら、わたしたちは同時に被造物として彼の愛の対象であり、罪人として彼の怒りの対象だからである、カルヴァン「キリスト教綱要」Ⅱ．１６．３．４。それゆえ、それは、神が罪人を赦す純粋に恵みであり、彼はそれを彼御自身のために行うのであり、彼の偉大な御名のために行うのである、イザヤ４３：２３－２５、エゼキエル３６：２１、エフェソ１：７、ヨハネ２：２、しかし、これは神がわたしたちをキリストのゆえに罪を赦すこと、また、神の名が最初にわたしたちにキリストにおいて啓示されることそれほど矛盾しない。神が罪を赦し、命を恵みからのみ与える事実は、彼御自身のゆえであり、わたしたちにある何かのためでなく、それはキリストがわたしたちに告知し、わたしたちのために獲得したものである。恵みからの赦し、永遠的に神において傾向としてあり（gezindheid
in God eeuwiglijk aanweg）、そしてキリストの選びと派遣に先行する（amor benevolentiae）が、時間におけるキリストの犠牲によって初めて可能になる(amor
complacentiae)。祝福それ自体は、たとえ選ばれた者にそれらを与える機会は永遠から神のうちに存在していてもキリストによって獲得された。キリストは、わたしたちが彼において神の義となるために、罪とされる。彼は女から生まれ、彼がわたしたちを律法の呪いから贖い、わたしたちが養子縁組を得るために、律法の下に置かれる。アダムが罪と死の原因であったように、キリストは義と命の源である、マタイ２０：２８、２６：２８，ヨハネ１：１８、１５：１３、ローマ５：１２以下、コリント一１５：２１、２２，コリント二５：１９－２１、ガラテヤ３：１３、４：４、ヨハネ一４：９。そのように理解されると、神がわたしたちに罪を赦し、キリストのゆえに永遠の命を与えるという表現は、聖書的であり、キリスト教全体によって、また改革派宗教の告白によっても教えられている（ook
door de belidenis der Gereformeerde religie geleerd）。
最後に、神秘主義的と道徳的な諸理論は、実際、聖書において生じ、それ自身においては正しい要素を含む。しかし、それらはこれらの要素をその根拠から分離する。その上にそれらの要素が聖書において依拠し、そしてそれらから価値も力も奪いもする。神秘主義的理論は、宗教の本質を神と人間の神秘的一体性にあると考える。これは罪よって妨げられているが、しかし、実際、彼が行うところのものによってよりも、彼があるところのものによって(wel
niet zoozeer door wat Hij doet als wel door wat Hij is）、彼のみわざによってよりも彼の人格によって、彼の十字架よりも彼の誕生によって、キリストにより回復される。神と人間の神秘主義的一体性がどのようにして回復されるのかは、この立場において言うことは難しい。ヘーゲル（Hegel）は、その一体性は客観的に存在するが、しかし、キリストによってそれは初めて明らかに見られ、表明されると言った。シュライエルマッハー（Schleiermacher）は、キリストは最初にわたしたちの罪深いまじわりに入り、その後、わたしたちを彼の聖さと祝福に組み込むことを表明した。調停神学（de
bemiddenlingstheologie）は、キリストは、わたしたちに新しい神人的命（een nieuw Godmenschlijk leven）を注入するとしばしば表明した。表明のすべてこれらの方法は、汎神論（het
pantheïsme）に由来し、また、この哲学的体系は単純に理解できない。道徳的理論は、神は満足を要求せず、彼の愛においてわたしたちにキリストを与えるという思想から出て来る。彼の教え、生涯、死によって、わたしたちに神の愛を確信させ、わたしたちを敵対的な傾向を変化させ、わたしたちを罪から抑止する。グローティウス（Grotiusn）の統治論（de
gouvernementeele theorie）は、神において、罪を個人的に赦すことができ、かつ赦すことを望むが、しかし世界秩序の利益のために、罪は他者に対する抑止力として模範的に罰しなければならない世界の支配者（Rector
mundi）を見る。
これらすべての理論において、今や、人々は、なおまだ神の子としてのキリストについて、彼の祭司性と犠牲について語っているが、しかし、人々は、そのとき、象徴的な意味で、通常でない意義において使われた言葉を用い、誤解の原因を与える。結局、汎神論と理神論においては、キリストのための場所はない。そのとき、キリストの大祭司性を模範に、キリスト教宗教を教育学に、教会を学校に変えることは明らかである。義は、そのとき、神の完全性ではなく、もっぱら状態に属し、そして、罪は有罪ではなく、罰は正義救済ではない。人間は、そのように悪くはなく、あるいは、彼は道徳的に模範によって、衝撃や印象によって良い方向に変わることができる。こうして、客観的な満足は、主観的な和解に変換される。本当で真の和解は、人間がイエスの模範に従い、そして自己が変わるとき、そのとき最初の場所を持つ。旧約聖書下の信者たちは、イエスの模範を持たなかった。したがって、すべての人は失われるか、わたしたちとは別の方法で救われるかのどちらかであり、救いのために人間に与えられる天の下での名前はキリストだけではない。何よりも、言及されたすべての理論は、キリストの死とわたしたちの罪の赦しと永遠の命との間の聖書の関係については説明されていない。どのようにしてキリストの死がこの祝福の模範として根拠であり得るのか、何故、神はわたしたちをキリストのゆえに赦し、命を与えるのか。実際、すべては、キリストは彼のイメージによって深い印象を人間の知性や意志や感情に与え、そして、神は人間の罪のため、あるいは、人間に結びついている利己主義のため、あるいは、人間を圧迫する惨めさのゆえに、人間を怒っているという見解から人間を解放するここに来る。しかし、どの場合においても、人間に喜びと休息が与えられない。というのは、良心はそれによって聖められず、罪の感情はそれによって除かれないからである。平和は十字架の血にのみある！（Vrede
is er allen in het bloed des kruises！）。（続く)
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