「キリストの憐れみ」 マタイによる 福音書9章27節―38節 9:27イ エスがそこから お出かけになると、二人の盲人が叫んで、「ダビデの子よ、わたしたちを憐れんでください」と言いながら
ついて来た。9:28イエス が家に入ると、盲人たちがそばに寄って来たので、「わたしにできると信じる のか」と言われた。二人は、「はい、主よ」と言つた。9:29そこで、イエスが二人の目に触り、「 あなたがたの信じているとおりになるように」と言われると、 9:30二人は目が見えるようになった。イエスは、「このことは、だれにも知らせてはいけない」と彼らに厳しくお命じになった。9::31しかし、二人は外へ出ると、その地方一帯にイエスのことを言い広めた。9:32二人が出て行くと、悪霊に取りつかれて国の利けない人が、イエスのところに連れられて来た。9:33悪霊が追い出されると、口の利けない人がものを言い始めたので、群衆は驚嘆し、「こんなことは、今までイスラエルで起こったためしがない」と言
つた。9:34 かし、ファリサイ派の人々は、「あの男は悪霊の頭の力で悪霊 を追い出 ている」と言つた。 はじめに 秋の伝道集会も終わり、また、伝道集会とのつながりを考えた伝道的説教も
前回なされ、また通常の礼拝に戻りますが、クリスマスを目指して、みんなで歩んでいきたいと思います。礼拝や「親子サークル すまいる」や再開される英語教室に新しい人々が与えられるように、みんなで心を合わせてお祈りし
いきたいと思います。 さて、それで、主の日の朝の礼拝においては、新約聖書のマタイによる福音書からお話をしていますが、本日はどんなところでしょう。すると、2つのことが記されています。ひとつは、二人の盲人が、イエス様の憐れみよりいやされる奇跡です。2つ目のことは、口の利けない人から、悪霊が追い出され、口が利けるようにされる奇跡です。 マタイによる福音書の8章と9章には、イエスさまの奇跡が10個まとめて記
れていますが、2人の盲人のいやしは、10個の奇跡のうち第9番目の奇跡 になり、口の利けない人から、悪霊が追い出され、口が利けるようにされる奇跡は、10個の奇跡のうちの最後のクライマックスの奇跡になります。 いずれにしても、今日のわたしたちも、イエス様から大きな憐れみを受け、心の目が開かれ、永遠の生命の道を、希望を持って、お互いに励まし合って喜んで歩んでいきたいと思います。 1.2人の盲人が、イエスさまの憐れみにより、いやされました さて、わたしたちは、まず、二人の盲人がイエス様の憐れみによりいやされる奇跡に目を向けましょう
。では、この奇跡は、いつ、どのようなときに生じたのでしょう 。すると、前回一緒に学びましたが、カファルナウムの会堂長のヤイロの娘のよみがえりと、その途中で、イエスさまの服に後ろから触った長血
の女性のいやしの後、イエスさまが、会堂長ヤイロの家を出て、御自分が伝道の 本拠地とするために借りていたであろうと思われるカファルナウムの御自分の 家に帰ろうとして、道を歩いているときの出来事でした。 目の見えない二人の盲人が出てきて、道を歩いて行くイエス様の後を追いか
けながら、自分たちの目を開けてくれるいやしを叫び続けて求めました。「二人の盲人」とありまして、一人の盲人ではなく、二人の盲人であつたことを教えています。一人の盲人がいやされるよりも、二人の盲人が同時にいやされることの方が、イエスさまの力がより大きく現れます。二人とも成人男子であることが前提されています。 そして、考えてみますと、二人の盲人が出てきて、いやしを求めて叫び続けながらついてきたことは、イエスさまへの信仰を表しています。普通の人がつい
て来るならまだしも、目の見えない不自由な人は、自分の住まいから町の通り に出てくるだけでも大変でしょう。自分たちだけで手探り状態で出てきたのか、 それとも、誰かに手を引いてもらって出てきたのかのどちらかと思いますが、
どちらにしても相当な努力をしているでしょう。わたしたちも、今日、白い杖をついて歩いている盲人の方を見るでしょう 。 目が見えないということの背後に、多くの悲しみ、苦しみ、悩み、つらさがあるでしょう
。もう亡くなりましたが、クリスチャン作家であった三浦綾子さんが書いたものを思い出します。三浦綾子さんも、病弱であったため、自分が将来目が見えなくなるかもしれないと思って、ある時、目をつぶって、家の中で練習したそうですが、その時、目が見えないことの大変さを実感したということを書いていましたが、本当にそうだと思います。 でも、イエスさまというお方が出現し、いろいろな病を治しているということ
を聞いたと思われます。そこで、それなら、イエスさまは自分たちの目も見える ようにしてくださるに違いないと確信し、イエスさまが、今、カファルナウムの 町の通りを歩いているということを知って、出てきたのですが、これは、イエスさまに対する信仰と信頼です。 しかも、イエスさまのことを旧約時代から約束されていたダビデの子孫から出る救い主として呼びかけていることからも、二人の盲人の信仰と信頼が読者に伝わってきます。「ダビデの子よ」という呼びかけは、ダビデの子孫である救
い主メシアという意味です。ダビデというのは、イエスさまからちょうど千年ほ ど前のイスラエルの王でしたが、大変信仰深い王でしたので、神は、ダビデを祝福し、ダビデの子孫から救い主メシアが出ることを約束してくださいました。 そして、「わたしたちを憐れんでください」というのは、もちろん、自分たち盲人の苦しみを理解し、同情し、思いやって、目が見えるようにしてくださいという意味です。「憐れむ」というのは、愛の心から苦しみを理解し、同情し、思いやることを意味しています。 しかも、「ダ気がビデの子よ、わたしたちを憐れんでください」と叫び続けたのです。「叫んで」と
りますが、もともとの言い方は、継続を表す言い方で、叫び続けたという意味です。これはもうイエスさまに対する信仰と信頼です。 わたしたちはどうでしょう。人々のいる通りで、叫び続けるということは恥
ずかしいでしょう。南浦和駅前の人通りで、教会の案内チラシを手渡しで配る とき、それだけで恥ずかしい感じがするかもしれません。それなのに、さらに、 叫んだり、叫び続けたりできるでしょうか。相当な覚悟がいるでしょう。恥じも外間も捨てなければできないでしょう
。 しかも、この二人の盲人は、叫びながら、イエスさまについて行つたのですが、
ついて行ったといっても、目が見えないでついて行くわけですから、大変だっ たでしょう。イエスさまや弟子たちや人々の足音やざわめきを頼りについて行ったにせや、あるいは、誰かに手を引いてもらって、ついて行つたにせよ、一生
懸命ついていったでしょう 。目の見えない彼らにとって、大変なことだったで しょう 。 では、イエスさまはどうしたでしょう。すると、イエスさまは、何事も聞かなかったかのように、平然として通り過ぎ、御自分の家にどんどん行ってしまわれ
たのです。 わたしたちは、ここを見て疑間を持ちます。なぜイエスさまはそんなことをさ
れたのかと思うのです。前回お話しましたように、長血の女性が、後ろから、イ平スさまの服に触ったときには、その場ですぐに、その女性をいやしてくださ ったのに、今回は違うのです。イエスさまはどうしたのでしょう。差別をしたの
でしょうか。 いいえ違います。それは、二人の盲人の信仰が本物かどうかを試すためでし
た。もし、二人の盲人の信仰が本物であれば、そして、また、二人の盲人が、目が見えない自分の悲惨さを十分知っていて、イエスさまによっていやされるこ とを本当に心から望んでいるならば、さらに、信仰によって熱心に求めてくる
はずです。イエスさまは、人の信仰を試すこともなさいます。今日もそうです。 では、二人の盲人はどうしたでしょう。すると、自分たちが必死でイエスさまに憐れみを叫び続けているのに、イエスさまは立ち止まることなく、どんどん行
つてしまわれたことを、その場の気配で知ったときに、二人の盲人は、イエさまと弟子たちと人々の足音やざわめきを頼りにしてか、あるいは、誰かに手を引いてもらうかして、さらに、必死になって、イエス様についてず―っと行き、イエスさまが家に入ると、二人の盲人も、イエスさまについて、家に入ってくるほどの熱心を示したのです。これは、本物の信仰です。 そこで、イエスさまは自らが直接に、二人の盲人の信仰を確認します。28節
で「『わたしにできると信じるのか』」と言われた」とありますが、これは、イエスさま自らが直接に二人の盲人の信仰を確認している姿です。わたしたちから見れば、もうこれまでで、二人の盲人のイエスさまに対する信仰と信頼は、わかりきったことではないかと思えるのです。 ところが、当のイエスさまは、ここで、御自分で、直接、口頭で、彼らに質問
をして、彼らに信仰があるかどうかを確かめています。これは、まるで試問会において、信仰をきちんと確認しているかのようです。今日、教会において、だれかが洗礼を受けてクリスチャンになるとき、牧師と長老の会議で、あなたは、イエス・キリストを信じますかと試間をし、きちんと確認しますが、まさにイエスさまも二人の盲人の信仰を試問し、きちんと確認をしているのです。 「『わたしにできると信じるのか』と言われた」とありますが、この意味
、もちろん、二人の盲人は、イエスさまによって目が開かれて、見えるようにされることを信じるかと尋ねられ、恵みを受ける手段である信仰そのものが問われているのです。 すると、二人の盲人は、「はい、主よ」と答えて、イエスさまは、自分たちの
目を開いて、見えるようにできることを信仰していることを明白に答えました。 二人の盲人の返答にあやふやなところは何もありません。とても明快で力強い 答えです。このことは教会の試問会で、洗礼を受けることを願っている人が、
あなたは、イエス・キリストを信じますかと問われたとき、はい信じますと、確信を持って力強く答えることに似ています。 すると、二人の盲人の信仰を自ら直接しっかり確認したイエスさまは、そこで、
優しく、二人の盲人の目に自らの手を触れて、いやしてくださいましたが、ここで大切なのは、「あなたがたの信じているとおりになるように」とありまして、ここでも、また、二人の盲人の信仰を確認して、いやしがなされることを教えています。 すなわち、イエスさまは、このとき、二人の盲人の信仰について2回確認した のです。2回確認すれば十分です。第1回目は、「わたしにできると信じるのか」と言われました。そして、そしてもう1回は、「あなたがたの信じているとおりになるように」と言われました。こうして、イエスさまは、くどいと思わ れるほど、二人の盲人の信仰について2回も確認しました。それは、なぜでしょう。 すると、それは、約束の救い主メシアのイエスさまから、人が、祝福を受けるために必要不可欠のものは、イエスさまを信仰し、信頼することを、この二人の盲人に強く教え、この二人の盲人が、この先、生涯、信仰により豊かな祝福を受けてよい人生を歩むためです。 本当にそうです。人が、祝福を受け、よい人生を歩むためには、真の神とその真の神が遣わしてくださったイエスさまを信仰し、信頼することが大切です。
救い主のイエスさまを抜かしてはだめです。1世紀の宗教の指導者の律法学者や ファリサイ派のように、目に見えない万物の創造主である真の神は信ずるけれ
ども、人間の姿をした救い主のイエスさまを信仰することは激しく拒否し、信仰 もしないし、信頼もしないというのであれば、祝福はないのです。救い主のイエスさまを抜かしては、もぬけの殻で、何の祝福もありません。 しかし、二人の盲人は、律法学者やファリサイ派と違って、イエスさまを信仰
の対象として確信をもって力強く表明したので、イエスさまは、豊かな祝福とし て、彼らの目が見えるようにしてくださいました。そして、なお同時に、彼らの心の日も見えるようにしてくださいました。 イエスさまを信じる者は、信仰義認により、恵みにより、罪赦され、救われ、
永遠の生命が与えられます。それゆえ、この二人の盲人は、肉の目が見えるようにされたとともに、魂も救われ、心の日も見えるようにされたことはいうまでもありません。 今日のわたしたちも同じです。わたしたちは、イエスさまを抜かしてはいけま
せん。目に見えない真の神は信仰するが、わたしたちと同じ人間の姿をしたイ エスさまは、信仰の対象にならないと拒否し、イエスさまを抜かしたのでは、もぬけの殻で、祝福はないのです。わたしたちは、わたしたちと同じ人間の姿をし
ておられても、イエスさまを人類のただひとりの尊い救い主とし、偉大な神の御 子として、全能の神御自身としてしっかり 信仰し、心から信頼して、毎日、イ エスさまから豊かな祝福をいっぱい受け、喜びに満ち溢れ、希望で胸をふくらま
せ、よい人生を歩むのです。 このように、イエスさまによって奇跡が行われましたが、ここで、イエスさまは、
二人の盲人にひとつの注意を与えました。それは、1世紀の宗教の指導者の律 法学者やファリサイ派を不必要に刺激しないため、また、人々が、イエスさまの 奇跡を知って熱狂的にならないようにするため、この奇跡を人々に知らせない ように、厳しく命じました。 ところが、この二人の盲人は、う れしさのあまりでしたが、イエス様によっていやされたことを、人々に言い広めてしまいましたので、イエスさまのうわさ
は、さらに、イスラエル北部のガリラヤ地方一帯に一層広まることになってし まいました。もちろん、これは、よいことではありませんでした。信仰には、自己抑制、セルフコントロールが必要です。信仰を持ったら何をしてもよいというのではありません。 以上のようにして、9章と10章に出てくる10個の奇跡のうちの第9番目
の奇跡として、二人の盲人の奇跡を見ますが、初めて聖書を読む人は、驚くでしょう
。惑うでしょう 。聖書は、今日でも、イエスさまを信じれば同じ奇跡が生じるということを教えているのかと思うかもしれません。でも、そのような意 味で、わたしたちは、聖書を読むのではありません。 もちろん、確かに1世紀のイスラエルにおいて、イエスさまによって、この奇
跡は歴史の素晴らしい事実として生じました。でも、だからいって、今日の21世紀の日本においても、同じことが起こるという 意味で読むのではありません。今日のわたしたちは、信仰的、霊的に自分に当てはめて読むのです。 すなわち、人は罪人で心の盲人であって、人を真に生かすすばらしい霊的真
理が見えない者です。それでは真の幸せになれません。そこで、人はイエスさまを信じて、心の目が開かれ、神と救いについての真理を知って、真の幸せを自分のものにするというふうに読むのです。 本当にそうです。わたしたちは、あなたもわたしも、心の目が見えない盲人です。でも、イエスさまに出会って、心の目が見えるようにされ、真の幸せを得るのです。こんなお話があります。わたしは、最近、ある婦人の方が書いた「幸せが見えますか」という
題の1冊の小冊子を入手して読みました。その婦人のお父さんのことが書いてありました。その婦人のお父さんは、ある病のため、33歳で失明してしまいました。そこで、失明を治すために大きな手術までしましたが、治りませんでした。 すると、そのお父さんは、宗教に向かい、ありとあらゆる宗教に片っ端から入っていったそうです。その理由は、どの宗教も、信じれば治ると言ったからで
す。ところが、どの宗教に入っても、治りませんでした。そのため、そのお父さんは、2度と宗教のことを口にしなくなりました。 そんなとき、そのお父さんの子供であつたその婦人は、近くの教会の日曜学
校に通っていました。そして、お父さんのことを、教会の牧師にお話しました。 すると、牧師が、そのお父さんを訪ねて来て、わたしは、あなたの肉体の目は 開けられないけれども、あなたの心の目が開けるお手伝いをさせてくださいと言って、そのお父さんのために、心からお祈りしました。 すると、次の日曜日から、そのお父さんは、その教会へ行くようになり、聖書のお話を聞くようになりました。そして、イエスさまから心の目を開けられ、
洗礼を受け、クリスチャンになりました。7年間の喜びに満ち溢れた信仰生活の後、そのお父さんは天に召されました。でも、そのお父さんはこんなことを、その婦人の方に言ったそうです。幸せというものは、心の目で見つけていくものだ。自分は、体の目は見えなくなった。でも、イエスさまにより、心の目が開けられ、幸せを見つけることができ、本当によかったと言ったそうです。そして、その言葉が、その婦人の心に今も残っているそうです。 わたしは、その小冊子を読みまして、本当にそうだと思いました。心の目の
では、もうひとつの奇跡を見ましょう。それは、日の利けない人をいやす奇跡です。この奇跡は、マタイによる福音書8章と9章に記されている10個の奇跡を締めくくる最後の奇跡、10番目の奇跡です。 さて、では、10個の奇跡を締めくくるクライマックスとなる素晴らしい奇
跡は、どんな奇跡だったでしょう。すると、悪霊に取りつかれて口が利けなかった人から、悪霊を追い出し、国が利けるようにしてくださったという奇跡です。32節と33節のわずか2節で、書き方がとても簡単です。でも、その影響力、インパクトは、実に大きなもので、10個の奇跡の大トリにふさわしい奇跡です。 この奇跡は、次のようにして生じました。イエスさまが、イスラエル北部のガ
リラヤ地方のカファルナウムの町に借りていた御自分の家で、二人の盲人をい やしましたが、その二人の盲人が、いやされ、喜びに満ち溢れ、イエスさまの家 から出ていくのと入れ替わりに、今度は、悪霊に取りつかれて、国の利けない人が、人々によって、イエスさまのところに連れて来られました。 この人は、口が利けない人でしたが、生まれつき、日が利けなかったのではなく、あるときまでは普通に話していたのに、悪霊にとりつかれてから、ものが言えなくなってしまいました。そのことは、その地域の人々がみんな知っていました。この人が、何歳ぐらいの人であつたのか、どのようにして暮らしていたのか、家族はどうであったのかなどということは不明ですが、成人男子であることが前提とされています。 ところで、悪霊とは何でしょう。すると、折々に出てきますが、悪霊とは、
堕落した天使のことです。神は、天地万物を創造したとき、御自分のそばに仕え、御自分を賛美する霊的存在として、天使たちをも創造しました。天使は、体を持たない、それゆえに、人間の日に見えない霊的存在ですが、知性感情意志の人格を持ちます。 ところが、天使の中には、与えられた自由意志を神に仕えることに用いない
で、神に反逆するために用いました。そのため、堕落し、それらの天使は、悪い霊、すなわち、悪霊となりました。そして、堕落天使のかしら、悪霊たちのかしらが、悪魔、サタンです。そして、悪霊は、常に絶えず悪のみを行います。悪霊は、自分たちが目に見えないこと、人間よりも強い力を持っていることを悪用し、人間を苦しめました。特に、1世紀のイスラエルにおいて、悪霊は、大暴れし、イスラエルの人々に取りついて激しく苦しめました。人は、悪霊に取りつかれると、なすすべがありませんで、されるがままの悲惨な状態でした。人間としての心は失うし、体には害が与えられるし、大事な人生と生活は破壊されるしで、悲惨の極みに落とされましたが、人は全くの無力で、悪霊に勝てる人や悪霊を支配できる人など、イスラエルの長い歴史において皆無でした。 もちろん、1世紀のイスラエルにおいて、宗教の指導者と言われる人々がい
ました。エルサレム神殿には、祭司や大祭司がいました。土曜日ごとの町や村の会堂での安息日礼拝には、律法学者やファリサイ派がいました。しかし、悪霊に対しては、全くの無力でした。 また、 1世紀のイスラエルにおいても、呪術師や魔術師みたいな人々もいま
した。彼らは、悪霊追い出しのため、いろいろな儀式をしましたが、何の効き目もありませんでした。彼らもまた全く無力でした。 ところが、イエスさまの出現により、イスラエルの長い歴史においてかつてな
かった驚くべきことが人々の見ている前で本当に起こりました。悪霊に取りつ かれたために口の利けない人から、悪霊を直ちに追い出してくださったので、 その人は、以前のように、しゃべり始めたのです。それを見た人々、群衆は、
驚嘆しました。 わたしたちはここを見まして、このときイエスさまはどのようにして、悪霊を
追い出したのかと思うのです。悪霊よ出ていけと命じたのか、あるいは、言葉を一言も発せず、追い出したのかまではわかりません。どちらにしても、イエスさまの偉大な力が輝いています。悪霊よ出ていけと命じたのであれば、イエスさまの言葉の力の偉大さが読者に伝わります。また、言葉を一言も発せずに、悪霊を思い出したのであれば、なおさら、イエスさまの偉大な力は輝くでしょう
。 さあ、驚いたのは群衆、人々です。驚嘆しました。「『こんなことは、今までイスラエルで起こったためしがない』と言った」とありますが、本当にそうです。旧約時代の長いイスラエル民族の歴史において、確かに、いろいろな奇跡がなされました。でも、悪霊を追い出して、人をいやす奇跡はなされたことはありません。 それで、実は、口の利けない人が、口が利けるようにされるということは、 救い主メシアが出現するときの豊かな祝福のひとつとして約束されていたことなのです。旧約聖書のイザヤ書35章を見ますと、そうです。イザヤ書35章 は、預言者イザヤによるメシア預言です。人類のただひとりの救い主が出現す るときには、いろいろな祝福が生じると預言されていますが、そのひとつに、 国の利けない人が、口が利けるようにされる祝福も挙げられています。イザヤ書35章6節に、「そのとき・・・回の利けなかった人が喜び歌う。」とわざわざ言われていますが、これがそうです。 そして、その預言者イザヤが、預言してから、7百数十年後に、イエスさまというお方が出現し、人の力ではどうにもできない悪霊を、御自分偉大な力によっ て有無を言わせず直ちに追い出し、口が利けるようにしてくださったことは、
イザヤのメシア預言の実現で、イエス様こそ、正真正銘の人類のただ一人の救 い主メシアであることを教えているのです。 そして、さらに、この口の利けない人が、日が利けるようにされる奇跡の前に、先ほどお話ししたように、二人の盲人の目が開かれ、見えるようにされたことも、実は、メシア出現の豊かな祝福のひとつに挙げられていたことです。イザヤ書35章5節
「そのとき、見えない人の目が開き」と預言されていた との実現です。 ですから、イエス様が、二人の盲人の目を見えるようにしてくださった奇跡 と口の利けない人を目が利けるようにしてくださった奇跡2つを、マタイによ
る福音書がわざわざ並べて記していることは、イエスさまが出現したことにより、この大地に、確実に、人類の救いが本当に開始したことを読者に力強く教えようとしているのです。 本当にそうです。そして、救い主のイエス様出現による豊かな祝福は、今日もなお続いています。わたしたちには、目が見えなかったり、口が利けなかったりという苦しみはないかもしれません。でも、違うかたちでの苦しみや悩みや辛いことや問題や試練があります。そして、それらの苦しみに対して、わたしたちは、無力です。でも、人間の力ではどうにもできなかった悪霊を、イエスさまが御自分の偉大な力で追い出し、その人を苦しみから解放してくださったように、今日も、イエスさまは、わたしたちを苦しめるいろいろな力から解放してくださり、わたしたちが、健全で、明るい、希望のある真の
人生を送れるようにしてくださるのです。それゆえ、わたしたちも、イエスさまを、心から信頼しま しょう。 さて、口の利けない人から、御自分の偉大な力で悪霊を追い出し、日が利けるようにしてくださったイエスさまこそ、イザヤ書が預言していたすばらしい救 い主メシアであることがはっきりしました。でも、1世紀のイスラエルの宗教の指導者のファリサイ派は、イエスさまを信じませんでした。逆に、拒否しまし た。しかも、こともあろうに、イエスさまが悪霊を追い出したのは、悪霊のかし らであるサタンの力を借りたからであると悪意をもって言い張る有り様でした。 これではとても、救いと祝福と永遠の生命を恵みとして受けることができませ ん。 「『あの男は悪霊の頭の力で悪霊を追い出している』と言つた」とありますが、「悪霊の頭」というのは、サタンのことです。サタンと悪霊は、ヤクザの親分と
子分の関係のようなものです。ヤクザの世界においては、子分は親分の言うことに絶対服従です。それと似ています。親分はサタンであり、子分は 悪霊です。それゆえ、子分の悪霊は、親分のサタンに絶対服従するので、イエスさまは、親分のサタンの力を借り
、子分の悪霊をその人から出ていくようにさせたと言い張つたのですが、これはもうめちゃくちゃです。イエスさまは、聖なる神の御子であり、サタンの力を借りたりなどしません。イエスさまは、サタンの業を滅ぼすために出現されたのであり、御自分の偉大な力で、人と苦しめる悪霊を直ちに追い出して、人の大切な人生を健全にしてくださるのです。 本当にそうです。今日のわたしたちは、天の慈しみ深い父なる神から遣わさ
ててきた救い主のイエスさまに対し、心柔らかにしましょう 。そして、日々、自分に必要な祝福をイエスさまからいっぱい与えられ、喜びと感謝と賛美をもって、 希望で胸を膨らませ、よい人生をこれからもみんなで歩んでいきましょう
。 結び 以上のようにして、本日のところを見ます。わたしたちは、生まれながらの罪人であり、心の目が見えない盲人です。それゆえ、イエスさまの大きな憐れみにより、心の目を開けていただき、人を真に生かす神と救いに関する霊的真理がよく見えるようにされ、祝福豊かな良い日々を歩むようにしましょう
。聖霊が、わたしたち一人一人の心に豊かに働いて、霊的真理が見えるようにしてくださるよう 、皆でお祈りしましょう 。 お祈り どうか、イエス・キリストを信頼する真の生き方が、教会の宣教を通して、
広がっていきますように、聖霊の豊かな力と恵みをお与えください。 また、広い意味の伝道として、「親子サークル すまいる」が今週も行われますが、開始しからちょうど1年になろうとしています。聖霊の導きと支えを心から感謝いたします。近隣の親子が喜んで楽しみにして来ていますが、その中から、教会に導かれる人が起こされていきますようにお願いいたします。奉仕者一同の上に、あなたからの豊かな祝福がありますようお祈りいたします。 また、同じように、広い意味の伝道として、英語教室も今週から再開されますが、奉仕してくださるルツ・ヤング宣教師夫人の上に、あなたからの豊かな
祝福がありますようお祈りいたします。人々が集まり、その中から、教会に導 かれる人が起こされますようお願いいたします。世話をしてくださる兄弟姉妹 たちの上に、顧みがありますようお祈りいたします。 本日、集まることのできなかった兄弟姉妹子供たちに顧みをお与えください。
また、健康の弱さを覚えている兄弟姉妹たち、高齢の兄弟姉妹たち、困難や試 練に出会っている兄弟姉妹たちに、慰めをお与えください。 今日から始まるわたしたちの新しい1週 間をどこにあっても、豊かに祝福し てください。これらの祈りを、主イエス・キリストの御名により、御前にお献げいたします。アーメン。
|