宗教改革を記念して

　　　　　　　　　　　　カルヴァンの終末の教え

南浦和教会では、毎年、10月の最終主日の宗教改革記念主日には、宗教改革に関する短い文章を作成し､宗教改革の理解を深めて来ましたが､今回は、今、大会は60周年宣言として「終末の希望についての信仰の宣言」を作成中ということもありますので､宗教改革者カルヴァンの終末の教えについて簡潔に記します。

１　どこの個所で終末の教えを扱っているでしょう？

　「キリスト教綱要」においては、関係してくる個所は随所にありますが、特にまとまって出てくるのは、3個所で、具体的には、第3巻９章「来るべき生についての瞑想」、第３巻２０章「祈りについて（主の祈りの解説）」、第３巻２５章「最後の復活について」でしょう。「綱要」以外では、ジュネーブ教会信仰問答７４問のキリストの復活、８３間から８７問の最後の審判、１０６問から１０９問の身体のよみがえりと永遠の命のところでしょう。

２　人間の死（個人終末）については、どのように教えているでしょう？

死は、人類の代表アダムの堕落によって生じた（第2巻１章）。霊魂は死後も不滅（不死）である（第１巻１５章）。クリスチャンは、信仰によって、死の恐怖を克服すべきである（第３巻９章）。カトリックが教える煉獄は、非聖書的（第３巻５章）、また、カトリックが教える族長領域は、非聖書的　（第２巻１６章９節）である。

３　終末の前兆、しるしについてはどのように教えているでしょう？

カルヴァンは、終末の前兆論は、特に扱っていませんが、世の終わりが来る前に、生じる出来事として、神が「世界のあらゆる地域から教会をみもとに集め、その数を拡大し・増加させること」、「サタンとその王国の暗黒と虚偽とを、消去し、消滅させ、滅亡させること」、「反キリストを御口の息吹をもって殺すこと」をあげています。（主の祈りの解説、第２の祈願　第３巻２０章４２節）。

４　キリストの再臨については、どのように教えているでしょう？

キリストは、目に見える姿で再臨する（第2巻１６章１７節）。キリストの再臨の目的は、信者を「罪に定めるため」でなく、「永遠の浄福（祝福）の約束を成就するためである」（第2巻１６章１８節）。慰めを強調しています。

５　万人の復活については、どのように教えているでしょう？

キリストによる救いの実は､終わりの日の復活にまでおよぶ豊かなものである（第３巻２５章２節）。キリストの復活は、信者の復活の保証（３節）。復活は、神の全能によって生じる（４節）。復活は、生前の同じ体が違った性質をもつ（９節）。信じていない人も復活する（９節）。信者の復活の目的は、「永遠の幸いを実現するため」（１０節）。なお、カルヴァンは、いわゆる千年王国説を否定しています｡理由は、キリストの支配を千年に限ってはならない、キリストの支配は永遠であるからと述べています（５節）。

６　キリストのよる最後の審判については、どのように教えているでしょう？

カルヴァンは、最後の審判は､信者の慰めであることをとても強調しています。カルヴァンの言葉そのものを記しておきましょう。ジュネーブ教会信仰問答

　問８６「イエス・キリストがいつの日にかこられて、世をおさばきになるに違いないということは、われわれに何か慰めを与えますか｡

答　はい非常な慰めであります｡彼が現れなさるのは、われわれの救いのためにほかならないことを、われわれは硬く保証されているからであります。」

問８７「それゆえ、われわれは、最後の審判を、恐れおののくべきではありません。

答　まったくです。われわれの出頭すべき審判者は、われわれの弁護人であり、われわれの訴訟を弁護するために引き受けて下さった、そのお方以外ではないのでありますから。」

７　神の国の完成（新天新地の出現、永遠の命の実現、永遠の状態）について、どのように教えているでしょう？

カルヴァンには、「神の国の完成」とか「新天新地の出現」とか「永遠の命の実現」とか「永遠の状態」について項目を立てて、まとまって述べているところはありません。これらの事柄については、まだ十分に展開されていません。カルヴァンの中心は、キリストが、信者の救いの完成のため、世の終わりに再臨され、最後の審判をし、約束していた永遠の命を信者に与え、永遠の祝福の状態においてくださることを述べることでした。

結び

　以上のようにして、カルヴァンの終末の教えを簡潔にまとめてみました。今日、わたしたちが聖書に基づく終末の正しい教えに立つことができるのも、カルヴァンのゆえであると実感できる部分が多いでしょう。また、ウェストミンスター信仰基準に受け継がれたことを実感できるでしょう。ですから、今日、わたしたちのすべきことは、カルヴァンの終末の教えを最大限に生かし、用い、２１世紀の日本の教会とクリスチャンの希望と力になる、わかりやすい「終末の希望についての信仰の宣言」が作成されるように祈ることだと思います。

２００２年１０月２７日　宗教改革記念主日　

（解題）

　わたしが牧師をしていた南浦和教会では、あるときから、毎年、宗教改革記念主日には、宗教改革を理解するため、宗教改革に関する短い文書を作成して、教会の方々に配布することにしていました。この文章もそのひとつです。当時、大会は、６０周年記念宣言として「終末の希望についての信仰の宣言」作成をしていたときでもありますので、終末についてのカルヴァンの教えを短くまとめてみました。終末についてのカルヴァンの教えが、カルヴァンの著書のどこでどのように教えられているかの見取り図として役に立てばと思ってまとめてみました。