7:6 世から選び出してわたしに与えてくださった人々に、わたしは御名を現しました。彼らはあなたのものでしたが、あなたはわたしに与えてくださいました。彼らは、御言葉を守りました。7 わたしに与えてくださったものはみな、あなたからのものであることを、今、彼らは知っています。8 なぜなら、わたしはあなたから受けた言葉を彼らに伝え、彼らはそれを受け入れて、わたしがみもとから出て来たことを本当に知り、あなたがわたしをお遣わしになったことを信じたからです。9 彼らのためにお願いします。世のためではなく、わたしに与えてくださった人々のためにお願いします。彼らはあなたのものだからです。10 わたしのものはすべてあなたのもの、あなたのものはわたしのものです。わたしは彼らによって栄光を受けました。11 わたしは、もはや世にはいません。彼らは世に残りますが、わたしはみもとに参ります。聖なる父よ、わたしに与えてくださった御名によって彼らを守ってください。わたしたちのように、彼らも一つとなるためです。12 わたしは彼らと一緒にいる間、あなたが与えてくださった御名によって彼らを守りました。わたしが保護したので、滅びの子のほかは、だれも滅びませんでした。聖書が実現するためです。

はじめに

本日のお話は、キリストのお祈りについてのお話です。キリストは、十字架にかかる前日の夕方、お祈りをされました。すばらしいお祈りで、御自分の弟子たちの祝福のため入念なとりなしの祈りをするのです。今日はその２回目のお話で、キリストが、御自分の大切な弟子たちのために、実に真剣にお祈りしたというお話です。キリストは、十字架の死と復活を経て、天にお帰りになります。では、お帰りになった後、キリストによるすばらしい救いの福音を誰が伝えるのでしょう。すると、弟子たちです。しかも、激しい敵意と圧迫と迫害の中で、伝えていくのです。それゆえ、弟子たちが、崩れてしまえば、福音は伝わりません。そこで、キリストは、御自分の大切な弟子たちのこれからの歩みを思って、心から、実に真剣にとりなしのお祈りしてくださいました。

　キリストは、今日も、天において、今の時代のかけがえのない大切な弟子であるわたしたちのため、とりなしていてくださいます。キリストのとりなしの祈りに支えられ、わたしたちもよい歩みをしていきたいと思います。

１．弟子たちはユダヤ人たちと違いキリストを神の子と信じました

　弟子たちは、ユダヤ人たちと違って、キリストを神から遣わされた神の子にして救い主と固く信じました。弟子たちは、父なる神が、この世から選び出し、キリストに与えた人々で、キリストは、約３年半にわたり、彼らに父なる神のいろいろな豊かな御性質を、説教と奇跡において明白に現して教え、弟子たちもキリストから聞いた御言葉を守り、キリストが父なる神から遣わされた神の子メシアであることを固く信じていました。

ですから、弟子たちは、１世紀の罪の世であったイスラエル社会から、神により選び出された人たちであったのです。６節から８節がそうです。６節を見ますと、「世から選び出してわたしに与えてくださった人々に、わたしは御名を現しました。」とあります。「世から選び出してわたしに与えてくださった人々」とは、父なる神が、罪のこの世から選び出し、救いのため、キリストにゆだねた人々という意味で、具体的には、１世紀のキリストの弟子たちを表します。

　弟子たちは、キリストから、召されたのですが、単にキリストだけから召されたというのでなく、万物の造り主なる神が、弟子たちに救いを与えるために、罪のこの世から選び出し、キリストにゆだねた人たちだったのです。たとえば、ペﾄロとアンデレ、ヤコブとヨハネは、イスラエル北部のガリラヤ湖の漁師で、あるときキリストに召され、弟子となり、キリストに従うようになりました。それは、万物の造り主なる神が、ペﾄロとアンデレ、ヤコブとヨハネに、すばらしい救いを与えるため、罪のこの世から彼らを選び出し、彼らをキリストにゆだねたという奥の深い豊かな霊的祝福の意味を持つのです。

　では、罪のこの世から選び出してくださった弟子たちのすばらしい救いのため、キリストはどんなことをしてくださったでしょう。キリストは、ペトロをはじめとする弟子たちと共にいた３年半において、御言葉の説教や奇跡を通し、目に見えない父なる神の豊かないろいろな御性質を、まるで目で見るかのように明白に明瞭に現し、十分に示し、教えてくださったのです。

　「わたしは御名を現しました。」とあります。「御名」とは、神の名前のことです。神の豊かないろいろな御性質を表します。たとえば、神は、ヘブル語で、神、エロヒームという名前ですが、神、エロヒームという名前は、万物を無から創造した偉大な全能の神を表します。ですから、神、エロヒームという名前は、神の全能性、偉大さ、無限の力を表します。また、神は、ヘブル語で、ヤハウェとかエホバとかヤーウェと発音されますが、この場合の神の名前は、永遠から永遠にいます神、永遠に変わらない神、契約に真実な神を表します。ですから、ヤハウェとかエホバとかヤーウェという神の名前は、神の永遠性、永遠に変わらないこと、すなわち、不変性、さらに、真実さを表します。

　このようにしまして、神の名前は、神のいろいろな豊かな性質を表すものです。キリストは、弟子たちと共にいた３年半において、説教と奇跡を通し、神のいろいろな豊かな性質を弟子たちに、明白に、十分現し、示し、教えてくださいました。それゆえ、弟子たちは、キリストとキリストを遣わされた神を信じて、救われたのです。また、「あなたの御名を現しました。」の「現す」という言葉は、もともと、明白に現す、明白に示す、明白に教える、目に見えるように明瞭に現す、鮮明に現す、鮮やかに現すという意味です。すなわち、ぼんやり、ぼーっと不明瞭に現すというのではなく、明白に、明瞭に、はっきりと、堂々と示すことです。本当にそうです。たとえば、山上の垂訓において、あるいは、５千人給食において、キリストは、父なる神が愛といつくしみに富むこと、父なる神が御自分を信頼することを求めていること、父なる神には無限の大きな力があることなどを、弟子たちに、明白に現し、教え、示してくださいました。それゆえ、弟子たちは、キリストとキリストを遣わされた父なる神を信じ、恵みにより救われたのです。

　こうして、弟子たちは、永遠の御計画において、父なる神によって救いに定められていた者たちでしたけれども、あるときに、神の子にして救い主のキリストにゆだねられ、キリストにより、すばらしい救いを受け、キリストを通して教えられた、父なる神の言葉を守って、この３年半を歩んできたのです。６節後半に、「彼らはあなたのものでしたが、あなたはわたしに与えてくださいました。」とあります。「あなたのもの」というのは、弟子たちが、父なる神のものであったことを表しています。どういう意味かと言えば、キリストの弟子たちは、父なる神の永遠の御計画によってすばらしい救いを受けるように永遠から定められていた者たちであることを、この表現で表しています。

　時が来たときに、父なる神は、永遠の御計画において、救われるようにあらかじめ定めていた弟子たちを、キリストにゆだね、３年半にわたってキリストから父なる神のことを明白にはっきり教えられ、示されて、救われることになったのです。このことは、今日のわたしたちにも当てあまります。わたしたちが、救われたのは、父なる神が、わたしたちを永遠の御計画において、救われるようにあらかじめ定めておいてくださったので、わたしたちがあるとき、教会に来て、キリストが教えてくださった父なる神のことを知り、信じて、救われたのです。

実は、わたしたちも、もともと、永遠から神のものとされていたのです。これは、計り知れない大きな恵みです。わたしたちは、もちろん、自分が、あるとき、自分の意志で教会に来て、キリストが教えてくださった父なる神のことを知って、救われるのですが、これは、わたしたちが、神の永遠の御計画において、救われるようにあらかじめ定められていたからです。本当にありがたいことです。キリスト教信仰の救いというものは、神の永遠からのご計画の実現で、奥が深く、豊かで、スケールが驚くほど大きな祝福で、心から賛美できる救いです。

　７節に、「わたしに与えてくださったものはみな、あなたからのものであることを、今、彼らは知っています。」とあります。「わたしに与えてくださったものはみな」というのは、この表現で、１世紀のキリストの弟子たちを表します。「あなたからのもの」というのは、父なる神が永遠の御計画において、あらかじめ救われるように定めて置かれた者たちという意味で、具体的には、もちろん、弟子たちのことを表しています。キリストの弟子は、皆、父なる神が永遠の御計画において、あらかじめ救われるように定めておかれた者たちなのです。とても奥が深い霊的真理ですね。

　ただし、このように言いますと、運命論的、宿命論的に誤解されるかもしれませんので、注意することが必要です。確かに、弟子たちは、父なる神の永遠の御計画において救われるように定められ、そして、あるときキリストにゆだねられ、実際に救われました。けれども、だからといって、弟子たちは、何もしなかったわけではありません。弟子たちは、意志のないロボットのようなものではありません。弟子たちに、すばらしい救いが生じたのは、キリストが父なる神の御心を現す御言葉を弟子たちに伝え、弟子たちが自分自身の意志で、キリストから聞いた神の御言葉を喜んで受け入れ、神の御言葉を明白に伝えてくれたキリストは、天の神から遣わされた神の子にしてメシアであることを知り、確信し、自分で積極的に信じたからです。

　８節で、「なぜなら、わたしはあなたから受けた言葉を彼らに伝え、彼らはそれを受け入れて、わたしがみもとから出て来たことを本当に知り、あなたがわたしをお遣わしになったことを信じたからです。」と言われている通りです。「あなたから受けた言葉を彼らに伝え」というのは、キリストが、３年半、弟子たちと共にいて、父なる神の御心を現す御言葉を説教を通して語り伝えたことを意味します。「彼らはそれを受け入れて」というのは、弟子たちは、キリストから聞いた言葉を、単なる人間の言葉と思わず、神の御言葉と信仰を持って受け入れたことを表します。

「わたしがみもとから出て来たことを本当に知り」というのは、弟子たちは、キリストを、マリアから生まれた単なる人間と見るのではなく、天の父なる神のみもとから来られた偉大な神の子であることを信仰によって受け入れたことを表します。また、「あなたがわたしをお遣わしになったことを信じたからです。」というのは、弟子たちは、キリストを天の父なる神から遣わされた救い主メシアと信じたことを表しています。

　すばらしいですね。弟子たちは、これを聞いたら、心、魂、霊魂は喜びに満ちあふれ、敵意と圧迫と迫害を乗り越え、福音を伝えていけます。自分たちは、キリストを、天から遣わされた神の子にして救い主メシアと信じて救われたけれども、そのことは、実は、永遠から父なる神に御計画されていたことであって、自分たちの救いは、永遠からの神の御計画に根拠があった絶対確実なものであるということがわかり、心の底から、魂の底から、霊魂の底から救いを確信し、喜びに満ちあふれ、１世紀の敵意と圧迫と迫害を乗り越えて、福音を伝えることができます。このためにこそ、キリストは真剣に祈ったのです。

　今日も同じです。わたしたちひとりひとりの救いは、永遠の確実な根拠を持っている、実に、奥の深い、スケールがとても大きい豊かな祝福です。こんな救いが与えられているのですね。これなら、教会とクリスチャンは、その時代の、どんな困難も乗り越えて、福音を喜んで伝えることができます。人の真の救いであるキリスト教信仰による救いの祝福は、神の永遠の御計画という絶対的に確実な根拠を持つ、安心できるものです。

２．キリストは罪のこの世とは違う大切な弟子のために真剣に祈りました

キリストは、罪のこの世とは違う、御自分の大切な弟子たちのために真剣にお祈りをしてくださいました。９節から１１節がそうです。ペトロをはじめとする弟子たちへのキリストの深い真実な愛が、読者の胸に伝わってきますね。９節を見ますと、「彼らのためにお願いします。世のためではなく、わたしに与えてくださった人々のためにお願いします。彼らはあなたのものだからです。」となっていて、1世紀のイスラエル社会で表されると罪のこの世とは全く違う、大切な弟子たちのことを思って、真剣にとりなしのお祈りをしている姿が伝わってきます。ここでは、弟子たちが、「彼ら」、「わたしに与えてくださった人々」、「あなたのもの」と３つの表現で語られています。強調点は、弟子たちは、罪のこの世とは違うことです。

　１世紀のキリストの弟子たちは、とても大切な人々でした。なぜかと言うと、彼ら自身が、キリストによって救われる最初の人々であり、キリストによって救われることがどんなにすばらしいかを自ら経験し、人々に伝えていく立場にあったからです。ですから、彼らが、罪のこの世の敵意と圧迫と迫害によって、崩れてしまえば、人々は、神なく希望なく、むなしい人生を歩まなければなりません。そうならないためには、弟子たちが、救いのすばらしさを確信して、揺るがずに、伝えていくことが必要です。

　そこで、キリストは、弟子たちのために、実に真剣にとりなしのお祈りをしてくださったのです。キリストが祈るのは、「世のためではなく」、キリストのかけがえのない大切な弟子のためであると率直に表明しました。しかも、弟子たちが、かけがえなく大切であるのは、キリストにとってだけでなく、キリストによって救いの道を開いた天の父なる神にとっても、かけがいなく大切であることを強調するために、「わたしのものはすべてあなたのもの、あなたのものはわたしのものです。」と祈りました。

　「わたしのものはすべてあなたのもの、あなたのものはわたしのものです。」とあります。この意味は、キリストのものはすべて同時に神のもの、神のものはすべて同時にキリストのものという意味です。具体的には、弟子たちは、キリストのかけがえのない大切なものであるとともに、同時に、天の神のかけがえのない大切なものであるという意味です。

　ありがたいですね。キリストは、御自分の弟子たちを軽んじたりはしないのです。ペトロをはじめとする御自分の弟子たちは、ガリラヤ湖の漁師で、欠点だらけの役に立たない者たちだ、どっちみちだめだなどとは思わないのです。弱さや欠点があることを知っておられても、かけがえのない御自分の弟子として大切にしてくださることがとてもよく伝わってきます。そして、キリストだけでなく、キリストを遣わされた天の父なる神御自身も、ペトロをはじめとする弟子たちをかけがえのない弟子として大切にしてくださることがとてもよく伝わってきます。

　このことは、今日のクリスチャンであるわたしたちにも当てあまります。わたしたちも、キリストから、かけがえのない今の時代の弟子として大切にされているのであり、同時に、キリストを遣わされた天の父なる神からも、かけがえのない今の時代の弟子として大切にされていることを覚えましょう。では、なぜ、弟子は、キリストおよびキリストを遣わされた父なる神から大切にされるのでしょう。それは、弟子において、救い主キリストのすばらしい救いが輝き、キリストの救い主としての栄光が十分現されるからです。

　１０節後半を見ていただくと、「わたしは彼らによって栄光を受けました。」とあります。「彼ら」というのは、もちろん、ペトロをはじめとする弟子たちを表しています。ですから、救い主キリストは、弟子たちによって栄光を受けましたという意味です。もっとわかりやすく言うなら、キリストによる救いが、どんなに素晴らしいものであるかは、キリストを信じて従うペトロをはじめとする弟子たちにおいて輝くことによって、救い主としてのキリストの栄光が現されるという意味です。

「栄光を受けました。」とあります。「栄光を受ける」というのは、キリストが栄光を受ける、キリストが誉れを受けるという意味です。救い主のキリストはどのようにして栄光を受けるのでしょう。すると、キリストによる救いが弟子たちにおいて輝くことによって、栄光を受けるのです。キリストは、この後、捕らえられ、明日十字架にかけられて死に、３日目に復活します。それらによって、罪の赦しと永遠の生命というすばらしい救いの道が開かれるのです。

罪の赦しと永遠の生命というすばらしい救い道が開かれ、その救いを最初に受けるのは、ペトロをはじめとするキリストの弟子たちです。ですから、キリストによって開かれるすばらしい救いが、弟子たちにおいてキラキラ輝くことにより、キリストは救い主としての栄光を受けるのです。「栄光を受けました。」と過去形になっています。これは、キリストによる救いが、ペトロをはじめとする弟子たちにおいて輝き、キリストの救い主としての栄光が現されることは確実なので、もう生じたかのように過去形でお祈りをされたのですが、実際的にはこれからのことです。

　こうして、キリストの栄光が輝くのは、キリストによるすばらしい救いが輝く弟子たちにおいてです。キリストを拒否するイスラエルの宗教の指導者の律法学者やファリサイ派や祭司長たちにおいては、キリストの救い主としての栄光は何ら輝きません。キリストの救い主としての栄光がキラキラまばゆく輝くのは、キリストの弟子たちです。このことは、今日の弟子であるわたしたちにも当てはまります。キリストの救い主としての栄光は、罪人であるわたしたちが、キリストを信じ、すべての罪を恵みによって赦され、永遠の生命の道を希望を持って日々喜んで歩んでいくことにおいて、キラキラ輝き、十分現されるのです。なぜなら、わたしたち罪人の救いは、キリストにだけあるからです。わたしたちが、救われ、永遠の生命を得、魂の深い喜びをもって歩むことにおいてこそ、人類のただひとりの救い主メシアとしての栄光は、キラキラ輝き、現されるのです。

　１世紀の時代もそうでした。ペトロをはじめとする弟子たちは、キリストによるすばらしい救いを輝かし、キリストの栄光を現すかけがえのない大切な人々でした。それゆえ、キリストは、大切な御自分の弟子たちが、罪のこの世に染まらず、聖なる父なる神の「御名」、すなわち、神のいろいろな豊かな御性質によって、守られ、保護され、父なる神とキリストがひとつであるように、弟子たちも一つとなり、福音を伝えながら歩むように、真剣にとりなしのお祈りをしてくださいました。

　それまでの約３年半においては、キリストが絶えず弟子たちと一緒にいて、「神の御名」、すなわち、神御自身の愛とか、いつくしみとか、偉大な力などの神のいろいろな豊かな御性質によって、弟子たちを守り、保護してきましたけれども、キリストが、天にお帰りになった後は、父なる神が、「御名」、すなわち、キリストにおいて現された神の愛とか、いつくしみとか、偉大な力などの神のいろいろな豊かな御性質によって、弟子たちを支え、守り、保護してくださるように、真剣にとりなしをしました。

　１１節に、「聖なる父よ」とあります。意味は、文字通り、聖い父なる神という意味です。なぜこのように言われたのかと言いますと、弟子たちが罪のこの世に染まらないで、聖く歩めるように願ったからです。また、「あなたが与えてくださった御名によって彼らを守ってください。」という言い方がありますが、この表現で、キリストによって現わされた父なる神のいろいろな豊かな御性質である愛やいつくしみや偉大な力で、弟子たちのこれからの歩みを父なる神が、守り、保護してくださいという意味です。

　今日も同じです。天の父なる神は、今の時代のキリストの大切な弟子であるわたしたちを、愛とか、いつくしみとか、偉大な力で、守り、保護し、支え、キリストと神がひとつであるように、わたしたちもひとつとなって、今の時代に、福音を伝えていけるようにしてくださっています。キリストの栄光を、２１世紀の日本に、輝やかせ、現していきましょう。

３．キリストはイスカリオテのユダの裏切りを事前にご存じでした

キリストはイスカリオテのユダの裏切りを知っていました。ペトロをはじめとする弟子たちは、キリストが守り、保護してきましたので、守られてきました。では、弟子でありながら、キリストの居場所を、敵に、通報し、キリストを敵に引き渡して裏切るイスカリオテのユダはどうなのでしょう。すると、イスカリオテのユダは、キリストを裏切って滅びるので、「滅びの子」と言われています。イスカリオテのユダの裏切りは、キリストが、十字架にかけられるための裏切りとして、また、旧約聖書に予告されていたことを、キリストは祈りを通して弟子たちに事前に教えました。

　１２節に「滅びの子のほかは、だれも滅びませんでした。聖書が実現するためです。」とあります。この意味は難しいことを言おうとしているのではありません。「滅びの子」というのは、もちろん、キリストをお金のために裏切って滅びるイスカリオテのユダを指しています。そして、裏切る者が生じることによってキリストが十字架にかけられていくことは、神の御計画で、旧約聖書にすでに予告されていたという意味です。

その意図は、キリストは、イスカリオテのユダの裏切りを知っていたこと、また、それが、旧約聖書の予告であることも知っていたということを、弟子たちに事前に教えるためです。もし、キリストが事前にこのことを弟子たちに教えておかなかったならば、弟子たちはどのように思うでしょう。弟子たちは、キリストは、弟子のひとりであったイスカリオテのユダが裏切ろうとしていたのを、気づかなかったのかと思って、キリストへの信頼を失うでしょう。こんな頼りないキリストを、弟子たちは、とても信じられないでしょう。

しかし、事実は違います。キリストは、イスカリオテのユダの裏切りに十分気づいて知っていました。しかも、救い主メシアは、側近の裏切りを通して、十字架につけられることが、父なる神の定めた救いの御計画であることを、旧約聖書の詩編４１編１０節を通して、知っていたのです。それゆえ、キリストは、イスカリオテのユダが御自分を裏切るままにされておいたのです。

このお祈りを聞いたそのときには、弟子たちはその意味がわかりませんでしたが、後に、これらのことすべてがわかり、このヨハネによる福音書を書いている弟子のヨハネをはじめとする弟子たちは、改めて、キリストが、本当に、何でもご存じの偉大な神の御子であったことを、揺るがず確信することになります。キリストは、イスカリオテのユダの裏切りも知っておられたのだ、しかし、それは、旧約聖書詩編の言葉の通り、救いが実現していくための神の定めであったことを知って、へりくだり、裏切りを受け入れたのだということ思い、ヨハネをはじめとする弟子たちの、キリストへの信頼は不動のもの、揺るがないものになります。

本当にそうです。キリストは、罪人である人類に救済の道を開くため、知っていながら、へりくだって、ユダの裏切りを受け入れ、十字架を目指して進んでくださるのです。だからこそ、わたしたちのための救いの道が本当に開かれ、今日、わたしたちが、永遠の生命を自らのものとして希望を持って喜んで意味のあるよい人生を歩むことができるのです。それゆえ、この世界に罪がどんなにあっても、わたしたちは、なお希望を持ち、賛美の歌を声高く歌いながら、よい人生を歩むことができます。わたしたちの目を希望の源であるキリストに向けましょう。

結び

　以上のようにして、本日のところを見ます。わたしたちは、今の時代の恵みによるキリストのかけがえのない大切な弟子たちです。わたしたちは、キリストのものであり、同時に、天の父なる神のものである大切な存在です。それゆえ、わたしたちの日ごとの歩みにおいて、また、特に、週の最初の日の礼拝において、キリストの救い主としての栄光がキラキラ輝き、現されるようにしましょう。そして、キリストと父が一つであるように、わたしたちも一つになり、福音の証しと宣教と真理の柱である教会の形成に、力を合わせましょう。そのためにも、聖霊の力がわたしたちひとりひとりに豊かに与えられるようにお祈りしましょう。