| 「アダムとキリストの比較」
はじめに お話をさせていただきます。では、本日のお話をどこのお話でしょう。すると、ローマの信徒への手紙のお話です。ローマの信徒への手紙は、１世紀のキリスト教伝道者の使徒パウロが、紀元５６年頃、ギリシア南部のコリントから、ローマの信徒たちに書いた手紙と言われます。そして、これまでに、ローマの信徒への手紙を、１１回お話をさせていただきましたので、本日が１２回目のお話になります。 では、本日のところは何を教えているのでしょう。すると、アダムとキリストが並べられ、キリストがもたらしたものは、アダムがもたらしたものとは、比較にならない桁外れに豊かなものであることが、実に力強くパウロによって語られているところです。 すなわち、最初の人アダムは、神への不従順によって、人類に悲惨な罪と死をもたらしましたが、キリストは、十字架での贖いによって、信じる人々に、罪を赦して義とする恵みと、永遠の命をもたらしてくださったのです。 そこで、今日のわたしたちも、キリストを信じ、罪が赦され、義とされる恵みと、死に勝利する永遠の命を自分のものとし、アダムがもたらした罪と死に勝利し、救いの喜びに満ちあふれ、日々信仰の道を歩んでいきたいと思います。 なお本日の個所は、ローマの信徒への手紙の中でも、最も難しい個所の一つですが、同時に、キリストがもたらした恵みの桁外れの豊かさを教えている素晴らしい個所でありますので、よく整理して、できるだけ簡潔にお話ができればと願っています。 １．全人類が代表アダムの子孫として、罪を犯し死ぬ者となりました さて、それで、まず、わたしたちは、全人類の代表、また、神との契約の代表として、神の前に立っていた最初の人アダムが、エデンの園で食べてはいけないと神に命じられていたのに食べて、罪を犯すことにより、全人類に入ってきたものが、罪と罪に対する刑罰としての死であったことから見ていきましょう。 １２節に、「一人の人」というのを見ますが、この「一人の人」とは、具体的には、わたしたち全人類の代表であったアダムのことです。では、その「一人の人」アダムは、どうしたのでしょう。すると、旧約聖書、創世記２章と３章に詳しく記されていますが、読みますとかなり長くなりますので、必要なことだけをわたしの言葉でお話します。すると、アダムは、エデンの園でよく知られていますように、神から食べてはいけないと命じられていた善悪を知る木から取って食べ、罪を犯したため、罪に対する刑罰として、塵に帰る者、すなわち、死ぬ者にされてしまいました。 ところが、死ぬ者になったのは、アダムだけではなく、アダムの子孫のわたしたち全人類も、アダムとの連帯性のゆえに、罪を犯したと見なされ、罪人となり、罪に対する刑罰として、死ぬ者になりました。こうして、わたしたち全人類の代表であった「一人の人」アダムの罪により、全人類に、罪に対する刑罰としての死が入ってきて、それ以後、死は、全人類の王として支配し、人は、いつの時代の人でも、死の王国の国民とされてしまいました。 そこで、パウロは、１２節後半で、アダムのしたことは、アダムだけに留まらずに、「すべての人が罪を犯したからです」と、連帯性のゆえに、わたしたちすべての人に罪と罪に対する刑罰の死が及んだ事実を明白に語っています。 また、１４節後半に、「アダムの違反と同じような罪を犯さなかった人の上にさえ、死は支配しました」とありますが、この「支配する」というギリシア語は、もともとは、「王国を築いて支配する」という意味の言葉が使われています。すなわち、王が、着々と強い王国を築いて、自分がその王国の王として君臨し、国民を強い力で支配することを意味します。 ですから、この意味を「死は支配しました」に当てはめますと、死は、全人類に入り込み、着々と人類世界に死の王国を築き上げ、すべての人を死の王国の国民にし、自らは王として君臨し、人類を強い力で支配していることを表しています。こうして、アダム以来、全人類は、死の王国の国民とされ、死という王により、強い力で支配され、誰一人として、死という強い王の支配から免れることができなかったのです。 考えてみますと、確かに、アダム以後の人類の歴史を見るならば、アダム以後のある期間は、まだ、十戒をはじめとするモーセの律法は、与えられていませんでしたので、モーセの律法に照らして、自分が罪人であることを知るという仕方はありませんでした。しかし、モーセの律法がなくとも、人々は罪人であり、罪に対する刑罰として、人々は死の支配から免れることができませんでした。 また、考えてみますと、アダム以後のモーセまでにおいて、人々は、アダムと同じ仕方で、神からの直接的な語りかけに背いて罪を犯したわけではありません。でも、だからと言って、アダム以後の人々が、罪人でなかったわけではありません。その証拠に、アダムのように神から直接語りかけられなかった人々も皆罪人であり、罪に対する刑罰として、死の支配から免れることはできなかったからです。 それゆえ、このことは、今日も同じです。日本のわたしたちも、アダムの子孫として生まれ、日々、御心に反する罪を犯しながら生きていますので、神の前に罪人であり、死の王国の国民とされ、死という王に強い力で支配されています。それゆえ、わたしたちは、人生のどこかで、救いのよき知らせである福音を聞き、救い主のイエスさまを信じ、恩寵により、罪赦されて義とされ、死の王国から解放されねばなりません。 ２．アダムとキリストには、かたちの上で同じものがあります 以上のようにして、「一人の人」アダムがしたことが、全人類に大きな影響を与えたことがわかりましたが、実は、後に出てくるイエス・キリストも、かたちの上では、アダムと同じなのです。 すなわち、「一人の人」アダムがしたことが、全人類に大きな影響を与えたように、イエス・キリストというもう「一人の人」がしたことも、多くの人々に大きな影響を与えるのです。したがって、かたちの上では、両者は同じなのです。それゆえ、アダムは、後に出現するキリストのひな型、タイプと言えるのです。 １４節後半に、「実にアダムは、来るべき方を前もって表す者だったのです」とありますが、「来るべき方」というのは、後に出現する救い主のイエスさまのことです。「前もって表す者」というのは、ギリシア語では、「同じかたちのもの」という言葉です。ですから、それを当てはめますと、「実にアダムは、来るべき方と同じかたちのものなのです」となります。 では、一体、アダムは、後に出てくる救い主のイエスさまと、どのような意味で、「同じかたちのもの」なのでしょう。すると、それは、「一人の人」のしたことが、他の人々に大きな影響を与えるというかたちが、アダムの場合も、救い主のイエスさまの場合も同じなのです。すなわち、アダムという「一人の人」のしたことが、全人類に大きな影響を与えましたが、救い主のイエスさまも同じで、救い主のイエスさまがしたことが、多くの人々に大きな影響を与えるのです。ですから、かたちの上では、アダムという「一人の人」の人のしたことと救い主のイエスさまがしたことは、同じかたちと言えるのです。 ３．キリストがもたらしたものの圧倒的豊かさ 以上のように、アダムという「一人の人」の人のしたことと救い主のイエスさまがしたことは、かたちの上では同じであることがわかりました。では、与えた影響の内容も同じと言えるのでしょうか。 すると、与えた影響の内容は、まったく違い、比較にならないのです。すなわち、アダムという「一人の人」の人の与えた影響は、全人類に罪と有罪判決と死という、わたしたち人間の大事な人生を根底から破壊するものをもたらしました。しかし、救い主のイエスさまというもう「一人の人」の人の与えた影響は、信じる多くの人々に義と無罪判決と死に勝利する永遠の命という、わたしたち人間の大事な人生を、真に回復する豊かさが満ち溢れるものをもたらしたのです。したがって、救い主のイエスさまというもう「一人の人」がもたらしたものは、桁外れに豊かなものなのです。 そこで、パウロも、少しづつ、言い方を変えまして、救い主のイエスさまというもう「一人の人」の人がもたらしたものと、アダムという「一人の人」の人がもたらしたものを並べて、救い主のイエスさまがもたらしたものが、比較にならぬ桁外れの豊かさを持っていることを、４つもの言い方で力強く語るのです。４つ語れば十分です。 そこで、わたしたちは、一つづづ見ていきましょう。まず、第一の言い方は、「一人の人」アダムは、全人類に死をもたらしましたが、救い主のイエスさまは罪を赦して義とする豊かな恵みをもたらしてくださったのです。両者は全然違い、比較にならないのです。 １５節に、「一人の罪によって多くの人が死ぬことになったとすれば」とありますが、これは、「一人の人」アダムの罪、すなわち、禁断の実を食べたという罪が連帯性のゆえに、全人類が罪人になり、その結果、全人類が死ぬ者になったことを表しています。 では、他方、もう「一人の人」イエス・キリスト、すなわち、救い主のイエスさまは、何をもたらしてくださったのでしょう。すると、十字架でわたしたちの罪の贖いをしてくださったので、そのイエスさまを救い主と信仰する多くの人々に、罪を赦して義とする豊かな恵みの賜物をもたらしてくださったのです。 それで、両者を並べると、救い主のイエスさまがもたらしてくださったものの豊かさは、比較にならない桁外れの豊かさを持っているのです。１５節に、「恵みの賜物」、また、「神の恵み」、また、「一人の人イエス・キリストの恵みの賜物」という幾つかの言い方が出ていますが、これらは、すべて、救い主のイエスさまが十字架上で贖いをした結果、信じる人の罪を赦して、義とする豊かな無償の恵みを表しています。 それで、では、「恵みの賜物」、また、「神の恵み」、また、「一人の人イエス・キリストの恵みの賜物」と言われる無償の恵みは、どのようなものかと言えば、アダムによってもたらされた人間の罪を赦して義とするもので、罪とは比較にならない桁外れの豊かさをもつのです。 １５節に、「しかし、恵みの賜物は罪とは比較になりません」、また、「なおさら神の恵みと一人の人イエス・キリストの恵みの賜物とは、多くの人に豊かに注がれるのです」という言い方が出てきますが、これらの言い方で、救い主のイエスさまの贖いによって、人の罪が赦されて義とされる無償の恵みが、信じる人の心と人生において、罪に勝りて、桁外れに豊かに働くことを印象づけています。 特に、「豊かに注がれる」という言葉は、豊かさや豊潤さを強調する言葉で、「十分以上に沢山ある」とか、「おびただしく沢山ある」とか、「一杯あって溢れ出る」というような桁外れの法外の尋常ではない特段の豊かさを表す言葉が意識的に使われています。 したがって、救い主のイエスさまの贖いによって人の罪が赦され義とされる豊かな賜物は、救い主のイエスさまを信仰するわたしたちクリスチャンの心と人生において、罪に勝りて、桁外れに豊かに働くのです。それゆえ、わたしたちクリスチャンは、罪に対する勝利の人生を、今、喜んで歩むことができ、心から感謝できるのです。 ３．キリストは信じる者に信仰義認ゆえに、無罪宣告をもたらしました さて、では、「一人の人」アダムのもたらしたものと、もう「一人の人」救い主のイエスさまがもたらしたものの比較にならない違いを表す第２のものは、何でしょう。すると、それは、アダムは有罪宣告をもたらし、救い主のイエスさまは無罪宣告をもたらしてくださったことです。両者は全然違い、比較にならないのです。 すなわち、「一人の人」アダムは、その罪の連帯生ゆえに、全人類が神から裁きを受け、全人類への有罪宣告をもたらしたのですが、もう「一人の人」救い主のイエスさまは、信仰する人の罪がどれほど多くあってもすべて、一つも残すことなく赦してくださり、義人と見なして、無罪宣告をもたらしてくださるのです。 １６節に、「裁きの場合は、一つの罪でも有罪の判決が下されますが」とありますが、これは、「一人の人」アダムの罪によって、全人類が神に裁かれ、全人類が罪に定められたこと、すなわち、有罪を宣告されていることを表します。また、「裁きの場合」とは、「一人の人」アダムが、善悪の木から取って食べた最初のあの一つの罪が、神により裁かれ、アダムダだけでなく、アダムの子孫のわたしたち全人類も裁かれ、罪人になったことを意味します。 そして、「有罪の判決がくだされますが」というのは、これは、「一人の人」アダムだけが神から罪に定められ、有罪宣告を受けただけではなく、アダムの子孫のわたしたち全人類も、代表アダムとの連帯性のゆえに、神から罪に定められ、有罪宣告を受けていることを意味します。 では、他方、もう「一人の人」救い主のイエスさまは、何をもたらしてくださったのでしょう。すると、信じる人の罪がどれほど多くあってもすべて、一つも残すことなく赦してくださり、義人と見なして、無罪宣告をもたらしてくださるのです。 １６節後半で、「恵みが働くときには、いかに多くの罪があっても、無罪の判決が下されるからです」とありますが、「恵みが働くときには」とは、罪の赦しの恵みがわたしたちに力強く働くときにはという意味です。そして、「無罪の判決が下されるからです」というのは、人々が救い主のイエスさまを信じることにより、どんななに多くの罪があってもすべて、一つの罪も残すことなく赦され、義と認められ、数えられることにより、神から無罪宣告されることを表しています。 こうして、「一人の人」アダムによって、全人類にもたらされたものは、有罪判決でしたが、もう「一人の人」救い主のイエスさまによって、信じる人々にもたらされたものは、その有罪判決をひっくり返す無罪判決でした。全人類への有罪判決は、救い主のイエスさまへの信仰によって、無罪判決へと根底からひっくり返されるのです。如何に、救い主のイエスさまのあの十字架で流された血の力が、桁外れの豊かさをもっていて、罪に勝利するかを、パウロは力強く語り、試練の多かった1世紀のクリスチャンを励ましているのです。 それゆえ、わたしたちも、救い主のイエスさまへの信仰により、もうすでに無罪宣告されていますので、わたしたちの心には平安があるのです。 ４．キリストを信じる者は、キリストと共に王として支配します さて、では、「一人の人」アダムのもたらしたものと、もう「一人の人」救い主のイエスさまがもたらしたものの比較にならない違いを表す第３のものは、何でしょう。すると、アダムがもたらしたものは死ですが、救い主のイエスさまがもたらしたものは、クリスチャンがイエスさまと共に神の国を支配する恵みをもたらしたのです。両者は全然違い、比較にならないのです。 すなわち、「一人の人」アダムは、その罪の連帯性のゆえに、死が、全人類を支配する結果をもたらしたのですが、もう「一人の人」救い主のイエスさまは、罪の赦しの恵みと、神との関係における正しさである義の賜物をすでに受けているわたしたちすべてのクリスチャンが、世の終わりに、永遠の命の豊かさの中で、そのとき完成する栄光の神の国において、イエスさまと共に王として支配することをもたらすのです。すなわち、想像を絶する豊かな恵みをもたらしてくださるのです。 １７節に、「一人の罪によって、その一人を通して死が支配するようになったとすれば」とありますが、これは、「一人の人」アダムの罪ゆえに、アダムの子孫であるわたしたち全人類が、死という王に支配されることをもたらしたことが意味されています。「支配する」とう言葉は、先ほどもお話しましたように、王として支配することを意味します。 では、他方、もう「一人の人」救い主のイエスさまによって、何がもたらされるのでしょう。すると、それは、罪の赦しの恵みと、神との関係における正しさである義の賜物を受けているわたしたちすべてのクリスチャンが、世の終わりに、永遠の命の豊かさの中で、そのとき完成する栄光の神の国において、救い主のイエスさまと共に王として支配することをもたらすのです。 １７節後半に、「なおさら、神の恵みと義の賜物とを豊かに受けている人は、一人のイエス・キリストを通して生き、支配するようになるのです」とありますが、「神の恵みと義の賜物とを豊かに受けている人は」というのは、信仰によって、罪の赦しの恵みと、神との関係における正しさである義の賜物を受けているわたしたちクリスチャンのことですが、この言い方で、わたしたちクリスチャンが将来受ける豊かな祝福、すなわち、世の終わり、終末の豊かな祝福を表しています。 「支配するようになるのです」という言葉は、わざわざ未来形になっていますので、世の終わりのことを表しています。そして、また、「支配する」というのは、王として支配するという意味です。 すなわち、「一人の人」アダムによって、死が王として全人類を支配するようになりましたが、もう「一人の人」救い主のイエスさまによって、罪の赦しの恵みと、義の賜物とを豊かに受けているわたしたちクリスチャンは、世の終わり、終末に、その永遠の命の豊かさの中で、そのとき完成する栄光の神の国において、イエスさまと共に、王として神の国を支配することをもたらすという素晴らしい意味になります。 さらに、「イエス・キリストを通して生き」というのは、もともとは、「イエス・キリストの命において」という言い方で、「イエス・キリストから与えられる永遠の命において」という意味です。 ですから、これらをまとめると、救い主のイエスさまは、罪の赦しの恵みと、神との正しい関係である義の賜物を受けているわたしたちすべてのクリスチャンが、世の終わりに、永遠の命の豊かさの中で、そのとき完成する栄光の神の国において、救い主のイエスさまと共に王として、その栄光の神の国を支配することをもたらしてくださるのです。 もちろん、まだ世の終わり、終末は来ていませんので、わたしたちクリスチャンが、そのとき出現する栄光の神の国において、イエスさまと共に王として支配することはまだ目には見えません。しかし、ヘブライ人への手紙の１１章1節で、「信仰とは、望んでいる事柄を確信し、見えない事実を確認することです」と１世紀のクリスチャンに、力強く語っていますように、わたしたちも、これらのことを将来の確かな事実と確信し、1ミリたりとも揺るがないのです。 ５．キリストを信じる者には、永遠の命が与えられます さて、では、「一人の人」アダムのもたらしたものと、もう「一人の人」救い主のイエスさまがもたらしたものの比較にならない違いを表す第４のものは、何でしょう。すると、それは、アダムは全人類に有罪の判決をもたらしましたが、救い主のイエスさまは、イエスさまを信じるすべての人、すなわち、クリスチャン全員に、永遠の命をもたらしてくださるのです。両者は全然違い、比較にならないのです。 すなわち、「一人の人」アダムは、その罪の連帯性ゆえに、すべての人に有罪判決をもたらしましたが、もう「一人の人」救い主のイエスさまは、十字架の死に至るまでの従順という神に受け入れられる正しい行為により、救い主のイエスさまを信じるすべての人が、信仰によって「正しい者」とされ、永遠の命が与えられことをもたらしてくださったのです。 １８節の「一人の正しい行為」とは、救い主のイエスさまの十字架の死に至るまでの従順という神に受け入れられる正しい行為を意味しています。また、１９節の「一人の人」の不従順というのは、もちろん、食べてはいけないという神の言葉に違反したエデンの園における「一人の人」アダムの不従順の行為を意味します。 それで、その結果、エデンの園における「一人の人」アダムの不従順は、「多くの人々」、すなわち、わたしたち全人類を罪人に転落させたのですが、もう「一人の人」救い主のイエスさまの十字架の死に至るまで従順は、イエスさまを信じる「多くの人々」、すなわち、わたしたちクリスチャン全員を、神の前での「正しい者」、すなわち、義人とし、「命」、すなわち、永遠の命を受ける者に変えてくださったのです。１８節後半の「命を得ることになったのです」とありますが、「命」とは、永遠の命のことです。 考えてみますと、わたしたちは、罪ゆえに朽ちゆく者です。でも、この朽ちゆく者の中に、朽ちゆくことのない永遠の命の芽が新しく芽吹いているのです。そして、終末のときに、この永遠の命は満開となり、美しい花を咲かせ、完全にわたしたちのものとなるのです。その想像を絶する素晴らしさを思っただけでも、わたしたちクリスチャンは喜びと希望で胸が一杯になるのでしょう。 ６．パウロは、罪に対するキリストの恵みの完全勝利を語ります こうして、パウロは、「一人の人」アダムのもたらしたものと、もう「一人の人」救い主のイエスさまがもたらしたものを比較し、救い主のイエスさまがもたらしたものの比較にならない桁外れの豊かさを語って、励ましたのですが、これらの締めくくりとして、罪に対する赦しの恵みの完全勝利を、さらに力強く語って、1世紀のクリスチャンたちをなお一層励ますのです。 すなわち、考えてみますと、モーセの十戒をはじめとする人の生き方の規範の律法は、旧約聖書を見ればわかりますように、人間の歴史の途中から入り込んできました。エデンの園、また、アブラハム、イサク、ヤコブなどのモーセ以前の時代には、十戒をはじめとする人の生き方の規範の律法は、まだ与えられていませんでした。 十戒をはじめとする律法が与えられたのは、イスラエルの民が、出エジプトしてから、シナイ山のふもとで与えられたのです。では、律法が与えられた目的は何でしょう。すると、それは、１世紀のユダヤ人が間違って主張していたように、人間が律法をすべて完全に守って救われるために与えられたのでなかったのです。 その真逆でした。すなわち、人は、律法をすべて完全に守って救われることがまったく不可能であることを教え、認識させるためでした。すなわち、人は、自分がすることは、これもあれも皆律法に反することばかりであり、人は律法を完全に守って救われることは全く不可能であることを、ますます深く、ますます強く認識するために律法が与えられたのです。 このことを、パウロは、２０節で、「律法が入り込んで来たのは、罪が増し加わるためでありました」と言いました。そこで、「罪が増し加わるためでありました」という言い方に、「認識」という言葉を入れて、「律法が入り込んで来たのは、罪の認識が増し加わるためでありました」と読んだらわかりやすいでしょう。 しかし、律法によって、罪の認識がますます深くなり、増し加わったとき、神は、時至って救い主のイエスさまを十字架の死で、罪の贖いをさせ、信じる人の罪を恵みによって赦してくださったので、今度は、同時に、罪の赦しが、どんなに桁外れの豊かな恵みであるかを、人が認識できるようになったのです。このことを、パウロは、「しかし、罪が増したところには、恵みはなおいっそう満ちあふれました」と表現しました。すなわち、罪の認識が増し加わったときには、同時に、キリストによる罪の赦しの恵みも、どんなに桁外れに豊かで大きいかを、人が認識できるようになったのです。 それで、結局、どうなるのでしょう。すると、結局、アダムによって入って来た罪が死によって、わたしたち全人類を支配したように、今度は、逆に、罪の赦しの恵みが、神との正しい関係である義を通し、わたしたちクリスチャンを豊かに支配し、救い主のイエスさまへの信仰を通し、わたしたちクリスチャンを永遠の命に導き、わたしたちが永遠の命によって日々霊的に生かされるようにしてくださったのです。 こうして、一言で言えば、アダムによってもたらされたものは、人類を苦しめ続けてきた死なのです。では、救い主のイエスさまによってもたらされたものは、何でしょう。すると、それは、わたしたち人類を強い力で苦しめ続けてきた死の力を木端微塵に打ち砕いて、死に完全に勝利する桁外れの豊かさをもった永遠の命なのです。 そして、救い主のイエスさまを信ずるわたしたちクリスチャンのうちには、死に勝利する永遠の命の力が、もうすでに新しく芽吹いていて、わたしたちを日々霊的に生かしており、やがて、再臨のとき、栄光の御国において、その永遠の命の充満を受け、言葉で言い表すことができない喜びの中で、永遠の神と心満たされる愛のまじわりに、永遠に生きていくことができるのです。これで、わたしたちの救いが完成するのです。これらの想像を絶する素晴らしさを思っただけでも、わたしたちは喜びと希望が心からあふれ出るのです。 結び ですから、主役はアダムではなく、救い主のイエスさまです。アダムは、救い主のイエスさまの桁外れの豊かさを引き立てる脇役にすぎないのです。このことが分かれば、今日のローマの信徒への手紙の個所は分かったことになるのです。 本当にありがたく、心が喜びと力で満ちあふれます。クリスチャンであるわたしたちは、ますます一層、救い主のイエスさまと固く結びつき、永遠の命の道を今週も喜んで歩んでいきたいと思います。 お祈り 恵み深い天の父なる神さま、 今、わたしたちは、アダムと救い主のイエスさまの比較の個所を学び、救い主のイエスさまによって、わたしたちにもたされる罪の赦しと永遠の命の恵みが、どんなに豊かであるかを、改めて教えられ心から感謝いたします。 わたしたちは、これからも、救い主のイエスさまを信仰することによって与えられる永遠の命によって、日々、あなたとの心満たされる豊かな愛のまじわりに中を、喜び感謝して歩めるように、今週もお導きください。 今日、いろいろな都合や事情で集まることのできなかった方々にも、それぞれのところで顧みをお与えください。 これらの祈りを、主イエス・キリストの御名により、御前にお献げいたします。アーメン。
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