列王記上 １８章１６節から４０節
「唯一の真の偉大な神」
はじめに
本日は、旧約聖書からお話しをします。旧約聖書に親しむという趣旨で、旧約聖書からお話しをすることになっています。そして、前回は、サムエル記から信仰の勇者といわれるダビデについてお話しをしました。本日は、サムエル記の次の書物である列王記から預言者エリヤのお話しをします。特に、カルメル山の対決といわれるところのお話しをします。
カルメル山の対決というのは真の神やヤハウェに仕える預言者エリヤとバアルという偶像神に仕える預言者４５０人が、カルメル山というところで対決し、ヤハウェが真の神であることが明白にされる出来事でした。２１世紀に生きるわたしたちの周囲にも、神々といわれるものはたくさんありますけれども、わたしたちも、聖書が教える真の偉大な神のみを神として心から信じ、救済と祝福と永遠の生命を受け、喜んで歩んでいきたいと思います。
３点からお話しをします。第１点は、カルメル山の対決までにはいきさつがあったという点です。第２点は、バアル預言者は、敗北したという点です。第３点は、真の神であるヤハエの勝利が明白になったという点です。
１．カルメル山の対決までにはいきさつがありました
早速、第１点に入ります。第１点は、カルメル山の対決までにはいきさつがあったという点です。では、どんないきさつだったのでしょう。すると、列王記上18章16節から19節までのところを見ますと、数名の人の名前が出てきます。オバドヤ、アハブ、エリヤ、イゼベルがそうです。また、バアル預言者やアシェラ預言者という言い方も出てきます。これらの人々は、いったい何者でしょう。そして、相互の関係はどうなっているのでしょう。
そこで、本日の箇所のよりよい理解のために、いきさつをお話をしましょう。当時はイエス・キリスト出現の八百数十年前でした。その時代のイスラエルは、南北王国に分裂し、北王国の王はアハブという王でした。アハブ王は、地中海沿岸の異教国ティルスという国からやって来た妃イゼベルの強い影響を受け、イスラエルの先祖伝来の真の神やヤハウェへの信仰を捨て、偶像バアル信仰を受け入れました。そして、バアル信仰を国中に強力に広げました。
そこで、神はイスラエルを懲らしめて、悔い改めを求め、預言者エリヤを通し、数年間は、天を閉じて雨を降らせないことを、アハブ王に宣言しました。しかし、アハブ王は、かたくなで、決して悔い改めることをせず、逆ギレし、預言者エリヤに追っ手を差し向け、捕らえて殺害しようとする有り様でした。
さて、さらに日照りが続き、水不足は進みました。アハブ王の家来のオバドヤという人が、部下を引き連れ、新しい水源を探していました。すると、オバドヤに、預言者エリヤが出会い、王を連れてくるように依頼しましたので、オバドヤは、アハブ王に告げ、アハブ王が預言者エリヤのところにやって来ました。
そこで、１８章１６節以下につながるのです。では、アハブ王は、預言者エリヤと３年数カ月ぶりで対面したときに、どうしたでしょう。すると、憎しみをむき出しにし、１７節で、「お前か、イスラエルを煩わす者よ」と言いましたが、「イスラエルを煩わす者」というのは、イスラエルを苦しめる者という意味です。具体的には、イスラエルが飢饉で苦しんでいるのは、数年間イスラエルに雨が降らないという神の御心を語った預言者エリヤのせいであるとして、エリヤを激しく憎んでいることを表しています。
しかし、それは、もちろん、自分の罪を棚上げにした大的はずれでした。イスラエルに雨が降らず、飢饉で苦しんでいる原因は、イスラエルと契約を結んだ先祖伝来の真の神であるヤハウェの戒め、定め、おきて、律法を捨て、偶像神のバアルに従い、さらに、バアル信仰を国中に広めているアハブ王一族こそ、原因であることを、エリヤは表明しました。
１８節に「バアルに従っているあなたとあなたの父の家こそイスラエルを煩わしている」とありますが、「バアル」とは何でしょう。すると、バアルというのは、農耕神で、雨、霧、露、雷などの天候を支配する神と考えられていました。また、従わない者を打ち滅ぼす神と考えられました。古代の遺跡からバアルの姿を刻んだものが発見されていますが、その姿は、人間の姿に似ていて、片手に雷を持っています。すなわち、雷を持っているということは、雨、霧、露、雷などの農業に必要な天候を支配することを象徴しています。
また、１９節を見ますと、バアルに仕える預言者とともに、「アシェラの預言者」、すなわち、アシェラという偶像神に仕える預言者がいたことがわかりますが、アシェラとはどんな神でしょう。すると、アシェラは、アシュタロテとも言われますが、バアルの妻で女性神です。女神で、女性の姿をした神で、黄金や青銅で作られたり、もっと簡単に、1本の木を切ってきて、枝を払って、そこに女性の姿を描いて、拝んだりしました。バアルとアシェラは夫婦の神々です。そして、アシェラは、動物と植物に命を与える神、また、農産物祝福の神、お産を守る神、愛の神、楽しみを与えてくれる神と考えられました。
では、どうして、バアル信仰とアシェラ信仰がイスラエルに入り込んできたのでしょう。すると、アハブ王妃イゼベルが持ち込んだのです。イゼベルは、地中海西海岸のティルスという異教国の王の娘でしたが、イスラエル王アハブに嫁いだ時、バアル信仰とアシェラ信仰をイスラエルに持ち込み、流行させました。
そこで、神は、イスラエルを懲らしめ、悔い改めさせるため、預言者エリヤを通し、数年間は雨を降らせないことをアハブ王に伝えていました。しかし、もう水不足から来る飢饉のゆえに民の暮らしは限界でした。そこで、決着をつけるため、カルメル山で対決がなされることになったのです。ちなみに、真の神ヤハウェを信じる者はエリヤ１人でしたが、相手は、妃イゼベルの庇護を受けていたお抱えのバアル預言者４５０人とアシェラ預言者４００人でした。ですから、１人対４５０人の対決、あるいは、アシェラ預言者まで入れれば、１人対８５０人の対決になります。エリヤの信仰は強い信仰です。わたしたちもそうありたいと思います。
では、カルメル山の対決は、どうして生じるのでしょう。すると、それは、神が、ご自分こそ唯一の偉大な真の神であることをイスラエルの民に教えて、民の目を覚まさせ、民が悔い改め、もう1度、ご自分に立ち返り、救いと祝福と真の生きがいを得て、希望のある人生を喜んで歩ませるためでした。神の御心は、唯一の偉大な真の神であるご自分を信じて、喜んで生きる人々が、いつでも地上にいることです。
神は、真の神であるご自分を信じて、喜んで人生を歩んでいく人々が、地上からいなくなったり、途絶えたりすることを望まれません。そのため、神は、ご自分を礼拝し、喜んで歩んでいく人々を、恵みによって必ず起こしてくださるのです。わたしたちの教派の優れた信仰基準であるウェストミンスター信仰告白の第２５章「教会について」の第５節に「・・・地上には、み旨に従って神を礼拝する教会が、いつでも存在する」と力強く表明されていることと符合します。「教会」という言葉を、もっと簡単に人々に置き換えたら、とてもわかりやすいでしょう。「・・・地上には、み旨に従って神を礼拝する人々が、いつでも存在する」となり、わたしたちの心に伝わってくるでしょう。
そして、このことは今日も同じです。今日も、唯一の偉大な真の神は、ご自分をみ旨に従って喜んで礼拝する人々を、恵みによって地上に存在させているのです。では、２１世紀の今の時代に、唯一の偉大な真の神を喜んで礼拝するために、地上に生かされている人々とは、具体的に誰のことでしょう。それは、わたしたちのことです。あなたであり、わたしです。ありがたいですね。うれしいですね。わたしたちには、大きな使命が与えられていますね。わたしたちは、この地上に、この大地に、この世界に、この歴史の中で、真の神を喜んで礼拝しながら人生を歩むという大切な使命が与えられています。わたしたちは、今年も、自分の人生を大切にして歩んでいきたいと思います。
2. バアル預言者は完全に敗北しました。
第２点に入ります。第２点は、バアル預言者は敗北したという点です。２０節から２９節がそうです。カルメル山は、地図を見るとわかるのですが、エルサレムから北西の方向へ百キロほどのところの山です。海抜546メートルです。ですから、そう高い山ではありません。また、カルメル山から地中海までは約１０キロの近さです。なぜ、カルメル山が対決の場所に選ばれたのかと思うのですが、特に理由は記されていません。この山には、バアルの祭壇と真の神ヤハウェの祭壇のどちらもあったので、両者に関係のあるところとして選ばれたのかもしれません。また、カルメル山の頂上ではありませんが、あるところは、かなり広いスペースがあって、かなり多くの人々、すなわち、数百人から千人あるいはそれ以上の人々が集まることができたからかもしれません。
そして、この対決は、イスラエルの民が目を覚まし、悔い改めるためのものですので、イスラエルの民の代表が集められました。２０節に「すべての人々に使いを送り」とありますが、この表現でイスラエルの民の代表者たちへ集まるように知らせたことを表しています。そして、民の代表者たちが集まりましたので、預言者エリヤは、これから、先祖伝来の神ヤハウェが真の神か、それとも、バアルが真の神か、対決してはっきりさせるから、勝ちを納めた方の神を真の神として従うように求めました。
イスラエルの民は、救いと祝福を契約によって約束してくださった先祖伝来の真の神であるヤハウェ信仰とアハブ王妃イゼベルによって持ち込まれた偶像神バアル信仰との間で、心が揺れていて定まりませんでした。２１節を見ますと「あなたたちは、いつまでもどっちつかずに迷っているのか。もし主が神であるなら、主に従え。もしバアルが神であるならバアルに従え」と預言者エリヤは求めましたが、「いつまでもどっちつかずに迷っているのか」の「迷う」という言葉は、もともとの意味は、足が悪くてよろめくとか、足が悪くて右へ左へヨロヨロするという意味の言葉です。当時のイスラエルの民の心、精神の状況をとてもよく表しています。心と精神がよろよろして安定しなければ、人は困るでしょう。大事な人生が右に左に流されるままの浮き草のようになるでしょう。
さて、勝敗を決する方法はどんなものだったでしょう。すると、雄牛1頭ずつ屠り、それぞれ薪の上に乗せ、火をつけないでおいて、それぞれの信じる神の名前を呼び、薪の上に乗せられた犠牲の雄牛を天からの火で焼き尽くした神が勝ちというものでした。このやり方を、イスラエルの民も了解しました。
なぜこのような方法がとられたのかと思うのですが、特に理由は記されていません。先ほどもお話しましたが、古代の遺跡から、バアルの像が発掘され、バアルは片手に雷、すなわち、稲妻を持っている姿で刻まれています。ですから、バアルは、ゴロゴロ、ピカっと光って、ドカーンと落ちて、しばしば火災を引き起こす雷、すなわち、稲妻を自由に扱うと考えられていたので、それなら、バアルが本当に、天から稲妻を下して薪の上の犠牲の雄牛を火で焼きつくすかどうか、やってみようと、預言者エリヤは考えたのかもしれません。
さて、実際に、バアル預言者たちは薪の上に犠牲の雄牛を乗せた祭壇の回りに集まり、「朝から昼まで」、すなわち、半日ほど、「バアルよ、答えてください」と口々に、自分たちの神の名前を呼び続けました。しかし、もちろん、バアルなどという神は本来いないのですから、何の答えもあろうはずがありません。
しかし、バアル預言者たちは躍起になり、今度は、祭壇の回りを、ピョンピョン跳び上りながら踊り続けました。しかし、何の応答もありません。その様子を半日間も見ていた預言者エリヤは、バアル預言者たちを痛烈にあざけりました。どんなふうに嘲ったでしょう。バアルは、神で祈りを聞いてくれるはずだから、もっと大きな声で呼んだらどうか。呼ぶ声が小さいから聞こえないのではないか。また、バアルは、考えにふけっているのではないか、瞑想しているのではないか、と嘲りました。「神は不満なのか」とありますが、もともとの言い方は、神は考えにふけっているとか、神は瞑想しているという意味です。さらに、バアルは外出していて留守ではないか、旅行に行ったのではないか、あるいは、グーグー寝ているので起こさなければならないのではないか、と嘲りました。「人目を避けているのか」というのは、もともとは、出かけているとか、出かけて留守にしているという意味です。
すると、バアル預言者たちは、さらにボリュームアップして、バアルに呼びかけ、熱狂して興奮状態になったときにはいつもそうしていたように今回も、剣や槍を取り出し、自分の腕や体や足を刺したり、切ったりして傷つけ、体のあちらこちらから血をたらたら流しながら、バアルの名前を狂ったように呼び続けました。そして、お昼を過ぎても、その状態を続け、「献げ物をささげる時刻」、すなわち、午後３時になっても、バアルが答える兆しはまったく何もありませんでした。
こうして、バアルの完全な敗北は、イスラエルの民の目の前できわめて明白になりました。パウロが、コリンとの信徒への手紙一８章４節で、「・・・世の中に偶像の神などはなく、また、唯一の神以外にいかなる神もいないことをわたしたちは知っています」と極めて明白に教えていますように、万物の創造主なる真の神ヤハウェ以外に神はいませんので、バアルなどが存在するはずがなく、もちろん、答えるはずがありません。
今日も同じです。人類は、いろいろな神々を考え、宗教が世界にはたくさんあります。不思議なことに、世界の民族の中で、宗教のない民族はありません。人間のいるところ、必ず宗教があります。人類社会から宗教を抹殺しようとした試みもあったでしょう。しかし、宗教を人類から抹殺することは不可能でした。何故でしょう。理由は簡単です。宗教なしで人間は生きられないからです。
宗教改革者カルヴァンは、このことを正しく認識しました。カルヴァンは、人間の心には、宗教の種、宗教の種子がある。神を求める種がまかれていて、この種を人の心から取り除くことは決してできないと言いました。また、カルヴァンは、その同じことを、人間の心には、神聖感覚、すなわち、神を求める感覚が埋め込まれているという言い方でも言いました。そして、誰も、この神聖感覚、すなわち、神を求める感覚を取り除くことができない。なぜであるか。それは、人間というものは、神によって創造されたという動かすことのできない事実からきている。人間は、偶然に自然に存在するようになったのではなく、創造主なる神の積極的意志によって創造された存在で、最初から、神との関係で喜んで生きる者に造られた。ところが、人間はみな堕落し罪人になり、真の神がどのお方であるかわからなくなってしまった。しかし、それでもなお、宗教の種があり、神を求める感覚があるので、偽りの神々である偶像を考え出し、たくさんの宗教を生み出してきたのである、と言いました。
本当にそうです。偶像、異教の神々は、創造主なる真の神のゆがんだ写し、ゆがんだコピーのようなものです。本来の正しい素晴らしいオリジナルではありません。いろいろな宗教は、人を真に生かす真の宗教であるキリスト教のゆがんだ写し、ゆがんだコピーのようなものです。本来の正しい素晴らしいオリジナルではありません。でも、わたしたちは、人を真に生かす本来の正しい素晴らしいオリジナルである、唯一の偉大な真の神を信仰し、確実な救済と豊かな祝福と希望をもたらす永遠の生命を得て、日々喜んで歩みましょう。
３.真の神ヤハウェは完全に勝利しました
第３点に入ります。第３点は、真の神であるヤハウェの勝利が明白になったという点です。３０節から４０節がそうです。預言者エリヤは、遠巻きに見ていたイスラエルの民の代表者たちを、まず、自分に近づけ、壊れていたヤハウェの祭壇を修復する姿を見せ、ヤハウェを尊ぶ姿勢を教えました。すなわち、エリヤは、先祖ヤコブの１２人の息子からイスラエルが１２部族が出たことにちなみ、１２の石を人々に持ってこさせ、１２の石を築いて祭壇とし、その周囲に「種２セア」、すなわち、１５. ２リットルの麦の種をまく広さの溝を人々に掘らせました。
３１節に「主がかつて、『あなたの名はイスラエルである』と告げたヤコブの子孫の部族の数に従って」とありますが、これは、先祖ヤコブに現れた神が、ヤコブに、神の平和を意味するイスラエルという名前を与えたこと、また、そのヤコブの１２人の息子たちからイスラエル１２部族が出てきたことを記念するため、１２の石で壊れた祭壇を築き直したことを表しています。また、「種二セアを入れることのできるほどの溝」というのは、麦の種二セア、すなわち、１５．２リットルの麦の種をまく広さを、少し低く掘って溝としたことを表しています。なぜ、少し低く掘って溝にしたかと言いますと、ここに水を入れ、祭壇に火がつきにくくするためでした。１５．２リットルの麦の種を蒔く広さとは具体的にどのぐらいの広さかと思うのですが、かなりの程度の広さなのでしょう。
次に、１２の石で築き直された祭壇の上に、薪を乗せ、その上に、犠牲の雄牛をおきました。そして、火がつきにくくするために、４つのかめに水をいっぱい入れ、薪とその上に乗せられた犠牲の雄牛に、その水をバシャバシャかけました。これを３回も繰り返しました。水不足のイスラエルのどこにそんなに水があったのかとも思うのですが、カルメル山付近には、まだ水があったのかもしれません。いずれにしても、祭壇、薪、薪の上の犠牲の雄牛は完全に水でびしょ濡れであり、さらに、周囲の溝にまで流れ、低くなった溝にも水が一体たまりました。ですから、もう誰が見たって、人間的には、火がつかない状況です。わたしたち、夏などキャンプに行ったとき、キャンプファイヤーをしますが、薪が湿っているだけでも、マッチやライターで火をつけようとしてもとてもつかないでしょう。エリヤの場合は、湿っているどころか、わざわざ水をぶっかけた、しかも、ご丁寧に３回もぶっかけたのですから、人間的には、だれがどんなに頑張っても火はつきません。そのことは、近くで見ていたイスラエルの民も、アハブ王も、バアル預言者たちも容易にわかったでしょう。エリヤは、わざわざ火がつかないようにしたことは明白です。
では、エリヤはどうしてそんなことをしたのでしょう。すると、それは、人間的には、決して火がつかない状況でも、ヤハウェは、天からの火で一瞬間のうちに焼き尽くすことにより、真の神ヤハウェには計り知れない偉大な力があることを、イスラエルの民にはっきり教え、イスラエルの民が目を覚し、悔い改め、再び、先祖伝来の真の神ヤハウェに立ち返り、契約に基づく確実な救いと豊かな祝福と真の生きがいを得て、喜んで歩むためでした。
さあ、「献物を献げる時刻」、すなわち、夕方を表すのかもしれませんが、エリヤが神ヤハウェに呼ばわりました。エリヤは、先祖のアブラハムが信じ、イサクが信じ、イスラエル、すなわち、ヤコブが信じた神、また、契約によって救いと祝福を約束してくださった主なる神に呼びかけ、神が前にエリヤへの御言葉によって命じていたように、今、エリヤはカルメル山で対決しているので、エリヤの祈りに天から答えてくださるように、そうすれば、民はヤハウェこそ唯一の偉大な真の神であることを知って、民の心が再びヤハウェに戻ることを祈りました。
するとどうでしょう。即座に、天から火が下って、神への焼き尽くすささげもの、全焼のいけにであった雄牛、薪、石の祭壇、祭壇についていた塵の一粒までも、さらに、周囲の溝いっぱいにたまっていた水さえも、一瞬間のうちに焼き尽くしてしまいました。見ていたイスラエルの民は、恐れおののき、全員がその場にひれ伏し、ヤハウェこそ真の神ですと口々に告白しました。そこで、エリヤは、バアルの預言者たちをすべて捕らえ、カルメル山のふもとから地中海に流れ込むキション川の河原で、彼らを打ち滅ぼしました。
その後どうなったでしょう。対決が終わり、バアルが完全に敗北し、ヤハウェの完全な勝利が明白にされたので、イスラエルの民への懲らしめが終わり、イスラエルには、雨が降り、飢饉は終わったのです。こうして、カルメル山の対決は、決着がつきましたが、決着の方法は、天から火をもって焼き尽くすという奇跡でしたが、この同じことが今日でも起きるというわけではありません。
わたしたちは、今日も、神が、このような仕方で力を示してくれれば、聖書の神がただひとりの本当の神であるということを多くの人々が見て、知って、教会に来て救われるのにと思うかもしれません。しかし、今日は、もはやこのような仕方で、神がご自分の力を示すことは必要ではありません。聖書の記事を見れば、神はそのようなされようと思えばいくらでもおできになられるという計り知れない大きな力があることが、読めばわかるからです。
では、神は、今日どのような仕方で、ご自分の計り知れない大きな豊かな力を示しているのでしょう。するとそれは、人が聖書を通して真の神と真の神が遣わしてくださった救い主イエス・キリストを知って、信仰し、恵みによって罪から救われ、豊かな祝福を受け、永遠の生命を確信し、死に対する勝利の人生に希望をもって立ち上がることにおいて、また、その人生に喜んで日々歩み続けることにおいて、真の神の大きな力は、十分豊かに明白に表されているのです。
一言でいえば、人が救われること、また救いの中を歩むことにおいて、神の全能の力は十分に豊かに示され、表され、しかも、信者によって喜びとして経験され、体験されるのです。罪から救われ、永遠の生命を与えられ、死に対する勝利の人生を歩めるということは、神の全能の力によってしか生じない巨大な出来事であり、また、神の全能の力によってしか継続できない巨大な出来事なのです。ですから、救われること、また、救いの中を歩んでいくことを小さなこととして過小評価してはなりません。しかも、一人二人でなく、世界の中で自分を信じる、数え切れない無数の何千万、何億、何十億という人々を救い、あるいは、救いの中に歩ませるのですから、こんな素晴らしいことは小さな力ではできないことなのです。光あれと言えば光があったと言われる、無から万物を造り出す創造主なる真の神の全能の力によってのみ初めて成り立つ、巨大な恩恵の出来事なのです。
もし、カルメル山において、天から火を下して、焼き尽くす出来事においての方が、キリストによる人類の救いにおいてよりも、神の力はより大きく表れていると考えるなら誤りです。逆です。キリストの十字架の死と復活によるわたしたち罪人の救いにおいて以上に、真の、そして、愛の神の全能の力が限りなく豊かにキラキラまばゆく輝き表れているものはほかにないのです。神の全能の力は、今日、救いにおいて十分豊かに表されており、何の不足もありません。わたしたちは、罪人の素晴らしい救いにおいて、真の神の計り知れない偉大な力は、十分豊かに表れていることを確信しましょう。否、自分が恵みによって救われ、今、救いの中を喜んで歩んでいることにおいて、神の全能の力は十分にそして豊かに表れていることを知りましょう。そして、ひれ伏して感謝する思いを持って、今年も神を礼拝しながら歩みましょう。
結び
以上のようにして、本日は、旧約聖書のお話をしましたが、２１世紀に生きるわたしたちも、唯一の偉大な真の神は、キリストによって、わたしたちを救ってくださる聖書の神であることを、確信し、信仰と永遠の生命の道を希望をもって喜んで歩んでいきたいと思います。神の全能の力が豊かに現れるこの素晴らしい生き方がひとりでも多くの人に広まるように、今年も祈りつつ歩みたいと思います。
