聖　書

2:1 わたしが、あなたがたとラオディキアにいる人々のために、また、わたしとまだ直接顔を合わせたことのないすべての人のために、どれほど労苦して闘っているか、分かってほしい。2 それは、この人々が心を励まされ、愛によって結び合わされ、理解力を豊かに与えられ、神の秘められた計画であるキリストを悟るようになるためです。3 知恵と知識の宝はすべて、キリストの内に隠れています。4 わたしがこう言うのは、あなたがたが巧みな議論にだまされないようにするためです。5 わたしは体では離れていても、霊ではあなたがたと共にいて、あなたがたの正しい秩序と、キリストに対する固い信仰とを見て喜んでいます。

はじめに

　今日のところは、わたしたち罪人の救いと祝福のために必要な知恵と知識は、全部キリストに隠されているので、人は、自らの救いと祝福のために、いよいよキリストに、それらのものを熱心に求めていくよう、パウロが力強く勧めているところです。今日のわたしたちも、自分の救いと祝福とのため、他のどこかではなくキリストに、救いと祝福のための知恵と知識を熱心に求めていきたいと思います。

１．パウロは自分の労苦と苦しみを知って欲しいと願いました

　パウロは、異邦人伝道のために、自分がどれほど労苦し、闘っているかを、同じ異邦人教会のコロサイ教会の信徒たちに知って欲しいと願いました。パウロは、異邦人伝道のために、どれほど労苦し、苦しんでいるかを、異邦人教会のコロサイ教会の信徒たちが知って、自分たちは、旧約の歴史を担うことのなかった異邦人でありながらも、キリストによる救いにあずかっていることは、ほんとうに素晴らしいことだと心から感謝して、コロサイ教会の周辺に出現している異端など目もくれずに、ますますキリストに救いの知識を求めていくようにとても強く望んだのです。

１節に、「あなたがたとラオディキアにいる人々のために、また、わたしとまだ直接顔を合わせたことのないすべての人のために、どれほど労苦し、苦労して闘っているか」とあります。この表現で、異邦人伝道のためのパウロの労苦と闘いを表しています。パウロは、異邦人伝道のため本当に労苦し、苦しみ、闘いました。パウロの労苦と苦しみと闘いを数えあげればきりがないでしょう。旧約の歴史を担うことがなかったけれども、しかし神の恵みにより、それまで長い間、霊的暗黒の中に置かれていた異邦人も、キリストを信じただけで恵みによって、すべての罪を赦されて救われ、祝福と永遠の生命を与えられ、喜んで生きられるようになりましたが、パウロは、これこそ神の奥義、これこそ、神の秘められた計画、これこそ神による深い霊的大真理として、全力を挙げ、キリストによる救いを異邦人に伝えました。そのための労苦と苦しみと闘いは計り知れないものでした。

　現に、このコロサイ教会への手紙を書いたときも、パウロはローマにいましたけれども、ローマ皇帝による裁判を受けている身で、判決を緊張して待っていました。そのことは、コロサイの信徒への手紙の最後の部分の４章１８節で「わたしが捕らわれの身であることを、心に留めてください」と記しているのを見ればわかります。捕らわれの身とは、パウロは、ユダヤ人たちの陰謀によって、法を破ったと中傷されましたので、無実であることを証明するため、ローマ皇帝による裁判を申し出、今未決囚という立場で判決を待っていたのです。そのときは、牢屋の中には入れられてはいませんでしたが、番兵のついた家の中に軟禁状態にされていつも見張られており、自由がありませんでした。

ですから、このコロサイの信徒への手紙を書いたときであっても、パウロは、無実を勝ち取るための闘いをしていたのです。パウロには、労苦と苦しみと闘いと心配がなかった日は１日たりともなかったでしょう。毎日、連日連夜、労苦と苦しみと闘いと心配の連続であったでしょう。キリスト教伝道にはいつでも、労苦と苦しみと闘いと心配が伴うでしょう。

１節の「あなたがた」というのは、もちろん、この手紙が直接宛てられた異邦人のコロサイ教会の異邦人信徒たちを表します。では、「ラオディキアにいる人々」とは誰のことでしょう。ラオディキアは、コロサイの町から西の方向へ１６キロほどのところにあった町です。歩いて４時間か５時間ぐらいで行けたでしょう。どこへでも歩いていく当時としては近い町でした。このラオディキアの町にも教会があり、信徒たちがいました。もちろん、旧約の歴史を持つことのなかった異邦人教会の信徒たちでした。

　さらに、「わたしとまだ直接顔を合わせたことのないすべての人」とあります。これで、コロサイ教会の異邦人信徒とラオディキア教会の異邦人信徒以外の異邦人信徒たちを表していると考えられます。厳密に言えば、パウロは、コロサイ教会にも、ラオディキア教会にも行ったことがありませんでした。ですから、コロサイ教会の信徒たち、また、ラオディキア教会の信徒たちとも直接顔を合わせたことがありませんでした。しかし、ローマにいるパウロを訪ねてきたコロサイ教会の伝道者エパフラスから、コロサイ教会とラオディキア教会のことを聞いたので、より親しい感情を持ったのでしょう。そこで、さらに、コロサイ教会の異邦人信徒とラオ

ディキア教会の異邦人信徒以外の、広い意味で、まだ１度も直接会ったことのない当時の異邦人教会の信徒すべてのことを、「わたしとまだ直接顔を合わせたことのないすべての人」という表現で表したと考えられます。いずれにしましても、パウロは、この手紙が宛てられたコロサイ教会の異邦人たち、また、コロサイ教会と親しい交流をしていたラオディキア教会の異邦人たち、そしてさらに、その他のすべての異邦人のため、すなわち、異邦人全体のため、どれほど労苦して闘っていたか、計り知れないものがありますが、パウロは、異邦人伝道のための自分がどれほど労苦し闘っているかをぜひぜひ、異邦人信徒が知って、異邦人信徒が、自分たち異邦人は、旧約の歴史を担うことがなかったにもかかわらず、今、キリストの救いにあずかっていることを素晴らしいこととして心から感謝し、ますますキリストに救いの知識を求めるようにとても強く勧めたのです。

１節に、「どれほど労苦して闘っているか、分かってほしい」とあります。「労苦して闘う」という言葉は、もともとは、ギリシャの格闘技を表す言葉でした。レスリングとかボクシングとか剣を使って行う競技を意味したと思われますが、パウロは、この言葉を、異邦人伝道における自分の労苦と闘いを表す言葉として使ったのです。今日でも、レスリングやボクシングは激しいスポーツです。へとへとくたくたになるまで闘うでしょう。パウロは、伝道は格闘技、闘いのようだと実感したのでしょう。

いつの時代でもキリスト教の伝道は、労苦と闘いを要求するでしょう。日本においてもそうです。明治以来１３０年ほどのキリスト教の伝道の歴史がありますが、いまだに伝道は労苦と闘いと心配を要求します。わたしたちの教派においても、伝道の難しさが中会や大会で語られています。特に地方伝道の難しさが語られています。しかし、難しい日本伝道においても、聖霊なる神による祝福があります。昨年、２００３年度の教派の教勢報告を見ますと教派全体の成人受洗者が８４人です。その前の年と比べるとどうだったでしょう。プラスですね。一昨年比プラス１６人と出ていました。わたしは、ああよかったと思いました。昨年１年間で、改革派を通して、８４人の人が救われたのだと思い、とてもうれしかったです。わたしも伝道者のひとりとして頑張らなければと思います。

２．パウロは救いのための知恵と知識をキリストに求めるように勧めました

パウロは、コロサイ教会をはじめとする異邦人信徒たちが、異端を退け、救いと祝福のための素晴らしい霊的知恵と知識を積極的にキリストにどんどん求めるようにとても強く勧めました。異邦人信徒たちは、パウロが異邦人の救いのためにどれほど労苦し闘っているかを知って、心を励まされ、主にある兄弟姉妹の愛によってひとつに結び合い、異端などに負けずに、ますますキリストによる救いの知識を求めて行こうと、霊的に燃えることを、パウロはとても強く望んだのです。

　２節に「それは、この人々が心を励まされ、愛によって結び合わされ、理解力を豊かに与えられ、神の秘められた計画であるキリストを悟るようになるためです。」とあります。パウロが、異邦人の救いのためにどれほど労苦し闘っているかを、「この人々」、すなわち、異邦人信徒たちが知って、異端を退けることを、パウロは願いました。「心を励まされ」のもともとの言葉は、傍らに招く、そばに招くという意味です。気落ちしている人を慰めたり、元気づけたり、勇気づけたり、力づけたりする場合には、その人を、わたしのところに来ませんかと自分の傍らに優しく呼んで、一緒に頑張りましょうとか、大丈夫ですよとか、元気を出しましょうよというふうにするところから、今度は、慰める、元気づける、勇気づける、力づけるという意味になりました。

ですから、コロサイ教会の異邦人信徒たちは、パウロがいつも異邦人伝道のために労苦し闘っていることを知れば、彼らも、心を励まされ、勇気づけられ、力づけられて、異端を退けることができます。「愛によって結び合わされ」というのは、主にある兄弟姉妹の愛によって、コロサイ教会の異邦人信徒たちがひとつに結び合わされ、まとまることを意味します。バラバラにならないことを意味します。コロサイ教会の異邦人信徒たちが、お互いに、てんでんバラバラであれば、異端につけこまれるスキを与えるでしょう。しかし、主にある兄弟姉妹の愛によって、ひとつに結び付いて、まとまっているなら、異端がつけ入るスキはないでしょう。

　「理解力を豊かに与えられ、神の秘められた計画であるキリストを悟るようになるためです。」というのは、コロサイ教会の異邦人信徒たちが、霊的な理解力を与えられ、神の奥義、神の深い真理である救い主キリストを人格的交わりの中で十分に知って充足することを意味しています。「理解力」というのは、霊的な真理を理解する力のことです。聖霊の働きによって与えられるものです。

　「秘められた計画」というのは、すでに、１章２６節と２７節に２回ほど出ていまして、以前にお話しました。もともとの言葉は、ミュステーリオンという一語で、今日のミステリーという言葉の語源です。似ていますね。意味は、奥義、神秘、謎、不思議なこと、そして不思議な計画、すなわち、秘められた計画という意味です。これまでの口語訳聖書では「奥義」と訳されていましたが、今回の新共同訳聖書は「秘められた計画」と訳しました。もちろんどちらでもよいのです。

　「神の秘められた計画」とは具体的に何でしょう。それは、キリストによる、驚くべき素晴らしい救いのことです。キリストを信じただけで恵みによって罪赦されて、本当に救われ、豊かな祝福と永遠の生命を与えられ、人が喜んで生きていく者に変えられるというキリストによる救いの深遠な真理は、神の御心により、旧約聖書をもっていたユダヤ人以外の世界の人々には、長い間ずーっと隠されてきました。すなわち、秘められてきました。しかし、聖霊降臨の後、初代教会の伝道によって、異邦人たちに伝えられ、世界の人々に初めて明白にされたのです。そのキリストのうちには、人が自分の救いのために必要とする知恵と知識が宝物のようにぎっしり詰まっているのです。ですから、人は、自分の救いのために、他のどこかではなく、キリストに、救いのための知恵と知識をどんどん積極的に求めることが大切です。

　３節に「知恵と知識の宝はすべて、キリストの内に隠れています」とあり、「知恵と知識」といわれています。ただ漠然と一般的な知恵と知識という意味ではなく、救いのための知恵と知識を表します。「知恵」というのは、救いのための賢い知恵のことと考えられます。「知識」とは、救いのための正しい知識と考えられます。

では、わたしたちが、キリストとの交わりの内に求める知識はどんな知識でしょう。それは、救いのための賢い知恵であり、救いのための正しい知識です。当時の地中海世界に流行り、また今、コロサイ教会周辺に出現した異端は、グノーシスの異端と呼ばれましたが、この異端は、その名称グノーシスが、もともと知識を意味していますように、自分たちの宗教教団だけが、救いのため正しい知識を持っているので、自分たちの宗教教団に加わるようにと、人々に呼びかけていました。そして、外部の人々には見せない秘密の宗教儀式を行っていました。それに魅力を感じて入る人々が増えていました。彼らは、自分たちの宗教教団だけが、救いのための知恵と知識を持っていると豪語していたのです。

　しかし、パウロは、それは全くの誤りであることを力強く教えました。救いのための知恵と知識は、グノーシスという秘密教団にあるのではなく、キリストのうちに宝物のようにギッシリ詰まって隠れているので、人はだれでも、キリストのうちから、自分の救いのための知恵と知識という宝をいくらでも積極的にどんどん掘り出すように強く勧めたのです。

　わたしは、思うのですが、「知恵と知識の宝はすべて、キリストの内に隠れています」というのは、パウロの実感だったでしょうね。パウロは、キリストの内に隠れていた、人の救い、人類の救いのための知恵と知識の無尽蔵の宝を、世界の中で、最も豊かに掘り出したひとりでしょうね。その素晴らしさに、圧倒されていたでしょうね。他の人も、ぜいぜひ、この素晴らしさを味わってほしいといつも強く願っていたでしょう。キリストの無尽蔵の豊かさを知れば異端など問題にしません。キリストのうちにある、知恵と知識の豊かさ、素晴らしさを知らない人が、異端に引かれるわけです。キリストの素晴らしさを知った人は異端など行きません。キリストの素晴らしさを知ったわたしたちは異端などに行きたくないでしょう。ますますキリストの素晴らしさ、豊かさ、深さ、スケールの大きさを、知りたいでしょう。

　救いのための賢い知恵と正しい知識の宝は、他のどこかでなく、本当に、キリストのうちに隠れています、しかも無尽蔵です。いくら掘っても尽きません。わたしは４０年以上掘り続けていますが、全然尽きません。尽きないどころか、キリストの素晴らしさは、ますます、豊かに力強く輝いてきたというのが、実感です。キリストは、無尽蔵の永遠の豊かさです。礼拝においても同じです。礼拝においても、一般的な知恵と知識でなく、キリストの内に隠れているわたしたちの救いのための知恵と知識が語られるのです。そして、わたしたちに罪の赦しと豊かな祝福と永遠の生命を、恵みとして本当にもたらすのです。キリストの内に隠れているわたしたちの救いのための知恵と知識は、いくら掘っても尽きない素晴らしい宝物です。

３．コロサイ教会は組織と信仰を整え異端を退けられるよい教会でした

　コロサイ教会の信徒たちは、異端を退けることができるよい信仰の体制にありました。パウロは、コロサイ教会の異邦人信徒たちが、心励まされて勇気を与えられ、愛によってひとつに結び合わされ、霊的理解力を持ってキリストにある救いの知恵と知識を積極的に求めるように、とても力強く勧めましたが、それは何のためかと言えば、コロサイ教会周辺に出現している異端の教師たちの黒を白と言い含めてしまうような巧妙な議論にだまされて、異端に引き込まれ、大切な救いが破壊されないためです。そのため、パウロは、千数百キロ離れたローマにいて、体は離れていても、霊、すなわち、心においては、コロサイ教会の異邦人信徒たちと共にいるといえるほど、親近感を持ち、コロサイ教会のことを気遣って祈っていましたが、コロサイ教会から来た伝道者エパフラスを通して、コロサイ教会の異邦人信徒たちは、異端に対して、一致団結して異端の教えを教会に入れないで、退けていることを聞いて、とても喜んでいました。４節に「あなたがたが巧みな議論にだまされないようにするためです」とあります。「巧みな議論」というのは、当地の裁判用語です。裁判において、本来有罪であるのに、弁護人が、巧みな弁論によって無罪にしてしまうもっともらしい議論を意味しました。そこから来た言い方です。いつの時代でも、異端の議論は巧妙でしょう。

　５節に「正しい秩序」とあります。「正しい秩序」というのは、もともと軍事用語で、陣容を整えた軍隊を表します。陣容を整え、隊列が整っている軍隊のところには、敵は進入できません。また、「キリストに対する固い信仰」とあります。「固い」という言葉も、もともと軍事用語で、守りが固いしっかりとした砦を表します。砦の守りが、固くしっかりしていれば、敵は侵入できません。こうして、パウロは、伝道者エパフラスを通して、コロサイ教会は、陣容、隊列を整えた軍隊のように、また、守りの固いしっかりとした砦のようで、異端がコロサイ教会に侵入するのを許していないことを聞いていたので、とても喜びました。「見て喜んでいます」とあります。目で見ているかのように知って喜んでいることを表します。そこで、パウロは、さらに、異端に対するこれから闘いの助言を、この手紙を通して与え、コロサイ教会の異邦人信者たちが、異端に対して完全勝利をするように指導するのです。　

　こうして、今日も、キリスト教の異端がありますけれども、わたしたちは、本来の正統的な信仰を持ち、救いと祝福と永遠の生命を自分のものにし、よい人生を堂々と歩みましょう。

結び

　以上のようにして、本日のコロサイの信徒への手紙を見ます。今日のわたしたちも、キリスト教の異端を避け、本来の正統的なよいキリスト教信仰を持ち、キリストの内に隠れている、わたしたちの救いのための知恵と知識をますます熱心に求めて、霊的に充足し、よい人生を堂々と歩んでいきましょう。聖霊が、霊的な理解力をわたしたちに豊かに与えてくださるように祈りましょう。