| 「栄光を受ける約束」（改訂版）
はじめに 本日も、１世紀のキリスト教の伝道者、使徒パウロが紀元５６年頃書いたローマの信徒への手紙のお話です。ローマの信徒への手紙は、キリストにある素晴らしい救いが順序よく教えられています。それで、今日は、どこの個所をお話しするかと言いますと、８章の中ほどのお話です。 では、今日の個所は、何が教えられているのでしょう。すると、「待ち望む」とか「希望」という言葉が、何回も出てくることからもわかるように、クリスチャンは世の終わり、終末に栄光を受けるという確実な希望があることを教えて、クリスチャンが、今、いろいろなことがあっても、終末の栄光を目指し、忍耐をして歩むことを力強く勧めています。苦しみの多かった１世紀のクリスチャンは、終末に栄光を受けることを確実な希望と固く信仰し、歩んだことがわかります。 それで、わたしたちは、ここから３点を学びたいと思います。第１点は、世の終わりに、わたしたちクリスチャンが受ける栄光は、とてつもなく大きなものであるという点です。第２点は、人間以外の被造物も、世の終わりの栄光の実現を待ち望んでいるという点です。第３点は、わたしたちクリスチャンも、世の終わりの栄光の実現を待ち望んでいるという点です。 １．世の終わりに、わたしたちクリスチャンが受ける栄光はとてつもなく大きい 早速、第１点に入りましょう。第１点は、世の終わりに、わたしたちクリスチャンが受ける栄光は、とてつもなく大きなものであるという点です。それで、世の終わりに、わたしたちクリスチャンが受ける栄光とは、具体的に何なのかということがありますが、それは、この後、詳しくお話しすることとしまして、まず世の終わりに、わたしたちクリスチャンが受ける栄光は、どれほど大きいかをお話したいと思います。 すると、この世に生きているクリスチャンが、世の終わりに受ける栄光は、今の苦しみと比べてみる価値もないほど、とてつもなく圧倒的に測り知れなく大きいものなのです。１３節がそうです。１３節に、「現在の苦しみは、将来、わたしたちに現されるはずの栄光に比べると、取るに足りないとわたしは思います」とありますが、実は、もともとの言い方は、「現在の苦しみは、将来、わたしたちに現されるはずの栄光に比べる価値がないとわたしは思います」というストレートな驚くべき言い方を、パウロはしています。 すなわち、現在の苦しみは、将来、世の終わりにクリスチャンが受ける栄光と、比べること自体がそもそも価値がないという言い方です。換言すれば、世の終わりにクリスチャンが受ける栄光は、とてつもなく余りにも大きいので、比べること自体がそもそも価値がないし、比べること自体がそもそも無理であるという意味です。 ですから、世の終わりに、終末に、キリスト再臨のときに、クリスチャンが受ける栄光は、とてつもなく大きく、圧倒的に大きく、計り知れなく大きいことが読者の心に伝わってきます。それゆえ、比べること自体に価値がない、比べること自体が無理であるというこの言い方自身が、まず、わたしたちの度肝を抜く驚くべき言い方になっているのです。 そして、「現在の苦しみ」というのは、パウロが、この手紙を書いている１世紀の時代において、クリスチャンが信仰ゆえに受けていたいろいろな苦しみのことです。「苦しみ」というのは、複数形になっていますので、信仰ゆえに受けていたいろいろな苦しみをすべて一切を含んでいます。 １世紀のクリスチャンは、世界で最初のクリスチャンでしたが、キリストが十字架の死と復活を経て、天にお帰りになってから、まだ３０年も経っていなときです。キリストが、十字架の死と復活を経て、天にお帰りになったのが紀元３０年頃で、このローマの信徒への手紙が、パウロによって書かれたのが５８年頃ですから、差し引きすると、２８年ほど、約３０年ぐらいしか経っていません。 そのために、キリスト教信仰は、ローマ帝国が支配する１世紀の地中海世界において、人々にまだ認知されておらず、どこにおいて誤解され、曲解されました。すなわち、当時、極悪人にしか課せられなかった最も屈辱的な死刑の方法であった十字架にかけられて死んだ人物を人類のただ一人の真の救い主と主張するので、ののしられ、嘲られ、罵詈雑言を浴びせられ、見下され、いろいろな困難、不利益、妨害、圧迫、迫害、さらには、殉教の死さえも受けた苦難の時代でした。そして、この手紙を書いているパウロ自身も、もちろん、信仰ゆえに、また、さらに、パウロの場合には、伝道のゆえに、一層いろいろな苦しみを受けていました。 でも、いろいろな苦しみを一番多く受けたと言えるかもしれないそのパウロが、「現在の苦しみは、将来、わたしたちに現されるはずの栄光に比べると、取るに足りないとわたしは思います」と、何のためらいなしに断言することができたのですし、もっと厳密に言えば、今、お話しましたように、「現在の苦しみは、将来、わたしたちに現されるはずの栄光に比べる価値がないとわたしは思います」と言って、現在の苦しみは、将来、世の終わりに、クリスチャンが受けることになっている栄光と比べること自体がそもそも価値がない、比べること自体がそもそも無理であると言ったのですから、わたしたちクリスチャンが、世の終わり、終末に受ける栄光は、とてつもなく大きく、圧倒的に大きく、測り知れなく大きいことを、パウロは確信して力強く語っていることがわかります。 それで、１３節をもう一度見て見ますと、「現在の苦しみは、将来、わたしたちに現されるはずの栄光に比べると、取るに足りないとわたしは思います」という書き方になっていて、わたしたちは、パウロがこの文章の最後に「わたしは思います」という言い方をしていることに、何かひっかかるものがあるかもしれません。 すなわち、ここを見て、わたしたちは、「何だ、パウロが、個人的に、自分勝手に、一人だけでそう思っているだけなのか」と、パウロの信頼できない個人的見解が表明されているかのようの印象を、最初受けるかもしれません。しかし、パウロの信頼できない個人的見解が表明されていると理解してはなりません。 というのは、１３節の「・・・とわたしは思います」の「わたし」は、確かにパウロですが、パウロは単なる一個人として語っているのではないからです。ここで、わたしたちは、このローマの信徒への手紙の書き出しの１章１節を思い起こしましょう。すると、「キリスト・イエスの僕、神の福音のために選び出され、召されて使徒となったパウロから」と述べていることからもわかるように、パウロは単なる一個人として書いているのでなく、キリストに仕える僕として、救いのよい知らせである神の福音のために、神の御心によって選び出され、神御自身から召された使徒としてのパウロが、神の権威をもって、ローマの信徒たちに救いに関する真理として語っていることが十分わかるのです。 それゆえに、神に立てられた使徒としての権威をもって、パウロが確信して思っていることなので、十分信頼できるのです。したがって、「・・・とわたしは思う」という言い方は、信頼できない根拠でなく、逆に、信頼できる根拠であり、神に立てられた使徒としてのパウロ、公人としてのパウロが確信を持って思っているゆえに、十分信頼できて、受け入れることができるのです。 そこで、今日のわたしたちクリスチャンも、現在の苦しみは、将来、世の終わりに、わたしたち信者が受ける栄光と比べること自体がそもそも価値がない、比べること自体がそもそも無理であると言えるほど、わたしたち信者が、世の終わり、終末に受ける栄光は、とてつもなく大きく、圧倒的に大きく、測り知れなく大きいことをまずしっかり心に受け止めることから始めたいと思います。 ２．人間以外の被造物も世の終わりの栄光を待ち望んでいます 第２点に入ります。第２点は、人間以外の全被造物も世の終わりの栄光の実現を待ち望んでいるという点です。では、現在の苦しみは、将来、世の終わりに、クリスチャンが受ける栄光と、比べること自体がそもそも価値がない、比べること自体がそもそも無理であると言うほどのとてつもなく大きく、圧倒的に大きく、計り知れなく大きい世の終わりに、わたしたちクリスチャンが受ける栄光とは具体的にどのようなものなのでしょう。 すると、それは、わたしたちクリスチャンが、世の終わりに、罪の支配から完全に贖われ、買い戻され、罪と死の力から解き放たれて自由にされ、二度と死ぬことがない体に復活し、罪を犯すことがあり得ない罪と無縁の神の子たちとして、そのとき完成する新天新地、すなわち栄光の神の国において出現することです。１９節で、「被造物は、神の子たちの現れるのを切に待ち望んでいます」とありますが、罪と無縁の「神の子たちの現れる」ことが、世の終わりの栄光です。 さらに、２３節では、世の終わりの栄光をもう少し詳しく教えています。「霊の初穂をいただいているわたしたちも、神の子とされること、つまり、体の贖われることを、心の中で待ち望んでいます」とありますように、わたしたちクリスチャンの体が罪の影響から完全にまったく贖われて復活し、罪と無縁の神の子とされることが世の終わりの栄光となります。 考えてみますと、わたしたちクリスチャンは、この世にあって、すでにキリストによって、罪の支配から贖われ、買い戻され、罪から自由にされた者です。２３節に、「体の贖われること」とありますが、「贖う」というのは、代価を払って買い戻すという意味で、旧約時代から使われてきた言葉です。すなわち、誰かが落ちぶれて、悲惨な奴隷になったときに、その人に一番近い身内が、同情し、可哀そうに思って、代価を払って、奴隷の身分から買い戻し、自由にしてあげることを意味します。 その言葉が、キリストにあてはめられています。すなわち、罪の悲惨な奴隷に落ちぶれているわたしたちを、キリストがわたしたちに一番近い身内であるかのように、わたしたちに真に同情し、真に憐れんでくださって、御自分の尊い命を代価として、十字架で父なる神に支払って、わたしたちを罪の奴隷から買い戻し、解放し、自由にしてくださったことを表します。 そして、確かに、わたしたちは、キリストのその贖いによって、罪の奴隷から解放され自由にされました。しかし、よく知られていますように、聖化の未完成、きよめの未完成のゆえに、まだ、罪から完全に聖化されたわけではなく、完全にきよめられたわけではありません。その証拠に、わたしたちは、クリスチャンであっても罪の結果としての死を人生の最後に経験しなければなりません。また、さらに、わたしたちは、死後、霊魂は、そのとき聖霊によって完全にきよめられ、天国に入れられますが、罪の影響を受けた体は、世の終わりまで、キリストに見守られてお墓の中で休むのです。 では、罪の影響を受けたわたしたちの体が、罪と無縁になるのは、いつでしょう。すると、それは、世の終わり、終末のとき、キリストが栄光の内に再臨されるときです。そのときに、わたしたちの体は、罪の力から完全に買い戻され、二度と死ぬことのない不死の体に復活し、二度と罪を犯すことがあり得ない罪と無縁の体とされ、言葉の最も厳密な意味で、完全に神の子として出現し、そのとき完成する罪のない新天新地において、すなわち、栄光の神の国において、父なる神・子なる神イエス・キリスト・聖霊なる神の三位一体の真の神との心満たされ潤される愛のまじわりの中で、言葉で言い表すことができない喜びをもって永遠に生きていくのです。 ここには、如何なる悲しみも苦しみも痛みも最早ありません、あるのは、永遠に続く無限の喜びです。そして、これが、世の終わりにおけるわたしたちクリスチャンが受ける栄光です。 こうして、世の終わりに、わたしたちの体が、罪の力から完全に買い戻され、二度と死ぬことのない不死の体に復活し、二度と罪を犯すことがあり得ない罪と無縁の体とされ、言葉の最も厳密な意味で、完全に神の子として出現することを、天地万物も、すなわち、人間以外の全被造物も今か今かと一日千秋の思いで待ちこがれているのです。 １９節に、「被造物は、神の子たちの現れるのを切に待ち望んでいます」とありますが、原文は、被造物が神の子たちが現れることを切に待ち望んでいることがもっともっと強く感じられるように書かれています。その意味を出して訳すと、「被造物の期待は、神の子たちの現れるのを切に待ち望んでいることです」となります。すなわち、「期待する」という言葉と「切に待ち望んでいることです」という同じ意味の言葉が２つも意識的に、ダブルに使われています。 ですから、もっと分かり易く平易に訳すならば、「被造物は、神の子たちの現れることを期待して今か今かと１日千秋の思いで切に待ちこがれています」ぐらいに訳せば、パウロの気持ちがもっと強く伝わってくるでしょう。 こうして、被造物が、立て前ではなくて、本音で、ほんとに、本気で、真剣に、神の子たちの現れるのを、今か今かと１日千秋の思いで熱心に待ちこがれていることが伝わるように書かれているのです。ですから、被造物は、神の子たちの現れるのを、いつかそのときが将来来るでしょう、そのときをゆっくり待ちますよとのんびり待っているという状況ではないのです。被造物は、神の子たちの現れるのを今か今かと１日千秋の思いで熱心に真剣に本気で待ち望んでいるのです。これが原文の意図です。 そして、「被造物」とは、創造主なる神に創造されたすべてのものを包含していますが、ここでは人間以外の全被造物を表します。具体的には、太陽、月、星、陸地、海、山、川、動物、魚、植物などの天体、自然界、動物界、植物界などの人間以外のすべての被造物を表しています。旧約聖書の創世記第１章が記している、神に創造されたところの人間以外の全被造物が、人格を持っているかのように擬人化して、パウロは印象的に記しています。 では、何故、人間以外の被造物は、わたしたちクリスチャンが、世の終わりに、罪とは無縁の二度と死ぬことのない不死の体に贖われて、そのとき完成する新天新地において、すなわち、栄光の御国において、完全な神の子として出現することを切望しているのでしょう。 すると、人間以外の被造物は、エデンの園で、人間の代表のアダムとエバが罪を犯したことによって、人間以外の全被造物は神に呪われ、豊かさを失い、人間に敵対するもの、人間に十分奉仕しないもの、朽ち果てるもの、壊れるもの、虚しいもの、すなわち、滅ぶものに、奴隷のように隷属するものとなってしまったのです。 ２１節に「滅びの隷属」とありますが、「隷属」とは、奴隷のようになって服従することを表します。すなわち、奴隷が主人に服従するかのように服従することを表します。そして、「滅び」というのは、朽ち果てるもの、壊れるもの、虚しいもの、すなわち、滅ぶものを表します。 したがって、「滅びの隷属」とは、被造物が、人間の罪ゆえに朽ち果てるもの、壊れるもの、虚しいもの、すなわち、滅ぶものに、奴隷のようになって服従している悲惨な状態を表しています。すなわち、人間以外の被造物は、エデンの園で人間の代表のアダムとエバが罪を犯したことによって、人間以外の全被造物は神に呪われ、豊かさを失い、人間に敵対するもの、人間に十分奉仕しないもの、朽ち果てるもの、壊れるもの、虚しいもの、すなわち、滅ぶものに、奴隷のように服従している悲惨な状態にされていることを表しています。 以前の口語訳聖書においては、「滅びの隷属」は、「滅びの縄目」と訳されていて、被造物が滅びというものに、縄で奴隷のように縛られていることを表しましたが、それも理解を助けるよい訳と思います。 それゆえ、人間以外の全被造物は、「滅びの隷属」、すなわち、滅びの縄目から解放され、自由となり、豊かさを回復し、再び、本来の姿を取り戻し、創造の冠である人間に十分奉仕し、役立つものとなることを切に望んでいるのです。 わたしたちは、エデンの園におけるアダムとエバが創造主なる神に対して、罪を犯した出来事を旧約聖書の創世記第３章でよく知っています。アダムとエバが、エデンの園で禁止されていた善悪を知る木から取って食べて、罪を犯したとき、人間以外の全被造物も呪われ、土は茨とあざみを生じるものとなったことを記していますが、その意味は、太陽、月、星、陸地、海、山、川、動物、魚、植物などの天体、自然界、動物界、植物界などのすべての被造物が、人間の罪ゆえに、神に呪われ、豊かさを失い、人間に敵対するもの、人間に十分奉仕しないもの、朽ち果てるもの、虚しいもの、壊れるもの、滅びいくもの、すなわち、虚無に服するもの、すなわち、滅びに隷属するもの、また、滅びの縄目に隷属するものとなったことを表しています。 しかし、太陽、月、星、陸地、海、山、川、動物、魚、植物などの天体、自然界、動物界、植物界などのすべての被造物が、人間の罪ゆえに、神に呪われ、豊かさを失い、人間に敵対するもの、人間に十分奉仕しないもの、朽ち果てるもの、虚しいもの、壊れるもの、滅びいくもの、すなわち、虚無に服するもの、また、滅びに隷属するものとなりましたが、そうなったのは、全被造物が自分の意志で好んで、そうなったのではなく、創造主なる神の主権的御意志によることでした。 でも、全被造物が、そのように、人間の罪により、虚無に服するもの、また、滅びに隷属するものとなっている期間は永遠に続くのではなくて、世の終わりまでのことで、世の終わりに、わたしたちクリスチャンが、罪の影響から完全に買い戻され、贖われ、二度と死ぬことない不死の体に復活し、罪と無縁の完全な神の子として出現するまでのことなのです。 これが、人間以外の全被造物が虚無に服するもの、また、滅びに隷属するものとした創造主なる神の御意志でした。人間の罪によって呪われたことによって始まった被造物の虚無と隷属は、世の終わりに、人間の罪が完全に贖われて、わたしたちクリスチャンが聖霊の初穂として復活することによって終わりを告げ、人間以外の全被造物も、再び、本来の豊かさを回復し、実り豊かなものとなり、創造の冠と言われる人間に、十分役に立つもの、奉仕するものに生まれ変わるのです。 それゆえ、かつて、エデンの園でアダムとエバが罪を犯したとき、土は呪われ、自然界は、茨とあざみという無益なものを生じるものとなりましたが、しかし、世の終わりが来るときには、罪の呪いから解放されて、自由になり、全聖書の最後の黙示録２２章が、圧倒的な栄光に満ちあふれた仕方で描いているように、川は永遠の命の水が年中流れる川となり、川の両岸には永遠の命の木がたくさん生えていて、年に、何と、１２回も実を豊かに結び、その木の葉は、諸国民のどのような病いをもいやし、被造物の世界は、永遠の命が充満した世界に生まれ変り、最早、呪われるものは何一つなくなり、死の影はまったくなり、全被造物は永遠の命に満ちあふれる仕方で描かれています。読んでいて心が喜びと希望で一杯になります。 それゆえ、人間以外の全被造物も、世の終わりに、罪の影響から完全に買い戻され、贖われて、二度と死ぬことない不死の体に復活するわたしたちクリスチャンが、罪と無縁の完全な神の子として出現し、罪から完全に自由にされるという栄光にあずかれること、そして、その祝福を受けることを、今か今かと一日千秋の思いで、今の苦しみの中で、全被造物も互いにうめくようにして、まるで、産みの苦しみを味わうかのようにして待ち望んでいるのです。 ２１節に、「神の子供たちの栄光に輝く自由にあずかれるからです」とありますが、「神の子供たちの栄光に輝く自由」というのは、世の終わりに、罪の影響から完全に買い戻され、贖われて、二度と死ぬことない不死の体に復活するわたしたちクリスチャンが、完全な神の子として出現し、罪から完全に自由にされるという栄光のことで、この栄光に、人間以外の全被造物もあずかれるし、この栄光に被造物も入ることができることを、人間以外の全被造物が、人格を持っているかのように、パウロは生々しく書いたのです。 また２２節には、「被造物がすべて今日まで、共にうめき」とありますが、「共にうめき」というのは、これも、擬人法で、人間以外の全被造物に人格があるかのようにして語っています。「共にうめき」というのは、人間以外の被造物全体が、人間の罪ゆえに、神に呪われて、豊かさを失い、人間に敵対するもの、人間に十分奉仕しないもの、朽ち果てるもの、虚しいもの、壊れるもの、滅びいくもの、すなわち、虚無に服するもの、また、滅びの縄目に隷属するものとされている苦しみ中で、互いにうめくようにして、また、互いに産みの苦しみを味わうかのようにして、解放される日を切に待ち望んでいることを表します。 そして、人間以外の被造物が、虚無に服するもの、また、滅びに隷属するものとされている苦しみ中で、うめくようにして、また、産みの苦しみを味わうかのようにして、世の終わりに栄光に入れられることを待ち望んでいることは、使徒パウロだけが知っていることでなく、「わたしたちは知っています」ということによって、１世紀のクリスチャンであれば、誰もが知っている確実な真理であること、あるいは、使徒パウロだけが知っていればよい真理でなく、１世紀のクリスチャンなら、誰もが知るべき確実な真理として、パウロは、「わたしたちは知っています」と、わざわざ複数形で、「わたしたち」と語りました。 こうして、パウロは、実に驚嘆すべき、宇宙大のスケールで、壮大な素晴らしい真理を堂々と権威をもって、何らためらうことなく書いたのです。この真理は信仰によらなければ、知ることができない大真理です。パウロは、全聖書の最初の旧約聖書の創世記が記している天地万物の創造に対応する世の終わりに関する大真理を、ここで教えているのです。 そして、わたしたちは、わたしたち人間の罪が、天体、自然界、動物界、植物界などの被造物全体に、実に深刻で甚大な影響を如何に与えたかを知って、罪の恐ろしさにおののくと共に、わたしたち人間を、まさにその罪からキリストにより贖い、買い戻すと共に、全被造物をも、罪の呪いから解放してくださる御計画を立ててくださっている、どこまでも全能で、いつくしみ深い天の神を、わたしたちは声の限りを尽くしてほめたたえたいと思います。 ３．わたしたちクリスチャンも世の終わりの栄光の実現を待ち望んでいます 第３点に入ります。わたしたちクリスチャンも、世の終わりの栄光の実現成就を待ち望んでいるという点です。すなわち、すべての被造物は、世の終わりの栄光の実現を待ち望んでいますが、キリストを信じて、聖霊が、今、心に親しく住んでいてくださるわたしたちクリスチャンであるわたしたち自身も、世の終わりに、体が罪から完全に買い戻され、贖われ、二度と死ぬことのない不死の体に復活し、二度と罪を犯すことがあり得ない、言葉の最も厳密な意味で、完全な神の子として出現することを確実な希望として、今のこの世のいろいろな苦しみに耐えて、心の中でうめきながら待ち望んでいるのです。 ２３節から２５節がそうです。２３節に、「被造物だけでなく、霊の初穂をいただいているわたしたちも、神の子とされること、つまり、体の贖われることを、心の中でうめきながら待ち望んでいます」とありますが、「霊の初穂」というのは、「聖霊という初穂」という意味で、世の終わりに体が、完全に罪から買い戻され、贖われる最初のしるし、あるいは、その保証として、聖霊がわたしたちクリスチャンの心に親しく住んでいてくださる事実、内住の聖霊を表しています。 「初穂」とは、もともと、パンの原料になる麦の初穂を意味します。１世紀の地中海世界の人々の主食は、麦から作ったパンですが、パンの原料は麦です。そして、麦の最初の穂、初穂は、現在の５月から６月にかけて出てきました。そして、麦の初穂が出てくるということは、その年の麦の豊かな収穫のしるし、あるいは、その保証となっていたのです。麦の初穂が出てきたから、今年も、麦の豊かな収穫は、間違いなしと人々は喜んだのです。 それゆえ、「初穂」が出ることは、豊かな収穫の確実なしるし、その保証でした。そこで、パウロもこのことを背景にして、聖霊が、わたしたちクリスチャンの心に親しく住んでいてくださることは、初穂のようなものであり、世の終わりに、体が、罪から完全に買い戻され、贖われることの確実な最初のしるし、その保証であることにたとえたのです。すなわち、聖霊がわたしたちクリスチャンの心に、今、親しく、内住していてくださることは、世の終わりには、聖霊の働きによって、わたしたちの体が、罪から完全に買い戻され、贖われて、二度と死ぬことのない不死の体に復活し、二度と罪を犯すことがあり得ない、言葉の最も厳密な意味で、完全な神の子とされることの確実なしるしであり、確実な保証なのです。 こうして、わたしたちクリスチャンは、この世にあってはののしり、嘲り、罵詈雑言を浴び、いろいろな苦しみ、悩み、悲しみ、困難、罪の古い性質との葛藤や戦いなどがあります。でも、それらからすべて解放され、自由にされ、完全な神の子とされる無限の栄光、とてつもない栄光の希望によって、今、わたしたちクリスチャンは大きく支えられているのです。そこで、パウロは、この栄光の希望によって救われているとまで言い切りました。もちろん、救われるのは、キリストを信じて救われるのですが、この確実な栄光の希望によっても、大きく、そして、強く支えられていることを言うために、「このような希望によって救われている」とまで、パウロは言い切ったのです。 もちろん、このような希望は、世の終わりに実現成就するものなので、今、わたしたちの目で見て確認することはできません。世の終わりの希望、将来の希望というものは、その性質上、決して目には見えないものです。しかし、わたしたちクリスチャンは、ヘブライ人への手紙の１１章１節で、「信仰とは、望んでいる事柄を確信し、見えない事実を確認することです」と力強く断言されていますように、まだ、わたしたちの目に見えない栄光を、忍耐して待ち望みながら、救いの素晴らしい完成を目指し、この世の旅路を日々しっかり前を向いて歩んでいくのです。 パウロは、世の終わりの栄光の希望は、目に見えないことを強調していますが、１世紀のクリスチャンは、使徒パウロのこの教えに従って、目に見えない世の終わりの栄光を本当に信仰し、固く確信して世界で最初のクリスチャンとして、いろいろな苦難の中で忍耐をもって歩んだのです。彼らは、後に続くわたしたちに対して、雲のような証人たちとなったのです。 結び 以上のようにして、今日の個所を見ます。２１世紀の日本のクリスチャンのわたしたちも、聖霊という初穂を心にいただいている者として、世の終わりに罪から完全に買い戻され、贖われ、二度と死ぬことのない不死の体に復活し、そのとき出現する新天新地において、すなわち、栄光の御国において神の子として出現するという測り知れない栄光を受けることを揺るぎなく確信し、希望と喜びをもって、今週もこの世の旅路を力強く歩んでいきたいと思います。 お祈り 主イエス・キリストの父なる神さま、 本日も、週の最初の主の日に皆で集まり、あなたを礼拝できます恵みを心から感謝いたします。 今、わたしちは、聖書を通して、世の終わりの終末には、わたしたちが罪のない神の子とされる測り知れない祝福を約束されていることを教えられ、余りの恵みの豊かさに、ひれ伏して感謝する思いを持ちます。罪の奴隷にすぎなかったわたしたちを、そのように愛してくださることを本当にありがとうございます。 それゆえ、この世の歩みをするときに、いろいろなことがあっても終末の驚くべき、身に余る祝福を確信し、希望として、忍耐して歩むことができるように聖霊によって強めてください。 本日、種々の都合や事情で、出席できなかった兄弟姉妹にそれぞれのところで顧みがありますようにお祈りいたします。 今日から始まるわたしたちの新しい１週間をどこにあっても祝福してください。 これらの祈りを、主イエス・キリストの御名によって、御前にお献げいたします。アーメン。
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