3:12 わたしは、既にそれを得たというわけではなく、既に完全な者となっているわけでもありません。何とかして捕らえようと努めているのです。自分がキリスト・イエスに捕らえられているからです。 3:13 兄弟たち、わたし自身は既に捕らえたとは思っていません。なすべきことはただ一つ、後ろのものを忘れ、前のものに全身を向けつつ、 3:14 神がキリスト・イエスによって上へ召して、お与えになる賞を得るために、目標を目指してひたすら走ることです。 3:15 だから、わたしたちの中で完全な者はだれでも、このように考えるべきです。しかし、あなたがたに何か別の考えがあるなら、神はそのことをも明らかにしてくださいます。 3:16 いずれにせよ、わたしたちは到達したところに基づいて進むべきです。 3:17 兄弟たち、皆一緒にわたしに倣う者となりなさい。また、あなたがたと同じように、わたしたちを模範として歩んでいる人々に目を向けなさい。 3:18 何度も言ってきたし、今また涙ながらに言いますが、キリストの十字架に敵対して歩んでいる者が多いのです。 3:19 彼らの行き着くところは滅びです。彼らは腹を神とし、恥ずべきものを誇りとし、この世のことしか考えていません。 3:20 しかし、わたしたちの本国は天にあります。そこから主イエス・キリストが救い主として来られるのを、わたしたちは待っています。 3:21 キリストは、万物を支配下に置くことさえできる力によって、わたしたちの卑しい体を、御自分の栄光ある体と同じ形に変えてくださるのです。

  4:1 だから、わたしが愛し、慕っている兄弟たち、わたしの喜びであり、冠である愛する人たち、このように主によってしっかりと立ちなさい。

はじめに

本日は、どんなところでしょう。すると、１世紀のフィリピ教会の信者たちが、救いのすばらしい完成としての復活を目指し、信仰に固く立って、日々喜んで歩むように伝道者のパウロが力強く勧めているところです。

わたしたちが世の終わりに復活するなどということをはじめて聞く人は、びっくりするでしょう。世の終わりの復活って何と思うでしょう。だいたい世の終わりなど本当にあるの、また、復活など本当にあるのと思うかもしれません。でも、ちゃんとあるのです。この世界は、神の創造により始まりましたので、また、神の御心による終わりがちゃんとあるのです。そして、わたしたちクリスチャンの体は、今は、罪ゆえに朽ち果てるものです。でも、世の終わりのキリスト再臨のときには、わたしたちの体は、キリストにより、朽ちることのない栄光の体によみがえらされ、救いが見事に完璧に完成するのです。こうして、クリスチャンは、未来に対して、明白で、確実な希望があり、救いの完成を目指して、地上の歩みを１日１日一生懸命生きていくのです。

ここを学んで、今日のわたしたちも、世の終わりの復活という救いのすばらしい完成を最終目標とする真の人生をみんなで喜んで歩んでいきたいと思います。できるだけ平易にお話できればと思います。

１．完全を教えるユダヤ主義者の伝道者たちがいました

さて、今日のギリシャ北部にあたるマケドニアのフィリピ教会近辺に、パウロの教えとは違う間違ったことを教えるユダヤ主義者といわれる伝道者たちが出没し、救いは、もうすでに完成し、自分たちは、得るべきものをすべて得て、完全な者になったと主張し、フィリピ教会の信者たちも、自分たちの教えに従うように要求しました。そのため、フィリピ教会には、その影響を受け、パウロの教えとは違うことを考える人々が出てきました。そこで、そのままにおしておくと、教会が混乱するので、パウロは、この手紙で正しく教えました。

　すなわち、救いは、確かに、キリストを信じたときから始まのです。でも、完成は、世の終わりで、この世に生きているときに実現するものでなく、目標とすべきものであることを正しく教えました。

１２節に「わたしは、既にそれを得たというわけではなく、既に完全な者となっているわけでもありません。」とありますが、「既にそれを得た」という言い方、また、「既に完全な者となっている」という言い方は、実は、間違いを教えていた伝道者たちが、言っていたことなのです。

間違ったことを教えていた伝道者たちは、どんなことを主張していたのでしょう。すると、自分たちは、もう既に得たとか、自分たちはもう既に完全な者になっていると主張していたのです。

では、間違ったことを教えていた伝道者たちは、既に何を得ていたと言っていたのでしょう。また、彼らは、どういう意味でもう既にこの世で完全な者となっていると言っていたのかと思うのですが、そこまでは説明がないのです。

そこで、推測するに、彼らは、人として得るべきものは、キリストを信じたときに、もう既にこの世で、全部得てしまった。それゆえ、人として、もうこの世で既に完全な者になっていると考えたと思われます。また、キリストの力と恵みについて全部捕え尽くした、すなわち、キリストについて、全部知り尽くしてしまったと考えていたと思われます。

それで、彼らは、この世にいるときに、完全な者になれるのだから、あなたがたも、完全になりなさいと、フィリピ教会の人々に教えたと思われます。また、あなたがたも、キリストについて知り尽くしなさいと教えたと思われます。そして、彼らの教えに同調する人々が、フィリピ教会に出始めたと考えられます。

でも、これは大きな間違いです。いくら、キリストを信じて、救われても、得るべきものを全部得て、もうこの世で完全な者になることなど不可能です。また、この世にいる間に、キリストについて何でも知り尽くしてしまうことも不可能です。ですから、もし、そのままにしておけば、フィリピ教会の中に、自分は、もう完全な者になりましたという人々が出てきます。これでは、完全を主張する人々と、完全を否定する人々の間で、論争が起こり、フィリピ教会は混乱し、一致と平和を失って分裂してしまうかもしれません。教会にとって、一番大切なのは一致と愛における平和です。

そこで、キリストから立てられた正規の伝道者のパウロが、正しく教えるのです。では、パウロは、どのように教えたでしょう。すると、自分は、既にこの世で、全部を得てないし、また、既に完全な者にもなっていないし、キリストについて知り尽くしてもいないと語って、この世における救いの完成をきっぱり否定しました。

では、パウロにとり、救いの完成とは何なのでしょう。すると、救いの完成は、パウロが、キリストに捕えられたときからの最終目標なのです。１２節に「自分がキリスト・イエスに捕らえられているからです。」とありますが、パウロが、キリストにしっかり捕えられたのは、このときから３０数年前のあのダマスコ途上の回心です。

使徒言行録９章に記されていますように、パウロが、キリストに捕らえられたのは、ダマスコ途上の回心のときです。パウロは、最初は、キリスト教の迫害者でした。死刑である十字架につけられて死んだイエス様が、神の子にして救い主メシアであるはずがないと考え、クリスチャンたちを激しく迫害しました。ところが、イスラエルの北隣のシリアのダマスコという町のクリスチャンたちを捕えて、エルサレムに引っ張って来て、牢に入れるため、道を歩いていると、突然、天から光が差し、復活したイエス様が、パウロに語りかけので、パウロは驚きました。それで、パウロは、十字架で死んだはずのイエス様が生きていることを知り、イエス様が、本当に神の子にして救い主メシアということがわかり、回心し、信じました。そのときから、パウロは、キリストにしっかり捕えられたのです。そして、そのときから、パウロも、自分をしっかり捕えていてくださるキリストの恵みや力を捕えようとして努力して歩んで、祝福を受けたのです。

今日のわたしたちもそうです。わたしたちも、回心して、キリストを信じたときから、キリストにしっかり捕えられます。そして、自分も、自分をしっかり捕えてくださっているキリストの力と恵みを、捕えて、知ろうと努力して、歩んで祝福を受けるのです。

わたしもそうでした。わたしは、大学１年の４月から教会に行き始め、礼拝の都度、牧師の説教を通して、神、罪、救いについて聞きましたが、わかりませんでした。でも、わたしは、霊的なことがわかるように毎日お祈りしていました。それで、２ヶ月ほど経ったとき、大学の英語の授業中でしたが、わたしは、自分の心にそれまで経験したことがない喜びと平安が、わたしの心に宿っているのを感じ、これが、救いの喜びと平安だと確信できました。うれしかったです。昨日のことのように思い出します。そして、そのとき、自分は、将来、この救い喜びを伝える牧師・伝道者になるかもしれないと直感的に思いました。そして、後に実際に牧師になりました。わたしは、そのときから、キリストにしっかり捕えられたのです。そして、わたし自身もそのときから、わたしをしっかり捕えてくださっているキリストの力と恵みを捕えて知ろうと、今日まで努力して歩んで、祝福を受けました。これは、わたしだけでなく、クリスチャンは、皆同じです。クリスチャンは、一人ひとりが、キリストにしっかり捕えられているのです。そして、自分も、自分をしっかり捕えてくださっているキリストの力と恵みを捕えて、知る努力をして歩んで、祝福を受けるのです。

１世紀のパウロもそうでした。パウロは、３０数年前のダマスコ途上の回心において、キリストにしっかり捕えられ、そのときから、パウロの救いが始まりまりした。でも、パウロの救いの完成は、この世では実現せず、完成するのは、パウロの地上生涯が終わって、天国に入れられ、そして、この世の終わりが来て復活するときです。それゆえ、パウロは、天国を経て、世の終わりの復活を、自分が目指す最終目標として一生懸命歩んでいたのです。

そこで、パウロは、天国を経て、世の終わりの復活を、自分が目指す最終目標として一生懸命歩んでいる姿を、当時の陸上競技の選手にたとえて語りました。１３節後半に「なすべきことはただ一つ、後ろのものを忘れ、前のものに全身を向けつつ」、また、「賞を得るために、目標を目指してひたすら走ることです。」というのは、当時の陸上競技の選手にたとえた言い方です。

昨年北京オリンピックがありました。いろいろな競技がなされましたが、日本の陸上競技選手もがんばりました。特に、４百メートルリレーは、日本中が応援しました。そして、何と、日本でははじめての銅メダルを取りました。選手たちが、後ろのものを忘れ、前のもの、すなわち、ゴールを目指し、全力疾走する姿を見て、感動しました。あの姿です。パウロの時代の１世紀にも、そのような競技があったのです。選手は、後ろのものを忘れ、前のもの、すなわち、ゴールを目指し、一生懸命走っていきます。パウロも、当時の選手たちが、全力で走るのを見たでしょう。

そして、ゴールを目指して一生懸命走る姿を、信仰に当てはめ、パウロは、自分も、天国を経て、世の終わりの復活を自分の救いが完成する最終目標として一生懸命歩んでいることを語ったのです。「神がキリスト・イエスによって上へ召して、お与えになる賞を得るために」というのは、地上生涯の後、天国に召され、さらに、世の終わりの復活に召されていることを、この言い方で意味しています。すなわち、パウロが、キリストを通して、上に、すなわち、天国に召され、そして、世の終わりに、恵みの報償として、復活に召されることを意味しています。

これが、救いの完成についての正しい教えです。そこで、パウロは、もし、フィリピ教会のだれかが、信仰において、円熟していると自負している人がいるなら、パウロと同じように正しく考えるべきであると勧めました。

でも、もし、だれかが、救いの完成について、パウロと違う考えをもっているなら、神は、その人の考えは、間違いですよと教えて、パウロが教えた正しい教えに導いてくださることも語りました。また、クリスチャンは、みんなが共通に到達しているところに基づいて進んでいくべきで、自分勝手な間違った教えを他の人が受けれるように要求してならないことも命じました。

１５節を見ますと「わたしたちの中で完全な者はだれでも」という言い方を見て、びっくりするかもしれません。パウロは、あれほど、自分は完全な者となったとは思わないとか、自分は、得るべきものもまだ得ていないと、さんざん言ったのに、そのすぐ後で、今度は、「わたしたちの中で完全な者はだれでも」と言っていて、完全な人がいるかのように言っているが、これはいったいどういうことかと思うのですが、パウロの牧会的配慮と思われます。

実は、「わたしたちの中で完全な者はだれでも」の「完全な者」は、もともと、円熟した者という意味で、先ほど１２節に出てきた「既に完全な者となっている」の「完全な者」とは違う言葉です。１２節の「既に完全な者となっている」の「完全な者」とは、文字通り、完全無欠な者を意味します。そこで、パウロは、完全無欠なクリスチャンはいません。わたしも違いますと言いましたが、１５節のほうの「わたしたちの中で完全な者はだれでも」の「完全な者」とは、完全無欠な者という意味でなく、円熟している者という意味です。

ですから、信仰が円熟している者は、だれでも、パウロのように正しく考えるべきだという意味です。なぜこんなことを言っているかというと、パウロの牧会的配慮なのです。パウロは、完全無欠という意味でのクリスチャンはいないけれども、信仰が円熟しているという意味での完全な者というのは、クリスチャンにいくらでもいますので、円熟しているという意味での完全な者は、パウロと同じ考えをもってくださいという意味になります。こういう言い方なら、間違った教えに引っ張れそうになっていたフィリピ教会の人々も、パウロの正しい教えに戻りやすいのです。ああそうか、完全無欠なクリスチャンはいないけれども、円熟しているという意味での完全はあるのか。それなら、わたしも、パウロの正しい教えに従い、円熟しているという意味での完全な者になろうとするのです。これで、間違った教えから引き戻されるでしょう。

今日のわたしたちもそうです。この世で、わたしたちが、完全無欠になることなどありません。でも、信仰が円熟していくことは、必要です。信仰の年数が増すとともに、信仰が円熟し、聖書に基づくよい判断とよい行動をして、よい意味での影響を周囲に与え、他の人々へのよい証が力強くできる円熟した豊かなクリスチャンになるようにしましょう。

２．自分の腹を神とする生き方をしないようにしましょう

こうして、パウロは、救いの完成を最終目標とし、地上の生涯を大切にして一生懸命歩んでいました。そこで、パウロは、フィリピ教会の人々も、パウロやテモテなどの同労者たちに習って歩んでほしいと願いました。また、パウロやテモテに習って歩んでいる健全な人々が、フィリピ教会にもいたので、それらの人々の健全な生き方にも習って歩んでほしいと願いました。

すなわち、救いの完成を最終目標として、地上の生涯を大切にして一生懸命歩んでいる人々が実際にいるので、その生き方をお手本とするように強く勧めました。

そこで、パウロは、自分をお手本にしてもよいし、また、自分だけでなく、パウロと一緒にフィリピ伝道したゆえに、フィリピ教会の人々が知っている伝道者テモテをお手本にしてよいし、また、さらに、そのパウロとテモテから指導を受けて、パウロやテモテと同じように、よい歩みをしているフィリピ教会のある人々をお手本にしてもよいと言いました。

とにかく、パウロの願いは、フィリピ教会の全員が、キリストが十字架で苦しみ死んでくださることによって開いてくださった尊い救いから、ひとりも外れることなく歩んで、世の終わりの復活の祝福にあずかって、どの人の救いも栄光のうちに完成することでした。

そこで、パウロは、フィリピ教会近辺に出没して、フィリピ教会の信者たちに、間違ったことを教えて、悪い影響を与えているユダヤ主義者といわれる伝道者たちを避けるように、強く勧めました。

「キリストの十字架に敵対して歩んでいる者が多いのです。」とありますが、「キリストの十字架に敵対して歩んでいる者」とは、具体的にだれのことでしょう。すると、３章２節に出ていたよこしまな伝道者たちのことです。３章２節をみますと「あの犬どもに注意しなさい。よこしまな働き手たちに気をつけなさい。切り傷にすぎない割礼を持つ者たちを警戒しなさい」といわれていますが、これらの人々のことです。すなわち、１世紀において、フィリピ教会の近辺に出没して、間違った教えを教えて、フィリピ教会の信者たちに悪い影響を与えていた伝道者たちのことです。

　彼らは、犬どもとさげすまれる人々でした。また、彼らは、よこしま、すなわち、強欲な邪悪な人々でした。金品を求めたのかもしれません。また、彼らは、旧約時代のイスラエルの民だけに効力を持ち、キリストの出現とともに廃止された割礼をいたずらに誇り、人々にも割礼を要求しました。また、さきほどお話しましたように、この世で完全無欠になると教えていました。

こうして、彼らは、本来のキリスト教信仰から遠く離れ、キリストの十字架の死の意義をまったく尊びませんでした。これらの１世紀のよこしまな伝道者たちは、ユダヤ主義者といわれます。

　そして、このユダヤ主義者といわれるよこしまな伝道者たちの教えが、以前からフィリピ教会に悪い影響を与えていました。そこで、パウロは、以前から何度も、フィリピ教会の人々に、注意するように話してきましたが、ここで、もう一度注意を呼びかけました。

これらのユダヤ主義者といわれるよこしまな伝道者たちは、残念なことですが、彼らの行き着くところは、神の裁きにより、滅びであり、彼らが大事にするのは、神でなく、胃袋を満たすことであり、彼らの誇りは、廃止された割礼をいたずらに誇ることでしたが、割礼を誇ることは、もはや意味がなく、恥ずべきものでした。こうして、彼らのしていることの行き着くところは、神による滅びであることを思うと、パウロは、彼らを憐れに思い、涙を禁じることができませんでした。

「彼らは腹を神とし、恥ずべきものを誇りとし、この世のことしか考えていません。」とありますが、「腹を神とする」というのは、神よりも、自分の胃袋を満たすことを大事にしていたことを意味します。また、「恥ずべきものを誇りとし」とは、廃止された割礼をむなしく誇っていたことを意味すると思われます。また、「この世のことしか考えていません。」というのは、地上のことばかりしか考えず、天国や世の終わりの復活という天上的な祝福を尊ばなかったことを意味すると思われます。こうして、彼らのしていることの行き着くところが、神による滅びであることを思うと、パウロは、彼らを憐れに思い、涙を禁じ得ませんでした。

こうして、パウロは、ダマスコ途上で回心して救われたときから、首尾一貫して救いの完成としての世の終わりの復活にあずかることを自分の最終目標として、地上の生涯を一生懸命に歩んだのです。そして、この生き方こそ、人の本当の生き方なのです。

人の本当の生き方は、復活を最終目標として生きる生き方なのです。初めて聞く人はびっくりするかもしれません。でも、復活を目指していない生き方は、人の本当の生き方ではないのです。日本の多くの人は、復活など知りませんので、復活を目指す生き方をしていません。でも、それは、本当の生き方ではないのです。それゆえ、人生のどこかで、キリストを信仰し、恵みにより罪赦されて救われ、救いの完成としてのすばらしい復活を最終目標とする真の生き方に方向転換しなければなりません。教会とクリスチャンは、神の言葉である権威ある聖書に従い、復活を目指す生き方こそ、人の本当の生き方であることを、ためらわず堂々と天下に宣べ伝えていきたいと思います。

３.信仰に固く立ち、復活を最終目標とする真の人生に歩みましょう

　さて、１世紀のフィリピ教会近辺に出没して間違ったことを教えていたユダヤ主義者といわれるよこしまな伝道者たちは、いろいろなことを主張しました。でも、結局は、神よりも、自分たちの胃袋を大事にし、この世のことしか考えていませんで、神とキリストがおられる天に少しも心が向いていませんでした。

　しかし、パウロをはじめとする正しい教えに立つクリスチャンたちは、自分たちの霊的本国である天に、ちゃんと心が向いていて、その天から、わたしたちの｢卑しい体｣、すなわち、罪ゆえに朽ち果てるわたしたちの霊的に弱い体を、御自分と同じ朽ちることのない栄光の強い体によみがえらせ、救いの完成に至らせてくださるキリストが、再び来るのを待ち望みながら、１日１日日々地上で一生懸命生きていくのです。

　「わたしたちの本国は天にあります。」とあります。本国とは何でしょう。すると、自分の心がいつもそこに向いているところです。たとえば、わたしたちが、外国に長期滞在していても、わたしたちの本国、祖国、母国である日本に絶えず心が向いていて、日本を忘れることなど決してあり得ないでしょう。そのように、本国というのは、自分の心がいつもそこに向くところです。

　そこで、クリスチャンは、神とキリストがいます天にいつも心が向いているので、天は、クリスチャンにとり、霊的な意味で本国といえますが、クリスチャンがいつも心を向けている天から、キリストが、この世界にもう一度来てくださるのです。

　何をしに来てくださるのでしょう。すると、わたしたちの｢卑しい体｣、すなわち、罪ゆえに朽ち果てるわたしたちの霊的に弱い体を、キリストが、御自分と同じ朽ちることのない栄光の強い体によみがえらせて、救いのすばらしい完成に至らせてくださるために来てくださるのです。キリストは、天にいまして、もう既に万物を支配していますが、その万物支配の偉大な無尽蔵の豊かな力でわたしたちの体を、御自分と同じ朽ちることのない栄光の体によみがえらせることができるのです。キリストは、わたしたちの体を永遠に生きられる栄光の体に変えてくださるのです。

　ですから、キリストの力はすごいのです。わたしたちは、今、この世で、キリストにより救われ、いろいろな祝福をキリストから豊かに受けて生きています。救いの喜び、平安、他の人へ愛、励まし、慰め、忍耐、知恵、勇気、決断力、希望、祈りが聞かれることなどの祝福を、キリストから豊かに与えられてニコニコして歩んでいますが、キリストがわたしたちに与えてくださる祝福はそれで全部ではありません。それは、まだ一部です。　キリストは、さらに、わたしたちを天国にやさしく迎え入れてくれますし、世の終わりには、わたしたちの体を２度と死ぬことのない御自分と同じ永遠に生きられる栄光の体によみがえらせて、わたしたちが、キリストと共に、言葉で言い表せない喜びに満ちあふれて、永遠に生きられるようにしてくださるのです。そして、このときこそ、今始まっているわたしたちの救いが完成するときなのです。ですから、キリストの力は無限、永遠です。キリストは、わたしたちが、キリストと共に、永遠に喜んで生きられるようにしてくださるのです。わたしたちは、これを最終目標として、地上で一生懸命与えられた人生を大切にして１日１日生きていくのです。そして、これこそ、人の本当の唯一の生き方です。楽しみです。わたしたちクリスチャンは、復活を最終目標として喜んで生きていきます。

　そこで、パウロは、フィリピ教会のどの人も、ユダヤ主義者の影響を受けて脱落することなく、みんなが、全員がこぞってパウロが教えた本来の信仰に固く立って、歩むように親愛の情をもって呼びかけました。

「だから、わたしが愛し、慕っている兄弟たち」と呼びかけていますが、パウロの親愛の情が強く感じられます。「愛する兄弟たち」では、言葉が足らないとして、「慕っている兄弟たち」と「慕っている」まで追加しました、「慕う」というのは、会いたくて、会いたくてたまらないという強い親愛の感情がとても強く感じられます。

　こうして、パウロは、フィリピ教会の信者たちが、だれひとりとして、ユダヤ主義者の影響を受けて脱落することがなく、世の終わりのすばらしい復活にあずかれるように望んでいたのです。フィリピ教会の信者たちが、世の終わりのすばらしい復活にあずかれば、それは、パウロの伝道の実りとなるので、パウロにとっては大きな喜びとなり、パウロの伝道の勝利の冠となります。

　伝道者にとり、自分の説教を聞いて救われた人々、また、自分の説教を聞いて信仰が養われた人々が、信仰の生涯をまっとうして、天国を経て、復活の祝福にあずかれることほど大きな喜びはないでしょう。わたしたちは、お互いに励まし合って、信仰の生涯を歩み、みんなで、全員が、だれひとり欠けることなく、キリストと同じ栄光の体によみがえらされる者になりたいと思います。

結び

以上のようにして、本日のところを見ます。今日のわたしたちも、信仰に固く立ち、救いの完成である復活の祝福を最終目標とする真の人生を力強く歩んでいきましょう。聖霊なる神が、わたしたち一人ひとりの信仰を整えてくださるように心から祈りましょう。