　　　　　　　　　　　　　　　　　　「喜びの信仰としてのキリスト教」

　　　　　　　　　　　　マタイによる福音書９章１４節－１７節

9:14そのころ、ヨハネの弟子たちがイエスのところに来て、「わたしたちとファリサイ派の人々はよく断食しているのに、なぜ、あなたの弟子たちは断食しないのですか」と言った。9:15イエスは言われた。「花婿が一緒にいる間、婚礼の客は悲しむことができるだろうか。しかし、花婿が奪い取られる時が来る。そのとき、彼らは断食することになる。9:16だれも、織りたての布から布切れを取って、古い服に継ぎを当てたりはしない。新しい布切れが服を引き裂き、破れはいつそうひどくなるからだ。9:17新しいぶどう酒を古い革袋に入れる者はいない。そんなことをすれば、革袋は破れ、ぶどう酒は流れ出て、革袋もだめになる。新しいぶどう酒は、新しい革袋に入れるものだ。そうすれば、両方とも長もちする。」

はじめに

わたしたちは、９月の歩みをしていますが、９月３０日には、外部から講師の先生をお迎えしての伝道集会が予定されています。人々が集まる伝道集会となるように、みんなでお祈りをしながら、よい準備をしてぃきたいと思います。

また、わたしたちの南浦和教会の今年の年間標語聖句は、フィリピの信徒ヘの手紙４章６節と７節で、「どんなことでも、思い煩うのはやめなさい。何事につけ、感謝を込めて祈りと願いをささげ、求めているものを神に打ち明けなさい。そうすれば、あらゆる人知を超える神の平和が、あなた方の心と考えとをキリスト・イエスによって守るでしょう」です。

また、年間目標は「礼拝を守り、感謝し、祈り合う生活」です。この年間標語と年間目標により、わたしたちは、まず、週の初めの日にみんなで喜んで神を礼拝し、与えられているいろいろな恵みを神に率直に感謝し、お互いに顔と顔とを親しく合わせ、教会のため、各家庭のため、一人一人のため、神の祝福を祈り合い、聖徒のよい交わりをしながら信仰の道を喜んで歩んでいきましょう。

さて、それで、日曜日の朝の礼拝においては、新約聖書のマタイによる福音書からお話をしていますが、本日はどんなところでしょう。すると、見出しに、「断食ついての問答」とつけられていますように、1世紀のイスラエル社会で行われていた、食を断って、わが身を苦しめて、神に祈ることについて、洗礼ヨハネの弟子たちが、イエスさまを攻撃してきたので、イエスさまがそれについて答え、イエスさまを信じて従うことは、本来、苦しみを与えるものでなく、喜びと新鮮な力を与えるものであることを、積極的に教えてくださいました。そこで、今日のわたしたちも、イエスさま信じて救われ、罪赦され、心の軽やかさと喜びの中に、また、常に新鮮な霊的力を日々豊かに与えられ、神の前に霊的に生き生きと生きていく者になりたいと思います。そこで、本日は、「喜びの信仰としてのキリスト教」と題してお話をします。

１．断食問答は。洗礼ヨハネの弟子たちの攻撃にいって生じました

では、断食問答は、いつ、どのようにして生じたのでしょう。すると、前回一緒に学びましたように、直前の記事で、イエスさまが、徴税人マタイの家での食事をした時期の出来事でした。メシアの先駆けの洗礼ヨハネの弟子たちが、イエスさまに近づいて来て、自分たちとファリサイ派は、しばしば断食して神祈るのに、イエスさまの弟子たちは、断食をする様子が一向にない。断食するどころか、逆に、機会あるごとに、飲んだり食べたり楽しくやっている。その証拠に、イエスさまの弟子たちは、徴税人マタイの家で、マタイの仲間の同じ徴税人や罪人、すなわち、犯罪を犯した人たちと一緒に食事をして、飲んだり食ベたり楽しくやっていた。宗教家の指導者になる者は、飲んだり食べたりして、楽しくしてはいけない、いつもわが身を苦しめて厳格に、あるいは、いつも禁欲的にしていなければならないのに、おかしいではないかと攻撃しました。

１４節に、「そのころ」とありますが、「そのころ」というのは、イエスさまが徴税人マタイの家で、食事をした時期のことを意味しています。その食事には、弟子たちも一緒にいました。そして、弟子たちも、飲んだり食べたり楽くやっていました。そして、その姿を、洗礼ヨハネの弟子たちも見ていて、腹を立てていたのでしょう。自分たちは断食して苦しい思いをしているのに、イエスさまの弟子たちは、楽しくやっている、それは、指導しているイエスさまが悪い。よし、イエスさまに文句を言ってやろうという気持ちだったのでしょう。

「ヨハネの弟子たち」とありますが、この表現で、メシアの先駆けの洗礼ヨハネの弟子たちを意味しています。洗礼ヨハネについては、以前に、マタイによる福音書３章１節から１７節で、一緒に丁寧に学びました。洗礼ヨハネは、らくだの毛衣を片方の肩に着て、両足はにょきにょき出して、人のいない荒れ野に小屋のようなものを建てて住み、いなごと野蜜を食べるという禁欲的生活をしていましたが、イエスさまを、旧約聖書で約束されていた救い主メシアとして、イスラエルの民に紹介する大切な働きをしました。そして、実際にイエスさまが、現れたとき、約束のメシアと証言し、イエスさまにヨルダン川で洗礼を授けた人物でしたが、そのヨハネを師と仰いで従う弟子たちのグループがありました。

そして、洗礼ヨハネは、その後、マタイによる福音書４章１２節に記されておりますように、イスラエル北部のガリラヤ地方の領主ヘロデに捕らえられ、牢屋に閉じ込められてしまいました。ガリラヤ地方の領主ヘロデが、兄弟の妻を奪ったので、洗礼ヨハネは、それは、神の律法に反する罪として糾弾しました。そこで、領主ヘロデは怒り、洗礼ヨハネを捕らえ、牢屋に閉じ込めてしまいました。でも、洗礼ヨハネの弟子たちのグループは、活動を続けていました。そして、活動の中心のひとつとして、ファリサイ派と同じく、しばしば、自分の身を苦しめる祈る断食祈祷に力を入れていました。

また、「ファリサイ派」というのは、直前の記事でも出てきましたが、1世紀のイスラエル社会の宗教の指導者の一派で、厳格な宗教的実践をするグループでした。ファリサイ派というのは分離派という意味で、自分たちは一般民衆と分離して、厳格な宗教的な実践をする者たちと言っておりましたので、分離派と呼ばれました。

そして、そのファリサイ派は、断食祈祷に力を入れて行っていましたが、洗礼ヨハネの弟子たちも、ファリサイ派と同じように、断食に力を入れていました。そこに「断食」という言葉が３回出てきますが、断食というのは、食を断って神に祈ることを意味します。

今日でも断食道場というのがあって、多くの場合は、ダイエットとか、あるいは、胃や腸の内臓の健康増進や治療目的で行われますが、1世紀のイスラエル社会においては、宗教的なものでした。その目的は、自分の罪を悲しみ、悔い改め、神に罪の赦しを祈り求めるために行われるものでした。

神がイスラエルの民に、断食して祈ることを求めたのは１年に１回、１日だけでした。旧約聖書のレビ記２３章２３節から３２節に記されておりますように、イスラエルのカレンダーの７月１０日の贖罪日の祈りがそうでした。その日は、イスラエル民族全体の罪の赦しを神に求めるため、大祭司が、至聖所に入って、動物犠牲を献げて、罪の赦しの厳粛な儀式をする重要な日でした。そのときには、イスラエルの民全員が食を断って、自らの罪を悲しみ、ともに神に赦しを求めることが命じられていました。そして、もちろん、食を断つことは、苦しいことであり、自分の身を悩ますことですので、断食は、身を悩ますこと、すなわち、苦行と言われました。

以上のようにして、神がイスラエルの民に断食して祈ること求めたのは、1年に1回、1日だけでしたが、何か特別にお祈りしたいことがあるときには、各自が自発的に行う断食は自由になされました。たとえば、ネヘミヤは、エルサレムの城壁が崩れたままにされていることを聞いたとき、それは、神の前に大きな罪であることを思い、悲しみ、赦しを求め、涙とともに数日間食を断って神に祈りました。また、信仰の女性エステルは、ペルシャ王との謁見を求めても、死罪にならにないように、３日間食を断って神に祈りました。

こうして、旧約時代から、断食は行われてきましたが、1世紀のイスラエルにおいては、断食の本来の目的が失われて形式化し、律法学者やファリサイ派は、自分が断食して祈っている姿を人々に見せて、自分の信仰深さを誇るため行うようになっていました。ルカによる福音書の１８章１２節を見ますと、ファリサイ派は、1週間に２度、２日断食をしていると誇っている姿が描かれています。 1週間に２度、２日断食したら相当苦しいと思いますが、宗教の指導者は、そのように自分の身を苦しめて祈るべきと考えていました。宗教の指導者が、飲んだり食べたり、楽しくやるのはおかしいと考えていました。

そして、また、洗礼ヨハネの弟子たちも、断食をよく行っていました。洗礼ヨハネの弟子たちも、宗教の指導者の弟子であるから、断食して身を苦しめることは、当然として、行っていました。洗礼ヨハネの弟子たちは、人に見せるためでなく、禁欲的に、身を苦しめる行為として行っていたと思われます。

でも、イエスさまの弟子たちは全然違います。徴税人マタイの家で、飲んだり食べたり、明るく楽しくやっています。その声が外まで聞こえてきたかもれません。そして、洗礼ヨハネの弟子たちは、その笑い声を聞いて腹を立てていたかもしれません。そこで、弟子たちを指導する立場のイエスさまに、なぜ、イエスさまの弟子たちは断食をしないのかと攻撃したのです。

そこで、イエスさまは、イエスさまを信じて従うことは、本来、苦しみではなく、喜びであること、また、イエスさまを信じて従うことは、身を苦しめる断食が大きなウエイトで大事と考える、役に立たない古い生き方に固執することでなく、新しい霊的力を豊かに与えられ、霊的弾力性のある、新しい豊かな生き方を積極的に造り出していくことであることを力強く教えてくださつたのです。

そのために３つのたとえを語りました。そこで、３つのたとえを順次見ていきましょう。まず、第1のたとえは、結婚式に招待された客のたとえです。このたとえは、何も難しいことを言おうとしているではありません。イエスさまと一緒にいるとは、限りない喜びであることを教えるため、結婚式に招かれた客にたとえたものです。結婚式に招かれた客は、花婿といるときには心が喜びに満ち溢れます。結婚式は喜びの宴です。結婚式は悲しむべき時ではありません。結婚式招かれて、悲しむ客はいないのです。みんなが喜ぶのです。結婚式は、喜びのときです。

では、このたとえは何を意味しているでしょう。すると、花婿は、約束のメシア救い主のイエスさまのことです。そして、婚礼の客は、イエスさまの弟子たちです。イエスさまの弟子たちにとって、救い主メシアのイエスさまと一緒にいることは、喜びであることを意味しています。イエスさまの弟子たちにとって、約束の救い主メシアのイエスさまと一緒にいることは、悲しみではありません。イエスさまと一緒にいることは、この世では経験したことがない霊的な深い豊かな喜びで、心が満ち溢れることでした。

弟子たちは、イエスさまの山上の説教を聞いて、心が喜びで満ち溢れました。弟子たちは、イエスさまが、重い皮膚病の人に何ら躊躇せず、自ら手を差し伸べて、悪いところに触れていやしてくださったのを見て、心が喜びで満ち溢れました。弟子たちは、ガリラヤ湖の嵐を叱りつけて、鎮めたイエスさまの姿の力強い姿を見て、心が喜びで満ち溢れました。弟子たちは、中風の人の罪を、遠く離れた高い天で赦すのではなく、その人の目の前で権威をもって暖かく赦して、希望を与えて立ちあがらせてくださる姿を見て、心が喜びで満ち溢れました。弟子たちは、徴税人や罪人、すなわち、犯罪を犯した人々をも、見捨てることなく、真実に同情し、思いやって、親しく一緒に食事をしてまじわりに入れて、やさしく救いに招いてくださるイエスさまの姿を見て、心が喜びに満ち溢れました。

弟子たちは、約束のメシア救い主のイエスさまと一緒にいることで、それまでに経験したことがない霊的な深い豊かな喜びで心が満ち溢れ、これが生きることである、生きるということは、神が遣わしてくださった救い主メシアのイエスさまと一緒に生きることであると実感し、毎日、生きることの喜びに満ち溢れて、イエスさまと一緒に歩んでいたのです。弟子たちはイエスさまが大好きでした。イエスさまと離れたいと思ったことはないでしょう。それどころか、イエスさまを知れば知るほど、イエスさまが好きになり、イエスさまを愛し、いつまでも、大好きなイエスさま一緒にいたいと思っていたでしょう。

そして、このことは今日も同じです。わたしたち、クリスチャンは、人類のただひとりの救い主のイエスさまが大好きです。聖書を通して、イエスさまの強さ、偉大さ、そして、同時に、一人一人への豊かな愛とやさしさを知れば知るほど、イエスさまが大好きになります。そして、ああ、人が生きるということは、神から遣わされた救い主のイエスさまと一緒にいて、心が喜びで満たされて生きていくことなのだと実感し、イエスさまから何があっても決して離れたくないと思うようになるでしょう。わたしもそうです。イエスさまと４４年間一緒にいますが、イエスさまと一緒にいることは、わたしにとり、計り知れない深い霊的な豊かな喜びです。永遠にイエスさまと一緒にいたいです。イエスさまから、1分 1秒たりとも離れたくないです。いつも常に救い主のイエスさまと一緒にいたいです。皆さんも同じでしょう。

イエスさまの弟子たちもそのときそうでした。結婚式に招待された客が、花婿と一緒にいて、心が喜びで満ち溢れるように、喜びで満ち溢れていました。それゆえ、食を断って、自分の身を苦しめて、祈るときではありませんでした。それゆえ、イエスさまの弟子たちは、断食をしませんでした。

でも、イエスさまは、やがて、御自分が、ユダヤ人たちの暴力によって捕らえられ、十字架にかけられて、死ぬときには、弟子たちは、悲しみのあまり、食を断って神に祈ると語りました。「花婿が奪い取られる時が来る」とありますが、この表現で、イエスさまの十字架の死を暗示しています。ここは、マタイによる福音書におけるイエスさまの十字架の死の最初の言及になります。「花婿が奪い取られる時」とは、ユダヤ人たちの暴力によってイエスさまが捕らえられ、十字架にかけられて死ぬことを意味しています。

そのときには、イエスさまの弟子たちは、悲しみのあまり、食を断ち祈ることになります。聖書の中には、イエスさまが十字架にかけられて死んだとき、弟子たちが、断食したと書いてあるところはありません。でも、断食したでしょう。大好きなイエスさまが死んで、お墓に納められたとき、悲しくて、悲しくて、とても食事など喉を通らなかったでしょう。

しかし、３日目に、墓から甦ったイエスさまに出会ったとき、弟子たちは、再び、心が喜びに満ち溢れました。さらに、イエスさまが天にお帰りになり、聖霊降臨において、聖霊をくだしてくださったとき、弟子たちの喜びは、前よりも豊

かな、そして、永遠に続いていく一層深い霊的喜びになりました。

こうして、救い主のイエスさまと一緒にいることは、心が喜びで満ち溢れることなのです。もちろん、わたしたち、クリスチャンの人生においても、喜びが感じられないときがあります。試練の時がそうです。そしえて、わたしたちは、喜びが感じられませんでも、そのときでも、イエスさまは変わりなく、一緒にいてくださいます。そして、わたしたちが、試練で倒れないように支えてくださいます。また、必ず、試練を解決してくださいます。そのときには、聖霊による豊かな喜びが、再び必ず心に戻ってきます。

イエスさまを信じて従うことは、基本的には喜びなのです。試練はあっても、キリスト教信仰は救いの喜びが中心なのです。だからこそ、いろいろなことがあっても、信仰は生涯続くのです。キリスト教信仰の基本は、深くて豊かな永遠の霊的喜びの支配です。

２．真新しい布切れで、古い服の継ぎをするたとえ

では、第２のたとえに入りましょう。第２のたとえは、真新しい布切れで古い服の継ぎをするたとえです。すなわち、古い破れた服の継ぎをするとき、真新しい布切れで継ぎをすれば、真新しい布切れは力が強いので、古い服の破れをさらに大きくなしてしまうというたとえです。

イエスさまは、母親のマリアが、自分や弟たちや妹たちの継ぎをしていたのを何度も見て育ったのでしょう。日本においてもかつてはそうでした。今は、古い服に継ぎをして着るということは、あまりないかもしれませんが、昔はよくしたのです。わたしもそうです。わたしも戦後の物のない貧しい時代に生活をしてきましたので、古い服に継ぎをしてもらって着ていました。母が、わたたち、子供たちの継ぎをしている姿を今でも思い起こすことができます。今の若い人たちには、あまりわからないかもしれませんけれども、古い服に継ぎをするとき、新しい丈夫な布地で継ぎをすると、その新しい丈夫な布地そのものは破れませんが、糸で縫った古い服の部分が、破けてくるということがよくありました。古い服の継ぎをするときには、服に見合った布地で継ぎをします。イエスさまも、お母さんのマリアが、子供たちの古い服の継ぎをしていたのを見ていたでしょう。

「織りたての布」とは、真新しい布地のことです。そして、「織りたての布」、すなわち、真新しい布は、新しくて力が強く丈夫です。それに比べると、古い服は、布地がもう弱くなっています。それゆえ、真新しい布地を、古い服に継ぎあてすれば、何かのことで、古い服の縫い日から引き裂かれて、破れてしまいます。そのため、真新しい布地で、古い服の継ぎはできないのです。新しい布地と古い服は、合わないのです。一緒にはなれないのですし、両方合わせることは無理なのです。

それで、この真新しい布切れで古い服の継ぎをするたとえも、難しいことを言おうとしているのではありません。真新しい布切れは、イエスさまを信じて従

うことを意味しています。イエスさまを信じて従うことは、新鮮な霊的力が豊かで強く働くのです。他方、「古い服」は、霊的力がなく、古く枯渇していて、霊的に破れている律法学者やファリサイ派に指導された形式的な信仰生活および洗礼ヨハネの弟子たちのいたずらに禁欲的な信仰生活を意味します。律法学者やファリサイ派に指導された信仰生活は、本来の目的を失って、人々に自らの信仰深さを見せるために断食を行うような、霊的力のない、古くて役に立たない、人を真に生かせない信仰生活の仕方です。

また、洗礼ヨハネの弟子たちの信仰生活も、そうです。断食をしばしば禁欲的に行って、自分の身をいたずらに苦しめる信仰生活の仕方です。そこには、人を明日に向かって力強く生かす新しい新鮮な霊的力が何も働きません。逆に、人を現実の生活から逃避させ、禁欲生活の中に閉じ込めてしまいます。

こうして、ファリサイ派に指導された信仰生活も、洗礼ヨハネの弟子たちの信仰も、人を明日に向かって希望を持たせて前に進ませる新しい新鮮な生き生きとした強い霊的力、霊的活力、霊的エネルギーを与えることができません。それらは、弾力性がなく、力がなく、役に立たない破れた古い服にたとえられるものです。それらには、一人一人の大事な人生を希望を持って前向きに生かしていく豊かで強い霊的な力、霊的な活力、霊的なエネルギーが働きません。だめです。

でも、イエスさまを信じて従う信仰生活は違います。メシアのイエスさまを信じて従う信仰生活は、人を大切な人生において真に明日に向かって希望を持って生かすことができる常に新しくて豊かで強い霊的な力、常に新鮮な霊的な活力、いつも新しい霊的な強いエネルギーを毎日惜しみなくいくらでも無尽蔵に供給することができます。それゆえ、イエスさま信じて従う信仰生活と、ファリサイ派や洗礼ヨハネの弟子たちの霊的に破れていて、役に立たない古い信仰生活と一緒にはできません。このことを、新しい布切れで古い服の継ぎをするたとえで印象深く教えています。

本当にそうです。メシア救い主であるイエス様を信じて従う信仰生活においては、いつでも、わたしたちを、大切な人生において、明日に向かって希望を持って真に生かすことができる常に新しくて強い豊かな霊的な力、いつも新鮮な霊的な活力、いつも新しい霊的で強いエネルギーを毎日、わたしたちが必要とするだけいくらでも惜しみなく与えてくださいます。他にこの様なものはありません。イエス・キリストを、神の偉大な御子にして、人類のただひとりの救い主メシアと信頼して、喜んで従うキリスト教信仰だけにある豊かで深くて強くていつも新鮮な霊的な力です。

キリストを信じて従うキリスト教信仰というのはとても不思議なものです。何十年キリスト教信仰を持っていても古びるということがありません。絶えず

新しくて、絶えず新鮮な力が自分の心に、聖霊により、こんこんと湧き出てくるのです。そして、そのことが自分でとてもよくわかります。まさに、日々新たにで、キリストを信じて喜んで従うキリスト教信仰は、常に新鮮、常に新しく、常に人を生かす力です。キリストと神への信頼は、常に、新鮮で豊かで強い霊的力を惜しみなく与えて、今の時代に、わたしたちの一人一人、どの人も十分に生かすことができます。今日のわたしたちも、救い主のイエスさまを信じて、聖霊の豊かな働きにより、日々霊的に新しくされ、希望を持って、明日に向かってみんなで進んでいきましょう。

３．新しいぶどう酒と新しい革袋のたとえ

では、イエスさまのもうひとつのたとえは何でしょう。すると、第２の真新しい布切れで古い服の継ぎをするたとえで教えられたことを、さらに強調するたとえで、新しいぶどう酒のたとえといわれるものです。すなわち、ぶどうの実を収穫して、作ったばかりの新しいぶどう酒は、発酵する力がとても強いので、弾力性のない伸び切った古い皮袋に入れると、古い皮袋が破れて、どう酒が流れ出し、ぶどう酒も皮袋も使いものにならなくなります。それゆえ、新しいぶどう酒は、弾力性のある新しい皮袋に入れるべきであるというたとえで、イエスさまを信じて従う信仰には、それに見合う新しい豊かな生き方が積極的に力強く造り出されていくことが、これまた、印象深く教えられています。

ぶどう酒というのは、イスラエルの国民飲料というべきもので、イスラエルの人々が毎日水代わりに飲んでいたといわれるほどのものです。あるクイズ番組を見ていて、わたしも知ったことですが、世界で初めてぶどう酒を作ったのはだれと言われているかという質問が出ました。わたしは、誰かなあと思つて見ていました。すると答えは、旧約聖書に出てくるあのノアの洪水で知られているノアであるという答えでした。わたしは、え―と驚きました。初めて知りました。それで聖書を開いてみました。すると、旧約聖書、創世記９章２０節、２１節に、「ノアは農夫となり、ぶどう畑を作つた。あるとき、ノアはぶどう酒を飲んで酔い」と書いてあるのです。そこで、この個所が土台となって、欧米では、旧約聖書に出てくるノアが、最初にぶどう酒を作ったと言い伝えられているようですが、1世紀のイスラエルおいても、ぶどうが栽培され、ぶどう酒が作られ、人々がよく飲んでいました。ですから、イエスさまのたとえもすぐに理解されました。

そして、ぶどう酒を入れる皮袋というのは、今日でも、アラビア砂漠の遊牧民の生活を見ていますと、皮袋にぶどう酒や水を入れて保存している姿を見ることがあります。皮袋というのは、羊ややぎを1匹丸ごと使います。首を切って内臓を取り出します。また、４つの足を切ります。そして、裏返しにします。そして、４つの足のところは、縛って、漏れないようにします。また、首を切った穴を縛って、ぶどう酒を入れたり出したりする口にします。

それで、皮袋も、最初のうちは新しくて弾力性があって丈夫ですが、古くな

ると、弾力性がなくなり、伸び切った状態になります。そこに、新しいぶどう酒を入れると、新しいぶどう酒は、ぐつぐつと発酵する力が強いので、古い皮袋は耐えられなくなり、張り裂けてしまいます。もちろん、中のぶどう酒も流れ出してしまいます。羊ややぎ一頭分で作る皮袋ですから、ぶどう酒は結構たくさん入るでしょう。数十リットルは入るでしよう。それが流れ出たのでは、大損するでしよう。

1世紀のイスラエル社会において、そういうことが時々、実際にあったのでしょう。もう１回ぐらい、この古い皮袋を使えるのではないかと思って、新しいぶどう酒を入れたところ、やつぱり、古い皮袋が張り裂けてしまつて、ぶどう酒が流れ出て、大損してしまった、新しい皮袋に入ればよかったというようなことがあったのでしょう。そして、イエスさまも、そのようなことを聞いていたのでしょう。

そして、この新しいぶどう酒のたとえも、難しいことを教えようとしているのではありません。発酵力の強い新しいぶどう酒は、イエスさまを信じて従うことを意味します。メシアであるイエスさまを信じて従うことには、人を真に生かす霊的命の力がその人の心、魂、霊魂、精神にふつふつと豊かに力強く働きます。

「古い皮袋」というのは、先ほども出たファリサイ派や洗礼ヨハネの弟子たちの、霊的力のない伸び切った何の役にも立たない生き方を意味します。古い皮袋が、弾力性を失い、伸び切っているように、断食を人々に見せるために行うファリサイ派の古い、力を失った生き方を意味します。また、洗礼ヨハネの子たちの、禁欲的な意味で、断食をして身を苦しめるだけで、霊的命の豊かさが欠如している無力な生き方を意味します。

そして、「新しい皮袋」というのは、イエスさまを信じて従う人に常にふつふつと働く強い霊的生命力が、造り出す生き生きとした新しい豊かな生き方を意味します。新しい皮袋は、霊的生命力に満ち溢れた弾力的な新しい生き方、生活の仕方のことです。それゆえ、イエスさまを信じて従う信仰を、ファリサイ派や洗礼ヨハネの弟子たちの霊的生命力の枯渇した古びた生き方という入れ物に入れることはできません。それらとは違う豊かな新しい入れ物が必要です。

そして、イエスさまが言われた通りになりました。パウロをはじめとする弟子たちの手紙や書簡によって、聖霊の力が豊かに働く新しい生き生きとした生き方が築かれていったのです。本当にそうです。パウロをはじめとする弟子たちの伝道により、1世紀の地中海世界に、それまでにはなかつた永遠の命の力が力強く現れ出るキリスト教信仰による新しい生き方、新しい生活の仕方が、罪人である人類世界の歴史の中で本当に始まりました。それは(驚べきことで、それまでになかったものです。救い主のイエスさま出現することによって初めて始まった質の優れた豊かな全く新しい生き方です。そして、その生き方こそ、創造主なる神に造られた人間の真の唯一の生き方です。

そして、その生き方は、世界各地に広がり、今日、恵みにより、日本にも伝わっています。そして、だれでも、差別なく、この生き方が恵みとして与えられます。わたしには与えられないという人はいないのです。わたしたちも、永遠の生命の力が力強く現れ出るキリスト教信仰による新しい生き方を、感謝をもって、自分のものにし、生涯、救い主のイエスさまから離れることなくと、常にいつもイエスさまと一緒に、イエスさまとの愛のまじわりの中で心満たされ、歩んでいきましょう。 _

結び

以上のようにして、断食問答を見ます。今日のわたしたちも、救い主のイエスさまと常に一緒にいて、心が、喜びで満ち溢れましょう。また、永遠の命の力が現れ出る生き方を今の時代の日本にみんなで築いていきましょう。聖霊なる神が、弱いわたしたちを、強くしてくださるように心を合わせて祈りましょう。

お祈り

恵み深い天の父なる神さま、

わたしたちは、９月の歩みをしています。まだ、残暑が続きますが、本日も、御前に、礼拝に導かれ、感謝いたします。今日のわたしたちも、イエスさまの今の時代の弟子として、聖霊の豊かな働きにより、いつも、イエスさまと霊的に一緒にいて、心が喜びで満ち溢れて、日々生きていくことができるようにしてください。

また、イエスさまを信じている者として、新しい皮袋といわれる、それにふさわしい霊的命が豊かに現れ出る生き方や生活の仕方を築いていくことができるように、聖霊の力と恵みをお与えください。

礼拝の後、教会における敬老のお祝いがありますが、祝福してください。また、本日の午後から明日にかけて、新しいかたちでの信徒修養会が行われますが、よい学びとまじわりのときとして祝福してください。

本日、集まることのできなかった兄弟姉妹子どもたちの上に顧みをお与えください。また、健康の弱さを覚えている兄弟姉妹たちの上に、高齢の方々の上に、顧みをお与えください。いろいろな困難や試練に出会っている兄弟姉妹たちに支えと解決をお与えください。

今日から始まるわたしたちの新しい１週間をどこにあっても、豊かに祝福してください。これらの祈りを、主イエス・キリストの御名により、御前にお献げいたします。アーメン。