１章１節―９節

1:1 神の御心によって召されてキリスト・イエスの使徒となったパウロと、兄弟ソステネから、1:2 コリントにある神の教会へ、すなわち、至るところでわたしたちの主イエス・キリストの名を呼び求めているすべての人と共に、キリスト・イエスによって聖なる者とされた人々、召されて聖なる者とされた人々へ。イエス・キリストは、この人たちとわたしたちの主であります。1:3 わたしたちの父である神と主イエス・キリストからの恵みと平和が、あなたがたにあるように。

1:4 わたしは、あなたがたがキリスト・イエスによって神の恵みを受けたことについて、いつもわたしの神に感謝しています。1:5 あなたがたはキリストに結ばれ、あらゆる言葉、あらゆる知識において、すべての点で豊かにされています。1:6 こうして、キリストについての証しがあなたがたの間で確かなものとなったので、1:7 その結果、あなたがたは賜物に何一つ欠けるところがなく、わたしたちの主イエス・キリストの現れを待ち望んでいます。

はじめに

　これまで、ローマの信徒への手紙のお話をさせていただきましたが、これからは、コリントの信徒への手紙一のお話をさせていただきたいと思います。では、コリントの信徒の手紙一とは、どのようなものでしょう。すると、１世紀のキリスト教伝道者の使徒パウロによって、紀元５４、５年頃に書かれたもので、ローマの信徒への手紙よりも前に書かれたものと考えられます。

　すなわち、１世紀当時、ギリシア南部のコリント教会には、いろいろな問題がありました。そこで、そのコリント教会に助言を与えるため、パウロが、この手紙をエフェソから書きました。そこで、今日のわたしたちも、この手紙を学んで、人生の土台である大切な教会生活をしっかり整え、神から豊かな祝福を受けながら、喜んで日々の歩みをしていきたいと思います。

　そこで、今日は、その最初として、１章１節から９節までの書き出しの部分からお話をしたいと思います。ただし、一語一語、また、一つ一つの文章について、すべてお話できませんので、２点についてお話をいたします。第１点は、教会は、神の御心によって建てられ、神の御心によって保たれているという点です。第２点は、パウロは、コリント教会に問題がありながらも、いつも神に感謝できたという点です。こられの２つの点を学んで、わたしたちも、人生の土台である神の教会を大切にしながらよい歩みを日々していきたいと思います。

１．教会は、神の御心によって建てられ、保たれている神の教会です

　早速、第１点に入ります。第１点は、教会は、神の御心によって建てられ、神の御心によって保たれているという点です。それで、わたしたちは、２節前半で、パウロが、コリント教会を、「コリントにある神の教会」と言っていることに注目したいと思います。何故、パウロは、「コリントにある教会へ」と単純に言わないで、わざわざ、「コリントにある神の教会へ」と言って、「神の」をつけたのでしょう。

　考えてみれば、教会は、すべて神の教会です。すなわち、教会というものは、神の御心によって建てられ、神の御心によって支えられているものです。神にのみ存在の根拠があります。この世の人々の集まりや団体は、人間に根拠があるのに対し、教会は、神にその存在根拠を持ちます。人に根拠があるものではありません。

　ですから、教会が、神の教会であることは、わかりきったことと思われるのに、何故、パウロは、そのわかりきったと思われることを、手紙の最初の挨拶の部分で、わざわざ言ったのでしょう。何か、意味あるのでしょうか。すると、あるのです。

その意味は、単に、「コリントにある教会」と言わないで、「コリントにある神の教会」と言ったのは、この後、明らかになってきますように、教会というものは、神の御心によって建てられ、神の御心によって保たれているという厳粛な事実を、コリント教会の人々に、強く自覚させようとしているからです。

　そこで、わたしたちは、コリント教会が、どのようにして、神の御心によって建てられたのかを見てみましょう。まず、コリントという町そのものについて、簡潔にお話しましょう。すると、聖書の後ろの地図を見ますと、わかりますように、コリントの町は、ギリシア南部の町でした。ギリシア本土とペロポネス半島をつなぐ重要な場所に位置していました。

また、地中海世界に面した港町でした。そのため、陸上交通と海上交通の要所として、経済的に大繁栄しました。一説によれば、当時、人口が４０万あり、１世紀の地中海世界において、ローマ帝国の首都ローマ、北アフリカ第一の町のアレクサンドリア、トルコ半島の港町のエフェソに次ぐ重要な都市であったと言われています。

　そして、コリントの町は、文化力も高く、２万人も収容できる大野外劇場があったと言われています。また、１年置きに、コリントで開かれる競技大会は、オリンピックの起源となったオリンピアの教技大会に次いで、規模が大きかったと言われています。

　また、民族的、人種的には、とても複雑で、ギリシア人、ローマ人、ユダヤ人、フルギヤ人、さらに、アジア系の人々がいたと言われています。そして、各民族が信仰している神々も多種多様でした。特に、コリントの町の南側の山の上には、ギリシアの女神のアフロディテを祭る神殿があり、その神殿には、千人の巫女がいましたが、その巫女たちは、同時に、神殿娼婦でした。そのため、コリントの町は、道徳的に乱れた町として、１世紀の地中海世界に名を売っていました。

　そのコリントの町に、パウロは、第２回目の伝道旅行のとき、やってきました。そして、夜の幻の中で、「恐れるな。語り続けよ。黙っているな。わたしがあなたと共にいる」という神の声、あるいは、キリストの声を聞き、パウロは、何と、１年半もの長きにわって、腰を落ち着けて滞在し、粘り強く、キストによる救いのよき知らせである福音を、熱心に語り続けました。その結果、大きな教会であったと思われますが、コリント教会が成立しました。その後、パウロは、次の伝道地に向かうため、１節に出てくるソステネを連れて、コリントを離れたのです。

　それから、時間が経過し、パウロは、今日のトルコ半島の西海岸にあたるエフェソの町で伝道していました。すると、そのとき、コリント教会の人が、パウロに、助言を求めてやって来たのです。すなわち、パウロが去ってから、コリント教会には、分派の問題、不道徳の問題、信者同士の間での裁判沙汰の問題、偶像に献げた肉についての問題、婦人のかぶりものについての問題、聖霊の賜物、特に、異言についての問題、聖餐式における混乱の問題、復活否定の問題などが次々と生じたので、使徒パウロに助言をしてほしいと言ってきたのです。

　そこで、パウロは、これらの問題の解決のための助言を記した手紙をコリント教会へ届けさせるのです。そして、その手紙が、コリントの信徒への手紙一と二になるのです。

　こうして、コリント教会には、いろいろな問題があったのです。しかし、それにもかかわらず、なお、コリント教会は、「コリントにある神の教会」なのです。すなわち、神の御心によって建てられ、神の御心によって保たれている教会として、パウロは、何のためらい、何の躊躇なしに、コリント教会が、あくまでも、神の教会であることを十分認めた上で、コリント教会が、いろいろな問題の解決を目指して、皆で努力、工夫をして歩むように助言していくのです。

　そして、このことは、いつの時代でも同じです。教会は、いろいろな弱さ、不十分さ、問題があり得るのです。しかし、それでも、万物の創造者である生ける真のただ一人の神を礼拝し、十字架のキリストを信仰しただけで救われる救いのよき知らせである福音が説教され、キリストによる罪の赦しのしるしである洗礼と聖餐式が執行されていれば、いろいろな問題があっても、それは、神の御心によって建てられ、神の御心によって保たれている神の教会であり、後は、この事実を厳粛に弁え、皆が、いろいろな問題を、聖霊の導きを熱心に求めて、信仰的な解決を目指して努力をしていけばよいのです。それゆえ、今日のわたしたちも、いろいろなことがあっても、教会は、神の御心によって建てられ、神の御心によって保たれているという厳粛な事実を、いつもしっかり胸に刻み、人生の土台である神の教会を大切にし、豊かな祝福を受けたいと思います。

２．パウロは、コリント教会に問題がありながらも、神に感謝できました

　第２点に入ります。第２点は、パウロは、コリント教会に問題がいろいろありながらも、いつも神に感謝できたという点です。今、お話しましたように、パウロは、コリント教会に、いろいろな問題があることをよく知っていても、何らためらわず、コリント教会を神の教会と呼んだのですが、さらに、パウロは、いろいろな問題を持つコリント教会を神の教会と認めただけでなく、コリント教会のことで、パウロは、神に、いつも感謝しているとまで、何のためらいなしに語るのですから、本当に驚きます。

　そこで、わたしたちは、パウロは、コリント教会に、いろいろな問題があったことを知りながらも、何故、何のためらいなしに、コリント教会のことで、いつも、神に感謝できたのかと思うのです。すると、４つの理由を挙げるのです。そこで、わたしたちは、ひとつづつ短く見ていきましょう。

（１）では、コリント教会に、いろいろな問題がありながらも、パウロが、コリント教会のことで、いつも神に感謝していたことの第１は、何でしょう。すると、それは、キリスト・イエス、すなわち、救い主のイエスさまを通して、父なる神から豊かな霊的祝福を、コリント教会が、たくさん与えられてきたというれっきとした事実があったからです。４節がそうです。

　そして、ここに、「キリスト・イエスによって神の恵みを受けたことについて、いつもわたしの神に感謝しています」とあります。イエス・キリストという言い方は、個人名的な意味が強いですが、「キリスト・イエス」と、逆にすると、キリストであるイエスさま、すなわち、救い主であるイエスさまという意味で、イエスさまが救い主であることを強調した言い方です。

　また「神の恵み」とありまして、わたしたちは、具体的に、どのような恵みを指しているのかと思いますが、実は、この言い方で、罪の赦しをはじめとする霊的な祝福を広く一般的に何でも表わしています。すなわち、与えられる資格がないのに与えられる神からの祝福が、恵みです。わたしたちは、生まれながらの罪人ですから、罪に対する裁きと滅びを受けるのが当然であり、神から祝福を与えられる資格など、何一つないのです。しかし、それにもかかわらず、救い主のイエスさまを通して、罪の赦しをはじめとするあの恵み、この恵みが与えられるのです。

なお、「神の恵みを受けた」の「受けた」は、ギリシヤ語では、わざわざ現在完了形の受け身にされていますので、罪の赦しをはじめとする神の恵みが、キリストを信じたときから、今に至るまで途切れることなく、ずーっと継続して与えられていることを強調しています。

　本当にそうです。今日のわたしたちもそうです。たとえ、仮に、教会に問題があるからと言って、神の恵みが、そのときから、全部、取り去られたら、教会は成り立たないです。しかし、神は、御自分の教会をそのように乱暴には扱わないのです。

　仮に、いろいろな問題があっても、罪が赦されていること、救いの中に置かれていること、聖霊の働きを受けていること、人生の力、励まし、慰め、忍耐、勇気、決断力、希望が与えられていること、そして、永遠の生命までが与えられている事実は、何も変わらないのです。

　それゆえ、パウロは、４節で、「あなたがたがキリスト・イエスによって神の恵みを受けたことについて、いつもわたしの神に感謝しています」と、「いつも感謝している」と、「いつも」という言葉を、何のためらいなしに語ることができたのです。「いつも」というこの一言は、とても重要な一言です。

　こうして、教会に問題があっても、信者は、いつも神に感謝できる罪の赦しをはじめとする恵みをずーっと変わりなく受けているのです。これは、神の側の真実によるのです。わたしたちは、不真実であっても、神は変わらず常に真実で、教会と信者を、恵みによって、保持し、保っていてくださるのです。だからこそ、教会も続くし、わたしたち信者の信仰も続くのです。

（２）では、コリント教会に、いろいろな問題がありながらも、パウロが、コリント教会のことで、いつも神に感謝していたことの第２は、何でしょう。すると、それは、コリント教会には、知的な賜物が与えられていて、福音の真理を正しく解き明かして説教する多くの言葉と、福音の真理を深く理解して、確かな知識として共有することにおいて、霊的にとても豊かにされていたからです。

それゆえ、いろいろな民族がいて、いろいろな宗教があった異教のコリントの町において、キリストだけが、真の救い主であるという証しが、コリント教会においては確立していて、揺らぐことがなかったのです。これは、素晴らしいことでした。その結果として、コリント教会は、神からの賜物において、何一つ欠けることがないと言えるほどであったので、パウロは、いつも、神に感謝していました。５節から７節前半がそうです。

それで、わたしたちは、５節に、「あなたがたはキリストに結ばれ、あらゆる言葉、あらゆる知識において、すべての点で豊かにされています」とあるのを見まして、「あらゆる言葉、あらゆる知識」とは、何のことかと思うのです。すると、これは、コリント教会に与えられた知的な賜物を表しています。

具体的には、「あらゆる言葉」とは、キリストとのまじわりの中で、福音の真理を正しく解き明かして説教するあらゆる言葉を持っていたという言い方で、一言で言えば、福音の説教を表します。

また、「あらゆる知識」とは、キリストとのまじわりの中で、福音の真理を深く理解して、福音についてのあらゆる知識を持っていたという言い方で、一言で言えば、福音についての知識を共有してたことを表します。こうして、福音の説教においても、また福音についての知識の共有においても、すなわち、知的な祝福に関して「すべての点において」と言えるほど非常に豊かであったのです。

実は、このことは、コリント教会が、ギリシアの地にあり、ギリシヤ人が、コリント教会に多くいたことと関係しています。わたしたちも、よく知っていますように、ギリシヤ人は、民族的に、知的なこと、思想的なことが得意な民族でした。「ユダヤ人はしるしを求め、ギリシヤ人は知恵を求める」と言われましたように、ギリシヤ人は、物事を突き詰めて言葉で厳密によく考えることに向いていました。また、ギリシア人は、言葉を正確に使って物事を深く理解して、知識として共有するということが得意でしたが、それは、キリストを信仰したときにも生かされたのです。

そこで、コリント教会にいたであろう新約時代の預言者たち、また、今日の牧師にあたる教師たちは、キリストを信仰しただけで、恵みによりすべての罪を赦され、救われ、罪によって壊れていた神との関係が回復し、さらに、永遠の生命までもたらす救いのよき知らせである福音の素晴らしい真理を、説教において、的確で正確なあらゆる言葉で、どんどんどん説教できたのですし、また、その福音の説教を聞く会衆も、福音の真理について深く理解して、知識として共有できたのです。

こうして、キリストがただひとりの救い主という証しは、ギリシヤのコリント教会においても、信者の間において、確立していました。そして、これは、異教の地のギリシヤにある教会として、素晴らしいことで、パウロは、何らためらわず、神にいつも感謝できたのです。

教会において、一番大切なことは、何でしょう。すると、それは、キリストによる救いのよき知らせである福音が正しく解き明かされ、説教されていることです。十字架のキリストを信仰しただけで、人は恵みによりことごとくの罪を赦され、救われて、天地（あめつち）を無より創造した真の神との正しい関係が回復され、最早、神から罪を決して裁かれることがなく、心の深い平安と大きな喜びをもって、永遠の生命の中に日々生かされるという福音が解き明かされ、説教されることですが、これらのことにおいては、ギリシアのコリント教会は、「すべての点において」外れてはいなかったのです。外れていなかったどころではなく、この点においては、１世紀の諸教会においては、他の教会と比べると、とてもすぐれていたのです。

ですから、あのガラテヤ教会とは違ったのです。今日のトルコ半島にあったガラテヤ教会においては、この決定的に大事な原点がガラガラ音を立てて崩れてしまい、教会が、根本から大混乱しました。ガラテヤ教会は、キリストを信仰しただけでは救われない。同時に、神の律法をすべて完全に守り行うことも必要であるという律法主義の致命的な誤りに陥ってしまいました。そこで、パウロは、それでは、キリストの十字架の贖いの死は無駄になってしまうではないかと、激しく叱責しましたが、コリント教会は、そうではなかったのです。

そこで、パウロは、コリント教会のことで、いつも、神に感謝できたのです。

（３）では、コリント教会に、いろいろな問題がありながらも、パウロが、コリント教会のことで、いつも神に感謝していたことの第３は、何でしょう。すると、それは、コリント教会の信者たちが、救いの完成としてのキリストの再臨を確実な希望として、歩んでいたからです。これもまた素晴らしいことでした。

　実は、コリント教会があるギリシヤには、復活という思想はまったくありませんでした。それゆえ、コリント教会のある人々は、このコリントの信徒への手紙一の１５章に出てきますように、キリストの再臨と信者の復活を否定していました。しかし、それは、ごく一部の人々で、コリント教会の信者が、全員、あるいは、大部分の人々が、キリストの世の終わりの現れ、すなわち、再臨と復活を否定していたわけではありません。

　むしろ、コリント教会の大部分の人々は、ギリシヤには、復活という思想や教えがないにもかかわらず、使徒パウロから教えられたように、世の終わり、終末に、主イエス・キリストが、天使の大軍団を率いて、栄光のうちに、再び現れること、すなわち、再臨し、信者を復活させて、救いを完成してくださることを、信仰によって、待ち望み、待望していました。そこで、パウロは、いつも神に感謝できたのです。７節後半がそうです。

ここに、「わたしたちの主イエス・キリストの現れを待ち望んでいます」とありますが、「わたしたちの主イエス・キリストの現れ」というのは、もちろん、世の終わり、終末に、世界の歴史の終わりに、主イエス・キリストが、天使の軍団を率いて、栄光のうちに来られること、すなわち、キリストの再臨を表していますが、コリント教会の大部分の人々は、使徒パウロに教えられたように、再臨の教え心を素直に受け入れて歩んでいたので、パウロは感謝できたのです。

　考えてみますと、ギリシアには、世が終わるという思想はないのです。ギリシア人は、時間は、円のようにぐるぐると永遠に回り続けるという考えでした。それに比べると、聖書の教えは、時間は、創造から始まり、人間の堕落、旧約時代、そして、キリストが出現し、十字架の死と復活によって救いが開かれ、キリストが天にお帰りになり、人々は教会が宣べ伝える福音によって救われ、最後に、キリストが再臨して世が終わり、信者が再臨のキリストと同じ永遠に生きられる素晴らしい栄光の体に復活させられて、神の救いの全御計画が見事に完成するというふうに、時間は直線的に進むという教えです。こうして、ギリシヤは、時間は円のようにぐるぐる回り続けるという教えですが、聖書の教えは、時間は、救いの完成を目指して直線的に進むという教えです。これらのことは、わたしたちの教派が出した「７０周年記念宣言の終末の希望についての信仰の宣言」に、力強く堂々と表明されています。

　ですから、一般のギリシア人には、世が終わるときが来るとか、キリストが再臨するなどという考えは、なじまないもので、異質で奇異に感じるものであったはずです。しかし、それにもかかわらず、コリントの教会の大部分の信者は、パウロの教えを聞いて、信仰でしっかり受け入れ、そして、主イエス・キリストが再び、天から、本当に現れることを疑わず、むしろ、自分たちの救いの完成のときとして、待ち望みながら喜んで信仰の歩みを、日々していたのですから、パウロは、神にいつも感謝できたのです。コリント教会には、弱さや不十分さや問題がたくさんありました。しかし、神の教会であり、よい点やや霊的に豊かな点もたくさんあったのです。

　キリスト教信仰から世の終わりのキリスト再臨によるわたしたち信者の復活による救いの完成がなければ、キリスト教信仰は、希望なき信仰という虚しい信仰になります。わたしたちは、救いの完成をもたらすキリストの再臨という光り輝く冠を受けることを確実な希望として、前を向いて日々しっかり歩みたいと思います。

（４）では、コリント教会に、いろいろな問題がありながらも、パウロが、コリント教会のことで、いつも神に感謝していたことの第４は、何でしょう。すると、それは、今度は、神がしてくださることです。すなわち、キリストとの豊かなまじわりに招き入れてくださった神は、真実で、誠実で、昨日も今日も明日も変ることのないお方ですので、弱さと不十分さのあるコリント教会の信者たちを、キリスト再臨の日まで、信仰に固く支え、キリスト再臨の日には、「非の打ちどころのない者」、すなわち、罪のゆえに責められるところのない者として、聖霊によって罪から完全にきよめ切ってくださることです。８節と９節がそうです。

　それで、わたしたちは、８節に、「・・・わたしたちの主イエス・キリストの日に、非の打ちどころのない者にしてくださいます」とありまして、「主イエス・キリストの日」という言い方を見ますが、この言い方も、キリスト再臨を表す別の言い方です。特に、キリスト再臨が、この世の歴史のある日に、実際に必ず生じることを強調した言い方です。

　そして、さらに、「非の打ちどころのない者」とありますが、これは、罪のゆえに責められるところがまったくない者という意味です。すなわち、この世で、キリストとの豊かなまじわりの中に入れられた信者は、弱さや不十分さがあっても、聖霊によってきよめられつつ、聖化されつつあります。そして、キリスト再臨の日には、罪のきよめ、聖化は完成しますので、裁かれたり、責められたりすることは、一切ありません。

　考えてみますと、クリスチャンも生まれながらの罪人で、自力で、自分自身をきよくして、審判者キリストの御前に、平安をもって立つことなど、到底、不可能です。しかし、神は、真実で、誠実で、変ることがないお方ですので、今、この世で救って、キリストとの豊かなまじわりに招き入れてくださったわたしたちクリスチャンを、再臨の日に、聖霊によって、罪から完全にきよめ切って、審判者キリストの御前に、平安と喜びをもって立つことができるように、必ず御自身がしてくださることなのです。

　こうして、わたしたちクリスチャン一人一人が、世の終わり、終末に、キリストによる最後の審判に、深い平安と言葉で言い表すことができない大きな喜びを持って、立つことができるのは、きのうも、今日も、明日も、そして、永遠（とわ）に変らぬ慈しみ深い神の側の真実にあることを知ると、わたしたちは、とても安らかな思いで、信仰ができるのです。罪が完全にきよめられて非の打ちどころのない者にできるのは、自分ではなく、神がｓてくださることなのです。

結び

　以上のようにして、わたしたちは、今日のところを見ます。教会には、いつの時代でも問題や弱さや不十分さがあります。地上には、完全な教会はないのです。しかし、いろいろなことがあっても、礼拝において、十字架のキリストによる救いのよき知らせである福音が説教され、また、救いのしるしである洗礼と聖餐式が執行されているならば、それは間違いなく神の教会であり、後は、この事実を厳粛に弁え、皆が、いろいろな問題を、聖霊の導きを熱心に求め、信仰的な解決を目指して努力や工夫をしていけば、それでよいのです。それゆえ、今日のわたしたちも、いろいろなことがあっても、教会は、神の御心によって建てられ、神の御心によって保たれているという厳粛な事実を、いつもしっかり一人一人が胸に、人生の土台である神の教会を大切にし、豊かな祝福を受けながら、今週も前を向いて日々喜んで歩みたいと思います。

お祈り

　憐れみ深い天の父なる神さま、

今日、また、週の最初の日の礼拝に導かれ、感謝いたします。

今、わたしたちは、コリントの信徒への手紙一を学び始めました、どうか、わたしたちも、人生の土台であるあなたの教会を大切にして、豊かな祝福を受けながら歩めるように、御霊によってお導きください。

今日、種々の都合や事情で、礼拝に出席できなかった方々を、それぞれのところで、顧みてください。

　なお、日本と世界において。コロナが流行していますが、一日も早く下火なり、収束しますように助けてください。　

また、今日から始まるわたしたちの新しい１週間を、どこにあっても豊かに祝福してください。

　これらの祈りを、主イエス・キリストの御名によって、御前にお献げいたします。アーメン。