| 「聖霊による歩み」（改訂版） 8:1 従って、今や、キリスト・イエスに結ばれている者は、罪に定められることはありません。8:2 キリスト・イエスによって命をもたらす霊の法則が、罪と死との法則からあなたを解放したからです。8:3
肉の弱さのために律法がなしえなかったことを、神はしてくださったのです。つまり、罪を取り除くために御子を罪深い肉と同じ姿でこの世に送り、その肉において罪を罪として処断されたのです。8:4
それは、肉ではなく霊に従って歩むわたしたちの内に、律法の要求が満たされるためでした。8:5 肉に従って歩む者は、肉に属することを考え、霊に従って歩む者は、霊に属することを考えます。8:6
肉の思いは死であり、霊の思いは命と平和であります。8:7 なぜなら、肉の思いに従う者は、神に敵対しており、神の律法に従っていないからです。従いえないのです。8:8
肉の支配下にある者は、神に喜ばれるはずがありません。8:9 神の霊があなたがたの内に宿っているかぎり、あなたがたは、肉ではなく霊の支配下にいます。キリストの霊を持たない者は、キリストに属していません。8:10
キリストがあなたがたの内におられるならば、体は罪によって死んでいても、“霊”は義によって命となっています。8:11 もし、イエスを死者の中から復活させた方の霊が、あなたがたの内に宿っているなら、キリストを死者の中から復活させた方は、あなたがたの内に宿っているその霊によって、あなたがたの死ぬはずの体をも生かしてくださるでしょう。 はじめに 本日もキリスト教の伝道者、使徒パウロが紀元５６年頃書いたローマの信徒への手紙のお話です。では、これから、ローマの信徒への手紙のどこの個所をお話しするかと言いますと、８章の前半です。では、今日の個所は、どのようなことが語られているのでしょう。 すると、クリスチャンは、聖霊によって新しい霊的な命を与えられ、罪と死の力から解き放たれ、自分にされ、救いの完成を目指して喜んで歩んでいけることが、力強く使徒パウロによって語られています。 それで、今日の個所から４点のお話をしたいと思います。第１点は、クリスチャンは、新しい霊的な命を与えられ、罪と死の力から解き放たれているという事実についてです。第２点は、クリスチャンが罪と死の力から解き放たれているのは、救い主のイエスさまが、すでに十字架において、罪と死からその力を根こそぎはぎ取ってくださったからであるという点です。第３点は、聖霊に従って歩むクリスチャンは、人の生き方の素晴らしい規範である神の律法を守り始めることによって、神に喜ばれるという点です。第４点は、聖霊は汲めども尽きない無尽蔵の豊かな力でキリストを復活させたように、聖霊はわたしたちクリスチャンも世の終わりに復活させ、ついにわたしたちの救いを完成してくださるという点です。 そこで、ここを学んで、今日のクリスチャンであるわたしたちにも、聖霊の霊的な命が与えられているので、罪と死の力から解き放たれ、救いの完成を目指し、前を向いて日々力強く信仰の道を歩んでいきたいと思います。 １．クリスチャンは罪の力と死の力に勝利している 早速、第１点に入ります。第１点は、クリスチャンは、新しい霊的な命を与えられているので、罪と死の力から解き放たれているという事実についてです。前回、わたしたちは、クリスチャンであっても以前の古い罪の性質が、まだ心に残っていて、あるときには古い罪の性質に負けて罪を犯し、自らの霊的な弱さを強く感じて苦しみ、悩むときがあるということを教えられましたが、実は、そのようなときがあっても、クリスチャンは、通常は罪と死の力から解放され、喜びに満ちあふれて信仰生活ができるようにされています。 では、それは、何故かと言えば、イエスさまを信じて救われ、聖霊を与えられているクリスチャンは、聖霊の霊的な力によって、罪と死の力から解き放たれ、自由にされているからです。８章１節と２節がそうです。わたしたちが、ここを見てすぐに感じることは、パウロは、とても力強く断言していることです。すなわち、パウロは権威をもって何のためらいなしに、キリスト・イエス、すなわち、救い主のイエスさまを信じて救われ、聖霊を与えられているクリスチャンは、「罪に定められることはありません」ときっぱり断言しています。 「罪に定められることはありません」というのは、神によって有罪宣告をされ、罪に定められ、最後の審判で滅ぼされることが絶対にあり得ないことを表しています。では、どうして、キリスト・イエス、すなわち、救い主のイエスさまを信じて救われ、聖霊を与えられているクリスチャンは、罪に定められ、裁きで滅ぼされることが絶対にないのでしょう。すると、それは、クリスチャンの心には、「霊」、すなわち、神の霊、神の御霊、聖霊の霊的な力が働いていて、罪の力と死の力から解放されているからです。 ８章２節を見ますと、「キリスト・イエスによって命をもたらす霊の法則が、罪と死の法則からあなたを解放したからです」とありまして、「霊の法則」と「罪と死との法則」という言い方が、比較対照的に、コントラスト的に出ています。「霊の法則」とは、「聖霊の法則」のことで、「霊」とは、もちろん、聖霊のことです。そして、「法則」というのは、この場合は、「支配力」という意味です。人は、「法則」に支配されるので、「法則」というのは、支配力、人を支配する力を表します。それゆえ、「聖霊の法則」とは、聖霊の支配力を表しています。 それに対して、「罪と死との法則」というのは、罪と死の支配力を表します。人は皆、生まれながらの罪人であり、罪の力に支配され、さらに、罪に対する刑罰としての死の力に支配されています。しかし、キリスト・イエス、すなわち、救い主のイエスさまを信じたクリスチャンは、聖霊を与えられ、聖霊の霊的な命の力によって、それまでの罪と死の支配力から解き放たれ、解放され、自由にされるのです。 「あなたを解放した」とありますが、「解放した」という動詞は、過去の一回的出来事を示すかたちになっていますので、人が、キリスト・イエス、すなわち、救い主のイエスさまを信じたそのときに、もうすでに聖霊の霊的な命よって罪と死の支配力から解き放たれ、解放され、自由にされたことを表します。 考えてみますと、罪と死の支配力は、非常に強く全人類を支配していて、人は生まれたその瞬間から、もうすでに罪と死の力に支配されています。それゆえ、人は誰に教えられなくとも罪を犯しながら生涯を生き、最後には罪の支払う報酬としての死を嫌でも受け取らされて死んでいくのであり、誰もこの惨めな生き方を自分の力で変えることができません。 しかし、教会が宣べ伝えている救いのよき知らせである福音の説教を聞いて、十字架につけられたイエスさまを自分の救い主と信じた人には、直ちに聖霊が働き始め、聖霊はその人の内に新しい霊的な支配を開始し、それまでの罪と死の力の支配を終わらせ、終息させてしまうので、その人は罪と死の力の支配から解き放たれるのです。人が罪と死の力の支配から解き放たれるのは、イエスさまを信仰して、クリスチャンになり、聖霊の力を受けたときから始まるのです。それ以外に、人が罪と死の力の支配から解き放たれる途はないのです。 ２．キリストの十字架において、罪の力および死の力ははぎ取られた 第２点に入りましょう。第２点は、クリスチャンが罪の力と死の力から解き放たれるのは、イエスさまが、すでに十字架において、罪と死からその力を根こそぎはぎ取ってくださったからであるという点です。３節がそうです。 実は、本来であれば、わたしたち人間が、人の正しい生き方の素晴らしい規範である神の律法をすべて完全に自力で守って、律法が約束していた霊的な命を獲得し、神とのまじわりに喜び生きていかなければならなかったのです。しかし、よく知られていますように、わたしたち人間の代表のアダムは、エデンの園で神に禁止されていた善悪を知る木から取って食べて罪を犯しました。その結果、アダムもアダムの子孫のわたしたち全人類も罪人となり、罪の力に支配される者となり、また、罪に対する刑罰として死ぬ者となって死に支配される者となってしまいました。 こうして、わたしたちの人間性とうものは、「肉の弱さ」、すなわち、罪に支配されている人間性となりました。神に創造されたときの人間性は、罪のない人間性でしたが、アダムの罪以後、わたしたちの人間性は、「肉」、すなわち、罪に支配されている人間性となってしまいました。３節に、「肉」という言葉が出ていますが、実は、今日の個所に、「肉」という言葉が、１０回も出てきて目立っています。そして、「肉」という言葉は、幾つかの意味で使われますが、ここでは、罪に支配されている人間性を表します。 そして、罪に支配されている人間性のため、わたしたち人間は、わたしたちが生きる素晴らしい規範である神の律法をすべて自分の力で行って、神とのまじわりに喜び生きる霊的な命を獲得することができないので、律法を行うことによっては、人は霊的な命を得ることができません。 でも、神に創造されたわたしたち人間は、創造者なる神とのまじわりに喜び生きる霊的な命がないと困るのです。創造者なる神とのまじわりに喜び生きる霊的命がないと、罪と死の力に支配され、最後には神に裁かれ滅ぼされてしまいます。これでは困るのです。困るどころの話ではないのです。これは、全人類の霊的な危機なのです。全人類は、今、罪と死の力に支配されていて、滅びの淵にかろうじて立っていて、あと一押しされれば奈落の底に落ちてしまうのです。 そこで、いつくしみ深い天の神は、わたしたちが霊的命を持てるようにしてくださったのです。パウロは、３節で、「肉の弱さのため律法がなしえなかったことを神はしてくださったのです」と言いました。「肉の弱さのため律法がなしえなかったこと」とは、罪に支配されている人間性のため、わたしたち人間が、律法を自分の力で守って霊的命を獲得することができないことを表しています。 そこで、いつくしみ深い天の神は、わたしたちが神とのまじわりに喜び生きる霊的命を持てるようにしてくださったのです。では、どのようにして、神とのまじわりに喜び生きる霊的命を持てるようにしてくださったのでしょう。すると、わたしたちの罪を取り除くために、神の永遠の御子のイエスさまを、「罪深い肉と同じ姿でこの世に送ってくださった」のです。すなわち、神の御子のイエスさまを、マリヤから生まれるという処女降誕の秘儀でこの世に送ってくださったのです。 すなわち、神は、御自分の永遠の御子のイエスさまが、罪のない人間性を取られて生まれるようにしてくださったのです。「罪深い肉と同じ姿で」とありますが、原文では、もっと注意深く慎重に誤解されないように書かれていまして、「罪深い肉と同じような姿で」と書かれています。そして、「同じ姿で」ではなくて、「同じような姿で」が正しい訳です。 今、わたしたちが見ている新共同訳聖書の言い方の「罪深い肉と同じ姿で」という言い方ですと、イエスさまが、わたしたちと同じ罪に支配された人間性を取られたと誤解される恐れがありますので、ここは注意深く慎重に誤解されないように、「罪深い肉と同じような姿で」と、罪に支配された人間性に似た人間性、罪に支配された人間性に類似した人間性、すなわち、人間性はわたしたちと同じですが、あくまでも罪のない人間性を取られたことを、パウロは注意深く慎重に誤解されないように語っているので、わたしたちも注意したいと思います。 そして、神は、罪に支配された人間性に似た人間性、すなわち、罪のない人間性を取られた十字架のイエスさまにおいて、わたしたち人間の罪を罰し、処罰し、処断し、裁いて、罪からその力を根こそぎはぎとってくださったのです。それゆえ、イエスさまを信じるわたしたちクリスチャンには、罪の力、また、罪に対する罰としての死の力が、最早、支配することはなくなったのです。 「肉において罪を罪として処断されたのです」とあり、ここでも、「肉」という言葉が出てきますが、この場合の「肉」は、イエスさまが取った罪の無い人間性を意味します。 そして、「罪を罪として処断されたのです」とありますが、「処断する」というのは、罰する、処罰する、処断する、裁くなどの意味がありますが、ニュアンスは、罰してその力を根こそぎはぎ取ってしまうというニュアンスです。 したがって、神は、罪のない人間性を取られた十字架のイエスさまにおいて、わたしたち人間の罪を罰し、処罰し、処断し、裁いて、罪から、その力を根こそぎはぎとってくださったのです。それゆえ、イエスさまを信じるわたしたちクリスチャンには、罪の力、また、罪に対する刑罰としての死の力が、最早、支配しないように、聖霊の霊的な力が与えられているのです。 ですから、今、クリスチャンであるわたしたちにおいて、罪の力、また、罪に対する刑罰としての死の力が、最早、支配していないのは、約２千年前に、イエスさまが、あのゴルゴタの十字架で、わたしたちの罪を、すでに罰し、処罰し、処断し、裁いて、罪から、その力を根こそぎはぎ取ってくださったからなのです。 それゆえ、今、クリスチャンであるわたしとあなたに、罪と死の力が、最早、支配していないのは、イエスさまが、十字架で、わたしとあなたの罪を、すでに罰し、処罰し、処断し、裁いて、罪から根こそぎ力をはぎ取ってくださったという恵み深い確実な根拠があることを、わたしたちは、しっかり覚えて救い主のイエスさまに心から感謝したいと思います。 ３．聖霊に従って歩む信者は、律法を守り始める 第３点に入りましょう。第３点は、聖霊に従って歩むクリスチャンは、律法を守り始めることによって、神に喜ばれるという点です。イエスさまを信じる者は、誰でも、聖霊の霊的な命の力によって、罪の力、また、罪に対する刑罰としての死の力から解き放たれ、自由にされているのですが、では、それは、何のためなのでしょう。 すると、それは、クリスチャンであるわたしたちが、「肉」すなわち、罪に従ってでなく、「霊」、すなわち、聖霊に従って歩んで、人の生き方の素晴らしい規範である神から与えられている律法が求めている神の前での正しさときよさが、クリスチャンであるわたしたちの歩みにおいて実現され始め、満たされ始めて、神に喜ばれるという目的のためなのです。４節から１０節がそうです。 ４節から１０節を見ますと、「肉に従って歩む」と「霊に従って歩む」、あるいは、「肉に従って歩む者」と「霊に従って歩む者」、あるいは、「肉に属すること」と「霊に属すること」、あるいは、「肉の思い」と「霊の思い」、あるいは、「肉の支配下」と「霊の支配下」という風に、パウロは、明らかに意識的に、「肉」と「霊」を何度も対立させて、ローマの信徒に目立つようにしています。 この手紙の宛てられた１世紀のローマの信徒たちは、このことにすぐ気づいたはずです。こうして、パウロは、いろいろな言い方で、二つのものを対立させていますが、根本は、「肉」と「霊」の対立です。 そして、「肉」というのは、幾つかの意味で使われますが、ここでは、罪のことですし、「霊」とは、聖霊のことです。こうして、「肉」と「霊」の対立は、すなわち、罪と聖霊の対立です。罪と聖霊は対立するのです。相反するのです。 それゆえ、クリスチャンは、「肉ではなく霊に従って歩む」のですというのは、クリスチャンは、最早、以前の罪に従って歩むのでなく、新たに聖霊に従って歩むことにより、人の生き方の素晴らしい規範である神から与えられている律法が求めている正しさときよさが、クリスチャンにおいて実現され始め、満たされ始めることを、パウロは教えているのです。これは、うれしいことです。人の生き方の素晴らしい規範である神から与えられた律法は、他ならぬわたしたちクリスチャンの歩みにおいて、ついに実現され始めているのです。 ４節後半に、「律法の要求が満たされるためです」とありますが、「律法の要求」というのは、律法が求める神の前での正しさときよさのことです。律法は、人の生き方における神の前での正しさときよさを要求し、求めるのですが、それは、聖霊に従って歩むクリスチャンによってのみ、ついに実現され始め、満たされ始めるのです。「律法の要求が満たされる」の「満たされる」という言葉は、「満たされる」と共に「実現される」というよい意味を持ちます。 考えて見ますと、１世紀のユダヤ人は、自分たちには、人の生き方の権威ある規範である神の律法がある。そして、律法が、自分たちユダヤ人に委ねられていることは、自分たちユダヤ人は、律法が要求している神の前での正しさときよさを自力で完全に実現し、満たすことができると豪語していたのですが、それは、うぬぼれであり、根本的誤りで、律法が要求している神の前での正しさときよさを実現し始め、満たし始めて、神に喜ばれているのは、十字架にかかってくささったイエスさまを心から信じて、聖霊に導かれて今喜んで歩んでいるわたしたちクリスチャンなのです。 では、どうして、聖霊に導かれて歩むクわたしたちクリスチャンは、律法が求める神の前での正しさときよさという霊的なことを実現し始めることができるのでしょうか。すると、「肉に従って歩む者」すなわち、生まれたままの霊的無力の人は、「肉に属すること」、すなわち、罪に属する地上的なことをもっぱら考えて生きていきますが、しかし、「霊に従って歩む者」、すなわち、聖霊によって新たに霊的に生まれたわたしたちクリスチャンは、「霊に属すること」、すなわち、神の御心に適う霊的なことを、もっぱら、ひたすら考えて生きていくからです。 そして、「肉に従って歩む者は、肉に属することを考え」と「霊に従って歩む者は、霊に属することを考えます」と、比較対照的に、コントラスト的に言われていますが、「考え」また「考えます」という言葉は、もっぱら考える、ひたすら考えるという意味の言葉です。すなわち、そのことに心を傾けて考えることを表します。 それゆえ、「肉に従って歩む者」すなわち、生まれたままの霊的無力の人は、「肉に属すること」、すなわち、罪に属する地上的なことをもっぱら考えて生きていきます。しかし、「霊に従って歩む者」、すなわち、聖霊によって新たに霊的に生まれたわたしたちクリスチャン者は、「霊に属すること」、すなわち、神の御心に適う霊的なことを、もっぱら、ひたすら考えて生きていくのです。 それゆえ、「霊に従って歩む者」、すなわち、聖霊によって新たに霊的に生まれたわたしたちクリスチャンは、「霊に属すること」、すなわち、神の御心に適う霊的なことを、もっぱら、ひたすら考えて生きていくので、律法が求める神の前での正しさときよさを実現し始め、満たし始めることができるのです。 では、「肉に従って歩む者」すなわち、生まれたままの霊的無力の人は、「肉に属すること」、すなわち、罪に属する地上的なことをもっぱら考えて生きていき、他方、「霊に従って歩む者」、すなわち、聖霊によって新たに霊的に生まれたわたしたちクリスチャンは、「霊に属すること」、すなわち、神の御心に適う霊的なことを、もっぱら、ひたすら考えて生きていくと、どこへ行き着くのでしょう。お互いのゴールは何でしょう。 すると、生まれたままの霊的無力の人は、罪に属する地上的なことをもっぱら考えて生きていくので、それは「肉の思い」、すなわち、罪に結びついている思いや考えなので、行き着くところは、「死」、すなわち、霊的な死です。しかし、聖霊によって新たに霊的に生まれたわたしたちクリスチャンは、神の御心に適う霊的なことを、もっぱら、ひたすら考えて生きていくので、それは、「霊の思い」、すなわち、神の御心に適う霊的思いなので、行き着くころは、神が恵みの賜物として与えてくさださる「命と平和」、すなわち、永遠の命と神との関係における平和という永遠的に価値を持つものです。 こうして、「肉の思いに従う者」と霊の思いに従うわたしたちクリスチャンの間には、行き着くところ、ゴールに根本的な違いが出てくるのです。一方は、霊的な死に行き着き、他方は、永遠の命と神と関係における平和という永遠的な恵みの賜物に行き着くのです。 では、どうして、「肉の思いに従う者」と霊の思いに従うわたしたちクリスチャンの間には、そのような大きな違いが出てくるのでしょう。すると、その違いは、「肉の思いに従う者」は、神に敵対するという性格を持っていて、神が与えた人の正しい生き方の素晴らしい規範である神の律法に従って生きないし、また、従うことができないので、神からの恵みの賜物である永遠の命も、神との県警における平和も、与えられることがなく、逆に、霊的な死が与えられることになるからです。言い換えれば、「肉の支配下にある者」、すなわち、罪の支配下に生きる人は、神に喜ばれることがないので、永遠の命も神と関係における平和も、神からの恵みの賜物として与えられることがないのです。 こうして、パウロは、人の生き方は、結局二つに分かれることを語るのです。一つは、肉に属すること、すなわち、罪のこの世のことをもっぱら考えて生きていく道で、その道の行き着くところ、ゴールは霊的な死です。もう一つの道は、霊に属すること、すなわち、神の御心に適うことを考える方向で生きていく道で、その道の行き着くところ、ゴールは、永遠の命と神との関係における平和です。人は、この二つの道のどちらかを行くのですが、もちろん、パウロは、この手紙の宛てられたローマの信徒が、霊に属すること、すなわち、神の御心に適うことをもっぱら考える方向で生きていく道を選んで、永遠の命と神との関係における平和に行き着くことを望み、願い、祈りながらこの手紙を書いたことは極めて明らかです。 ２１世紀の日本のわたしたちクリスチャンも同じです。わたしたちも使徒パウロの望みと願いと祈りに従って、わたしもあなたも永遠の命と神との関係における平和に行き着く道を大きな喜びをもって、選び取りたいと思います。 ４．クリスチャンは、聖霊の多様な豊かな恵みにあずかる 第４点に入ります。第４点は、クリスチャンは、聖霊の多種多様な豊かな恵みにあずかるという点です。人の生きる道は、今、お話しましたように、霊的な死に行き着く道と、永遠の命と神との関係における平和に行き着く道のどちらかですが、クリスチャンは、もちろん、後者の道を歩むのですが、クリスチャンは、同時に、聖霊の多種多様な豊かな恵みにあずかれることを、パウロは力強く語ります。 では、クリスチャンは、どのような聖霊の多様な豊かな恵みにあずかれるのでしょう。すると、「神の御霊」、すなわち、聖霊が、クリスチャンの心に内住してくださるので、クリスチャンは、聖霊との言葉で言い表せない深いまじわりに置かれる恵みです。さらに、クリスチャンの体も、罪の結果として死ぬものとなっていても、クリスチャンが信仰によって義とされているゆえに、聖霊が、死を克服するクリスチャンの豊かな霊的な命となっているので、キリスト再臨の終末には、聖霊によって復活させられ、霊の体とされ、二度と死ぬことがない永遠に生きる体に変えられ、これで、わたしたちの救いがついに完成するのです。 ９節から１１節がそうです。９節から１１節は、クリスチャンが、聖霊の多種多様な豊かな恵みにあずかれることが、二つ、力強く語れています。まず、一つ目は、
聖霊の内住と言われる豊かな恵みです。９節で、「神の霊があなたがたの内に宿っているかぎり、あなたは霊の支配下にいます」と言われているのがそうです。 「神の霊」とは、神が遣わす霊、聖霊のことですが、「宿る」という言葉のもともとの意味は、「住む」という意味です。すなわち、人が家に住むように、聖霊が、わたしたち信者一人一人の心を、家のようにして、今、現在、住んでいてくださるということで、聖霊の内住と言われるもので、聖霊とわたしたちクリスチャンとの心地よいまじわりを表します。聖霊の内住によって、聖霊はわたしたち一人一人の内に永遠に住んでくださるのであり、わたしたち一人一人は永遠に聖霊の住まいになるのです。こうして、聖霊との心地よいまじわりは永遠に続いていくのです。 わたしたちは、祝祷ということを知っています。礼拝が終わるとき、牧師が会衆に祝福を祈りますが、その祝祷の言葉は、「仰ぎ請い願わくは、わたしたちの主イエス・キリストの恵み、父なる神の愛、聖霊の親しきまじわりが、会衆一同と共にあるように」と祝祷しますが、そのときに、「聖霊の親しきまじわり」を祈ります。では、「聖霊の親しきまじわり」とは、どのようなまじわりなのかと言えば、人が家に住んでくださるように、聖霊が、わたしたち信者一人ひとりの心を、家のようにして、住んでくださるというとても心地よいまじわりです。 そして、神の霊である聖霊が、内住しくださるならば、もちろん、その人は、最早、罪の支配下にはおらず、聖霊の支配下に置かれています。また、「神の霊」、すなわち、神から遣わされた聖霊は、同時に、天にお帰りになられたキリストから遣わされたので、「キリストの霊」とも言われますが、もし、人が、キリストから遣わされた聖霊を自分の心に持っていないなら、その人は、キリストに属する者、すなわち、キリストの救いに召された者ではないのです。何故なら、キリストに属する者、すなわち、キリストの救いに召された者は、必ずキリストから遣わされた聖霊を自分の心に持っているからです。 こうして、クリスチャンは、聖霊の多種多様な豊かな恵みにあずかるのですが、その一つ目は、神の霊である聖霊、同時に、キリストの霊と言われる聖霊が自分の住む家として、わたしたちの心に、今現在、親しく住んでくださっていて、とても親しく心地よいまじわりで、このまじわりは永遠に続いていく聖霊の内住の恵みです。 では、クリスチャンは、聖霊の多種多様な豊かな恵みにあずかるのですが、その二つ目は、何でしょう。すると、クリスチャンは、体は罪の結果、死ぬものとなっていますが、聖霊は、クリスチャンが信仰によって義とされているゆえに、聖霊が死を克服するクリスチャンの豊かな霊的命となっていて、世の終わり、終末には、罪の結果、死ぬものとなっているわたしたちの体を復活させて、二度と死ぬことがない永遠に生きられる体に変えてくださるというこの世の常識や理性を超える驚くべき恵みを最後に与えてくださるのです。 １０節と１１節がそうです。聖霊が、わたしたちの心に内住してくださるということは、キリストが、わたしたちの内におられることと同じですが、キリストが、わたしたちの内におられることによって、霊的に豊かなことが生じるのです。 では、どんな豊かなことが生じるのでしょう。すると、クリスチャンの体は、罪の結果、死ぬものになっていても、聖霊は、クリスチャンが信仰によって義とされているゆえに、死を克服するクリスチャンの豊かな霊的命となっていて、世の終わり、キリスト再臨の終末には、クリスチャンは、聖霊によって復活させられ、霊の体とされ、二度と死ぬことがない永遠に生きられる体に変えられるのです。すなわち、聖霊は、イエスさまを死者の中から復活させたように、わたしたちクリスチャンをも、その汲めども尽きない無尽蔵の豊かな命の力によって、必ず復活させてくださるのです。 １０節に、「体は罪によって死んでいても、霊は義によって命となっています」ありますが、「体は罪によって死んでいても」というのは、わたしたちクリスチャンの体が、罪の結果、死ぬものになっていることを表します。そして、「霊は義によって命となっています」というのは、聖霊は、クリスチャンが信仰によって義とされているゆえに、死を克服するクリスチャンの豊かな霊的命となっていますという意味です。 では、聖霊は、クリスチャンが信仰によって義とされているゆえに、死を克服する信者の豊かな霊的命となっているとどうなるかと言いますと、次の１１節で、言われていますように、世の終わり、キリスト再臨の終末には、聖霊によって復活させられ、霊の体とされ、永遠に生きる体に変えられて、救いがついに完成するのです。 「イエスを死者の中から復活させた方の霊」とは、聖霊のことです。汲めども尽きない無尽蔵の命の力を持った聖霊が、その力を働かせて、十字架の死の後、お墓に納められたイエスさまを、死者の中から復活させたのですが、その同じ汲めども尽きない無尽蔵の命の力を持った聖霊が、世の終わり、イエスさまの再臨の日に、その汲めども尽きない無尽蔵の命の力によって、わたしたちクリスチャンをも復活させ、ついにわたしたちの救いの完成に至らせてくださるのです。 「あなたがたの死ぬはずの体も生かしてくださるでしょう」とは、「生かしてくださるでしょう」が未来形になっていますので、世の終わり、イエスさまの再臨の終末のときに、罪の結果、死ぬべきわたしたちの体を、聖霊が復活させて、ついにわたしたちの救いを完成してくださることを表しています。こうして、わたしたちクリスチャンは、十字架のイエスさまを信じて始まった救い、そして、今も続いている救いの完成を目指して、内住の聖霊によって日々喜びにあふれて信仰の歩みをしていくのです。 実は、ローマの信徒への手紙においては、１章から７章までは、「聖霊」あるいは、「御霊」、あるいは、「霊」という聖霊を表す言葉は、たった４回しか出てきません。ところが、今日の８章に入ると、８章全体で、何と２０回もせきを切った水のように「聖霊」という言葉があふれ出てきて、８章全体が、もう聖霊の豊かな力、働き、祝福、勝利で満ち満ちているのです。まるで、聖霊が結ぶ美しい花が色とりどりに満開している花園のようなのです。 こうして、十字架の死で開いてくださったイエスさまによるわたしたちの救いを、聖霊は、その汲めども尽きない無尽蔵の豊かな力、働き、祝福、勝利でついに完成に導いてくださるのです。それゆえに、今日のわたしたちも、聖霊との実に心地よいまじわりの中で、今週も喜んで信仰の道を歩みたいと思います。 お祈り 憐れみ深い天の父なる神さま、 １週間の歩みを守られ、新しい週の最初の日に公同礼拝に導かれ感謝いたします。 今、わたしたちは、ローマの信徒への手紙の８章を通して、あなたがわたしたちを愛してくださり、イエスさまの十字架の死により、罪と死からその力を根こそぎ奪いって、罪と死から解き放ち、御霊との豊かな心地よいまじわりの中で、救いの完成を目指す歩みができるようにしてくださったことを知り、心から感謝いたします。 どうか、これからも、わたしたちが内住の御霊の所有者として、あなたの御心に適う正しい行いの実を、日々たくさん結んで、あなたに喜ばれる歩みができるようにお導きください。 また、本日、種々の都合や事情により、出席できなかった方々にそれぞれのところで顧みをお与えください。 また、今日から始まるわたしたちの１週間をどこにあっても豊かに祝福してください。 これらの祈りを、主イエス・キリストの御名により、御前にお献げいたします。アーメン。
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